遊戯王VRAINS 幽霊に導かれし少年   作:ナタタク

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特別話3 自由を取り戻せ!

「…ええっと、この領収書が昨日の夜だけの値段…かな?」

霧山城市立病院の自室で、眼鏡を直した菊岡はじーっと誠から受け取った領収書を眺めていた。

移動のためのタクシー代は時間が時間なので理解できる。

しかし、ネットカフェの代金が滞在料+食事代、VR機材レンタル料などのオプションがついた結果、2万円以上の値段になっている。

「…ネットカフェの代金が少々高すぎないだろうか?」

菊岡は渋い顔をしながら、そう呟く。

確かに、長時間ネットカフェに滞在し、食事代やVR機材のレンタル料などを考えればこの値段も妥当といえば妥当かもしれないが、2万円以上は高すぎる。

「いや、それに関しては申し訳ないです…《アカシック・マジシャン》に色々と薦められて、遊びすぎました…本当にすみません」

菊岡の言葉に侑哉はそう謝罪する。

「…いや、この際、この金額については構わない…君がそのステージ2と親しくなったおかげで被害が最小限に抑えられたわけだからね」

侑哉の謝罪に対して菊岡はそう言葉を返す。

実際、侑哉が《アカシック・マジシャン》と親しくなっていなければ、もっと被害が広がっていたかもしれない。

「そ、そうですか…」

侑哉は少し申し訳なさそうな表情をしながら、そう呟いた。

これ以上、お金に関する話はよそうと菊岡は受け取った領収書をポケットにしまう。

そして、本題に入るために侑哉を見る。

「さて…君が神薙侑哉君、いくつもの精霊を持つ異世界のデュエリストだね。どうも1匹だけ特殊なタイプもいるみたいだが…」

『それって、もしかして私のことですか!?』

デュエルディスクから体を出したレイが目をぱちぱちさせながら菊岡に聞く。

「ああ、そうだ…。まさかAIが精霊になるとはね。そういえば、君たちの世界ではステージ2のような精霊に憑依された人間が事件を起こす、なんて話はないのかな?」

「いや、ないですね…精霊に憑依された人間が事件を起こすなんて、この世界に来て初めて知りました…」

「そうか…そうなると君の世界にはステージ2のように人間に憑依する精霊がいないのかもしれないな」

侑哉の話しを聞いた、菊岡はそうまとめる。

「あぁ…そういえば、俺のモンスター達はまるで生きているみたいだって、よく言われます…前に戦ったデュエリストにモンスターが自らの意志でプレイヤーを助けただと!?って驚かれたこともありましたし…」

侑哉は初めてリボルバーとデュエルをした時に、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》が自分を助けたことにひどく驚いていたのを思いだしながら、そう口にする。

「なるほど…そうだとすれば、君の世界では精霊の存在はあまり知られていないわけか…ふむ、どうやら君は元の世界でも特殊なタイプの人間のようだね」

「と、特殊なタイプですか…」

侑哉は何とも言えない表情をしながら、そう呟く。

それも当然といえば当然だ、いきなり特殊なタイプの人間などと言われたら、誰でも反応に困る。

「えーっと、他に何か聞きたいことはありますか?」

「そうだな…君から見て、ステージ2はどのような存在に見える?」

じっと侑哉の眼を見ながら問いかけてくる。

「君は、この世界の住民ではない。だから、精霊やステージ2に関して、私たちよりもフラットな目線で見ることができるかもしれない。深く考える必要はない、ただ率直に答えてくれ」

「そうですね…頑張れば、仲良くなれる存在ですかね…」

「仲良く…?君はステージ2とさらに言えば精霊とわかりあえると思っているのかい?」

「はい…俺は精霊については詳しくありません…だけど、《アカシック・マジシャン》とは仲良くなれた…それに、誠君とシャドーの間には確かな絆があるように思えますから」

侑哉は昨日の夜、誠と話した時のことを思い出す。

シャドーは悪態こそついていたものの、何だかんだで誠のことを心配しているのが目に見えてわかった。

だからこそ、侑哉は精霊ともわかりあえる、そう信じたいと思った。

「それに、多分ですけど…ステージ2が人を襲うのは精霊が憑依したことだけが原因じゃないと思うんです…憑依した人の暗い感情や、欲望なんかに影響されて精霊の力が暴走して…その結果として人を襲ってしまう…俺はそんなふうに思います」

