名前:菊岡 誠二郎
性別:男
年齢:30代?
誕生日:不明
CV(イメージ):森川智之
国籍:日本?
身分:霧山城市立病院 常勤医師
趣味:不明
家族構成:なし
好きなデュエリスト:不明
性格:何を考えているのかわからない、うさんくささが目立つ。
好きな食べ物:コーヒー
目的:精霊に憑依された人々を救い出すこと
「うわあ…ここが生のLINK VRAINSかぁ…」
アカウント名ジェミニでログインに成功した誠は目を輝かせながら、夢に見たLINK VRAINSの街並みを見る。
電脳空間の中でよりリアルな演出でデュエルを行うことができ、おまけにスピードデュエルまである。
ジェミニは建物の屋上へ上ると、スピードデュエル用のDボードを出し、実際に乗ってみる。
「これに乗ってデュエルをするのか…。きっと、すごいスピードが出てるだろうなぁ…」
MeTubeでの実況でもスピードデュエルの映像があり、フィールドゾーンのカードが3枚ずつで最初の手札は4枚、メインフェイズ2がないというマスターデュエルと比較するとシンプルなルールになっていることは分かっている。
しかし、LINK VRAINSを疾走しながらデュエルをするという未知の体験とスキルというプレイヤーが1度だけ発動することが許される特殊能力もあり、それが初めて行われたプレイメーカーとハノイの騎士によるスピードデュエルは多くのデュエリストを熱狂させた。
その結果、スピードデュエルを真似するプレイヤーが続出することになった。
当初、LINK VRAINSを管理するSOLテクノロジー社はスピードデュエルの危険性から、それを行うアカウントに対して警告を行い、無視した場合はアカウントロックや削除を行うなどの強硬手段を取るなど、厳しい取り締まりが行われた。
それはスピードデュエルの際に建物などの障害物に激突したり、Dボートから転落するなどのダメージを受けすぎると、現実世界に戻ってきた際にフラッシュバックが発生し、精神的なダメージを負ってしまうためだ。
場合によっては体に障害が残るほどのダメージが発生することも考えられる。
しかし、プレイメーカーとGo鬼塚によるスピードデュエルを前後して方針を180度転換し、スピードや高度、場所についてある程度制限を加えたうえでスピードデュエルが解禁されることとなった。
そのため、現在のLINK VRAINSはスピードデュエルが大きなブームとなっている。
実際に、ジェミニの眼にもスピードデュエルを行っているアカウントの姿が映っている。
そんな彼の眼が突然、誰かの手で隠されてしまう。
「うえええ!?」
突然のことでびっくりしたジェミニは変な声を上げてしまう。
すると、後ろから女の子の笑い声が聞こえてくる。
彼のリアクションに満足したのか、すぐに手がどけられ、ジェミニは文句を言おうと後ろを向く。
そこには緑と白を基調としたセーラー服のような服装をした、黄色いポニーテールの少女がニコニコ笑いながら立っていた。
「え、ええっと…どちら様…!?」
顔を赤く染めたジェミニはうっかり胸の谷間を見てしまう。
あまりにも整った、かわいらしい顔立ちをしているうえに胸が大きいとなると、魅了されてしまう男がいても不思議ではない。
(お前…おっぱい好きなのか?)
「な…!?!?」
LINK VRAINSの中でも当然のように脳裏に聞こえたシャドーのあまりにも恥ずかしい質問のせいで、ジェミニの顔の顔はもはやトマト以上の赤さになってしまう。
「アハハハハ!!」
どう答えれば正解なのかわからず、沈黙するジェミニを見た彼女はとうとう我慢できなくなったのか、目の前で大笑いを始めた。
「え、ええ!?なんで、なんで笑うんですか!?」
「アハハ!!だ、だって…LINK VRAINSで格好変わってるのに、中身が全然変わってないのがおかしくって…アハハハ…」
「え…?」
言っている意味が理解できず、キョトンとしてしまう。
しかし、少し時間がたつと、その言葉の意味を理解できた。
「ま、ま、まさか…直は…」
名前を言おうとしたジェミニの口をふさぎ、彼女は人差し指を自分の唇に当てる。
「もう、ここではリーファだよ?ジェミニ君」
耳打ちしたリーファにジェミニは分かったと首を縦に振ると、ようやく口から手を放してもらえた。
深呼吸をしたジェミニはDボートを起動させ、ゆっくりと上昇させる。
「高さはええっとこんな感じで…。うわあ…」
Dボードに乗ったまま、ジェミニはLINK VRAINSの景色を見る。
地上から見るのとではまた別であり、少し高いところから見ているだけなのにもかかわらず、ジェミニにはとても新鮮に感じられた。
また、スピードデュエルを行っているデュエリストの姿も見え、《切り込み隊長》と《ゴブリン突撃部隊》が《ユニオン・アタック》の効果を使ったのか、攻撃力3000になっている《モンタージュ・ドラゴン》を同時攻撃で撃破しているのが見えた。
「ジェミニ君、見てるだけなら実況動画だけでもできるよ?」
いつの間にDボードに乗り、同じ高さまで来たリーファがニッコリと笑いながらジェミニに言う。
彼女の言う通り、せっかくLINK VRAINSに来たのだから、ただスピードデュエルを見ているだけではつまらない。
「そ、そうだね…けど、まずはDボードに慣れないと…」
リーファに目線を合わせず、ジェミニはゆっくりとDボードを前進させて少しずつスピードに体を慣らせていく。
