「和人…?そういやぁ」
誠が口にした和人、という名前にシャドーはピンとくる。
平行世界のもう1つのDen Cityの住人である侑哉からその名前を口にされたとき、誠は明らかに動揺していた。
その時は誠と侑哉だけだったため、直葉などのほかのメンバーが聞くことはなかった。
何の気なしに聞いていたが、まさかその和人が目の前の彼だとは思わなかった。
「お兄ちゃん…」
「直葉…」
「お兄ちゃん!?どうして、どうして今まで忘れていたの!?」
津波のように帰ってくる記憶に混乱した直葉がその場にうずくまる。
一緒に剣道をしていたこと、自分にデュエルを教えてくれたこと、そして…ある日突然彼がいなくなってしまい、彼のことを思い出せなくなってしまったこと。
「そうだ…この体の本来の持ち主は桐ケ谷和人。お前たちのよく知る人間の物だ」
「桐ケ谷和人…?デルタ、知ってるか?」
「霧山城市行方不明者リストを照合…該当者なし。住民票リストも照合します」
「行方不明者にもない…どういうことだ?」
「本来の持ち主…じゃあ、和人兄ちゃんの、和人兄ちゃんの魂は!?」
「もう気づいているのではないか…?私と同じ、お前ならば」
ニヤリとあざ笑い、見透かしたようにつぶやくが、誠は目を大きく開くだけで反論できない。
理屈ではない、本能で分かってしまった。
それでも、認めてしまうのが嫌だから、黙り込んでしまう。
「どういうこと…?ねえ、誠君!!答えて!!何か…何か言ってよ!!」
「無駄だ。彼にはもう何も言うことはできない。だから…代わりに教えてやろう。なぜこの体が私の物になったのかを…」
「いくぞ!《切り込み隊長》でダイレクトアタック!」
「うわあああ!!」
誠
LP300→0
馬廻神社の森で、《切り込み隊長》のダイレクトアタックを受けた誠があおむけに倒れ、そのモンスターの主である黒いシャツを着た少年が手を差し出して、彼を起こすのを手伝う。
「まったく、そんなに大げさに倒れなくてもいいだろ?」
LINKVRAINSならともかく、ソリッドビジョンもかなりリアリティはあるものの、攻撃を受けても痛みは感じない。
「だって、本当にびっくりしたから…」
「まぁ、気持ちは分からなくもないけどな。じゃあ、もう1回やるか?」
「ちょっと待って、和人兄ちゃん。少しカードを変えてもいい?」
再びデュエルを始めようとする和人を制止させ、誠は持ってきているカードケースを開き、デッキを見直し始める。
部活をしていない誠と和人はよくここや家の近くの公園でデュエルを楽しんでいた。
誠が小学生の頃は直葉と明日奈とも一緒にデュエルをしていた。
2人が部活をやり始めてからは、そうした機会がめっきりと減ってしまったが。
「せっかく《エンディミオン》を使うんだ。《バベル・タワー》を使ってもいいんじゃないか?《魔法都市エンディミオン》に魔力カウンターを4つも移動させることができるぞ?」
「でも、その時に僕が3000もダメージを受けるかもしれないじゃんか。それがちょっと…」
「それでも、その4つがあればあと2つの魔力カウンターで《エンディミオン》を特殊召喚するチャンスができる。それに、ダメージが怖ければ《メガトン魔導キャノン》で使い切ってしまうこともできるだろう?」
こうした、デュエル談義をすることは誠にとって楽しい時間だった。
幼馴染の直葉の兄であり、同時に姉の恋人である和人は誠にとってもう1人の兄のように思えた。
そして、その日常は2年前に終わりを告げる。
「そういえば、スグとはどうなんだ?」
「え…?なんんで急に直葉のことを!?」
「まったく…俺にくらい隠さなくてもいいだろ?好き、なんだろう?」
「それは…」
顔を赤く染め、口ごもってしまう。
それで隠しているつもりだろうが、顔を赤くしている時点で誰が見てもバレバレだ。
それがおかしくて、笑いをこらえるのに必死だ。
そんなことを話していると、急にゴォと季節外れの強い風が吹いた。
その風で誠が手にしていた《神聖魔導王エンディミオン》のカードが飛ばされてしまう。
「ああ…!!《エンディミオン》が!!」
大急ぎで誠は和人を置いて、そのカードを取り戻そうと追いかけていく。
「良かった…あった!!」
木に引っかかっている《神聖魔導王エンディミオン》を見つけた誠はどうにか手を伸ばしてそれを回収し、ついている木の欠片を手で払う、息を吹きかけるなどして取り除く。
無事に回収することができたことに安心し、急いで和人の元へ戻る。
この森には小さいころから何度も来ており、簡単に彼の元へ戻ることができた。
しかし、そこで待っていたのは信じられない光景だった。
「え…??」
その光景は現実とは思えないものだった。
黒いローブを着た誰かが和人とデュエルをしていて、彼が召喚したと思われる白い光に包まれた、どんな姿かわからないモンスターの剣で和人の腹部が貫かれていた。
ソリッドビジョンであるにもかかわらず、その剣で彼は負傷しており、血が噴き出ている。
その血が彼の服を、そして足元の土や葉を赤く濡らしていく。
「まこ…と…」
「和人…兄ちゃん…?」
「残念だな。だが…素体を手に入れたならば、お喜びになられよう」
そのモンスターが剣を抜くと同時に姿を消し、和人はその場で膝をつき、うつ伏せで倒れてしまう。
「和人兄ちゃん!!」
「駄目…だ…逃げ、ろ…」
出血が止まらず、息が絶え絶えとなっている和人が首をピクリと動かして誠を促す。
その間に黒いローブの男が和人を左肩で抱える。
「もう1人いたか…。まあいい、素体のバックアップを手に入れるのも一つか」
「駄目…だ…。お前だけでも、逃げろ…」
「あ、ああ…!!」
「誠ぉ!!」
足がすくんでしまい、涙を浮かべてその場に立ち尽くしていた誠だが、和人の言葉に突き動かされ、その場から逃げ出していく。
その男は逃げる誠を追いかけることはなかった。
「まさか…お前は、和人兄ちゃんを…」
「そうだ。彼を殺して、憑依した。いや…お前と同じになったから、厳密には生きているな。あくまで…主導権が私だという違いはあるが。そして、私は霧山城市の人々から桐ケ谷和人の記憶を消した。その点は感謝してもらいたいな。あとはお前自身がこのことを隠すだけでよかったのだから…」
和人に憑依した監視者の言う通り、家に戻ったときは明日奈に何度も和人のことを話したが、彼女は誰なのかと首を傾げ、彼が自分の恋人で会ったことさえも忘れてしまっていた。
彼女だけでなく、直葉やその両親も和人という存在が記憶からきれいさっぱりなくなっており、彼の部屋はそのままだが、なぜその部屋があるのか誰にもわからないと言われた。
「我らも…そのままにすればよかったが、状況が変わった…。お前と、お前の中にいる裏切者が神に抗い始めたことで」
監視者が左手を空へ掲げると、上空に真っ黒な雲が現れ、その雲から一筋の光が監視者に向けて降り注ぐ。
そして、監視者はふわりと浮遊をはじめ、ソリッドビジョンも消えていく。
「このデュエルは預けよう。このデュエルで分かった…まだこの男の体が完全に馴染んでいないことを…」
「ま…待て!!和人兄ちゃんを返せ!!」
「取り戻すには、私を倒すしかない。もっとも、2年前に彼を見捨てて逃げたお前にそれができるとは思えないが…。裏切者よ、処刑の日を静かに待つがいい」
空へ浮かんだ監視者が光とともに消えていき、召喚された雲も消えていく。
