「どう、かな…?直葉。卵焼きの味は」
「んー、おいしいけど、ちょっとしょっぱめかな。和風でやるんだったら、もっとこう…甘辛い感じって思うから」
「難しいなぁ…そういうの…」
屋上で直葉に食べてもらった卵焼きの感想を聞いた誠は彼女の意見からやはり、まだまだだと思い、空を見上げる。
レシピを見ながら作ってみたつもりで、そのレシピも店で実際に使っている物なのだが、やはり明日奈のようにはいかない。
「でも、珍しいね。誠君がお弁当を自分で作って、しかもあたしにも用意してくれるなんて。昨日の夜、電話された時はびっくりしちゃったよ」
「和人兄ちゃんと姉さんがちょっとした旅行に行くって言ってたから、帰ってくるまでは自分で作ってって言われたんだ。冷凍食品とかジャンクフードばかりだと栄養が偏るって」
今の和人と明日奈は開いてしまった時間を埋め合わせようと一緒にいる時間が多い。
2人が行っているのは市内にある花の街温泉で、2泊3日の宿泊旅行中だ。
霧山城市のブランド牛やマツタケを使った晩ご飯やのんびりとつかれる温泉はいずれも普段の生活の中にはないもので、それを恋人同士で味わうことができることにワクワクしていた明日奈は一昨日はずっと寝れずにいたようだ。
「あとは、もっと僕に手伝いをしてほしいってのも、あるかな。正直、厨房で料理をする機会ってあまりなかったから」
「確かに…誠君って料理するイメージないし…」
「うう…たまに常連のお客さんからも聞かれたよ。料理するのかって…」
その時は笑ってごまかしたが、明日奈が料理上手な分、期待値が上がっているのは実感していた。
明日奈からも聞いたが、お客さんの中には誠の料理も食べてみたいという人もいるらしい。
そういうことがあってもいいようにと、自炊するように言われたのだろう。
「そうだ、今日一緒にご飯を作らない?あたしも手伝うよ!それで、明日明日菜さんとお兄ちゃんに料理を作って、食べてもらおうよ!きっと、びっくりするよ!」
「いいね…それ。姉さんばかりに作ってもらうのも悪いし…」
「それに、明日には谷村さんも退院するし、いい機会だよ」
「谷村さんにも…!?うーん、どう説明すれば…」
「警察官だってことが分からなければいいんじゃない?それに、谷村さんってあまり警察官ってイメージないし…」
「あ、それ…本人の前で言わない方がいいかも…」
谷村の素行不良については、菅原や小沢から先日話を聞いている。
特に困惑してしまったのはパトロール中にパトカーのラジオで競馬の番組を聞いていたとのことだ。
わざわざ馬券を購入し、大穴が当たったことで声を上げて喜んでいたところを菅原の通信が入り、その声が丸聞こえとなって大目玉を食らったという。
結果、その日の夜は正座をさせられたという。
反省しているように見えたそうだが、多分また同じことをやるだろう。
「休みの日にやればいいのに…」
「菊岡先生、手術お疲れさまでした」
「ありがとう、神代さん。ふぅ…医者のふりをするのも疲れるものだ。報酬が入るとはいえ、な…」
突然運び込まれた高齢者の心臓手術を終えた菊岡が自室の固い椅子に座ると同時に背もたれに身を任せる。
あの雪女の一件からはステージ2の活動がぴたりと止んでいて、ここしばらくは誠と会う前の医者としての生活の比率が大きくなっている。
未だにステージ2が原因で傷ついた人の治療をすることもあるが、それよりもこうして普通の患者を相手にすることの方が圧倒的に多い。
医者としては忙しい日々だが、それは彼にとっては退屈なものだ。
ひと眠りしようとした彼だが、急に机の上の電話が鳴り、また緊急かと思い電話に出る。
「はい、菊岡です」
「久しぶりだな…ここの世界では菊岡を名乗っているようだな」
「…お前は」
聞き覚えのある、忘れもしない声が菊岡の耳に届いた瞬間、周囲の景色が青白く変化し、部屋にいる神代の動きも止まる。
「なんのつもりだ?このようなタイミングで私に接触するなど…」
「君の行いは分かっている。よくも、せっかくの監視者を解放する手引きをしてくれたものだな」
「そのことで、怒りを買っていることは分かっている。だが…結果としてそれがお前に貢献している。現に、次の監視者は既に作り出しだのだろう?これで、完璧ではないか?」
「ああ…その点については感謝しているよ。最も、君を完全に味方であると思えないのも確かだがね。だから…君の真意を確かめさせてもらいたい。新しいこの世界の監視者にね」
その言葉と同時に、周囲の空間がゆがむとともに菊岡の左腕にデュエルディスクとデッキが出現する。
歪んだ空間の中で、菊岡の目の前に現れたのは白いローブで身を包んだ少年。
顔もフードで隠れてよく見えないが、彼から放たれるプレッシャーから、やはり監視者であることが感じられる。