「た、高いなぁ…大丈夫かな…?」
下を見てしまったジェミニの顔が青くなる。
スピードデュエルの注意点については説明を受けており、落ちた場合は相当痛いらしい。
実際に転落してしまったアカウントがログアウトした際、全身に痛みが生じて3日間動くことができなくなったというケースが存在する。
「うわあー…気持ちいいーー!!」
「す…じゃなかった、リーファ!?」
猛スピードを出し、追い抜いていくリーファを見たジェミニがびっくりする。
制限速度を超えたスピードを出して、本当に大丈夫かと心配にもなってしまう。
「いやっほーーーい!!」
興奮しているのか、リーファの奇声が聞こえてくる。
楽しそうにしている彼女を見て、うれしく思いながらも、そろそろ止めないと警告が出てしまう。
「待ってよ、リー…」
(おい、だれか近づいてくるぞ)
「え…??」
シャドーの声が聞こえ、同時にログイン前に感じた頭痛が再び起こってしまう。
Dボードを止め、左手で頭を抑える。
シャドーが言っていた近づいてくる誰かを確かめるため、ゆっくりと後ろへ振り向く。
「あ、あれは…!?」
その正体を見たジェミニの目が丸くなる。
黄色と赤のマンゴーのような配色の髪で、金色のラインのある漆黒のスーツを着たアカウント。
彼の名前をジェミニは知っている。
彼はハノイの騎士と戦う、LINK VRAINSの英雄、プレイメイカーだ。
「奴が例の男で間違いないようだな…」
(そうだ。気になるのはこいつの中にいる奴だ。俺に似たにおいがする!)
プレイメーカーのデュエルディスクの中にいるAiがジロリとジェミニをにらみつける。
「お前と似たにおい…サイバースと関係があるということか」
(そうだ!とにかく、奴を倒して聞き出すぞ!)
「…わかった」
プレイメイカーがジェミニの前に立つと同時に、電脳空間ではありえない風が吹き始める。
紫色のデータが風に乗って流れている。
「これは…データストーム!?」
「俺と…デュエルをしろ」
初めて見るデータストームに驚く中、プレイメーカーはデュエルディスクを展開する。
普段はハノイの騎士以外と積極的にデュエルをすることのない彼がなぜ自分にデュエルを挑んでくるのかわからなかった。
彼は以前、ブルーエンジェルからデュエルの挑戦状が送られたにもかかわらず、無視したことで一時炎上したことがある。
「まぁ、せっかくのチャンスだし…」
最近注目の、しかも受け身でデュエルを受ける傾向の強いプレイメーカーからのスピードデュエル未経験の自分への申し出を光栄に思い、些細な疑問を忘れたジェミニはデュエルディスクを展開する。
(おい、嬢ちゃんはどうするんだよ!)
「デュエルが終わったら追いかける。今はそれよりも…)
(ちっ、内気かと思ったら…めんどくせえ奴!!)
2人のDボードがデータストームに乗るように飛ぶ。
慣れていないため、少しスピードを控えめにしているジェミニをプレイメイカーが先行する。
(風をつかめ、プレイメイカー!!)
「いくよ、スピード…」
「「デュエル!!」」
ジェミニ
手札4
LP4000
プレイメーカー
手札4
LP4000
「うわーーー!!気っ持ちいいーーー!!」
(そこのアカウント、速度オーバーです。制限速度まで減速しなさい)
すっかり飛ばし過ぎたリーファに一つ目を模したマシンの警備アカウントが警告音を発しながら警告する。
さすがにやり過ぎたと思ったのか、リーファはスピードを緩める。
(ご協力、感謝します)
「ごめんなさい…。ってあれ、ジェミニ君は?」
夢中になりすぎて、すっかり彼のことを忘れていたリーファは周囲を見渡すが、今いる場所は中世イタリアを模した街並みのエリアで、最初にいたビル街のエリアとはかなり離れている。
彼を探そうと来た道を引き換えしていると、カエル型アカウントをつかんで飛ぶ鳩型アカウントが見えた。
「急げ急げ!!プレイメイカーとデュエルが始まっているぞー!」
「これをスクープにしない手はありませんね、山本先輩!」
「だから、本名を言うなーー!!ビル街へ急げーー!!」
「はいーーー!!」
鳩が更に早く羽を動かし、ビル街へと急ぐ。
「ふーん、プレイメーカーってやっぱり人気があるんだ…。ってあれ?なんだか、嫌な予感が…」
「はあ、はあ、はあ…」
データストームに乗り、速いスピードでの飛行になったジェミニは緊張で足がすくみ、膝をついたうえに両手でDボードを抑えている。
MeTubeで見たときは面白いものとばかり思っていたスピードデュエルだが、こんなスピードでLINK VRAINSを駆け巡るとは思っておらず、おまけに障害物に注意を払う必要があることから、改めて危ないデュエルだということが理解できた。
そして、プレイメイカーはそんなスピードをものともせず、慣れた動きで障害物をかわしつつ、前へ前へと進んでいる。
ようやく感覚が慣れてきたジェミニはゆっくりと立ち上がる。
「ぼ、僕の先攻…。僕は、モンスターを裏守備表示で召喚!カードを1枚伏せて、ターンエンド!!」
ジェミニ
手札4→2
LP4000
場 裏守備モンスター(1)
伏せカード(2)
プレイメーカー
手札4
LP4000
場 なし
(無難な立ち上がりか…)
(油断するなよ、プレイメーカー様!あのビビってるガキはともかく、あいつの中にいる奴にはよぉ!)