そして、屋上には誠たち3人だけがのこされることになった。
「誠…君…」
「刑事殿。住民票データを照合しましたが、やはり…」
「言うな、デルタ。分かっている…」
ポタリ、ポタリと雨が降りはじめ、次第に雨雲がやってくると同時に大雨へと変わっていく。
その雨を気にすることなく、身動きができるようになった直葉が誠に近づく。
だが、彼は変身を解除するとともにひざを折り、両手を床につける。
「僕の…せいだ…。僕が、逃げたから、和人兄ちゃんは…和人兄ちゃんは…」
雨と共に、誠の目から流れる涙が床に落ちる。
本来ならこの場で何か言ってくるはずのシャドーだが、彼もまた何も言うことはなかった。
「うわあああああ!!!!」
人目を気にする余裕のない誠はただその場で大声で泣くことしかできなかった。
「えー、この数式を解くには昨日教えたものを応用することで…」
連日続く雨の中、教師がいつもの業務である授業を続ける。
「じゃあ、結城…これを解いて。ああ、そうだった。あいつは休んでいるんだったな…」
誠に当てようとした教師だが、誠がいないことを思いだし、別の誰かを当てようと考え始める。
(誠君…)
授業を受ける直葉は誰も座っていない誠の席に目を向ける。
あれから1週間近く経過するが、あの日から誠は授業にも出ておらず、学校にも来ていない。
そして、あの日からずっと雨が降っており、あの雨はまるで誠の悲しみを現しているかのようだった。
「直葉ちゃん…誠君のこと、心配?」
左肩に小さなアカネが出て来て、心配そうに直葉を見つめる。
あれから誠だけでなく、直葉もめっきり元気をなくしており、それがひどく心配だった。
あの日以来、誠は直葉を避けるようになってしまい、彼と話をしたこともない。
いつもなら、無理やり彼の部屋に押し入り、無理やり話をする状況を作ることもするが、今の直葉にはそれをすることすらできなかった。
「はあはあはあ…」
雨が降る中、アルト・テノールの屋上で《ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者》のステージ2を倒した誠は憑依した精霊をカードに吸収する。
変身を解除し、雨に濡れる中でほかのステージ2を倒した徹が彼の元へやってくる。
「大丈夫かよ…?すっかり疲れ果てているじゃねえか」
「大丈夫です…。それより、他には…?」
「反応はねえ。今はもうステージ2はいねえよ…」
あの日以来、誠は狂ったかのようにステージ2と戦い続けている。
この1週間の間に10体以上ものステージ2と遭遇し、2人で倒してきた。
(この1週間で10体…多すぎるぜ。刑事の勘、じゃねえが、何かがある…。この街で何が起こるっていうんだよ?)
2体同時にステージ2を相手したことはあったが、今は短スパンで次々とステージ2が出現している。
病院もそれが引き起こす被害者が次々と入ってきて、おまけにこの長雨が原因で土砂崩れなどが起こり、病院に担ぎ込まれたけが人もいるという。
このままではいずれ誠が一番にパンクしてしまう。
「ちっ…こいつも手掛かりなしのザコかよ…」
一方で、誠が倒したステージ2を見たシャドーもこの1週間での動きの割に会わない収穫に焦りを覚えていた。
和人の体を乗っ取った監視者が使っていた《C.C.ジェミニア》。
彼はそのモンスターをシャドーの『欠片』と言っていた。
もしそうだとしたら、再び監視者に接触し、彼を倒せば一気に記憶と肉体を取り戻すことができるかもしれない。
だが、これまで倒したステージ2からはその匂いも痕跡も感じられない。
「結城…こんな状況だ。手伝ってくれるのはありがてえが、さすがにこれ以上はごまかし切れないかもしれねーぞ」
学校には誠は他県の病院に入院したということで休みという体にしている。
出席日数についてはこれまで誠が比較的真面目に登校していることから心配はない。
だが、さすがに長すぎる休みになると学校も怪しいと感じ始め、生徒の間にも嫌なうわさやデマが流れないとは限らない。
それに、誠本人にとってもこのままではいけない。
「結城、いくらこんなデュエルを続けたところで、お前のためにも…その和人って奴のためにもならねーぞ」
和人、の名前を聞いたとたん、誠の目が大きく開く。
鳥肌が立ち、おもわず徹をにらみつけてしまう。
「本当は分かってるんだろう?なら…」
「じゃあ…じゃあ、僕はどうしたらいいんですか!?僕のせいで…僕のせいで和人兄ちゃんは殺されて、ああなってしまった!!ずっと…言えなかった。直葉の兄ちゃんを、姉さんの恋人が殺されたのに…僕1人だけで逃げてしまったなんて…」
「結城…」
「僕は…みんなが和人兄ちゃんのことを忘れてしまって…安心してしまった…。何を言っても、誰にも責められないって…」
あの日以来、誠は必死に直葉や明日奈から和人に関するものを隠し通してきた。
明日奈が持っている和人からもらった誕生日プレゼントをお客さんからのプレゼントだとごまかし、名前が入っているものについては自分の部屋の押し入れに隠した。
何かの拍子で思い出し、明日奈と直葉を傷つけてしまうことを恐れたから。
だが、本音は誠の言った通り。
結局は自分がかわいかっただけ。
「もういい…結城。もう何も言うな。お前は悪くない。関係ねー俺が見ても、お前が責められるようなことなんて…」
「やめてくださいよ!!どんなに言いつくろっても、変わらない…。僕は、僕は…!?」
急に胸に激しい痛みを感じ、その場に座り込む。
徹が何かを言っているような感じがしたが、今の誠には聞こえない。
痛みが徐々に胸から左腕へと転移していき、デュエルディスクが鈍い鉛色の光を発し始める。
「あ、ああ、あ…うわああああああ!!!」
「結城!?なんだ、こいつは…!?」
デュエルディスクから発せられる鉛色の光が放出されていき、誠の目の前で徐々に集まっていき、人の形へと変わっていく。
「デルタ、こいつは…こいつは何だ!?」
「解析中…エネルギー源不明、データなし。しかし、精霊と同じエネルギーを検出しています」
「悲しいよね…辛いよね…」
集まっていく光からなぜか誠の声が聞こえ、その声が聞こえるとともに痛みが消えた誠は驚いた様子でその光を見る。
「こいつは…何だよ…??」
光は徐々に実体化していき、その姿は真っ黒に染まった変身状態の誠といえるものになった。
「でもさ…本当に嫌なのは自分自身だろう!!みんなにいい格好をして、この力を手に入れたとき、舞い上がったよねえ!!」
口角が吊り上がり、もう1人の誠と言える何かが誠をあざ笑う。
「違う!!僕は、本当は戦いたくなんか…それに、望んでこの力を手に入れたんじゃ…」
「よく言うよ。まるでヒーローだよねぇ。どうして手に入れたかわからない力をみんなのためにって。そうしたら、みんなに認めてもらえる。その姿を見せれば、直葉や姉さんに褒めてもらえる…和人兄ちゃんを見捨てたことを本当の意味できれいさっぱり忘れてもらえる。最高のシナリオじゃないか!!」
「うるさい!!そんなんじゃ…そんなんじゃないよ!!」
「アハハハハハ!!でも…そんなのどうでもいいかぁ。もうばれちゃったんだからなぁ。だから…かなえてやるよ。本当の願いを」
彼の背後に《神聖魔導王エンディミオン》が現れる。
そして、誠に向けて魔力の弾丸を発射してくる。
「おい、誠!!避けろ!!」
シャドーが叫ぶが、誠は避けることも、変身することもしない。