「絆…か」

「へっ、俺とこいつに…?何言ってんだ?」

「なるほど…。面白い見方をするな。いいだろう」

その答えに満足したかのように、菊岡は笑みを浮かべ、コーヒーを口にする。

(仲良くなれる存在…か…)

侑哉の言っていることは現実を知らない絵空事のように聞こえるかもしれない。

しかし、直葉と彼女に憑依した《アカシック・マジシャン》と一緒に遊んでいた侑哉を見ていると、なんだかそれが信じられる気がした。

「だが、サイキック族のステージ2…。彼は想像以上に手ごわい存在のようだ」

「はい。まさかほかの人を操ることができるなんて。おまけに…」

「おそらく、桐ケ谷直葉も同じく操られている可能性が否定できない」

「直葉…」

彼がどのような目的で彼女を洗脳したのかは分からない。

だが、気になる言葉はある。

精霊会の掟、という言葉だ。

(もしかして、精霊界に何かが起こっているっていうこと?その原因はきっと…)

おそらく、原因の1つがシャドーが奪った何かだろう。

だが、シャドーが記憶を失っている以上は何もわからない。

「う…!?」

「どうした!?誠君…」

「そろそろ見えてきたかな…?」

ハアハアと息を整えながら、誠は頭痛と共に流れ込む光景を見続ける。

場所は明日奈が通っている大学で、そこで大学生たちがサイキック族のステージ2によって操られていた。

しかも、操られている人数は既に40人以上になっていて、操られていない学生と操られている学生がデュエルを繰り広げている。

「霧山城キャンパス…姉さんのいる大学にステージ2と直葉が…!たくさんの人が操られていて…」

「何!?でも、どうやって…??」

昨晩のデュエルでは、彼が操ることができた人間は20人程度で、デュエルが可能だったのは5人。

だが、今誠が見た光景ではそれ以上の人数が操られ、デュエルをしていた。

「確かめるためにも、今は現地へ急行すべきだな。ちょうど、馬廻駅に電車が来る。霧山城駅まで移動して、そこからバスに乗るのが一番早い」

「そうですね…行こう、侑哉君!」

「ああ!」

2人は急いで駅に行こうと部屋を飛び出していく。

1人残された菊岡は空っぽになったコーヒーカップをじっと見ていた。

(精霊が精霊の制裁を行う…どうやら、来るべき時が近づいているようだ。桐ケ谷直葉…彼女がこの世界を救うもう1人の戦士になる資格があるか否か…)

 

「着いた!早く行こう!」

「…いや、ちょっと待ってくれ誠君」

霧山城キャンパスに着いた誠はすぐに現場に急行しようとするが、侑哉に呼び止められる。

「どうしたの?」

「もしかしたら、これは罠かもしれない…」

「え…?」

侑哉の言葉に誠はそう聞き返す。

「確か、あのステージ2は自分にプロテクトをかけることで、誠君に気配を察知されないようにしていたはずだ…それなのに、こんな騒ぎを起こして、しかも、それを誠君に見せるなんて…俺達を誘っているようにしか思えない」

侑哉の言葉に誠は沈黙する。

確かに、あのサイキック族のステージ2にはそういう能力があった。

他人を洗脳する能力にばかり目がいって、すっかりその能力について失念していた。

「…でも、罠だとしてもここの人達を助けないわけにはいかないよ!」

「わかってる、もちろんここの人達も助ける…そして、万が一に備えて準備もする」

そう言って、侑哉はデュエルディスクを起動し、ある人物に連絡する。

「花恋、聞こえるか?」

『えぇ、聞こえてるわ…待ちくたびれたわよ』

「ごめんごめん…それで少し頼みたいことがあるんだ」

少し、不機嫌そうに呟く花恋に侑哉は謝罪しつつ、本題へ入る。

『頼みたいこと…?そっちの世界で暴れているステージ2のこと?』

「あぁ…もしかしたら、そっちにそのステージ2が逃げるかもしれないから、俺がいつでもそっちの世界に戻れる準備をしていてほしいことと、そっちの世界にステージ2が現れたら連絡をしてほしい」

侑哉は花恋にそんな頼みごとをする。

サイキック族のステージ2が別の世界に移動できる能力を持っていないとも限らない…そして、別の世界に移動するとしたら、自分達の世界に来る可能性が高い。

そう考えたからこそ、侑哉は花恋にそんな頼みごとをした。

『わかったわ、特徴は昨日聞いた通りで大丈夫?』

「あぁ、それで大丈夫だよ…それじゃあ頼んだよ」

『任せて!―――『侑哉!』』

「葵…?」

『頑張ってね!侑哉!今の私にはこれぐらいしか出来ないけど…侑哉なら勝てるって信じてる』

「…うん、ありがとな!葵…」

自分の恋人である葵の応援に、侑哉は心の奥底から沸き上がってくるものを感じる。

(今なら、誰にも負ける気がしない!)