「お前、その奴の正体は分かったのか?」
(いいや、まだだ。くそ…バグじゃあないってのか…??サイバースに近いようで遠い…うわあ!!よくわからない!!)
Aiはデュエルディスクの中から上半身を出して、ジェミニをじっと見る。
彼の体内には普通の人間にはない黒い影のようなものが見え、それがサイバースと何かつながりがあるように感じられるが、正体をつかめずにいた。
以前、ハノイの騎士のリーダーであるリボルバーとのデュエルによって肉体を取り戻すことには成功したが、まだ戻っていない記憶がはるかに多く、それも解析できない要因となっている。
「…解析は勝手にやっていろ。俺はこいつを倒して、正体を暴く!俺の…ターン!」
プレイメーカー
手札4→5
(おい!!何ビビってんだ!?お前が落ちたら、俺にもダメージが来るかもしれねーんだぞ!!)
「わかってる…けど、僕…高所恐怖症で…」
ターンが終わり、再び四つん這いになっているジェミニにシャドーはあきれ果てる。
観戦者の中にはあまりの彼の無様な姿に笑ってしまっている人もいる。
(くそ…!こいつの体を乗っ取ることができたとしても、これじゃあ使い物にならねえじゃねえか!!)
ステージ3に到達すると、とりついた精霊は人間の承諾がない限りはそちらから肉体をコントロールすることができなくなる。
しかし、シャドーはあきらめきれず、夜な夜な彼の体を乗っ取ろうと試みたが、見えない壁に何度も邪魔されてしまい、ことごとく失敗に終わっている。
自由になるには、コントロールを奪うしかないが、今の彼を見ていると、今までそれに躍起になっていた自分が馬鹿に見えてきてしまう。
「自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚できる。《リンクスレイヤー》を特殊召喚!」
金色のライオンをほうふつとさせる鎧を身に着け、両腕に水晶のような透き通った色の剣をつけた戦士が現れる。
リンクスレイヤー レベル5 攻撃2000(2)
「《リンクスレイヤー》の効果。1ターンに1度、手札を2枚まで捨てることで、捨てた枚数だけフィールドの魔法・罠カードを破壊できる。俺は手札の《ビットロン》を捨て、お前の伏せカードを破壊する!」
六枚の羽根がついた白い球体型のモンスターの幻影が《リンクスレイヤー》の右手の剣に宿り、それが振られることで衝撃波が発生する。
衝撃波はジェミニの伏せカードを切り裂き、更にDボード上の彼に対しても衝撃が襲う。
破壊された伏せカード
・ガード・ブロック
「うわああああ!!」
「なんだよ!?気になって身に来たら、ただのビビリじゃねえか!」
「プレイメーカー、さっさとこいつを片付けてしまえー!」
必死に両手でしがみつきながら耐えるジェミニを見た観客がヤジを飛ばしてくる。
運がいいのか悪いのか、今は落ちないようにするのが必至な彼にはそのようなヤジは届いていない。
「更に、俺は手札から《サイバース・ガジェット》を召喚!」
左腕にiPhoneのような板状の端末をつけた、青と白の装甲の小人のようなロボットが現れる。
現れた瞬間、彼は端末の操作をはじめ、それには《ビットロン》の名前が表示された。
サイバース・ガジェット レベル4 攻撃1400(3)
「このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に存在するレベル2以下のサイバース族1体を守備表示で特殊召喚できる。俺は《ビットロン》を特殊召喚」
名前が表示されると、上空にモニターが出現し、それに《ビットロン》の姿が映る。
そして、《ビットロン》は窮屈ゆえか、モニターの中から飛び出した。
ビットロン レベル2 守備2000(1)
(《ガード・ブロック》を除去したうえに、モンスターを一気に3体も!やってくれるじゃねーか…!)