それよりも、目を閉じてこの攻撃を潔く受けようとさえしていた。
(僕の…本当の願い、それは…)
「ぐああああ!!!」
なぜか正面から徹の声が聞こえ、うっすらと目を開く。
そこにはなぜか徹の姿があり、真正面から魔力の弾丸を受けてボロボロになり、うつ伏せに倒れてしまった。
「た…谷村、さん…どうして…?」
「はあ、はあ…死んで、終わらせようと思ったか?そうは…させねえ」
「警察官だから…?」
「違う。気分が悪いんだよ…目の前で自分から死のうって奴を見ると…な…」
さすがに強化服を着ても、かなりのダメージだったのか、徹は起き上がることができずにいる。
だが、《神聖魔導王エンディミオン》は再び魔力を凝縮し始める。
「はあ…?なんで邪魔をするのかな?僕の願いをかなえてあげようとしているだけなのに…。まあ、いいや。邪魔をするなら、まずはあなたを…。その方がやりやすいよね?」
完全にターゲットを誠から徹に向け、確認するように視線を誠に向けてくる。
その目は笑っており、まるで誠の本心を見透かしているようだった。
「あ、ああああ…」
「大丈夫だよ。彼が死んだらもう邪魔はない。あとは…楽に死ねるからさ。これで、もう全部終わる」
《神聖魔導王エンディミオン》の杖から魔力が発射され、動けない徹を襲う。
「刑事殿、至急この場から離脱を。このままでは…」
「生きろよ…結城。お前が…償えないって思っているなら、それでもいい。でも…今なら、償えるだろう…?助けられるだろう…?お前の、兄ちゃんを…」
「ごちゃごちゃうるさいよ…」
「助けに行ってやれ…よ…」
「死んでよ」
意識を失いかけている徹に魔力が迫る。
立ち上がった誠は徹の前に立つと同時に、変身してその魔力を正面から受ける。
ついさっき、徹が自分にしてくれたように。
「結城…?」
「あああ、あああああ!!」
魔力は治まったが、全身から煙が出て、涙が出るくらいの痛みを感じる。
ステージ3になっても感じるこの痛み以上のダメージを徹は、そして和人は受けた。
痛いものは痛いが、我慢できる。
「どうしたの…?死にたいんじゃなかったの?こうなったら、生きる意味なんて…。まあ、いいか」
もう1人の誠はデュエルディスクを展開し、背後にいたモンスターは消えていく。
誠もデュエルディスクを展開し、カードを5枚ドローする。
「最期のデュエル…してあげるよ。心置きなく死のう」
「はあ、はあ…はあ…」
「我慢することはないんだよ。どうせ、もう直葉に嫌われてる。姉さんも、きっと…」
「…うわあああああ!!!!」
誠
LP4000
誠の影
LP4000
「僕の…先攻!!僕は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動。デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てる」
手札から墓地へ送られたカード
・C.C.ジラフ
「そして、《C.C.ユニコーン》を召喚!!」
C.C.ユニコーン レベル4 攻撃1600(3)
「そして、手札から魔法カード《マグネット・サークル》を発動!!僕のフィールドの機械族・岩石族モンスター1体を対象に、そのモンスターと同じレベルで、同じ種族のモンスター1体をデッキから特殊召喚する。僕は《C.C.ブラスタ》を特殊召喚!!」
C.C.ブラスタ レベル4 攻撃1900(1)
マグネット・サークル
通常魔法カード
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドに存在する機械族または岩石族モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターと同じレベル・種族で名前の異なるモンスター1体をデッキから特殊召喚する。このカードを発動したターン、自分は機械族・岩石族以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。
「そして、僕は手札の《C.C.ハウンドドッグ》を墓地へ送り、《C.C.バロール》を手札から特殊召喚!」
C.C.バロール レベル5 攻撃1900(4)
「現れろ!星を繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はC.C.モンスター2体以上!僕は《バロール》、《ブラスタ》、《ユニコーン》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク3!《C.C.ジェニオン》!」
C.C.ジェニオン リンク3 攻撃2500(EX1)
「そして、リンク素材になった《バロール》と墓地の《ハウンドドッグ》の効果発動!《ハウンドドッグ》は僕はC.C.リンクモンスターのリンク召喚に成功し、そのモンスターのリンク先にモンスターが存在しないとき、そのモンスターのリンク先に墓地から守備表示で特殊召喚できる!」
C.C.ハウンドドッグ レベル2 守備1300(2)
「更に、《バロール》を素材にC.C.リンクモンスターのリンク召喚に成功したとき、このカード以外のリンク素材となったモンスター1体を墓地から手札に加える!!僕は《ユニコーン》を手札に戻す。そして、カードを1枚伏せ、《ジェニオン》の効果発動。1ターンに1度、このカードのリンク先に存在するモンスターの数だけ、このカードの上にバリアカウンターを乗せる。僕はこれで、ターンエンド…」
誠
手札5→1(《C.C.ユニコーン》)
LP4000
場 C.C.ジェニオン(リンク先:《C.C.ハウンドドッグ》 バリアカウンター1) リンク3 攻撃2500(EX1)
C.C.ハウンドドッグ レベル2 守備1300(2)
伏せカード1(3)
誠の影
手札5
LP4000
場 なし
「1ターン目から《ジェニオン》か…飛ばしてるな、結城の奴…」
「谷村ぁ!!」
屋上まで走って上がってきた菅原と小沢が倒れている徹を抱える。
重量のある強化服であるため、2人がかりでなければ抱えることができない。
「はあはあ、悪い。菅原さん、小沢さん」
「谷村君。あれは何なの?結城君そっくりな姿だけど…」
小沢と菅原もトレーラーで誠の異変を知ったことで大急ぎでここまで来た。
その時には変身した誠とよく似た精霊エネルギーがを感知できた。
「頼む、2人とも…。このデュエルを最後まで見させてくれ」
「馬鹿言うんじゃねえ!お前、ボロボロじゃあ…」
「頼みます…菅原さん…」
本当なら、すぐに病院へ連れて行かなければならないほどのけがをしている。
P03DXも修理が必要だ。
だが、徹はどうしても見なければならないと思っているのか、テコでも動かない。
「…分かったわ。けれど、アーマーが外させてもらうわ。菅原さん、手伝って」
「ちっ、しゃあねえ。手動だと時間がかかるぞ」
P03DXの装着も解除も、どちらもトレーラー内で専用の機材を使うことで短い時間で可能となる。
手動でもできるが、2人はいざというときのためにそのマニュアルを暗記し、何度も練習をしてきた。
だが、それでも機材を使うときの倍以上の時間がかかる。
2人の手で解除を受ける中、徹の目には2人の誠が映っていた。
(ステージ3…もしかして、心が弱ったときにもう1人の自分が現れるって奴か…?)
