岸波白野の転生物語【Fate/編】   作:雷鳥

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お待たせしました。
タイトルで物凄く悩んだ(苦笑)



【岸波白野という名のパンドラボックス】

「ガアアアアアアア!!」

 

 黒い沼の様な何かに飲まれると同時に激痛に襲われる。

 苦痛によってチカチカと思考にノイズが走る。だが気絶する事は許されない。

 

「アアっアアアッアアガガガ!!」

 

 汚染された魂が、別の物に作り直されている。

 キアラと同じように身体が破壊されては作り直してを繰り返えす。

 

「ガハッア゛ア゛ア゛!!」

 

 考えは纏まらない。だが、意識が途切れる事は無いのがせめてもの救いだ。

 

 お陰で『自己』を認識し続けられる。

 それはこの負ける訳には行かない戦いで、一番重要な要素だ。

 

「ッ――!!」

 

 痛む意識の中で、絶叫を上げる中で、自分が『成りたい器』を想像する。

 

 キアラや桜がそうしたように、『完成図』を思い描け。

 

 そうしなければ逆に聖杯の意志によって器を作られてしまう。それでは負けだ。聖杯は間違いなく絶対悪を成せる器にするのだから。

 それを阻止する上でも、器の形を思い描かねば成らない。

 

「ガッハ――ハハッ!」

 

 全身が真っ黒の状態で、気付けば口元が歪み、そこから『ああ、相変わらず自分は馬鹿だなぁ』という自虐的な笑いが漏れた。

 

 『成りたい(自分)

 

 そんなの、もうずっと前から決まっていたじゃないか。

 

 暖かいものを守りたい。

 暖かなものと共に在りたい。

 世界でもなく。人類でもなく。ただ目の前の『ヒト』や自分の大切な人達を助けたい。

 そんな存在になりたかった。けれど『その存在』を具体的に言葉に出来なかった。

 だがこの世界で、奇しくも彼女のオリジナルが、その答えをくれたじゃないか。

 

「アア――ソウダ、オレハ、ワタシハ、ジブンハ――ナルンダ」

 

 あの子が言ったような『優しい魔法使い』に!

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 全身の痛みが増す。

 その全てを飲み込む。

 その全てを捻じ伏せる。

 意識が自然と耐える戦いから勝ち取る戦いへと切り替わる。

 同時に痛みが肉体の中心へと収束を始める。

 痛みが引いた箇所から真っ黒だった身体が肉体を形成して行く。

 ゆっくりと、しかし確実に聖杯を掌握して行く。

 痛みはどんどん弱まり、ついに身体の中心の黒い点以外からは痛みを感じる事は無くなった。

 

 その点に手を添える。

 

「願いは叶えられた。これで聖杯の役目は終わる」

 

 だから――。

 

「ありがとう。おやすみ、聖杯」

 

 最後に残った聖杯の意思を、完全に吸収しきる。 

 これで聖杯を完全に掌握しきった。

 次に自分の身体を確認する。

 

 肌の色は変わらないが、視界に入る前髪が白い。格好は取り込まれたときのままのようで全裸でなくて安堵する。

 もっとも、まだ安心は出来ない。

 今のこの姿は『魂』の形が定まっただけだ。

 これから本格的に魔力を得て現実で生きる為の『肉体』を造くらないといけない。

 

「でも、この魔力はなぁ」

 

 周囲に渦巻く膨大な魔力は未だ悪性のままだ。これでは取り込んでも何も出来ない。

 

 とりあえず最初にやる事は決まった。

 まずはアンリマユの受肉を行う為の魔力の確保。その為には一度この身を濾過装置にしないといけない。

 

「アンリマユ、いるか?」

 

「はいはい。ちゃんといるわよ~」

 

 声を掛けるとすぐ傍にユスティーツァの姿のアンリマユが姿を現す。

 聖杯を取り込んだ時にアンリマユの意志は吸収せずにちゃんと別に確保しておいた。

 そして自分がやろうとしていることを伝える。

 

「なるほどね。それはまぁ構わないけど……平気?」

 

「? まあ大丈夫だろ。ここまで平気だったし。それじゃあ、やるか」

 