「この状況…もしかして!!」
四つん這いのままプレイメーカーのフィールドを見たジェミニはここから何が起こるのか、簡単に想像できた。
ここから始まるのはプレイメーカーの独壇場だ。
「現れろ、未来を導くサーキット!!」
彼の前にリンクモンスターの枠のようなゲートが出現し、その中へモンスターと共に彼は入っていく。
「アローヘッド確認。召喚条件は通常モンスター1体。俺は《ビットロン》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク1!《リンク・スパイダー》!」
ゲートから飛び出したプレイメイカーと共に現れたのは、水色の模様のある濃い青色の蜘蛛の機械だった。
リンク・スパイダー リンク1 攻撃1000(EX2)
「《リンク・スパイダー》のモンスター効果発動!1ターンに1度、このカードのリンク先にレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札からもう1体の《ビットロン》を特殊召喚!」
《リンク・スパイダー》の口からデータでできた糸が出て、その糸が青いゲートへと変化する。
その中から《ビットロン》が現れ、《リンク・スパイダー》の上に乗る。
ビットロン レベル1 攻撃200(1)
「再び現れろ、未来を導くサーキット!!」
再びゲートが出現し、その中でプレイメーカーは再びリンク召喚を行う。
Go鬼塚とのデュエルの時の展開が再び巻き起ころうとしていた。
見ていたときのジェミニはとてもワクワクしていたが、こうして対戦するときは驚きと何とも言い難い危機感が先に出てきた。
「アローヘッド確認。召喚条件はサイバース族モンスター2体。俺は《ビットロン》と《サイバース・ガジェット》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク2!《ハニーボット》!」
次に現れたのはハチの巣状の黄色いデータの塊を周囲に展開させる、白い蜂を模した女性型モンスターだ。
とてもサイバース族に見えない外見をしているが、《リンクスレイヤー》と同じく、立派なサイバース族だ。
ハニーボット リンク2 攻撃1900(1)
「更に、墓地へ送られた《サイバース・ガジェット》の効果発動。このカードがフィールドから墓地へ送られたとき、《ガジェット・トークン》を特殊召喚できる」
《ハニーボット》のデータの1つが青い歯車へと変化し、プレイメイカーのそばに浮かぶ。
ガジェット・トークン レベル2 守備0(2)
「更に…」
「3回目の…リンク召喚!?」
「三度現れろ、未来へ導くサーキット!」
再び現れたリンク召喚のゲート。
その中へ飛び込むプレイメーカーをジェミニは指をくわえて眺めるしかなかった。
「アローヘッド確認!召喚条件はモンスター2体以上。俺は《ガジェット・トークン》と《リンクスレイヤー》、《ハニーボット》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク4!《ファイアウォール・ドラゴン》!」
宿敵とのデュエルの中で手に入れた、ネットワークの守護者の名を持つドラゴンがフィールドに現れる。
青いデータを宿した円盤を頭部につけた、そこから流れるデータを体内に宿した白竜が咆哮し、ジェミニをにらむように見る。
ファイアウォール・ドラゴン リンク4 攻撃2500(1)
「初めて見る…《ファイアウォール・ドラゴン》…」
MeTubeの実況動画でも見たことのないドラゴンを見たジェミニは恐怖を忘れ、ゆっくりとDボードの上に2本の足で立つ。
初めて見るモンスターに心躍らせ、スピードデュエルを楽しみ始めていた。
「俺は《ファイアウォール・ドラゴン》の効果発動。このカードが表側表示で存在するときに1度、相互リンクしているモンスターの数だけフィールド・墓地に存在するカードを手札に戻すことができる。俺は裏守備モンスターを手札に戻す。エマージェンシーエスケイプ!」
《ファイアウォール・ドラゴン》の流れるデータの色が青から赤へ変化し、両翼でデータストームの中のデータを吹き飛ばしていく。
裏守備モンスターがそれに巻き込まれて飛んでいき、ジェミニの手札に戻ってしまう。
これで、ジェミニのフィールドからカードがなくなった。
「バトルだ。《リンク・スパイダー》と《ファイアウォール・ドラゴン》でダイレクトアタック!テンペスト・ウェブアタック!」
《リンク・スパイダー》の口から放たれる糸が《ファイアウォール・ドラゴン》の放つ赤いデータのブレスに絡みつき、それがジェミニを貫く。
「うわああああ!!」
一度の3500もの特大ダメージを受けてしまったジェミニはDボードごと吹き飛ばされてしまう。
ジェミニ
LP4000→1500→500
「俺はこれで、ターンエンドだ」
ジェミニ
手札2→3
LP500
場 なし
プレイメーカー
手札5→0
LP4000
場 ファイアウォール・ドラゴン リンク4 攻撃2500(1)
リンク・スパイダー リンク1 攻撃1000(EX2)
「うわあああ!!」
吹き飛ばされたジェミニはDボードから足が離れてしまい、そのまま下へ落ちていく。
このまま落ちたら、路上に激突してどれだけのダメージになるかわからない。
(しっかりしやがれ!!お前が大けがしたら、こっちが困るんだよ!!)
「…」
落ちていくジェミニを見たプレイメーカーはそれを見かねて助けに行こうとする。
しかし、その前にもう1台のDボードが見え、それに乗った少女が彼の手をつかんだ。
「え…?」
急に落ちていく感触がなくなったのを感じたジェミニは目を開ける。
そこにはリーファの姿があり、彼女が手を握ってくれていた。
「大丈夫だよ、ジェミニ君!今、引っ張り上げるから…!」
両手で彼の手をつかんだリーファはジェミニを引き上げていく。
その彼女の必死な姿を見たジェミニは過去の有る光景を思い出す。
幼稚園児のころ、誤って浮き輪から出て、プールにおぼれてしまったことがある。
その時に助けてくれた人と彼女は性格は違うが、顔立ちが少し似ていたし、髪の色も同じだった。
もっとも、今のリーファの目や髪の色は全く違うが、顔については直葉の面影を感じる。
「もう、何をやってるの!?せっかくあのプレイメーカーとデュエルをしているのに、こんな形で終わらせるつもりだったの!?」
「いや、だって…いきなりあんなにダメージを…」
「言い訳しない!」
「ひぃ…!」
一喝されたジェミニは悲鳴を上げる。
しかし、リーファは怒った顔を緩めると、優しい笑みを浮かべ始める。
「あたしのDボードを貸してあげる。だから、あたしに見せてよ。あなたのかっこいい姿を」
「直…葉…」
ポンの肩に手を置き、優しく言うリーファを見て、うっかりジェミニは本人の名前を口にしてしまう。
しかし、今はそのことを気にせずに、リーファは近くのビルの屋上でDボードを止め、自分は降りる。
「ジェミニ君のDボードはあたしが探しておくから!」
「うん…頼むよ、リーファ!」
(ちっ…あの野郎、あの姉ちゃんに励まされたら元気出しやがって…!)