「ふうん…死のうと思ってたのに、なんでいきなり抵抗するの?…どうでもいいじゃん。ちょっと前に会ったばかりなんだから」
一度は一緒に戦い、デュエルをした相手であるとはいえ、直葉達とは違い、徹との付き合いは浅い。
そんな彼などどうなろうと、誠の影にとってはどうでもいいのだろう。
きっと、誠の心の中にもそうした感情は宿っているのかもしれない。
だから誠は反論せず、悔しそうに黙っている。
「僕のターン、ドロー」
誠の影
手札5→6
「手札から《マジカル・コンダクター》を召喚」
緑色のローブを身にまとった黒いロングヘアーで色白の美女が現れる。
マジカル・コンダクター レベル4 攻撃1700(1)
「《マジカル・コンダクター》…《エンディミオン》…!」
この2種類のカードはいずれも誠が元々持っているデッキに入っているカードたちだ。
単なる偶然だと思いたいが、目の前の彼が誠の陰であれば、もしかすると…。
「そして、手札からフィールド魔法《魔法都市エンディミオン》を発動」
発動と同時に、屋上が近未来ファンタジー風の都市へと変化していく。
周囲には光の粒子があふれており、それらには魔力が生じている。
「そして、《マジカル・コンダクター》の効果。魔法カードが発動する度にこのカードの上に魔力カウンターが2つ乗る」
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター0→2(1)
「更に手札から速攻魔法《魔導加速》を発動。デッキの上からカードを2枚墓地へ送り、魔力カウンターを置くことのできるカード1枚に魔力カウンターを2つ乗せる。《エンディミオン》にカウンターを2つ追加。更に、《マジカル・コンダクター》は魔法カード発動の度に2つ、《魔法都市エンディミオン》には1つ、カウンターが乗る」
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター2→4(1)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター0→1→3(フィールド魔法)
デッキから墓地へ送られたカード
・漆黒のパワー・ストーン
・王立魔法図書館
「そして、《マジカル・コンダクター》の効果。1ターンに1度、このカードの魔力カウンターを任意の数取り除くことで、手札・墓地から取り除いた魔力カウンターと同じ数のレベルの魔法使い族モンスター1体を特殊召喚できる。僕は魔力カウンターを4つ取り除き、墓地から《王立魔法図書館》を特殊召喚」
《マジカル・コンダクター》が両手を天に掲げると、上空に4つの魔力カウンターが集まり、紫色のゲートが出現する。
そして、その中からぎっしりと分厚い表紙の本の詰まった本棚が現れる。
王立魔法図書館 レベル4 守備2000(3)
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター4→0(1)
「更に手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動。デッキから《神聖魔導王エンディミオン》を墓地へ送る。そして、《王立魔法図書館》もまた、《魔法都市エンディミオン》と同じで、魔法カードを発動する度に魔力カウンターが1つ乗る」
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター0→2(1)
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター0→1(3)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター3→4(フィールド魔法)
「そして、《王立魔法図書館》の効果発動。このカードの魔力カウンター3つを取り除くことで、デッキからカードを1枚ドローできる。そして、《魔法都市エンディミオン》の効果。1ターンに1度、魔力カウンターを取り除いてカード効果を発動するとき、その魔力カウンターを肩代わりできる」
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター4→1(フィールド魔法)
「そして、手札から魔法カード《魔力掌握》を発動。フィールド上の魔力カウンターを乗せることのできるカード1枚に魔力カウンターを1つ置き、その後でデッキから《魔力掌握》を1枚手札に加えることができる。僕は《王立魔法図書館》に魔力カウンターを1つ乗せる」
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター2→4(1)
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター1→2→3(3)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター1→2(フィールド魔法)
「そして、《王立魔法図書館》の効果。魔力カウンターを3つ取り除き、デッキからカードを1枚ドロー」
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター3→0(3)
「そして、手札から魔法カード《グリモの魔導書》を発動。デッキから《グリモの魔導書》以外の魔導書1枚を手札に加える。僕は《ヒュグロの魔導書》を手札に加える」
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター4→6(1)
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター0→1(3)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター2→3(フィールド魔法)
「魔法カード《ヒュグロの魔導書》を発動…。自分フィールドの魔法使い族モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000アップさせる」
マジカル・コンダクター レベル4 攻撃1700→2700 魔力カウンター6→8(1)
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター1→2(3)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター3→4(フィールド魔法)
「バトル。《マジカル・コンダクター》で《C.C.ハウンドドッグ》を攻撃」
《マジカル・コンダクター》の手から《ヒュグロの魔導書》の力で召喚した炎が宿り、《C.C.ハウンドドッグ》に向けて発射される。
「罠発動!《攻撃の無力化》!!」
次元の渦が炎を飲み込み、攻撃対象となった《C.C.ハウンドドッグ》は無事の姿をさらす。
「《ヒュグロの魔導書》の効果を受けたモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、デッキから魔導書を1枚手札に加えることができる…。それが嫌だから、わざわざ《攻撃の無力化》を発動したんだ…。どうして?このまま僕の邪魔をしなければ、君は…」
「それは…」
「てめえ…死にてえのか生きてえのか、はっきりしやがれ!!」
「ぼ、僕は…」
「静かにしてよ、シャドー。成り行きで僕にとりついているだけのくせに、デカい顔しないでよ」
「あぁ…!?」
普段の誠が言うとは思えない、シャドーをけなすような言葉に驚きながらも、さすがのシャドーもキレかけてしまう。
彼が誠の心から生まれたから、それが彼の本音かもしれない。
だが、シャドーは明らかに目の前の誠の影を誠と同一人物とは思っていない。
「僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド。《ヒュグロの魔導書》の効果は終わる」
誠
手札1(《C.C.ユニコーン》)
LP4000
場 C.C.ジェニオン(リンク先:《C.C.ハウンドドッグ》 バリアカウンター1) リンク3 攻撃2500(EX1)
C.C.ハウンドドッグ レベル2 守備1300(2)
誠の影
手札6→3(うち1枚《魔力掌握》)
LP4000
場 マジカル・コンダクター(魔力カウンター8) レベル4 攻撃2700→1700(1)
王立魔法図書館(魔力カウンター2) レベル4 守備2000(3)
