名前:結城 誠(ゆうき まこと)
性別:男
年齢:17
誕生日:6月17日
CV(イメージ):保志総一朗
国籍:日本
身分:K県立霧山城高等学校学生
趣味:3ちゃんねるのリンクヴレインズ関連スレッドに対する書き込み
家族構成:姉1人
好きなデュエリスト:プレイメーカー(あくまで注目しているだけで、一番気に入っているのはGo鬼塚)
性格:人見知りで、デュエルの大会に出たことがなく、姉と幼馴染の直葉としかデュエルをしたことがない。あることがきっかけで強くなりたいという思いは強い。
好きな食べ物:パンケーキ
好きな女性のタイプ:言いたくない(ただし、気になる女の子はいるらしい)
霧山城市立病院の中の駐車場で車が止まり、そこから菊岡たち4人が出てきて、菊岡が運転手に運賃を支払う。
「あの…僕たちは学校が…」
「既に連絡は取ってあるよ。君たちは都合によって早退したということになっている。公欠扱いにしてもらえるから、心配いらないさ」
フッと笑みを浮かべておつりを受け取った菊岡は病院へ入っていく。
(どういうことだ…?まさか、あの何かにとりつかれた人と関係が…?)
「心配はいらないわ。あなたはともかく、彼女については…」
菊岡に対して不信感を抱いているのをわかっているのか、タクシーの外に立ったままの誠に女性がそばでタクシーから出たばかりの直葉に聞こえないようにつぶやく。
「ええっと、その…」
「神代凛子よ。菊岡先生の助手をしているわ」
「さてっと、さっきはいろいろあったから、少し落ち着こうじゃないか」
病院の地下にある個室で、菊岡はコップを4つだし、コーヒーポッドに入っているブラックコーヒーを入れようとする。
「あの、僕はコーヒー…飲めなくて…」
「そうかい、意外だね。君のお姉さんの出すコーヒーはおいしいって話なのに…」
誠の言葉を聞くと、コーヒーを淹れるコップは3つにとどめ、残り1つには紅茶をいれ、お盆にのせてテーブルまで運ぶ。
そして、神代がお盆の上のコップをソファーに座っている彼らの前に置いた。
「い、いただきます…」
状況が飲み込めず、困惑しながら直葉は机の上に置いてある丸い銀色の容器から角砂糖を1つもらい、コーヒーの中に入れる。
そして、ゆっくりとコーヒーを飲み始めた。
「君は飲まないのかい?」
「飲めますけど…ちょっと、さっきのことが頭から離れなくて…。血を吸われた人と、とりつかれていた人は大丈夫なんですか?」
「今はみんなこの病院へ向かっている。さっき連絡をもらったよ。入院してもらうことになる人がいるかもしれないけれど、心配はいらないさ。死者はいない」
「そう、ですか…」
菊岡と遭遇した後、救急車と入れ替わる形でこの病院に連れてこられた。
そのため、被害者やとりつかれた人のことが気がかりで、中々落ち着くことができなかった。
だが、安否がわかったことでようやく安心できたのか、誠は紅茶を飲み始めた。
「ん…?あれ、なんだか眠たくなってきちゃった…」
コーヒーを飲み終えた直葉があくびをし、目を細める。
「緊張が解けたからね。そうなるのは仕方ない。仮眠室を使えるようにしているから、そこで休むと言い。神代さん、彼女を案内してくれ」
「はい。じゃあ、直葉さん」
「ん、はい…ごちそうさまでした…」
もうすぐにでも眠ってしまえそうなほどの眠気を感じながら、直葉はコップを置いてソファーから立ち上がり、神代に連れられて部屋を後にした。
「直葉…」
「ここからの話、君と私だけで話したくてね。ちょっと彼女の飲み物に睡眠薬を入れさせてもらった。話が終わったころには目を覚ますさ。それに、君自身も彼女を巻き込むことを望んではいないだろう?」
菊岡の言葉に誠は沈黙する。
今何が起こっていて、そしてこれからどうなっていくのかはわからない。
だが、幼馴染である彼女を危険にさらしたくないという思いだけは確かだった。
沈黙と肯定と見なしたのか、菊岡は話を進める。
「まずはお礼を言わせてもらうよ。よく、ステージ2の暴走を止めてくれた」
「偶然ですよ、そんなの…。あの、ステージ2っていうのは?それに、あの人にとりついていた…」
誠はあのデュエルの後で手に入れたカードである《ヴァンパイアジェネシス》をテーブルの上に置く。
「…君はカードの精霊というのを聞いたことはあるかな?」
「質問を質問で返すって…」
「これからの話と関係があるからね」
「…。デュエルモンスターズのカードには精霊が宿っていて、精霊は普通の人には見えないけれど、一部の人間だけが見ることができる上に会話もできる…と」
「自身のない答え方だが、ひとまず正解と言っておこうか」
誠の答えは3ちゃんねるで見つけたカードの精霊に関するスレッドにあった書き込みにあったもので、つまりはコピペだ。
精霊の存在については様々な説があり、定義としてはデュエルモンスターズに登場するモンスターと同じ姿・同じ形をした、別の世界の生き物としているが、これに関するスレッドのたいていはオカルトコラムに登場する与太話程度で、誠も本気にしていなかった。
だが、今回の一件によって、それが一変した。
「結論から言わせてもらうと、精霊は実在する。そして、精霊たちは何か目的をもって人間に憑依し、あの男のような行動をする。憑依された初期段階、ステージ1の状態では自覚症状はない。あるとしても、いつもよりも速く走れるようになった、重いものが持てるようになったっといった身体能力の若干な変化だけ。それに注目する人はだれもいない」
「じゃあ、ステージ2は…」
「そうだ。ステージ2になると、体に変化が起こり、暴走する。君が先ほど見た吸血男のようにね。そのような状態になるには個人差があって、長く見積もって半年、短くて数日でステージ2になる」
「詳しいん…ですね」
独自の用語も用意したうえに、丁寧に説明する菊岡を見た誠は彼がその精霊に憑依された人間についてよく知っているのだということが分かった。
しかし、ネットでもテレビでも、そのような話を聞いたこともなければ見たこともない。
「精霊に憑依された人間の犯罪を今の人間に立証する力がないからだ。どうしても逮捕できない場合は…」
まるで察しろと言わんばかりに最後まで言わずに黙り込む。
といっても、そのあとの言葉がわかっている誠はある疑問が浮かぶ。
「じゃあ、さっき僕とデュエルをしたときって…」
「どうやら、君に憑依している精霊に問題があるみたいだ」
(こいつ…俺のことに気付いてやがる!?)