「彼は生まれたばかりで、戦いというものを知らない。デュエルでそれを教えてやってくれ…」
「いいのかな…?私が誤ったことを教えてしまうかもしれないぞ?」
「それならそれでいい…。そうなったら、この空間から二度と出ることができなくなるだけだ」
「ふっ…いいだろう」
眼鏡をはずし、ウロボロスが描かれた両目で新たな監視者を見る。
「そうだな…デュエルの前に名前を与えよう。君は…Kだ。わかりやすいだろう?」
「K…私の、名前…」
「そうだ…さあ、始めようか。カウンセリングの始まりだ…デュエル!」
「デュ…エル…」
K
手札5
LP4000
菊岡
手札5
LP4000
「私の…ターン。モンスターをセット…。カードを1枚伏せ、ターンエンド…」
K
手札5→3
LP4000
場 裏守備モンスター(3)
伏せカード1(2)
菊岡
手札5
LP4000
場 なし
「なるほど…無難な滑り出しだ。最低限のルールは既に彼から聞いているみたいだね。僕のターン、ドロー」
菊岡
手札5→6
「僕は手札から魔法カード《手札断殺》を発動。お互いに手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする」
手札から墓地へ送られたカード
K
・アナザーcode:BM
・アナザーcode:GA
菊岡
・昆虫騎士ドラムロ
・昆虫騎士ライネック
「そして、僕は手札から《昆虫騎士ダーナ・オシー》を召喚」
昆虫騎士ダーナ・オシー レベル3 攻撃1000(2)
「このカードの召喚に成功したとき、僕のフィールドにリンクモンスターが存在しない場合、墓地からレベル4以下の昆虫騎士1体を特殊召喚できる。僕は《ドラムロ》を特殊召喚」
昆虫騎士ドラムロ レベル4 攻撃1800(1)
「さあ、現れるがいい。狭間を導くサーキット!アローヘッド確認。召喚条件は昆虫騎士2体。僕は《ダーナ・オシー》と《ドラムロ》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン。リンク召喚。現れろ、リンク2。《昆虫騎士ボチューン》」
昆虫騎士ボチューン リンク2 攻撃1400(EX2)
「《ダーナ・オシー》の効果。このカードが昆虫騎士リンクモンスターのリンク素材として墓地へ送られた時、僕のライフが1000回復する。そして、《ボチューン》は自分フィールドに存在する昆虫騎士モンスターの攻撃力を自分フィールドの昆虫騎士リンクモンスター1体につき、400アップさせる」
昆虫騎士ボチューン リンク2 攻撃1400→1800(EX2)
菊岡
LP4000→5000
「更に、《ドラムロ》の効果。このカードをリンク素材として昆虫騎士のリンク召喚に成功したとき、デッキから《ドラムロ》を特殊召喚できる」
昆虫騎士ドラムロ レベル4 攻撃1800→2200(2)
「そして、僕は手札から装備魔法《オーラ・ソード》を《ボチューン》に装備。このカードは昆虫騎士リンクモンスターにのみ装備でき、装備モンスターの攻撃力を800アップさせる」
《昆虫騎士ボチューン》が備え付けられている剣を抜くと、その刃が赤く光り始める。
昆虫騎士ボチューン リンク2 攻撃1800→2600(EX2)
「バトル。《昆虫騎士ボチューン》で裏守備モンスターを攻撃」
エネルギーがたまった剣を手に、《昆虫騎士ボチューン》が裏守備モンスターに斬りかかる。
しかし、姿を現した裏守備モンスターは全身を隠すような巨大な盾を両手で抱えた褐色の大男だった。
それだけなら、《ビッグ・シールド・ガードナー》と同じ姿だが、顔の上半分をバイザーで隠していて、服装も緑色の蜘蛛の巣のような模様がついたスーツになっている。
「《アナザーcode:BSG》の守備力は2600。よって、この戦闘で互いに破壊されず、ダメージも発生しない」
「アナザーcode…それが新たなカードか。僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド」
K
手札3
LP4000
場 アナザーcode:BSG レベル4 守備2600
伏せカード1(2)
菊岡
手札5→2
LP5000
場 昆虫騎士ボチューン(《昆虫騎士ボチューン》の影響下 《オーラ・ソード》装備) リンク2 攻撃2600(EX2)
昆虫騎士ドラムロ(《昆虫騎士ボチューン》の影響下) レベル4 攻撃2200
オーラ・ソード(装備魔法)(2)
伏せカード1(3)
「私のターン、ドロー…」
K
手札3→4
「私は永続罠《アナザーリンク・コマンド》を発動。1ターンに1度、エクストラモンスターゾーンに私のモンスターが存在しない場合、手札のアナザーcode1体を特殊召喚できる。ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、攻撃力・守備力は0となる。私は《アナザーcode:GPB》を特殊召喚」