「お待たせ、誠君…それじゃあ行こう!」

通話を終えた侑哉は、誠にそう声を掛ける。

「うん!行こう!」

2人は一斉に走りはじめ、その間に誠は変身する。

キャンパス内はパニック状態で、教授や警備員の中には既に操られてしまった人もいた。

「ひどい…姉さんたちと、直葉は…!?」

周囲を見渡し、それらしき人物を探し始める中、2人の操られた警備員2人が誠と侑哉に目を向ける。

「デュエル…デュエル…」

2人の左腕にはデュエルディスクが装着されていて、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。

「侑哉君!」

「ああ、分かってる!」

2人はデュエルディスクを展開し、近づく2人を見た。

「「デュエル!!」」

 

警備員A&B

手札

A5

B5

LP4000

 

侑哉&誠

手札

侑哉5

誠5

LP4000

 

「私の先攻…。私は手札から《サイコ・コマンダー》を召喚…」

 

サイコ・コマンダー レベル3 攻撃1400(チューナー)(2)

 

「更に手札からフィールド魔法《脳開発研究所》を発動。その効果により、手札から《クレボンス》を特殊召喚し、《脳開発研究所》にサイコカウンターを1つ置く」

 

クレボンス レベル2 攻撃1200(チューナー)(4)

脳開発研究所 サイコカウンター0→1

 

「なんで、チューナーモンスター2体を…?」

以前に操られた人のデュエルを見ると、本来であればチューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ召喚し、そのままシンクロ召喚に繋げるはずだ。

「手札から永続魔法《脳波接続実験》を発動。そして、現れるがいい、神へと続く未来回路」

警備員が右手を空に掲げると、上空にサーキットが出現する。

「アローヘッド確認。召喚条件はサイキック族チューナーモンスター2体。私は《クレボンス》と《サイコ・コマンダー》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン」

「チューナーモンスターを素材に指定したリンクモンスター!?そんなの、聞いたことないよ!」

「リンク召喚。現れろ、リンク2。《サイコロード・ウィルトシャー》」

黒い坊主頭をして、青色のバイザーをつけていて、緑色のマントとオレンジ色の服のファンタジーに出る貴族のような服装の超能力者が現れる。

 

サイコロード・ウィルトシャー リンク2 攻撃1900(EX1)

 

《ウィルトシャー》の効果。このカードのリンク召喚に成功したとき、リンク素材としたチューナーモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する」

《サイコロード・ウィルトシャー》はペンを出し、後ろに現れた2つのホワイトボードに《クレボンス》と《サイコ・コマンダー》の絵を描き始めた。

いずれも細部まで忠実に表現された絵で、まるで本物と見間違えるようなリアリティを持っていた。

「そして、1ターンに1度、このカードのリンク先に装備しているサイキック族モンスター1体を特殊召喚し、そのモンスターと同じレベルの《ウィルトークン》1体を特殊召喚できる」

絵の中の《サイコ・コマンダー》が飛び出し、同時に紫色の魔法陣の中から本物の《サイコ・コマンダー》が現れる。

 

サイコ・コマンダー レベル3 攻撃1400(チューナー)(2)

ウィルトークン レベル3 守備0(3)

 

サイコロード・ウィルトシャー

リンク2 攻撃1900 リンク 闇属性 サイキック族

【リンクマーカー:下/右】

サイキック族チューナー2体

このカード名のカードのリンク召喚は1ターンに1度しか行えない。

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか行えない。

(1):このカードのリンク召喚に成功したときに発動する。墓地に存在するこのカードのリンク素材となったモンスター2体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(2):このカードが装備しているサイキック族モンスター1体をこのカードのリンク先に特殊召喚することで発動できる。そのモンスターと同じレベルの「ウィルトークン」1体を特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分はサイキック族モンスター以外の特殊召喚を行えない。

 