 何故かこちらに意味有り気な笑みを浮かべるユスティーツァに首を傾げつつ悪性の浄化を始める。

 イメージは取り込んだ後、内側に魔力を溜めて、外側に悪性を圧縮するといったかんじだ。

 

 しかし浄化を始めた次の瞬間、急に意識が魂の内側、心象世界に引っ張られ、そして――アンリマユの笑顔の理由を知った。

 

「ウワアアアアアン何故急にこんな骸骨にぃ! 奏者ァァアアア! 奏者ァァアアア!!」

 

「ヤバイヤバイヤバイです! 出ちゃう! 生まれちゃう! タマモナイン、タマモナインが! ご主人様生まれちゃったら責任とって認知して!!」

 

「精神そのまま大人の姿ってどんな羞恥プレイ!? なんとかしないさよ子ブタァァアア!」

 

「俺ももっとハードにロックに決めるとするか」

 

「いや、そもそも貴様は本当に先程まで我の隣に居た贋作者か? どう見てもデトロイド在住のボブにしか見えぬのだが……これは流石に笑えぬ」

 

 わーわーキャーキャーと騒ぐ面々――何この地獄絵図!?

 

「そりゃ一時的にとは言え、悪性取り込めばあなたの魂に住み着いてる者達が暴れるわよ」

 

 アンリマユの言葉に、ハッとなって気付く。

 

「アンリマユ、まさか知っていたな!?」

 

「え~知らないわよ~気付いただけで~知ってはいないわよ~♪」

 

 本当に、本当に楽しそうに笑うアンリマユ。こいつ、この状況を楽しんでやがる!?

 

「ほらほら、みんなどうにかして欲しくてこっちに来たわよ」

 

 アンリマユの言葉通り、みんな争いながらもまだ理性があるのか、騒ぎながらこちらに向かってくる。

 

「……どうすればいい」

 

「そうね。まぁあなたの自我が滅べばアレらが外に出ちゃうから、とりあえず汚染の浄化が済むまで逃げるか魔力が溜まったら一体ずつ正気に戻すか。あ、因みにあなたが想定したとおり、私が居る限り魔力汚染は止まらないからまずは私を受肉するのが先ね」

 

「なんだ? つまりあれか? あの大惨事大怪獣戦争を生き延びつつ浄化作業を行えと?」

 

「あら上手い例えね。それじゃあ頑張って♪」

 

 それだけ言うとアンリマユは脱兎の如くその場から逃げ出した。

 それを見届け『フッ』と小さく笑ってから……後を追うように全力疾走した。

 

「なんで! 毎回! 自分は! 初戦が! ラスボス戦なんだよぉぉおおお!!」

 

 泣きながら、叫びながら、改めて自分の不運を恨みながら、現実に戻ったら一発アンリマユに拳骨をかます事を固く誓った。

 




実は白野は初戦の相手が一番のラスボスだったりする。

EXの初戦のドール=ドールの設定的に白野単体では絶対に勝てない相手。(本来魔術師なら使えるはずのコードキャストが使えないので支援できない)

CCCの初戦の影&虚無=まさかの虚無である(笑)。BBの影に捕らわれてもダメ、外に飛び出してもダメと完全に詰んでいた。

エクステラの初戦の巨人さん=敵しかいない密室で、しかも高速で動く巨人さんによる鷲掴みである。

とまあこんな感じで原作でも実は白野は『最初の一歩目がガチに詰んでいる』という状況である……不幸過ぎじゃね? というか、そこからほぼ自力で挽回できてる時点で凄くね?

そしてプロローグの五騎が大変な事に。
まあネロとタマモはFGOでも人類悪候補でしたしねぇ。
ネロちゃまはメガテンのマザーハーロット化。
タマモは尻尾が増えてそこからタマモナインが生まれようとしている。
エリちゃんは思いつかなかったので体だけカーミラさんになってもらった。
無銘は欲が開放された結果、興味のあったアメリカンな格好に無銘(士郎)がはっちゃけてボブミヤの格好をしだした。格好だけなので厳密にはまだオルタ化した訳ではない。
ギルガメッシュは影響薄くて最初爆笑してたけど、いつの間にか無銘がボブ化していたので真顔に戻った感じ。
にしても……エミヤがオルタ化すると日本人を止める事になるとは、流石に想像できなかった。

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