真っ白なネプチューンオオカブトを模した鎧姿をした男のはずの《ポセイドン・オオカブト》だが、その手に握られているのは《サイバーズ・ウィザード》が持っているような杖になっており、左目にはバイザーが装着されている。
アナザーcode:GPB レベル7 攻撃2500→0 守備2300→0
「現れろ、神へ導く未来回路。アローヘッド確認。召喚条件はアナザーcodeモンスター1体。私は《GPB》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン」
上空に出現したサーキットの中へ、《アナザーcode:GPB》が飛び込んでいき、その中からグレーのスライムでできた球体と言えるものが落ちてくる。
「リンク召喚。現れろ、リンク1。《アナザーcode:core》」
アナザーcode:core リンク1 攻撃0(EX1)
「《アナザーcode:core》の種族はリンク素材としたモンスターの元々の種族と同じになる。《GPB》は昆虫族。よって、種族は昆虫族に変わる」
アナザーcode:core 種族サイバース族→昆虫族
「そして、《アナザーリンク・コマンド》の効果。1ターンに1度、私のアナザーcodeリンクモンスター1体をエクストラモンスターゾーンからメインモンスターゾーンへと移動させる」
アナザーcode:core リンク1 攻撃0(EX1→メイン2)
「そして、《BSG》をリリースし、手札からリンクマジック《輪廻の始まり》を発動」
《アナザーcode:BSG》の肉体が赤黒い粒子へと変化し、それが赤黒い蛇へと変化していく。
蛇は己の尻尾に食らいつき、輪を作り出す。
「バトル。《core》で《ボチューン》を攻撃。《core》の効果。このカードが同じ種族の相手モンスターと戦闘を行う時、このカードの攻撃力は戦闘を行う相手モンスターの攻撃力の倍となる」
《アナザーcode:core》がグニャグニャと形を変えていき、その姿を《昆虫騎士ボチューン》のものへと変わっていく。
そして、手に持っている剣で本物の昆虫騎士と鍔迫り合いを演じる。
「《オーラ・ソード》を墓地へ送り、《ボチューン》の破壊を回避し、僕へのダメージを0となる!」
剣に過剰なエネルギーを注ぎ込み、それを爆発させることで目くらましする。
そのエネルギーを受けた《アナザーcode:core》が元の姿に戻り、剣を失った《昆虫騎士ボチューン》がそのモンスターと距離を取る。
昆虫騎士ボチューン リンク2 攻撃2600→1800(EX2)
「《輪廻の始まり》の効果。このカードのリンク先に存在するモンスターが戦闘を行ったダメージステップ終了時、そのモンスターをエクストラデッキに戻すことができる。そして、墓地に存在するそのモンスターのリンク素材となったモンスター一組を特殊召喚する」
攻撃が失敗した《アナザーcode:core》が光の粒子となって消滅し、入れ替わるように再び《アナザーcode:GPB》へと変化した。
アナザーcode:GPB レベル7 攻撃2500(3)
「《GPB》で《ボチューン》を攻撃。トライデント・PDCA!」
《アナザーcode:GPB》が手に持っている杖を《昆虫騎士ボチューン》に向けて振り下ろす。
頭部にそれを受けたモンスターは爆発とともに消滅する。
「くうう!!」
菊岡
LP5000→4300
「《GPB》の効果。このカードが同じ種族のモンスターと戦闘で破壊した場合、続けて攻撃する。続けて《ドラムロ》を攻撃」
杖にエネルギーがたまり、グレーの光を放つと今度は《昆虫騎士ドラムロ》に殴りつける。
菊岡
LP4300→3600
「続けて、ダイレクトアタック」
2体の昆虫騎士をすでに倒しているにもかかわらず、なおも血に飢えているのか、《アナザーcode:GPB》が杖を薙ぎ払い、それが菊岡の脇腹に当たる。
「が…ああ!!」
菊岡
LP3600→1100
「おやおや、どうも仕込みをし過ぎたみたいだね…。いや、君がヤワになっただけか…?」
わき腹を抑える菊岡の様子に男のあざ笑うかのような声が響く。
「まったく…参ったな。リンクマジックの存在は知っていたが、こんな使い方をしてくるとは…」
リンクマーカーが1つだけだが、臨機応変にリンクを解除し、リンク素材を呼び出すのは脅威だ。
実際、そのせいで5000あったはずのライフが1100まで下がってしまった。
「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
K
手札4→2
LP4000
場 アナザーcode:GPB レベル7 攻撃2500(3)