ウィルトークン

レベル? 攻撃0 守備0 トークン 闇属性 サイキック族

「サイコロード・ウィルトシャー」の効果で特殊召喚される。

このカードのレベルはその効果で対象となったモンスターと同じレベルとなる。

 

「再び現れるがいい、神へと続く未来回路」

「またリンク召喚を…!?」

再び上空に現れるサーキット。

3体のサイキック族はいつでも素材になれるように構えている。

「アローヘッド確認。召喚条件はサイキック族チューナー1体。私は《サイコ・コマンダー》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン。リンク召喚。現れろ、リンク1《サイコロード・スワン》」

一つ目が描かれた白いマスクで顔を隠した、青いマントと白い貴族のような服装の男がフィールドに現れる。

 

サイコロード・スワン リンク1 攻撃500(2)

 

「《サイコロード・スワン》の効果。リンク素材となった《サイコ・コマンダー》を装備する。そして、《サイコロード・スワン》の効果。装備しているサイキック族モンスターを墓地へ送り、私のデッキの一番下のカードを墓地へ送る。そのとき墓地へ送ったカードがサイキック族モンスターの場合、そのモンスターと同じレベルの《スワントークン》を特殊召喚する」

警備員Aはデッキの一番下のカードを手にし、それを全員が見えるように公開する。

「このカードは《サイコ・ウォールド》。よって、レベル4の《スワントークン》を特殊召喚」

フィールドに《サイコロード・スワン》がつけている仮面が浮遊している状態で現れる。

 

スワントークン レベル4 攻撃0(チューナー)(5)

 

「だけど、《サイコロード・スワン》のリンク先は上で、《サイコロード・ウィルトシャー》で、相互リンク状態。これだと、エクストラデッキからモンスターは召喚できない」

誠の言う通り、リンク1の《サイコロード・スワン》のリンクマーカーは上しかなく、もうエクストラデッキから召喚するモンスターを出すスペースはない。

だが、警備員Aは笑みを浮かべ、《サイコロード・スワン》を見る。

「《サイコロード・スワン》の効果。このカードが相互リンクしているとき、このカードと相互リンクしているモンスターをリリースすることで、このターン1度だけリンクマーカーを無視してメインモンスターゾーンにサイキック族シンクロモンスターをシンクロ召喚できる」

「何!?」

《サイコロード・スワン》と《サイコロード・ウィルトシャー》がフィールドから消え、フィールドに残った《スワントークン》が4つのチューニングリングへと変化し、その中に《ウィルトークン》が入っていく。

「シンクロ召喚。現れろ、《サイコ・ヘルストランサー》」

 

サイコ・ヘルストランサー レベル7 攻撃2400(1)

 

サイコロード・スワン

リンク1 攻撃500 リンク 光属性 サイキック族

【リンクマーカー:上】

サイキック族チューナー1体

このカード名のカードのリンク召喚は1ターンに1度しか行えない。

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか行えない。

(1):このカードのリンク召喚に成功したときに発動する。自分の墓地に存在するこのカードのリンク素材となったモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(2):このカードの装備カードとなっているサイキック族モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。自分のデッキの一番下のカードを墓地へ送る。そのカードがサイキック族モンスターの場合、そのモンスターと同じレベルの「スワントークン」1体を特殊召喚する。

(3):このカードが相互リンクしているとき、このカードとこのカードと相互リンクしているモンスター1体をリリースすることで発動できる。このターン、1度だけ自分はリンクマーカーを無視してEXデッキに存在するサイキック族Sモンスター1体を自分メインモンスターゾーンにS召喚できる。

 

スワントークン

レベル? 攻撃0 守備0 チューナー 光属性 サイキック族

「サイコロード・スワン」の効果で特殊召喚される。

このカードのレベルはそのモンスターの効果で墓地へ送られたサイキック族モンスターのレベルと同じになる。

 

「奇妙だ…わざわざ2回リンク召喚を行ってから、その2体のリンクモンスターを墓地へ送ってまでメインモンスターゾーンでシンクロ召喚を…?」

エクストラモンスターゾーンを残しておきたいという目的であれば理解できるものの、それでもその行動は不可解でしかない。

「そして、《サイコ・ヘルストランサー》の効果。私の墓地のサイキック族モンスター1体を除外することで、私のライフを1200回復させる」

 

警備員A&B

LP4000→5200

 