魔法都市エンディミオン(魔力カウンター4)(フィールド魔法)
《魔法都市エンディミオン》には既に魔力カウンターが4つあり、おまけに墓地には《おろかな埋葬》の効果で落ちた《神聖魔導王エンディミオン》が存在する。
この意味を誠自身が一番理解している。
(このデッキは…間違いなく、僕がいつも使っていたデッキ。あと2つ魔力カウンターがたまったら…)
そのことを考えると、フィールドに残っている2体を破壊することも考え物だ。
《魔法都市エンディミオン》の効果で、破壊されたカードに乗っている魔力カウンターがすべてこのカードに移動してしまう。
「(だったら、そのターンが来るまでに仕留める!!)僕のターン、ドロー!」
誠
手札1→2
「スタンバイフェイズ時に、《ジェニオン》に乗っていたバリアカウンターがすべて取り除かれる。そして、
手札からもう1度《ユニコーン》を召喚!」
C.C.ユニコーン レベル4 攻撃1600(4)
「現れろ、星を繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はC.C.1体以上。僕は《ユニコーン》と《ハウンドドッグ》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク2!《C.C.ガンレオン》!」
C.C.ガンレオン リンク2 攻撃2000(2)
「そして、僕は手札から魔法カード《ブランディング・スター》を発動。僕のフィールドの相互リンク状態になっているC.C.リンクモンスターの数まで、墓地のC.C.モンスターを守備表示で特殊召喚できる。僕は墓地から《バロール》と《ブラスタ》を特殊召喚」
C.C.バロール レベル5 守備2000(3)
C.C.ブラスタ レベル4 守備1500(4)
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター8→10(1)
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター2→3(3)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター4→5(フィールド魔法)
ブランディング・スター
通常魔法カード
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドに存在する相互リンクしている「C.C.」リンクモンスターと同じ数、自分の墓地に存在する「C.C.」モンスターを対象に発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。このカードを発動したターン、自分は「C.C.」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。
「そして、手札から魔法カード《イーリアス・ドロー》を発動。僕のフィールドにC.C.が3体以上存在し、それ以外のモンスターが存在しないとき、デッキからカードを2枚ドローできる。そして、現れろ、星を繋ぐサーキット!アローヘッド確認。召喚条件は効果モンスター3体以上。僕は《ガンレオン》、《ジェニオン》、《バロール》、《ブラスタ》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク4!《C.C.リ・ブラスタ》」
C.C.リ・ブラスタ リンク4 攻撃2800(EX1)
「そして、《リ・ブラスタ》の効果発動。このカードのリンク召喚に成功したとき、墓地のリンク素材となったモンスター1体をこのカードのリンク先に特殊召喚できる。僕は《ガンレオン》を特殊召喚!」
C.C.ガンレオン リンク2 攻撃2000(1)
「そして、《バロール》の効果。リンク素材になった《ブラスタ》を手札に加える。そして、手札から永続魔法《一族の結束》を発動!自分の墓地のすべてのモンスターの元々の種族が同じの場合、そのモンスターと同じ種族の僕のモンスターの攻撃力を800アップさせる」
C.C.リ・ブラスタ リンク4 攻撃2800→3600(EX1)
C.C.ガンレオン リンク2 攻撃2000→2800(1)
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター10→12(1)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター5→6(フィールド魔法)
「バトル!《ガンレオン》で《王立魔法図書館》を攻撃!ギーグガン発射!」
《C.C.ガンレオン》が発射する燃える杭が次々と本棚に突き刺さり、入っていた本諸共炎上する。
そして、それに保管されていた3つの魔力カウンターは光の粒子となって魔法都市の一部となる。
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター6→9(フィールド魔法)
「更に、《ガンレオン》の効果発動!このカードが特殊召喚されたモンスターを戦闘で破壊したとき、墓地からC.C.1体を特殊召喚できる。僕は《ジェニオン》を特殊召喚!」
《C.C.ガンレオン》が持っている大型レンチを使い、フィールドに現れた機能停止している《C.C.ジェニオン》の修理を始める。
修理を終えると、《C.C.ジェニオン》のバイザー型のカメラが光り、立ち上がって復活した姿を見せる。
C.C.ジェニオン リンク3 攻撃2500→3300(3)
「そして、《リ・ブラスタ》で《マジカル・コンダクター》を攻撃!ラプター・シュート!!」
《C.C.リ・ブラスタ》が持っている大型ライフルを《マジカル・コンダクター》に向けて連射する。
弾丸は次々と彼女を撃ち抜き、消滅させた。
「…」
誠の影
LP4000→2400
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター9→21(フィールド魔法)
「これで決まったな。あとは攻撃力3300の《ジェニオン》がダイレクトアタックすればいいだけの話だ」
「そういう簡単な話ならいいですけど…見てください、菅原さん。今の結城君ともう1人の結城君を…」
小沢にはこのデュエルがここで終わるとは全く思えなかった。
今の誠はとても焦っているようで、大げさなほどに手が震えていることからもそれを感じ取ってしまう。
それに対して、フィールドからモンスターがいなくなったにもかかわらず、誠の影は冷静で、乱れが感じられない。
まるで逆に誠が敗北寸前まで追い詰められているかのようだった。
「ふーん、そんなに自分をごまかしたいんだ。もう楽になろうよ。そんなことをしても…」
「黙ってよ!!そんなの…そんなの、僕の本音じゃない!!《ジェニオン》でダイレクト…??」
自分の影の声を遮るかのように大声で攻撃宣言しようとした誠だが、《C.C.ジェニオン》の周りに魔力の粒子が集まってきていて、それが彼からエネルギーを奪い取っていた。
そのせいで武器である長刀もビームダガーも抜くこともできずに、その場で膝をつく。
「悪いけど、こいつは攻撃できないよ。僕は手札の《魔導獣スフィンクス》の効果を発動した。僕のフィールドにモンスターが存在しない状態で相手の直接攻撃宣言時、僕のフィールドの魔力カウンターを3つ取り除くことでこのカードは特殊召喚でき、相手のバトルフェイズを終了させる」
魔導獣スフィンクス レベル5 守備2200(3)
「これは…ペンデュラムモンスター!?」
確かに、《D.C.サイバスター》と侑哉のおかげか、ペンデュラム召喚を使えるようになった誠だが、そのカードは彼からもらったものを除くと、C.C.カードだけ。
魔導獣としたら、頭に浮かぶのは実際にデッキに入れている《魔導獣ケルベロス》だけで、魔導獣のペンデュラムモンスターは知らない。
どうしてそんなカードを自分の影が持っているのか、全く分からない。
だが、バトルフェイズが終了し、手札に残っているカードが《C.C.ブラスタ》では何もすることができない。
「僕は《ジェニオン》の効果発動。バリアカウンターを1つ乗せる。これで…ターンエンド」
誠
手札2→1(《C.C.ブラスタ》)
LP4000
場 C.C.リ・ブラスタ(相互リンク状態:《C.C.ジェニオン》、リンク先:《C.C.ガンレオン》) リンク4 攻撃3600
C.C.ガンレオン リンク2 攻撃2800(1)
C.C.ジェニオン(相互リンク状態:《C.C.リ・ブラスタ》 バリアカウンター1) リンク3 攻撃3300