アナザーリンク・コード(2)
伏せカード1(3)
菊岡
手札2
LP1100
場 伏せカード1(2)
(なるほど…アナザーcodeは同じ種族のモンスターに対して力を発揮する、か…)
菊岡の昆虫騎士デッキは昆虫族単体である以上、現在フィールドにいる《アナザーcode:GPB》は脅威と言える。
その1体のためにモンスターが全滅し、ダメージまで受けてしまった。
だが、だからといって無敵ではない。
「(しかし、攻撃力は2500。やりようはある)僕のターン、ドロー」
菊岡
手札2→3
「私は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。その効果により、墓地から《ボチューン》を特殊召喚する」
昆虫騎士ボチューン リンク2 攻撃1400→1800(3)
「そして、僕のフィールドに昆虫騎士リンクモンスターが存在するとき、《昆虫騎士フォウ》はそのモンスターのリンク先に特殊召喚できる」
緑色で横長の形状をしたハチのような外見をした機械がフィールドに現れると、《昆虫騎士ボチューン》はその上に騎乗し、飛翔を始めた。
昆虫騎士フォウ レベル2 攻撃400→800(2)
「そして、私は手札から儀式魔法《昆虫空母の出撃》を発動。僕の手札・フィールドの昆虫族モンスターをリリースし、リリースしたモンスターのレベルの合計と同じレベルの昆虫空母儀式モンスターを儀式召喚する。その時、昆虫騎士がリンク先に存在する昆虫騎士リンクモンスターも儀式素材とすることができ、その時レベルをリンクマーカーの数を倍にした数値として扱う。僕はレベル4扱いになった《ボチューン》とレベル2の《フォウ》をリリース」
2体の昆虫騎士が6つの炎となって円陣を組み、円陣が次第に渦となっていく。
「伝説の勇者の名を持つ空母よ、異界と現実の狭間を超え、出撃せよ。儀式召喚。レベル6!《昆虫空母ゼラーナ》!」
細長く突出した船首が特徴的な緑色の飛行空母が渦の中から出撃する。
昆虫空母ゼラーナ レベル6 攻撃2100(5)
「儀式…召喚…」
「そう。リンク召喚だけが戦術じゃないということさ。《ゼラーナ》の効果発動。1ターンに1度、墓地に存在する昆虫騎士1体を特殊召喚できる。僕は再び《ボチューン》を特殊召喚する。そして、《ゼラーナ》はルール上、昆虫騎士モンスターとしても扱う」
野ざらし状態のデッキ部分に《昆虫騎士ボチューン》が現れ、戦場に向けて飛び立つ。
昆虫騎士ボチューン リンク2 攻撃1400→1800(2)
昆虫空母ゼラーナ レベル6 攻撃2100→2500(5)
「更に、《ゼラーナ》は僕のフィールドに昆虫騎士リンクモンスターが特殊召喚された時、奇襲カウンターを1つ乗せる」
昆虫空母ゼラーナ レベル6 奇襲カウンター0→1(5)
「バトル。《昆虫騎士ボチューン》で《アナザーcode:GPB》を攻撃」
「攻撃力の劣る《ボチューン》で攻撃…?」
「この瞬間、《ゼラーナ》の効果発動。僕の昆虫騎士が戦闘を行うダメージステップ開始時、このカードの上に乗っている奇襲カウンターを1つ取り除くことで、ダメージステップ終了時まで戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を半分にする」
「何…?」
《昆虫空母ゼラーナ》が飛行すると同時に、船首の上下に備え付けられている《昆虫騎士フォウ》2機が出撃し、十字砲火で《アナザーcode:GPB》を攻撃し、攪乱を始める。
2機からの攻撃を受けた《アナザーcode:GPB》が動揺する中、胴体を本来なら有利な相手であるはずの《昆虫騎士ボチューン》に貫かれる形で消滅する。
「むぐ…!」
昆虫空母ゼラーナ レベル6 奇襲カウンター1→0(5)
アナザーcode:GPB レベル7 攻撃2500→1250(ダメージステップ終了時まで)(2)
K
LP4000→3450
「更に《ゼラーナ》でダイレクトアタック」
奇襲していた2機の《昆虫騎士フォウ》が続けてKに狙いを定めると、今度はミサイルを発射する。
周囲に着弾し、爆発するミサイルの爆風を受けたKのライフが消耗する。
K
LP3450→1350
「私はここで罠カード《コピー・コード》を発動。私が直接攻撃によってダメージを受けたとき、そのモンスターと同じ種族のアナザーcodeをデッキ・墓地から特殊召喚できる。私は墓地の《アナザーcode:GPB》を再び特殊召喚する」
アナザーcode:GPB レベル7 攻撃2500(3)
「また《GPB》を特殊召喚したか…。だが、まだだ。僕は手札から装備魔法《オーラ・コンバーター》を《ゼラーナ》に装備。このカードは昆虫空母にのみ装備可能で、1ターンに1度、僕のフィールドに《昆虫騎士トークン》を特殊召喚できる」