Dボードで再びデータストームに乗ったジェミニにシャドーは悪態をつく。
しかし、リーファの言葉からたとえ勝てなくても、全力でやってかっこいいところを見せようと思い始めたジェミニの耳には届かない。
「いくよ…。僕のターン!!」
ジェミニ
手札3→4
「僕は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動。僕のフィールドにカードがない時、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てる!」
手札から墓地へ捨てたカード
・C.C.バルゴラ
聖天使の施し
通常魔法カード
このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールドにカードがない時に発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札1枚を墓地へ捨てる。
「僕は手札から、《C.C.バルゴラ》を召喚!」
ダークブルーを基調とした人型兵器が現れ、同時に上空から落ちてきた装甲と同じ色の長方形の箱を模した武装ユニットを手にする。
装甲にはおとめ座の配置をした球体が埋め込まれており、ほかのC.C.と違って、球体の色は黄色になっている。
C.C.バルゴラ レベル3 攻撃1200(3)
「《バルゴラ》の召喚に成功したとき、このカード以外に自分フィールドに存在するカードがこのカードだけで、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在するとき、1度だけ手札・デッキ・墓地から《バルゴラ》を特殊召喚できる!」
武装ユニットから信号弾が上空へ向けて発射され、その信号弾に応えたのか、2機の同型の人型兵器がデッキと墓地から1体ずつ出てきて、合流する。
C.C.バルゴラ×2 レベル3 攻撃1200(1)(2)
C.C.バルゴラ
レベル3 攻撃1200 守備1000 効果 光属性 機械族
このカード名の効果はデュエル中1回しか発動できない。
(1):このカードの召喚に成功したとき、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールドに存在するモンスターがこのカードのみの場合に発動できる。手札・デッキ・墓地からこのカードと同じ名前のモンスターを2体まで特殊召喚する。
「一気にモンスターが3体も!?」
「C.C.…?聞いたことのない名前だが、サイバース族ではない…」
プレイメイカーはデュエルディスクから3体の《C.C.バルゴラ》のカードを確認する。
このカテゴリーのカードは当然、プレイメーカーも見たことも聞いたこともないものであり、観戦している人々もそのカードの存在に首をかしげている。
デュエルディスクは改造カードが出ると警告音が発生し、更に読み込みを受け付けないようにプログラムされている。
ただし、ハノイの騎士のような高度なハッキングやプログラミングの技術を持つ人物であれば、それを書き換えて、普通のカードとして使用することができる。
だが、プレイメーカーには今デュエルをしている相手がそんな技術を持っているようには見えない。
「現れろ、星を繋ぐサーキット!!」
ジェミニが右手を空にかざすと、LINK VRAINSの電脳空間の中に星空が出現し、そこにゲートが出現する。
データストームから飛び出したジェミニと3機の《C.C.バルゴラ》がその中へ飛び込んでいく。
「奴もリンク召喚を…」
「アローヘッド確認。召喚条件は《C.C.バルゴラ》を含むC.C.モンスター3体。僕は《C.C.バルゴラ》3体をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク3!《C.C.バルゴラ・グローリー》!!」
ゲートからジェミニと共に、背中にV字の2枚羽根がついたバックパックが搭載された《C.C.バルゴラ》が現れる。
右手に装備されている武装ユニットは大型化しており、おまけにオウムガイのような生物的な雰囲気へと変化している。
C.C.バルゴラ・グローリー リンク3 攻撃1900(EX1)
「《バルゴラ・グローリー》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、このカードのリンク先のモンスター1体をこのカードの装備カードにすることができる。この効果はこのカードがエクストラモンスターゾーンに存在する場合、もう片方のエクストラモンスターゾーンのモンスターも対象にできる。僕は《リンク・スパイダー》を《バルゴラ・グローリー》に装備!カーバー・ドレイン!」
《C.C.バルゴラ・グローリー》の口が開き、網状のビームが発射される。
ビームの網にからめとられた《リンク・スパイダー》は分解され、エネルギーとなった武装ユニットに飲み込まれていった。
(あいつ…!モンスターを奪えるのか!?)