一族の結束(永続魔法)(4)
誠の影
手札3→2(うち1枚《魔力掌握》)
LP2400
場 魔導獣スフィンクス レベル5 守備2200(3)
魔法都市エンディミオン(魔力カウンター21)(フィールド魔法)
このターンで一気に決めるつもりで攻撃したにもかかわらず、思わぬ伏兵によって阻まれた上に《魔法都市エンディミオン》には21もの魔力カウンターがある。
このターンは大きくデュエルの状況が一変することを誰もが感じていた。
「僕のターン、ドロー…」
誠
手札2→3
「手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。墓地から《マジカル・コンダクター》を特殊召喚。そして、《魔導獣スフィンクス》の効果。このカードも《エンディミオン》と同様、魔力カウンターが乗る効果がある」
マジカル・コンダクター レベル4 攻撃1700(2)
魔導獣スフィンクス レベル5 魔力カウンター0→1(3)
「そして、墓地の《神聖魔導王エンディミオン》の効果発動。《魔法都市エンディミオン》の魔力カウンターを6つ取り除くことで、手札・墓地から特殊召喚できる。魔法都市を築きし魔導王よ、今こそ魔力の真実を示せ!特殊召喚!《神聖魔導王エンディミオン》!」
魔力の粒子が6つの魔力カウンターとなり、それが上空に紫色のゲートを作り出す。
その中から、誠の本当の意味のエースであるはずの《神聖魔導王エンディミオン》が誠を殺すために舞い降りた。
神聖魔導王エンディミオン レベル7 攻撃2700(4)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター21→15(フィールド魔法)
「《エンディミオン》…」
「《エンディミオン》の効果。この方法で特殊召喚に成功したとき、墓地の魔法カード1枚を手札に加える。僕は《死者蘇生》を手札に加える。そして、《死者蘇生》を発動し、墓地の《王立魔法図書館》を特殊召喚」
王立魔法図書館 レベル4 守備2000(5)
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター0→2(2)
魔導獣スフィンクス レベル5 魔力カウンター1→2(3)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター15→16(フィールド魔法)
「《王立魔法図書館》の効果。《エンディミオン》の魔力カウンター3つを取り除き、デッキからカードを1枚ドローする」
ドローをしたカードを見た誠の影は笑みを浮かべる。
そして、そのカードを左手で握った後で右手を空に掲げる。
「現れろ、死を導くサーキット!アローヘッド確認!召喚条件は魔法使い族モンスター2体。僕は《エンディミオン》と《王立魔法図書館》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク2。《魔導耀士デイブレイカー》」
《魔導騎士ブレイカー》に似た鎧姿だが、色合いが白と金の華やかな色彩となっており、暗い色彩であった元のモンスターとは正反対の物だ。
このカードは誠が使っているカードの1枚で、そこからどう動くのかも誠は理解していた。
魔導耀士デイブレイカー リンク2 攻撃1600(EX2)
「《デイブレイカー》の効果。このカードのリンク召喚に成功したとき、このカードの上に魔力カウンターを1つ乗せる。そして、《デイブレイカー》は上に乗っているカウンターの数×300攻撃力がアップする」
魔導耀士デイブレイカー リンク2 攻撃1600→1900 魔力カウンター0→1(EX2)
「更に再び《魔法都市エンディミオン》の魔力カウンターを6つ取り除き、墓地から《神聖魔導王エンディミオン》を特殊召喚!同時に、《デイブレイカー》の効果。このカードのリンク先に魔法使い族が特殊召喚されたとき、このカードの上に魔力カウンターが1つ乗る」
神聖魔導王エンディミオン レベル7 攻撃2700(1)
魔導耀士デイブレイカー リンク2 攻撃1900→2200 魔力カウンター1→2(EX2)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター16→10(フィールド魔法)
「そして、《エンディミオン》の効果で、墓地から再び《死者蘇生》を手札に加える。そして、再び《死者蘇生》を発動。《王立魔法図書館》を特殊召喚」
王立魔法図書館 レベル4 守備2000(5)
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター2→4(2)
魔導獣スフィンクス レベル5 魔力カウンター2→3(3)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター10→11(フィールド魔法)
「そして、《スフィンクス》の効果。このカードの上に乗っている魔力カウンターが3つ以上になったとき、このカードは破壊される。そして、《魔法都市エンディミオン》の効果で、乗っていた魔力カウンターがすべてこのカードに乗る」
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター11→14(フィールド魔法)
「そして、再び現れろ、死を導くサーキット。アローヘッド確認。召喚条件は魔法使い族モンスター2体。僕は《エンディミオン》と《王立魔法図書館》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン。リンク召喚。現れろ、リンク2。《魔導原典クロウリー》」
薄緑色のガラス管の中に入っている青い長髪の魔導士が現れる。
彼が瞑想を始めると、ガラス管の中が魔力の粒子で満ち溢れていく。
魔導原典クロウリー リンク2 攻撃1000(3)
魔導耀士デイブレイカー リンク2 攻撃2200→2500 魔力カウンター2→3(EX2)
「《クロウリー》の効果。このカードのリンク召喚に成功したとき、デッキから3種類の魔導書を選択し、ランダムに1枚を手札に加え、残り2枚をデッキに戻す。僕が選択するのはこの3種類」
誠の影が選択したカード
・ヒュグロの魔導書
・グリモの魔導書
・ゲーテの魔導書
3枚の魔導書がそれぞれ赤・青・黄の光となって、誠の影の周囲を旋回する。
そして、青の光が誠の影の手に渡り、それが《グリモの魔導書》へ変化した。
「《マジカル・コンダクター》の効果発動。魔力カウンターを4つ取り除き、墓地から《王立魔法図書館》を特殊召喚」
王立魔法図書館 レベル4 守備2000(5)
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター4→0(2)
「更に手札から魔法カード《グリモの魔導書》を発動。デッキから《ルドラの魔導書》を手札に加える」
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター0→2(2)
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター0→1(5)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター14→15(フィールド魔法)
「そして、《エンディミオン》の魔力カウンターを6つ取り除き、墓地から再び《神聖魔導王エンディミオン》を特殊召喚」
神聖魔導王エンディミオン レベル7 攻撃2700(4)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンターⅠ5→9(フィールド魔法)
「《エンディミオン》の効果により、墓地の《ヒュグロの魔導書》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《ヒュグロの魔導書》を発動。《エンディミオン》の攻撃力を1000アップ」
神聖魔導王エンディミオン レベル7 攻撃2700→3700(4)
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター2→4(2)
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター1→2(5)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター9→10(フィールド魔法)