出力上昇に伴い、浮上する《昆虫空母ゼラーナ》から緑色の甲冑を身に着けた小型の昆虫騎士といえるモンスターが飛び出す。
昆虫騎士トークン レベル1 守備0(4)
「そして、装備モンスターに奇襲カウンターを1つ置く」
昆虫空母ゼラーナ レベル6 奇襲カウンター0→1(5)
「僕はこれで、ターンエンド」
K
手札2
LP1350
場 アナザーcode:GPB レベル7 攻撃2500(3)
アナザーリンク・コード(2)
菊岡
手札3→0
LP1100
場 昆虫騎士ボチューン リンク2 攻撃1800(2)
昆虫騎士トークン レベル1 守備0(4)
昆虫空母ゼラーナ(《オーラ・コンバーター》装備、奇襲カウンター1) レベル6 攻撃2500(5)
伏せカード1(2)
オーラ・コンバーター(装備魔法)(3)
「私の…ターン…」
K
手札2→3
(そう、そうだ…。K。君はまだ生まれたばかり。故に不完全。だが、それこそが監視者として、高みへ行く素養となる…)
彼にとって、今回のデュエルの勝敗はどうでもいいことだ。
むしろ、これからのことを考えると、Kにはこのターン頑張ってもらった後で敗北してもらった方がいいとさえ思っている。
シミュレーションでは測れないデュエリストの精神力やプレッシャー。
それを理解できない監視者は人類を監視し続けることはできない。
学び、飲み込み、血肉にしてこそ、より強力な監視者となってこの世界を見続ける。
そのことを彼はKに期待している。
「私は…手札から速攻魔法《トラップ・ブースター》を発動。手札1枚を捨て、手札から罠カードを発動する。私が発動するのは罠カード《ダブル・タイプ・レスキュー》。このカードは私のフィールドに存在するモンスターの種族が2種類以上で、相手フィールドに存在するモンスターの数が私よりも多い場合に発動でき、墓地からモンスター1体を特殊召喚する。アナザーcodeモンスターはフィールドに存在する限り、本来の種族に加えてサイバース族を持つ。よって、私は墓地の《アナザーcode:BM》を特殊召喚する」
手札1枚を代価にフィールドに放たれた《ダブル・タイプ・レスキュー》のソリッドビジョンの中から《ブラック・マジシャン》と似た風貌をした魔術師が現れる。
だが、持っているのは杖ではなく青白いブロックでできたような槍になっていて、とんがり帽子の代わりに青白い能面をつけていて、オリジナルとは違う不気味さを醸し出していた。
アナザーcode:BM レベル7 攻撃2500(1)
手札から墓地へ送られたカード
・DNA保存手術
「更に私は手札から墓地へ送った《DNA保存手術》の効果発動。墓地に存在するこのカードを除外することで、フィールド上のモンスター1体の種族をターン終了時まで他のモンスターの元々の種族と同じにする。私が選択するのは《GPB》だ」
《アナザーcode:BM》の姿が徐々に緑色の昆虫と言える姿へと変貌していく。
人間だったものの皮膚が徐々に緑色となり、爪が生えていくその姿にさすがの菊岡も顔をしかめた。
アナザーcode:BM レベル7 種族魔法使い族→昆虫族
「そして、《BM》の効果。相手フィールドに同じ種族のモンスターが存在する場合、1ターンに1度、フィールド上のカードを1枚破壊できる。私は《オーラ・コンバーター》を破壊する」
《アナザーcode:BM》が浮遊すると、槍から蜘蛛の糸のような魔力を放ち、それが《昆虫空母ゼラーナ》にまとわりつく。
糸からエネルギーを吸い取られていったことで、高度を少しずつ下げていった。
(《オーラ・コンバーター》を装備したモンスターは1ターンに2度まで、戦闘及び効果では破壊されない…。守りは失ったが、奇襲カウンターは残っている)
この奇襲カウンターを使うことで、ダメージステップ終了時まで昆虫騎士リンクモンスターと戦う相手モンスターの攻撃力を半分にすることができる。
だが、その前に《昆虫空母ゼラーナ》が倒されては意味がない。
「バトル。《アナザーcode:BM》で《ゼラーナ》を攻撃。アナザー・ブラック・マジック」
《アナザーcode:BM》が絡みつかせたままの糸から魔力を直接《昆虫空母ゼラーナ》に向けて流し込んでいく。
許容量を超えるエネルギーを受け取る形になった空母はオーバーロードを起こした爆発し、《アナザーcode:BM》もそれに巻き込まれた。
「そして、《アナザーcode:GPB》で《ボチューン》を攻撃」
続けて、《アナザーcode:GPB》が杖から魔力の弾丸を発射し、それを受けた《昆虫騎士ボチューン》が消滅する。
「くうう…!!」
菊岡
LP1100→400
「《GPB》の効果により、続けて《昆虫騎士トークン》を攻撃」