《リンク・スパイダー》が奪われるのを見たAiとプレイメーカーはハノイの騎士のリーダーが召喚した《ヴァレルロード・ドラゴン》のことを思い出す。
口の中に銃口を隠し持つ、体の半分以上が機械で構成された、その赤いドラゴンによって、《ファイアウォール・ドラゴン》のコントロールを奪われた苦い経験があるためだ。
今回は装備カードにされるという形になったが、自身のカードを利用されるというのは気分のいい話ではない。
「《バルゴラ・グローリー》は装備カードとなったモンスターの元々の攻撃力の半分の数値を攻撃力に加える。《リンク・スパイダー》の攻撃力は1000。よって、攻撃力は500アップする」
C.C.バルゴラ・グローリー リンク3 攻撃1900→2400(EX1)
「攻撃力2400…。《ファイアウォール・ドラゴン》の攻撃力に届いていないが…」
プレイメイカーはジェミニの残り3枚の手札に注目する。
3枚もあれば、この状況をひっくり返される可能性は大いにある。
彼の脳裏によぎった可能性の1つは、カード効果による攻撃力のアップだ。
「更に僕は手札から装備魔法《スフィア・フォース》を発動!このカードはC.C.リンクモンスターにのみ装備することができ、攻撃力が1000アップする」
《C.C.バルゴラ・グローリー》に埋め込まれた球体が緑色に光りはじめ、同時に武装ユニットが展開され、悪魔のような顔が出現し、その口にビームが収束されていく。
C.C.バルゴラ・グローリー リンク3 攻撃2400→3400(EX1)
「攻撃力3400!?まずいぞ、プレイメーカー様!!」
「カードを1枚伏せて、バトル!《バルゴラ・グローリー》で《ファイアウォール・ドラゴン》を攻撃!カーバー・ブラスト!!」
収束されたビームが《ファイアウォール・ドラゴン》に向けて発射される。
体内のデータを赤く染め、迎撃のために赤いブレスを放つ《ファイアウォール・ドラゴン》だが、奪った《リンク・スパイダー》の力と装備カードである《スフィア・フォース》によって上昇した出力で生み出されたビームの方がそれを上回っていた。
次第に競り負けていき、ビームに飲み込まれていく。
「《バルゴラ・グローリー》の効果発動!このカードが装備カードを装備した状態で相手モンスターを戦闘で破壊したとき、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」
《ファイアウォール・ドラゴン》が消滅してもビームは消えることなく、そのままプレイメイカーに襲い掛かる。
ビームの直撃を受けたプレイメーカーだが、やはりカリスマデュエリストであるGo鬼塚やブルーエンジェルを倒しただけのことはあり、放り出されることなく体勢を立て直していく。
プレイメーカー
LP4000→2100→600
「更に、《スフィア・フォース》の効果発動!このカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、デッキからカードを1枚ドローする。僕はこれで、ターンエンド…」
ジェミニ
手札4→3
LP500
場 C.C.バルゴラ・グローリー(《スフィア・フォース》、《リンク・スパイダー》装備) リンク3 攻撃3400(EX1)
伏せカード1(2)
プレイメーカー
手札0
LP600
場 なし
C.C.バルゴラ・グローリー
リンク3 攻撃1900 光属性 機械族
【リンクマーカー:右 上 下】
「C.C.バルゴラ」を含む「C.C.」モンスター3体
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードの特殊召喚に成功したとき、このカードのリンク先に存在するモンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。この効果はこのカードがEXモンスターゾーンに存在する場合、もう片方のEXモンスターゾーンに存在するモンスターも対象にできる。
(2):このカードの攻撃力は、このカードの効果で装備されたモンスターの元々の攻撃力の半分の数値分アップする。
(3):装備カードを装備したこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動する。破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
「おいおい、マジかよ!?」
「あいつ、プレイメーカーに一撃でこんなにダメージを…!?」
「Go鬼塚以来じゃねーか、これ…」
「やったー!ジェミニ君!!」
まさかの展開に観戦していた人々が驚く中、Dボードを見つけたリーファは手放しで喜ぶ。
Go鬼塚とプレイメイカーのデュエルの際にも、このような事態が発生したことがある。
彼は《剛鬼ザ・グレート・オーガ》を《剛鬼ツイストコブラ》と《剛鬼ヘッドバッド》の効果を使い、プレイメイカーを1ショットキルで倒そうとしていた。
しかし、彼が発動した《サイバース・シャッター》の効果で《剛鬼ヘッドバッド》の効果による攻撃力アップを無効にし、失敗したものの、それでも3900ものダメージを与えることに成功した。
最も、それはプレイメーカーがスキルを発動するための戦略であり、スキル発動と連続リンク召喚によって、プレイメーカーが勝利を収めたが。
しかし、今回の場合はプレイメーカーは手札が0になり、おまけにフィールドにもカードがなくなっている。
「おお…我々はまさか、ここでLINK VRAINSのニューヒーローであるプレイメーカーの敗北を目の当たりにしてしまうのでありましょうか…?」
鳩と共にビル街にたどり着き、途中からではあるものの、取材をしていたカエルが冷静にリポートするようにしゃべる。
「でもでも、このニュースを記事にしたら、きっと編集長から臨時ボーナスがもらえますよ!山本先輩!!」
「だーかーらー、本名で呼ぶなぁ!!」
(おいおい、どうすんだよ!?完璧に追い詰められてるじゃねーか!!)
