サザエ=サン   作:サンシタ

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◆投◆ニューロンの奥ゆかしいところからこみあがるなんかが抑えきれずSSを投稿しようと思いました、中途半端なニンジャ知識と実際ヒドイ文章力ですが完結できるようがんばります
◆稿◆


ガンバルゾー!ガンバルゾー!ガンバルゾー!(邪悪なバンザイチャント)


#1 ダディ・イズ・マム・バイ・インベンション(邦題:父さん発明の母」

#1 ダディ・イズ・マム・バイ・インヴェイション

 

 

夜の帳が街を覆い尽くそうとする頃、ネオサイタマ郊外のアサヒ・ヒル駅に列車が到着した、くすんだ銀色の車体には「バカ」「自分を前後」「お前を前後」……暴力的な言葉や猥褻なグラフティーがところ狭しと施され就役当初の姿は見る影も無い、列車はマグロめいた眼のサラリマン達を吐き出し慌ただしく発車した。

 

駅前のメインストリートは、サラリマンや主婦、無軌道学生、サイバーゴス、ヤクザ…種々雑多な人々が極彩色のグラデーションを描き出す。

 

 

「安い、実際安い」「お買い得」「決断的に購入」人々の欲望を掻き立てるネオン看板やLEDボンボリ、街灯に集る蛾の様に商品に群がる人混み、店頭には食料品を中心に様々な商品が並ぶ。

 

 

店先で主婦が値段が上がったサシミにため息をつき、広場では大音量で演奏するインディーズ・アンタイブディズムバンドが冒涜的な歌詞をまくし立てる、その前を顔をしかめた老人が通り過ぎた、物陰で無軌道学生がヤクザにカネを渡し何かを受け取って足早に立ち去った。

 

 

それらを無視し、男は家路を急ぐ、その表情は疲れが浮かんでいるが明るく足取りも軽い、何しろ久しぶりのテイジ・アワー帰宅であり娘婿のマスオ=サンも早く帰宅出来るという、快く帰らせてくれた会社に感謝しつつ男は家路を急ぐ、男の名はイソノ・ナミヘイ、イソノ家の大黒柱である。

 

 

ナミヘイの歩みが止まる、ストリートの片隅に人だかり、群衆のざわめきに混じり「実際安い!」「お値打ち!」「オミヤゲ!」販売員の宣伝文句に誘われ思わず人混みに足が止まる。

 

 

((オミヤゲ…どれ覗いて行く位なら構わんだろう))彼のニューロンに浮かんだものは愛する家族の笑顔、ナミヘイは人混みへ歩を進める。

 

 

そこでは販売員の男が家電品デモンストレーションをおこなっていた、「特許技術」「ハイッテック」「テクノロジー」「オムラ」先端技術をアピールするPVCノボリ、男の背後の液晶モニタにはカチグミめいた身なりの一家がその製品を使用する様子のPVが洒落たBGMと共にエンドレスで流れている、そして展示台の脇に立った販売員の手にはハンドボールめいた球体が。

 

 

「……エーと言う訳でこの全自動タマゴ割り機『トテモ・タマゴ』の実力を皆さんに見ていただきたいと思います」サイバーサングラスを掛けた男が「実演」「販売」と交互にLEDを発光させながら製品のアピールをおこなっていた、男が手にもつトテモ・タマゴをひとしきり周囲の客に見せつけるようにアピールしてから展示台の上に置く。

 

 

群衆はタマゴ割り機のデモンストレーションを興味深げに見物するが、やがてこの機械の致命的な問題点に気づき一人、また一人とその場を離れ男とナミヘイの二人だけとなった。

 

 

ナミヘイは先ほどの実演に深く感嘆していた、世間のハイテック化はここまで来ていたのかと、自分は実際ハイテックには疎い、仕事で使う情報端末や演算装置ならともかく家電製品の類いは全く理解できない、これが有れば妻の家事も楽になるのではと。

 

 

ナミヘイに男が声を掛ける、「お客さん、このマシンが気に入ったようですね?お一ついかがですか?」男は脈がありそうなナミヘイに声を掛けた、「ん?ああ、つい見入ってしまったよ、最近の家電はたいしたものですな」ナミヘイは視線をタマゴ割り機から男に移し返答する。

 

 

「オムラ・ホームテックの最新製品です、まだ何処も取り扱っていません、ここ一ヶ所だけの先行販売です、来週ネオサイタマ各地で一斉販売します」販売員はサイバーサングラスを点滅させながら語る、「うーむ……」吸い込まれる様に見つめるナミヘイ、「タマゴを割りますドスエ」タマゴ割り機が人工マイコ音声で喋る。

 

 

「オムラはいいですよ、品質は確かですし保証も充実しています、何より、革新的です。家電のリーディングカンパニーは伊達じゃない」サイバーサングラスが怪しく点滅する、「うーむ……」吸い込まれる様に見つめるナミヘイ「タマゴを割りますドスエ」タマゴ割り機が人工マイコ音声で喋る。

 

 

「安い買い物では無いです、しかし金額以上の価値が実際有ります」「分割払いがトテモお得です、金利手数料が実際安い、サービス期間中でポイントも倍点!」サイバーサングラスが激しく点滅する、「うーむ……」吸い込まれる様に見つめるナミヘイ、タマゴを割りますドスエ」タマゴ割り機が人工マイコ音声で喋る。

 

 

「家族の幸福はお金で買えますか?家族の笑顔はお金で買えますか?想像してくださいタマゴ割り機が有る生活を」サイバーサングラスが激しく点滅する、「うーむ……」吸い込まれる様に見つめるナミヘイ、「タマゴを割りますドスエ」タマゴ割り機が人工マイコ音声で喋る。

 

 

ナミヘイの意識にタマゴ割り機を購入しなければならないという強迫観念が刷り込まれる、サイバーサングラスをマグロめいた眼で凝視する、「決断的!」「購入!」「決断的!」サングラスに表示されるメッセージの間に0.01秒3Dホログラフィックスのタマゴ割り機がナミヘイの眼に飛び込む、ナムサン!只のサイバーサングラスでは無い!洗脳サングラスだ!

 

 

視覚・聴覚ダブルの洗脳にナミヘイのニューロンは容易く屈した、目の前に愛する妻子の姿が浮かび上がり彼に語りかける。

 

 

((お父さん、ありがとうございます))愛する妻、フネの声、((お父さんありがとう))((ワースゴイ!))((私にも触らせて))((ボクもデスー))愛する子供達と孫((ミャーオー))飼い猫の声、彼は遂に決断した。

 

 

「よし、それを購入しよう」「アリガトウゴザイマスー!」購入手続きを済ますと商品を受取りナミヘイは再び家路を急いだ。

 

 

 

 

#2 ダディ・イズ・マム・バイ・インヴェイションに続く

 

 

 

 




次回投稿日は未定です、感想は大歓迎ですが誤字、脱字、文法上おかしな点はスルーしていただきたい、イイネ?◆やさしみ重点◆

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