《昆虫騎士ボチューン》を破壊した《アナザーcode:GPB》が今度は《昆虫騎士トークン》に目をつける。
小型の昆虫騎士相手に魔力を使うまでもないと言わんばかりに開いている左手でつかみ、握りつぶす形で消滅させた。
「これで、相手フィールドにモンスターは存在しない。ダイレクトアタックだ」
2体の昆虫騎士を破壊し、最後に残った菊岡に狙いを定めた《アナザーcode:GPB》が持っている杖を振り下ろしていく。
勝利を確信したKの表情がわずかに緩む。
「勝った…と思ったかね?だが、そうはいかないよ。僕はここで罠カード《オーラ・ウィング》を発動。相手モンスターの攻撃宣言時、墓地に存在する昆虫騎士リンクモンスター1体と昆虫空母儀式モンスター1体を対象に発動でき、そのモンスターを素材に昆虫騎士リンクモンスターのリンク召喚を行う。僕が除外するのは《ボチューン》と《ゼラーナ》。この2体をリンクマーカーにセットする」
《アナザーcode:GPB》の行く手を阻むかのように、昆虫騎士と昆虫空母が現れる。
そして、2体は上空に現れたサーキットの中へと飛び込んでいった。
「リンク召喚。現れろ、リンク3。《昆虫機ガラバ》」
サーキットの中から飛び出したのは昆虫の羽根がついたグレーの重戦闘機と言えるモンスターだった。
昆虫機ガラバ リンク3 攻撃2200(EX1)
「《昆虫機ガラバ》は昆虫騎士リンクモンスターを素材にリンク召喚に成功したとき、墓地に存在する昆虫騎士モンスター1体につき、攻撃力が300アップする。僕の墓地に存在する昆虫騎士は5体」
昆虫機ガラバ リンク3 攻撃2200→3700(EX1)
「何!?《GPB》は同じ種族のモンスターを戦闘で破壊した時、続けてもう1度攻撃する…。その効果を…止めることは、できない…」
「そうだ。さあ、迎撃しろ。《ガラバ》」
《昆虫機ガラバ》が内蔵されている両腕を露出させ、備え付けられている三門のビーム砲を、機体中央についている主砲と共に発射する。
四条のビームで撃ち抜かれた《アナザーcode:GPB》は消滅し、ビームはそのままKを襲った。
「ぐおおおおお!!!」
K
LP1100→0
オーラ・ソード
装備魔法カード
「昆虫騎士」リンクモンスターにのみ装備可能。
(1):装備モンスターの攻撃力が800アップする。
(2):装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行う時、このカードを墓地へ送ることで発動できる。装備モンスターはその戦闘では破壊されず、戦闘で発生する自分へのダメージが0となる。この効果は相手ターンでも発動できる。
アナザーリンク・コマンド
永続罠カード
(1):1ターンに1度、EXモンスターゾーンに自分のリンクモンスターが存在しない場合に発動できる。手札に存在する「アナザーcode」モンスター1体を自分フィールドに攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0となり、効果は無効化される。
(2):EXモンスターゾーンに自分の「アナザーcode」リンクモンスターがリンク召喚されたときに発動できる。そのモンスターを自分メインモンスターゾーンに移動させる。
アナザーcode:BSG
レベル4 攻撃100 守備2600 効果 地属性 戦士族
(1):このカードがフィールド上に存在する場合、種族をサイバース族としても扱う。
(2):このカードがこのカードと同じ種族のモンスターを戦闘で破壊したダメージステップ終了時に発動する。その相手モンスターの効果を無効化する。
(3):このカードがこのカードと異なる種族のモンスターの攻撃された場合、ダメージステップ終了時に攻撃表示となる。この効果は無効化されない。
アナザーcode:GPB
レベル7 攻撃2500 守備2300 効果 地属性 昆虫族
このカード名の(2)の効果は1ターンに2度発動できる。
(1):このカードがフィールド上に存在する場合、種族をサイバース族としても扱う。
(2):このカードがこのカードと同じ種族のモンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動する。このカードは続けてもう1度攻撃する。
(3):自分フィールドに「アナザーcode」リンクモンスターが存在する場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。そのモンスターの種族はターン終了時までこのカードの元々の種族と同じになる。
アナザーcode:core
リンク1 攻撃0 リンク 無属性 サイバース族
【リンクマーカー:下】
「アナザーcode」モンスター1体