「更に手札から魔法カード《ルドラの魔導書》を発動。《クロウリー》を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドロー」
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター4→6(2)
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター2→3(5)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター10→11(フィールド魔法)
「そして、《王立魔法図書館》の魔力カウンターを3つ取り除き、デッキからカードを1枚ドロー」
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター3→0(5)
ここまで動いたにもかかわらず、手札はまた6枚に戻り、誠の影のフィールドは魔力カウンターで満ち溢れる。
誠はここまでそのデッキで動いたことはなく、誠の影が本気で自分を殺そうとしていることが感じられた。
「そして、手札から魔法カード《サンダー・ボルト》を発動。相手フィールドのモンスターをすべて破壊する」
発動と同時に誠のフィールドに落雷が降り注ぐ。
本来ならすべてのモンスターを破壊する破滅の光だが、今回はそうはいかない。
「《ガンレオン》と《ガンレオン》のリンク先のモンスターは1ターンに1度、戦闘及び効果では破壊されない!そして、《ジェニオン》はバリアカウンターを身代わりにできる」
「けれど、魔力カウンターが置かれる」
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター6→8(2)
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター0→1(5)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター11→12(フィールド魔法)
「そして、手札から魔法カード《魔力掌握》を発動。《王立魔法図書館》に魔力カウンターを1つ置き、デッキからもう1枚の《魔力掌握》を手札に加える。そして、《王立魔法図書館》の魔力カウンターを3つ取り除き、デッキからカードを1枚ドロー」
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター8→10(2)
王立魔法図書館 レベル4 魔力カウンター1→2→3→0(5)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター12→13(フィールド魔法)
「そして、手札から魔法カード《メガトン魔導キャノン》を発動。魔力カウンターを10個取り除くことで、相手フィールドのカードをすべて破壊する」
誠の影のフィールドに巨大な砲台が出現し、《マジカル・コンダクター》が持つすべての魔力カウンターが注ぎ込まれていく。
そして、誠のフィールドに向けて発射され、彼のフィールドのモンスターが消滅し、誠は丸裸にされてしまった。
マジカル・コンダクター レベル4 魔力カウンター10→0(2)
「そんな…結城君のフィールドからカードがなくなった…」
「あいつの手札は《C.C.ブラスタ》。この状況じゃあ意味がねえ。このままあのフィールドの魔法使い族どものダイレクトアタックを受けたら…」
今の誠のライフは4000だが、誠の影のフィールドには攻撃力3700の《神聖魔導王エンディミオン》、攻撃力2500の《魔導耀士デイブレイカー》、攻撃力1000の《魔導原典クロウリー》がいる。
この3体の攻撃をすべて受けた瞬間、誠の敗北と死が決まってしまう。
「バトル。《エンディミオン》でダイレクトアタック」
《神聖魔導王エンディミオン》の杖に炎を帯びた魔力の弾丸が出現する。
そして、それを本来の主である誠に向けて容赦なく放った。
「うわああああ!!」
魔力の弾丸を受けた誠は傷だらけになって大きく吹き飛ばされ、床を転げまわる。
誠
LP4000→300
「結城!!」
「まともに受けた…大丈夫、次の一撃で楽になるから…うん?」
吹き飛ばされ、立ち上がれないほどのダメージを受けたはずの誠が起き上がるのを見て誠の影は後ずさる。
バイザーにひびが入り、額から流れる血が誠の片目を赤く濡らす。
本当なら泣き出したくなるくらいの怪我だが、今の誠は涙一つ流さない。
ただじっと、自分の影を見る。
「何…?まだ自分の心を…」
「…そうだよ」
「うん?」
「君の言う通りだよ…。僕は、和人兄ちゃんのことが知られて…和人兄ちゃんを見捨てたことから逃げたかった…。死にたいって思ったのも、多分そう…」
だから、徹にもしかばってもらえなかったら本当に望みどおりになったかもしれない。
「けど…デュエルして、決心はついたよ…。僕は…僕の罪から、弱さから逃げない!!どんなに…苦しくても、つらくても…!!」
「結城…」
「僕は墓地の《C.C.ジラフ》の効果発動!!」
中国の伝説で伝わる聖獣、キリンを模した機械獣が現れ、額にキリン座を模した紋章が浮かび上がる。
「このカード…最初のターンに《聖天使の施し》で…」
「相手の特殊召喚されたモンスターの直接攻撃でダメージを受けたとき、墓地のこのカードを除外することで、受けたダメージ以下の攻撃力を持つ相手モンスターをすべて破壊する!!」
「何…?」
「僕が受けたダメージは3700!!よって、君のフィールドの攻撃力3700以下のモンスターはすべて破壊される!」
《C.C.キリン》の口から白いエネルギーの球体が発射され、それが誠の影のフィールドで爆発する。
爆発する光に飲み込まれるように誠の影のフィールドのモンスターが消滅していった。
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター13→16(フィールド魔法)
「…」
フィールドが空っぽになり、誠の影は沈黙する。
危機を脱した誠は片膝をつき、じっと自分の影を見つめる。
影はその眼をそらしながら、デュエルを進める。
「僕は…《魔法都市エンディミオン》の魔力カウンターを6つ取り除き、《神聖魔導王エンディミオン》を特殊召喚」
神聖魔導王エンディミオン レベル7 攻撃2700(1)
魔法都市エンディミオン 魔力カウンター16→10(フィールド魔法)
「そして、《エンディミオン》の効果で、墓地から《魔導加速》を手札に加える。そして、《エンディミオン》の効果発動。1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を捨て、フィールド上のカード1枚を破壊する。僕は《一族の結束》を破壊」
《魔導加速》のカードに宿る魔力が《神聖魔導王エンディミオン》の左手に宿り、彼がその左手をかざすと、《一族の結束》がいきなり炎上し、灰になった。
「僕はこれで…ターンエンド…」
誠
手札1(《C.C.ブラスタ》)
LP300
場 なし
誠の影
手札3→5
LP2400
場 神聖魔導王エンディミオン レベル7 攻撃2700(1)
魔法都市エンディミオン(魔力カウンター10)(フィールド魔法)
「こいつ…手札まだ5枚もあるのに、ターンを終えた…?」
誠のまさかの反撃を受けてから、一気に誠の影が弱気になったように見える。
それに対して、誠は傷つきながらも逆に元の調子を取り戻しつつある。
「もう…死にたいなんて思わない。僕は…生きる!!僕のターン、ドロー!!」
誠
手札1→2
「僕は手札から《C.C.ブラスタ》を召喚!」
C.C.ブラスタ レベル4 攻撃1900(3)
「現れろ、星を繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はリンクモンスター以外のC.C.1体。僕は《ブラスタ》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク1!《C.C.ジ・インサー》!」
C.C.ジ・インサー リンク1 攻撃0(EX1)
「そして、《ジ・インサー》の効果発動。このカードが表側表示で存在する限り、1度だけ墓地からC.C.モンスター1体をこのカードのリンク先に特殊召喚できる。僕は墓地の《リ・ブラスタ》を特殊召喚!」