墓地から除外されたカード

・クレボンス

 

「更に、《脳波接続実験》の効果。このカードは墓地のサイコロードリンクモンスターの種類によって効果が決まる。現在の私の墓地のサイコロードリンクモンスターは2種類。よって、私のサイキック族シンクロモンスターの攻撃力は500アップ」

 

サイコ・ヘルストランサー レベル7 攻撃2400→2900(1)

 

「そして、墓地のサイコロード以外のサイキック族モンスター1体を除外することで、私のフィールドにそのモンスターと同じレベルのサイキック族モンスターをデッキから特殊召喚できる。私は《サイコ・コマンダー》を除外し、《静寂のサイコウィッチ》を特殊召喚する」

 

静寂のサイコウィッチ レベル3 守備1200(2)

 

「そして、私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

警備員A&B

手札

A5→0

B5

LP5200

場 サイコ・ヘルストランサー レベル7 攻撃2900(1)

  静寂のサイコウィッチ レベル3 守備1200(2)

  伏せカード1(3)

  脳波接続実験(永続魔法)(4)

  脳開発研究所(フィールド魔法)

 

侑哉&誠

手札

侑哉5

誠5

LP4000

 

「誠君、ここは俺からいかせてくれないか?」

「…わかった、ここは任せるよ」

「ありがとう…それじゃあ、いかせてもらうよ!俺のターン、ドロー!」

 

侑哉

手札5→6

 

「まずは、手札から魔法カード、《サイコロン》を発動!このカードはサイコロを振って出た目によって効果が決まる…2~4の目が出れば、フィールド上の魔法、罠カードを1枚を破壊でき、5の目が出れば2枚破壊できる!ただし、1か6の目が出れば、自分は1000ポイントのダメージを受ける!いくよ、運命のダイスロール!」

出現した大きなサイコロを侑哉は投げる。

そして、地面に落下したサイコロは回転し、しばらく回転し続け5の目で止まった。

「よし!5の目だ!よって、俺は君達の伏せカード1枚と、《脳開発研究所》を破壊するよ!」

サイコロンの効果により、相手のフィールド魔法と伏せカードが破壊された。

「さらに、《脳開発研究所》が破壊されたことにより、サイコカウンターの数×1000のダメージを受けてもらうよ」

「ぐうぅ…!」

 

整備員A&B

LP5200→4200

 

「まだまだいくよ!俺は手札から《EMドクロバットジョーカー》を召喚!そして、《ドクロバットジョーカー》の効果により、デッキから《オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン》を手札に加えるよ!」

 

EMドクロバットジョーカー レベル4 攻撃1800(1)

 

「さらに、手札から魔法カード、《強欲で貪欲な壺》を発動!デッキトップから裏側で10枚カードを除外して、2枚ドロー!」

 

侑哉

手札5→4→6

 

「そして、俺はスケール1の《オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン》とスケール8の《オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン》でペンデュラムスケールをセッティング!揺れろ!運命の振り子!迫り来る時を刻み、未来と過去を行き交え!ペンデュラム召喚!!来い!俺のモンスター達!手札から、《ジャンク・シンクロン》、そして、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》!!」

 

ジャンク・シンクロン レベル3 攻撃1300 (チューナー)(2)

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500(3)

 

「さぁ、いくよ!俺はレベル4の《ドクロバットジョーカー》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!シンクロ召喚!!現れろ!灼熱を纏いし二色の眼の竜!《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500(EX1)

 

紅蓮の炎を纏った二色の眼の竜が現れる。

その竜は《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》に呼応するように咆哮を上げた。

「気合い入ってるな!さぁ、いくよ!俺はさらに、手札から魔法カード、《破天荒な風》を発動!このカードの効果で《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》の攻撃力を次の俺達のスタンバイフェイズまで1000ポイントアップする!」

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→3500(EX1)

 

「バトル!《ファントム・ドラゴン》で《サイコ・ヘルストランサー》に攻撃!夢幻のスパイラルフレイム!!」

《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》から放たれた炎が渦巻きながら、《サイコ・ヘルストランサー》を破壊する。

そして、その一撃により警備員達のライフを削った。

 

警備員A&B

LP4200→3600

 

「さらに、この瞬間!《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》の効果発動!P召喚したこのカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、Pゾーンのオッドアイズモンスターの数×1200ポイントのダメージを与える!俺のPゾーンのオッドアイズモンスターは2体、よって2400ポイントのダメージを与える!喰らえ!幻視の力!アトミックフォース!」