絶体絶命の展開に怒ったAiはデュエルディスクの中でプレイメイカーに抗議する。
このままでは負けてしまい、もしかしたら彼の中の存在とサイバースとの関係性を知ることができなくなってしまうかもしれない。
とある理由で失ったデータを求めているAiにとっては許しがたいことだ。
「黙れ」
(な…!?)
だが、プレイメーカーはこのような状況であるにもかかわらず、冷静さをなくしていない。
ぞんざいな言葉に怒りを見せたAiだが、彼のいつも通りの発言に少しだけ安心していた。
彼の目の前に、データストームで構成された竜巻が発生し、彼の右手の金色のラインが光り始める。
「俺は…この時を待っていた!」
(このとき…まさか!?)
Aiは彼の目的が理解できた。
プレイメイカーは迷うことなく竜巻の中へ飛び込んでいき、ジェミニは竜巻を避けるように飛ぶ。
彼の右手には竜巻の中のデータが集まっていき、1枚のカードが構築されていく。
「Storm…Access!!」
「Storm Access…まずい!!」
プレイメーカーのスキルの名前を聞いたジェミニはハッとする。
ライフ1000以下の時、データストームにアクセスしてカードを1枚手に入れるスキルだ。
その効果で手に入れることができるカードの強さはデータストームの規模に比例する。
プレイメーカーは構築されたカードを手にすると、竜巻の中から飛び出していき、デュエルを続行する。
「俺のターン、ドロー!」
プレイメイカー
手札0→1
「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動。カードを2枚ドロー」
ドローしたカードを見たプレイメーカーはわずかに表情をゆがませる。
墓地肥やしに使えるということでデッキに入れてみたこのカードだが、このカードを見ると、どうしてもハノイの騎士のリーダーの男と連想してしまう。
「俺は手札から魔法カード《バレット&カートリッジ》を発動!デッキの上からカードを4枚墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする」
プレイメーカーのそばに5発の弾丸が入ったリボルバーが出現し、彼のデュエルディスクに向けて4発連射される。
弾丸は1枚ずつカードを撃ち抜いていき、プレイメイカーは撃ち抜かれた4枚のカードの下にあるカードを手札に加え、4枚のカードを墓地へ送る。
「そして、発動後このカードはデッキの一番上に置く。この効果でデッキに加わったこのカードをドローしたとき、そのカードは墓地へ送られる」
デッキから墓地へ送られたカード
・デジトロン
・スタック・リバイバー
・サイバース・シャッター
・エマージェンシー・ショートメール
「俺は墓地へ送られた《エマージェンシー・ショートメール》の効果を発動。このカードがカードの効果で墓地へ送られたとき、デッキの一番上のカードをめくり、そのカードがサイバース族の場合、そのカードを手札に加え、それ以外のカードの場合は墓地へ送る。俺のデッキトップにあるカードは《バレット&カートイリッジ》。よって、このカードは墓地へ送られる。更に、俺は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動!」
「それは…僕と同じカード!?」
「そうだ。俺はデッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てる。墓地へ送るのは《ドットスケーパー》。このカードは墓地へ送られたとき、1度だけ特殊召喚することができる!」
その名前の通り、スー○ーファミコンなどで使用されたドットで構築された、緑色の眼で青い体の4本脚のキャラクターが墓地から出現する。
ドットスケーパー レベル1 守備2100(3)
「さらに俺は墓地に存在する罠カード《サイバース・シャッター》の効果発動!このカードを墓地から除外することで、墓地からリンク2以下のサイバース族モンスター1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《ハニーボット》を特殊召喚する」
ハニーボット リンク2 攻撃1900(2)
「更に、俺は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。墓地に存在するモンスター1体を特殊召喚する。俺は墓地から《ファイアウォール・ドラゴン》を特殊召喚する!」
ファイアウォール・ドラゴン リンク4 攻撃2500(1)
「そして…現れろ、未来を導くサーキット!」
プレイメイカーがゲートの中へ飛び込んでいく。
彼の手にはStorm Accessによって手に入れた1枚のカードが握られていた。
「アローヘッド、確認。召喚条件はサイバース族の効果モンスター2体以上。俺は《ハニーボット》と《ドットスケーパー》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク3!《サイバース・ユニコーン》!」
緑色のツインアイで青いデータが流れるラインが体中に刻まれている水色の一角獣がプレイメイカーのそばに出現する。
データの流れは額についている水色の水晶のような角に集中している。
サイバース・ユニコーン リンク3 攻撃2100(EX2)
「これが…Storm Accessが生み出したモンスター…」
《デコード・トーカー》や《エンコード・トーカー》、《ファイアウォール・ドラゴン》などそれによって生み出されたモンスターであることは《サイバース・ユニコーン》も変化がない。
しかし、自分とのデュエルで手に入れたそのカードへの興奮は先ほどの《ファイアウォール・ドラゴン》以上のものだった。