C.C.リ・ブラスタ リンク4 攻撃2800(2)
「そして、僕は手札から装備魔法《星の聖剣-コールブランド》を《ジ・インサー》に装備!」
《C.C.ジ・インサー》の左手に向けて、上空から白い柄をしていて、刃が白銀で軍配のような形となっている剣が舞い降りる。
それを握ると同時に上空の雨雲に向けて一筋の光が剣から放たれる。
雨雲が吹き飛ばされ、隠れていた太陽の光が降り注ぐ。
「このカードは《ジ・インサー》にだけ装備できるカード!装備モンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで戦闘を行う相手モンスターに装備モンスターのリンク先に存在するモンスターのリンクマーカーの数×500になる!バトルだ!《ジ・インサー》で《エンディミオン》を攻撃!!」
聖剣を握る《C.C.ジ・インサー》が上空を浮遊し、《神聖魔導王エンディミオン》に向けて振り下ろす。
「手札の《魔導獣ファルコン》の効果。相手の攻撃宣言時、僕のフィールドの魔力カウンターを3つ取り除くことで、手札からこのカードを特殊召喚する!」
紅蓮の炎を纏ったオレンジ色の隼が現れるとともに、《C.C.ジ・インサー》に向けて炎を発射する。
魔導獣ファルコン レベル2 守備1500(4)
「そして、相手フィールドのモンスター1体を破壊する!!」
炎を受けた《C.C.ジ・インサー》が人たちも浴びせることができないまま消滅する。
しかし、《星の聖剣-コールブランド》は《C.C.リ・ブラスタ》が手にし、装甲の色が《C.C.ジ・インサー》に似た純白へと変化していく。
「《コールブランド》の効果発動!装備モンスターが破壊されたことでこのカードが墓地へ送られたとき、その装備モンスターのリンク先に存在するC.C.モンスターの攻撃力をターン終了時まで倍にする!」
C.C.リ・ブラスタ リンク4 攻撃2800→5600(2)
「何…!?」
「《リ・ブラスタ》で《エンディミオン》を攻撃!アンブレイカブル・スターブレイク!!」
《星の聖剣-コールブランド》を握った《C.C.リ・ブラスタ》がその刃を横に一閃する。
胴体を真っ二つに切り裂かれた《神聖魔導王エンディミオン》が消滅し、その余波が誠の影を襲う。
「うわああああ!!」
誠の影
LP2400→0
魔導獣(マジックビースト)スフィンクス
レベル5 攻撃0 守備2200 光属性 魔法使い族
【Pスケール:青4/赤4】
このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):もう片方の自分Pゾーンにカードが存在しない場合に発動できる。このカードを破壊し、ターン終了時まで自分フィールドの魔法使い族モンスターの攻撃力は自分フィールドに存在する魔力カウンターの数×100アップする。
【モンスター効果】
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない状態で相手の直接攻撃宣言時に発動できる。自分フィールドに存在する魔力カウンターを3つ取り除くことでこのカードを手札から特殊召喚し、相手のバトルフェイズを終了させる。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分または相手が魔法カードを発動する度に、このカードに魔力カウンターを1つ置く。
(3):このカードの上に乗っている魔力カウンターが3つ以上になったときに発動する。このカードを破壊する。この効果は無効化されない。
C.C.ジラフ
レベル2 攻撃1500 守備800 効果 光属性 機械族
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードが自分「C.C.」リンクモンスターのリンク先に存在し、相手フィールドに特殊召喚されたモンスター以外のモンスターが存在しない場合、そのリンクモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できる。その時、「C.C.」リンクモンスター以外の自分のモンスターは攻撃できない。
(2):自分フィールドにモンスターが存在せず、自分が相手の特殊召喚されたモンスターの直接攻撃によって戦闘ダメージを受けたとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。その時受けたダメージ以下の攻撃力を持つ相手モンスターをすべて破壊する。
魔導獣ファルコン
レベル2 攻撃200 守備1500 炎属性 魔法使い族
【Pスケール:青4/赤4】
このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):もう片方の自分Pゾーンにカードが存在しない場合、自分の手札に存在するレベル5以上の魔法使い族モンスター1体を対象に発動できる。このカードを破壊し、そのモンスターを手札から特殊召喚する。
【モンスター効果】
このカードの(1)のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手の攻撃宣言時、自分フィールドの魔力カウンターを3つ取り除いて発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。その後、相手フィールドのモンスター1体を破壊する。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分または相手が魔法カードを発動する度に、このカードに魔力カウンターを1つ置く。
星の聖剣-コールブランド
装備魔法カード
このカード名のカードは自分フィールド上に1枚しか存在できない。
「C.C.ジ・インサー」にのみ装備可能。
(1):装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、装備モンスターの攻撃力はダメージステップ終了時までその相手モンスターの攻撃力に装備モンスターのリンク先に存在する「C.C.」リンクモンスターのリンクマーカーの数×500となる。
(2):装備モンスターが破壊されたことでこのカードが墓地へ送られたときに発動する。そのモンスターのリンク先に存在する「C.C.」モンスターの攻撃力はターン終了時まで倍となる。
ソリッドビジョンが消え、誠の変身が解除される。
誠の影はあおむけに横たわったまま空を眺め、彼に顔を向けることなく口を開く。
「いいの…?戦い続けても、死にたくなるほどつらいことにあうかもしれないよ…?」
そのようなことは誠自身、既に分かっている。
和人のことで、直葉が自分をどう思うのか、そして和人を操る監視者との戦いが待っている。
きっと、こうなる前の誠なら逃げていたかもしれない。
「そうかもしれない…でも、それでも、僕は…戦うよ。自分の弱さと向き合うために」
「後悔するよ…?僕に殺されなかったことを。これから必ず出てくる。守れないもの、こぼしてしまう物…。それが君を蝕んで、殺していく。それでも君はやるのかい…?」
「…覚悟は、ある。知ってるでしょう?君が僕の影だと言うなら」
「…」
誠の影は目を閉じ、うっすらと笑みを浮かべる。
そして、その体が青い光へと変化していき、それが凝縮され、1枚のカードへと変化して誠の手に渡る。
「N.C.C.(ネオ・コンステテイト・コマンダー)…」
カードを見た誠は疲れとダメージのせいか、その場で崩れ落ちるように倒れる。
徹や菅原の声が聞こえたように感じた誠だが、今はただ冷たいものの、どこか心地よいまどろみに身を任せるしかなかった。
「…?」
誠のデュエルを静観していたシャドーだが、誠がカードを手にした瞬間、なぜか自分の中の何かが厚くなるのを感じた。
そして、ほんの一瞬だが2本の腕のようなものが自分から伸びているようにみえ、そしてすぐに消えてしまった。
その腕は《C.C.ジェニオン》に似ているように見えた。
「今のは…あいつが、見せたのか…?にしても、何だったんだよ?あいつの影だと…?」
記憶のないシャドーにとって、このような現象は見たことも聞いたこともない。
だが、誠が自分の影を受け入れたことで今の現象が起こったのは間違いないだろう。
「自分の弱さと向き合う…か…」
誠が言った言葉がシャドーの心にも突き刺さる。
弱っちいと思っていた誠だが、そのセリフを口にしているその一瞬だけ、自分よりも強そうに感じられて、つい嫉妬してしまう。
「へっ、青くせえガキが…」