(1):このカードのリンク召喚に成功したときに発動する。このカードの種族はリンク素材となったモンスターの元々の種族と同じになる。
(2):このカードがこのカードと同じ種族のモンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。このカードの攻撃力はダメージステップ終了時までそのモンスターの攻撃力の倍の数値となる。
輪廻の始まり
永続魔法カード
【リンクマーカー:上】
このカードはルール上、「LM(リンクマジック)」カードとしても扱う。
(1):このカードは自分フィールドの「アナザーcode」モンスター1体をリリースし、リンクモンスターのリンク先となる自分の魔法・罠ゾーンでしかカードの発動ができず、「LM」カードは自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。
(2):このカードのリンク先のリンクモンスターが戦闘を行ったダメージステップ終了時、そのモンスターを対象に発動できる。そのモンスターをEXデッキに戻す。その後、自分の墓地にそのモンスターのリンク素材として墓地へ送ったモンスターが一組そろっている場合、そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
(3):このカードのリンク先にモンスターが存在し、このカードがフィールドから離れた場合、そのリンク先のモンスターは全て破壊される。この効果は無効化されない。
昆虫騎士フォウ
レベル2 攻撃400 守備400 ユニオン 風属性 昆虫族
このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。
(1):自分フィールドに「昆虫騎士」リンクモンスターが存在する場合、手札に存在するこのカードはそのモンスターのリンク先に特殊召喚できる。
(2):1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●自分フィールドの「昆虫騎士」リンクモンスター1体を対象とし、このカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。装備モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する。
●装備されているこのカードを特殊召喚する。
(3):装備モンスターの攻撃力は400アップする。
昆虫空母の出撃
儀式魔法カード
「昆虫空母」儀式モンスターの降臨に必要。
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の手札・フィールドの昆虫族モンスターをリリースし、手札から「昆虫空母」儀式モンスター1体を儀式召喚する。その時、自分フィールドに「昆虫騎士」モンスターをリンク先としている「昆虫騎士」リンクモンスターが存在する場合、そのモンスターをリリースすることもできる。その場合、そのモンスターのリンクマーカーの数を倍にした数値をそのモンスターのレベルとして扱う。
(2):墓地にこのカードが存在するとき、自分の墓地に存在する「昆虫空母」儀式モンスター1体をデッキに戻すことで発動できる。墓地に存在するこのカードを手札に加える。
コピー・コード
通常罠カード
(1):相手の直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。自分のデッキ・墓地から攻撃モンスターと同じ種族の「アナザーcode」モンスター1体を特殊召喚する。
昆虫空母ゼラーナ
レベル6 攻撃2100 守備1200 儀式 風属性 昆虫族
「昆虫空母の出撃」により降臨。
このカードはルール上、「昆虫騎士」モンスターとしても扱う。
このカード名の(1)(3)の効果は1ターンにそれぞれ1度しか使用できない。
(1):自分の墓地に存在する「昆虫騎士」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
(2):自分フィールドに「昆虫騎士」リンクモンスターが特殊召喚された時、このカードの上に奇襲カウンターを1つ置く。
(3):自分フィールドの「昆虫騎士」リンクモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時、このカードに乗っている奇襲カウンターを1つ取り除くことで発動できる。ダメージステップ終了時まで戦闘を行う相手モンスターの攻撃力は半分になる。
ダブル・タイプ・レスキュー(アニメオリカ)
通常罠カード