「《サイバース・ユニコーン》の効果発動。このカードの効果は表側表示で存在する限り、それぞれ1度だけ発動することができる。そして、発動できる効果はこのカードとリンクしているリンクモンスターの数によって決まる。なお、このカードがエクストラモンスターゾーンに存在する場合、別のエクストラモンスターゾーンのモンスターもリンク先として扱う」
現在、《サイバース・ユニコーン》のリンク先のモンスターは《ファイアウォール・ドラゴン》と《C.C.バルゴラ・グローリー》の2体。
それがどのような効果を発動させる引き金になるのか、ジェミニは警戒しながらも楽しみに感じていた。
「《サイバース・ユニコーン》の第1の効果。このカードのリンク先に存在する俺のモンスター1体の攻撃力を1000アップさせる」
《サイバース・ユニコーン》の角から発生する青いデータの波紋を受けた《ファイアウォール・ドラゴン》の体内に流れるデータ量が増加していく。
ファイアウォール・ドラゴン リンク4 攻撃2500→3500
「そして、第2の効果。ターン終了時まで、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない!」
波紋は《ファイアウォール・ドラゴン》だけではなく、《C.C.バルゴラ・グローリー》と《スフィア・フォース》、そして伏せカードにも及んでおり、波紋を受けたカードが青い静電気に覆われていく。
「まずい…!!」
伏せカードの発動が封じ込められ、《ファイアウォール・ドラゴン》の攻撃力は《C.C.バルゴラ・グローリー》を上回った。
このまま《ファイアウォール・ドラゴン》によってその人型兵器が破壊され、《サイバース・ユニコーン》の攻撃を受けたら、ジェミニは敗北してしまう。
「バトルだ。俺は《ファイアウォール・ドラゴン》で《バルゴラ・グローリー》を攻撃。テンペストアタック!」
《ファイアウォール・ドラゴン》の口から放たれる赤いブレスが《C.C.バルゴラ・グローリー》に襲い掛かる。
おとめ座の名を持つ人型兵器は武装ユニットからビームを発射し、相殺しようとする。
前の攻撃では競り勝ったため、勝てると確信していたのだろう。
しかし、《サイバース・ユニコーン》の効果でパワーアップした《ファイアウォール・ドラゴン》の攻撃力は先ほどとは違い、逆にこちらが競り負けてしまう。
データのブレスを受けた《C.C.バルゴラ・グローリー》は消滅し、ブレスの余波がジェミニを襲う。
「うわ、あああああ!!」
ジェミニ
LP500→400
「《サイバース・ユニコーン》でダイレクトアタック!」
《サイバース・ユニコーン》が角に集めたデータを解放し、発光しながら突撃する。
攻撃を止める手立てのないジェミニに角の一撃が直撃した瞬間、彼が爆風に包まれていく。
「決まったー!なんとなんと、プレイメイカー!!崖っぷちからの逆転勝ちだー!さすがプレイメイカー、まだまだ伝説は終わらない!!」
「あ、あれ…??あれれー??」
「どうした?」
これから戻って、今回のデュエルを記事にしようと考えたカエルだが、鳩がなかなか戻ろうとしないため、気になって質問する。
「いやー、それが…デュエル、まだ終わってないみたいなんですよー?」
「何ぃ?確かに《サイバース・ユニコーン》の攻撃でライフが…うん!?」
鳩が頭についているカメラから映像を出す。
映像には2人のフィールドと手札・ライフが表示されている。
プレイメーカーのライフは600で、ジェミニのライフは…。
「何…!?」
決まったと思ったプレイメーカー自身も、そしてAiも今の状況が信じられずにいた。
デュエルが終了すると消えるはずのデータストームはいまだに消えず、爆風の中からDボードに乗ったジェミニが飛び出す。
彼のフィールドにはカードがなくなっているが、ライフが残っており、おまけに1枚のカードが手札に増えていた。
ジェミニ
LP400→1
「な、なんで…僕、負けたはずじゃ…!?それに…」
ジェミニ自身もどうしてまだデュエルが続いているのかわからず、頭を混乱させていた。
(はぁー。お前、スキルを確認してねーのかよ!?)
「スキル…??」
ジェミニはデュエルディスクを使い、自分のスキルを調べる。
急にプレイメーカーとのデュエルが始まったため、自分のスキルを調べるのをすっかり忘れていた。
「Star Access…??」
表示されたスキルの名前をジェミニはつぶやいた。
エマージェンシー・ショートメール
通常罠カード
このカード名の(1)(2)の効果は1ターンにいずれか1つしか発動できない。
(1):自分フィールドに存在するサイバース族モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを手札に戻す。この効果を発動したターン、1度だけ自分が受ける戦闘ダメージが0となる。
(2):このカードが効果によって墓地へ送られたときに発動する。デッキの一番上をめくり、そのカードがサイバース族モンスターの場合、手札に加える。それ以外のカードだった場合、そのカードは墓地へ送られる。
Den City
SOLテクノロジー社のお膝元で、最新ネットワークが普及した都市。
霧山城市からは距離があり、日帰りすることができない。
最大の特徴はSOLテクノロジー社が管理する電脳空間、LINK VRAINSであり、そこでは数多くのデュエリストがよりリアリティのあるデュエルを繰り広げている。
現在はこのDen CityでしかLINK VRAINSにログインできないらしいが、将来はログイン可能の領域を拡大させていく方針でいるとのこと。
なお、その華やかな電脳空間の裏側ではハノイの騎士とプレイメイカー、SOLテクノロジー社との三つ巴の戦いが繰り広げられており、その戦いは電脳空間とサイバースという謎のAIの存亡がかかっていると思われる。