 

警備員A&B

LP3600→1200

 

「さらに、《メテオバースト・ドラゴン》で《静寂のサイコウィッチ》に攻撃!灼熱のクリムゾンバースト!」

メテオバースト・ドラゴンの攻撃がサイコウィッチへと命中し、そのまま破壊した。

「ぐっ…だが、この瞬間、《サイコウィッチ》の効果を…何!?なぜ効果が発動しない!」

「残念だけど、《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》がモンスターゾーンに存在する限り、相手はバトルフェイズ中にモンスター効果を発動できないよ!」

《静寂のサイコウィッチ》の効果が発動しないことに驚いている様子の警備員に侑哉はそう告げる。

「俺は、カードを1枚伏せてターンを終了するよ!」

 

 

警備員A&B

手札

A0

B5

LP1000

場 脳波接続実験(永続魔法)(4)

 

 

侑哉&誠

手札

侑哉6→0

誠5

LP4000

場 オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500(EX1)

  オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃3500(3)

  伏せカード1(3)

  オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン Pスケール1(1)

  オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン Pスケール8(5)

 

「私のターン、ドロー」

 

警備員B

手札5→6

 

「私は手札から速攻魔法《サイキック・サイクロン》を発動。私の墓地のサイキック族モンスター1体を除外し、フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する。私は《静寂のサイコウィッチ》を除外し、伏せカードを破壊する。このカードの発動に対し、相手は対象となったカードの効果を発動できない」

《サイキック・サイクロン》のソリッドビジョンから念導波がこもった竜巻が発生し、伏せカードに襲い掛かる。

 

「くっ…破壊されたか…だけど、破壊された《リ・バウンド》の効果発動!このカードが破壊された時、デッキからカードを1枚ドローできる!」

 

侑哉

手札0→1

 

「手札から魔法カード…《ミラクルシンクロフュージョン》発動。フィールド・墓地のモンスターを素材に、シンクロモンスターを融合素材とする融合モンスターを融合召喚する」

「シンクロモンスターを素材に融合召喚!?しかも…墓地から??」

「私は《サイコ・ヘルストランサー》と《クレボンス》を除外。脳波を変換する美女よ、敵を止める傀儡よ、神の名のもとに一つとなり、新たな力となれ。融合召喚。《アルティメットサイキッカー》」

 

アルティメットサイキッカー レベル10 攻撃2900(EX2)

 

「そして、手札から《サイコ・ウォールド》を召喚…」

 

サイコ・ウォールド レベル4 攻撃1900(2)

 

「《サイコ・ウォールド》の効果…。ライフを800支払い、このターンのみ、私のフィールドのサイキック族モンスター1体を2回攻撃可能にする」

《サイコ・ウォールド》の脳波が《アルティメットサイキッカー》に届き、そのモンスターの体が緑色の光に包まれる。

 

警備員

LP1000→200

 

「バトル…《アルティメットサイキッカー》で《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》を攻撃。サイキックデストロイ」

《アルティメットサイキッカー》が両手に力を籠め、緑色の光線を《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》に向けて発射する。

「《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》の攻撃力は3500!攻撃力2900の《アルティメットサイキッカー》では…」

「私は墓地の《サイキック・サイクロン》の効果発動。エクストラデッキから特殊召喚されたサイキック族モンスターがもともとの攻撃力の異なるモンスターと戦闘を行うとき、このカードを墓地から除外することで、ダメージ計算時のみそのモンスターの攻撃力をもともとの攻撃力に戻し、変化した数値分戦闘を行うサイキック族モンスターの攻撃力をアップさせる」

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃3500→2500(ダメージ計算時のみ)(3)

アルティメットサイキッカー レベル10 攻撃2900→3900(ダメージ計算時のみ)(EX2)

 

サイキック・サイクロン

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の墓地に存在するサイキック族モンスター1体を除外、魔法・罠ゾーンのカード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊する。この効果の発動に対して、対象となったカードの効果は発動できない。

(2):自分フィールドのEXデッキから特殊召喚されたサイキック族モンスターが攻撃力が元々の攻撃力と異なる相手モンスターと戦闘を行うとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。その相手モンスターの攻撃力をダメージ計算時のみもともとの攻撃力に戻す。その後、変化した数値分、戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力をダメージ計算時のみアップさせる。