(1):自分フィールド上に2種類以上の種族のモンスターが表側表示で存在し、相手フィールド上に存在するモンスターの数が自分フィールド上に存在するモンスターより多い場合に発動する事ができる。自分の墓地に存在するモンスター1体を選択して特殊召喚する。
DNA保存手術
永続罠カード
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールドに存在するモンスター1体を対象に発動できる。このカードが存在する限り、自分フィールドに存在するモンスターの種族は選択したモンスターの元々の種族と同じになる。
(2):自分の墓地に存在するこのカードを除外し、自分フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、そのモンスターの種族はフィールド上に存在するモンスター1体の元々の種族と同じになる。
アナザーcode:BM
レベル7 攻撃2500 守備2100 効果 闇属性 魔法使い族
(1):このカードがフィールド上に存在する場合、種族をサイバース族としても扱う。
(2):1ターンに1度、フィールド上にこのカードと同じ種族のモンスターが存在する場合、フィールド上のカード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊する。
(3):自分フィールドに「アナザーcode」リンクモンスターが存在する場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。そのモンスターの種族はターン終了時までこのカードの元々の種族と同じになる。
オーラ・ウィング
通常罠カード
(1):相手の直接攻撃宣言時、自分の墓地に存在する「昆虫騎士」リンクモンスター1体と「昆虫空母」儀式モンスター1体を対象に発動できる。それらのモンスターを除外し、そのモンスターを素材として「昆虫騎士」リンクモンスター1体のリンク召喚を行う。
(2):お互いのリンクモンスター同士が戦闘を行う時、墓地に存在するこのカードを除外し、除外されている自分の「昆虫騎士」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードをEXデッキに戻し、ダメージステップ終了時まで戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力をそのモンスターの元々の攻撃力分アップさせる。
昆虫機ガラバ
リンク3 攻撃2200 リンク 炎属性 昆虫族
【リンクマーカー:上/下/右】
昆虫族モンスター2体以上
このカードはルール上、「昆虫騎士」モンスターとしても扱う。
(1):このカードのリンク召喚に成功したときに発動する。このカードの攻撃力は自分の墓地に存在する「昆虫騎士」モンスターの数×300アップする。
(2):相手ターンのバトルフェイズ時に1度、相手フィールドに存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターは可能な限り、このカードを攻撃しなければならない。その時、そのモンスターが守備表示の場合、表側攻撃表示に変更させる。この効果で相手モンスターと戦闘を行ったターン終了時、このカードは破壊される。
「はあ、はあ、はあ…」
「ふぅ…さすがに、危なかったよ。まさか、僕に《ガラバ》と《ゼラーナ》を使わせるとはね」
「ふうん…悪くないデュエルだった。これで、少々Kの力になるだろう。さあ、戻って来るんだ…K」
「は…い…」
彼の声に従い、Kが姿を消してしまう。
一人残された菊岡は一度眼鏡をはずし、吹きながら蛇の刻まれた瞳でこの空間を見つめる。
「これで、僕の潔白は証明されたかな?」
「ああ…。少なくとも、今のところはね。引き続き、君はそこでおとなしくしていたまえよ。僕はまだしも、あと2人がこのことを黙っているとは思えないからね。じゃあ…近いうちに遊びに行くよ。興味がある…監視者を打ち破った人間がね…」
その言葉を最後に、再び空間がゆがみ、元の病院の菊岡の私室へと戻る。
(手の込んだことをしてくれる…。どうやら、あの空間に入ってからそれほど時間が経過していないようだ」
いつの間に手に持っていた受話器を戻した菊岡は時計を見て、受話器を取ってから1分も時間が経過していないことを把握する。
彼らしいやり口だが、そうした回りくどいやり方がどこまで通用するか。
「先生…?」
「ああ、すまない。まったく…病院の医師に無言電話をするとはね」
ソファーに腰掛けた菊岡は体に感じるデュエルでの疲れを取ろうと背もたれに身を任せる。
Kが生み出され、こうして実際にデュエルをしたということは、もうすぐ時が来るということ。
(果たして…それまでに進化してくれるかな…?結城誠君)