自分の存在を精霊と定義し、察知した菊岡をシャドーは警戒する。
「僕に憑依してる…シャドーのことがわかるんですか!?」
「シャドー…それが今の君に憑依している精霊の名前か。だが…この精霊はかなり異例だ。証拠として、君自身即座にステージ3並行してしまっている…」
「ステージ3…」
菊岡が言うステージ3とはどういうものか、誠はすぐに理解できた。
シャドーの力によって変身した自分自身の姿だ。
「シャドーはどうやら、肉体とともに記憶を失って、君の中に寄生している状態だな。精霊には未知の力がある。その力のおかげで、君自身の回復力が高くなったというなら、納得がいく」
(おいおめえ…俺を寄生虫のように言ってんじゃねえよ…)
菊岡の寄生という言葉が気に食わないのか、シャドーがドスの利いた声で彼に迫るものの、彼は何も反応を見せない。
彼が見えるけれども声は聞こえないのか、それとも聞こえているが無視しているのか、誠にもシャドーにもわからない。
「おまけに、君と彼は共生関係になっているみたいだ。シャドーは君の肉体の中にいなければ生きられず、君もシャドーがいなくなると死んでしまう…。どうだろう、私と一緒に解決策を探してみないかな?いつまでもそのままというわけにはいかないだろう」
「それはそうですけど…でも、タダというわけではないですよね?」
「当然だ。私がシャドーの肉体と記憶を取り戻すすべを探す代わりに、君は先ほどと同じように精霊にとりつかれた人間をデュエルで倒して、とりついていた精霊を追い出してほしい。シャドーのおかげで、君自身そういった人間の居場所が分かるようになっているみたいだからね」
「…」
誠1人で調べるよりも、いろいろと事情を知っていそうな菊岡の協力を得ると自分とシャドーを分ける方法を見つけやすいかもしれない。
だが、あのデュエルで感じた恐怖が脳裏によみがえり、彼らが震える。
「…まぁ、すぐに返事をしてほしいとは言わないさ。だが…放置するわけにはいかないし、とりつかれた人々を救うことができるのは…今のところ、君だけだということを忘れないでほしい」
「…僕だけにしかできないこと…か…」
菊岡との話が終わり、直葉と共に帰宅した誠はベッドで横になって彼との話、そして今日のデュエルのことを考えていた。
腕にはあのデュエルの時に吸血鬼男にかまれた痕が残っていて、それがあのデュエルが夢ではなく現実に起こったということを認識させる。
帰っている間、直葉から何度も菊岡とどのような話をしたのか質問してきたが、適当にはぐらかし続けた。
(何が僕だけにしかできないこと、だよー。勘弁してくれよ)
「シャドー…」
(怖いんなら、やらなきゃいーだろ?それに、とりつかれた人間がどうなろうが、お前が怪我するわけじゃねーしさ)
「それは、そうだけど…」
ベッドから起き上がった誠はノートパソコンを開き、いつもの3ちゃんねるを見る。
新しくできたスレにはハノイの騎士が召喚した大型のドラゴンである《クラッキング・ドラゴン》によるアカウントに対する直接攻撃や、プレイメーカーが起こしたデータストーム、更にスピードデュエルなどに関する話題で埋め尽くされていた。
誠はそのスレの書き込みを見る。
『プレイメーカー最高!!これからもハノイの騎士を叩き潰してくれー!』
『あのドラゴンで知り合いのアカウントが破壊されてしまったぜ』
「…」
誠はキーボードを叩き、そのスレに書き込んでいく。
『HN:ブラッキー 誰か今回のハノイの騎士の攻撃を受けたアカウントの人たちがどうなったか知っている人はいませんか?』
鯱瓦公園
場所:JR霧山線「霧山城駅」から南東へ徒歩10分
ショッピングモール「アクア」の南
いくつも作られている鯱瓦像がトレードマークの公園で、中央にあるその像は戦国時代に作られた城である霧山城の天守閣に実際に飾られていたものを使用している。サクラの名所となっており、春には地元住民が花見のために集まることが多い。すぐ目の前には霧山城の外堀があり、そこは当時の状態を可能な限り維持している。