 

《サイキック・サイクロン》の効果を受け、緑色の光線が竜巻のように回転し始める。

回転によって力を高めたそれは《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》の胸部を貫き、撃破した。

 

「《オッドアイズ》!!ぐうう…!!」

 

侑哉&誠

LP4000→2600

 

「《アルティメットサイキッカー》の効果。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し、墓地へ送ったとき、そのモンスターの攻撃力分ライフを…ライフが、回復しない?」

「《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》はペンデュラムモンスター!フィールド上のペンデュラムモンスターは墓地へ送られるとき、代わりに表向きでエクストラデッキに置く!それに、《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》の効果は相手ターンのバトルフェイズも有効なのさ!」

侑哉は破壊された《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》のカードをデュエルディスクに内蔵されているエクストラデッキに送る。

それにより、《アルティメット・サイキッカー》の効果による回復は不発に終わる。

「だが、まだ攻撃は残っている。《アルティメット・サイキッカー》で《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》を攻撃…」

再び発射される緑色の光線が《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》を消滅させる。

 

侑哉&誠

LP2600→2200

 

「《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》がフィールドから消えた以上、《アルティメットサイキッカー》の効果は発動する…」

 

警備員A&B

LP200→2700

 

「だけど、この瞬間!手札から罠カード、《オッドアイズ・リライト》を発動!このカードは自分フィールドのオッドアイズモンスターが2体以上破壊された時に手札から発動できる!EXデッキから破壊されたオッドアイズモンスター以外のオッドアイズモンスターをその召喚法扱いで特殊召喚できる!」

破壊された《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》と《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》の想いが光となって空へと舞う。

「闘いに倒れし同胞達の魂よ!今こそ、その想いを重ね、新たな希望を産み出せ!リライト・シンクロ召喚!現れろ、《覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン》!!」

二色の眼を持つ白き竜が現れる。

その竜が放つプレッシャーはこれまでの侑哉の精霊とは比べものにならなかった。

 

覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン レベル8 攻撃3000(EX1)

 

「そして、《オッドアイズ・ウィング・ドラゴン》の効果発動!シンクロ召喚したこのカードが存在する時、バトルフェイズに発動できる!相手フィールド上のレベル5以上のモンスターを全て破壊する!」

「だが、《アルティメットサイキッカー》はカード効果では破壊されない」

《アルティメット・サイキッカー》は《覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン》の青いプリズムの翼から次々発射されるビームを緑色のバリアで受け止める。

バトルフェイズの度にレベル5以上という制約があるものの、相手フィールドのモンスターをすべて破壊するその効果は脅威としか言いようがない。

「ターン…エンド…」

「この瞬間、《オッドアイズ・リライト》の効果発動。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に墓地へ送られる。けど、《オッドアイズ・ウィング・ドラゴン》はペンデュラムシンクロモンスター。よって、表向きでエクストラデッキに置く」

 

オッドアイズ・リライト

通常罠カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上の「オッドアイズ」モンスターが破壊されたターンに発動できる、EXデッキから破壊された「オッドアイズ」モンスター以外の「オッドアイズ」モンスター1体を選んでその召喚法扱いで特殊召喚できる。

(2):このカードの効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに墓地へ送られる。

(3):自分フィールド上の「オッドアイズ」モンスターが2体以上破壊されたターン、このカードは手札から発動することもできる。

 

警備員A&B

手札

A0

B6→4

LP2700

場 アルティメットサイキッカー レベル10 攻撃2900

  サイコ・ウォールド レベル4 攻撃1900

  脳波接続実験(永続魔法)(4)

 

 

侑哉&誠

手札

侑哉0

誠5

LP2200

場 オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン Pスケール1(1)

  オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン Pスケール8(5)

 

「僕のターン、ドロー!」

 

手札5→6

 

「侑哉君…ペンデュラム召喚、使わせてもらうよ」

「ああ!」

エクストラデッキの共有ができないため、誠は侑哉のエクストラデッキに眠る《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》を使うことができない。

しかし、今の手札であれば十分だ。

「動かざる重心に宿りし折れざる意志の力、時と世界を超え、運命を超える導となれ!ペンデュラム召喚!現れろ、僕のモンスター!」

侑哉のデュエルで見たペンデュラム召喚と彼の説明でそれについてはある程度理解できている。

あとはそれを使いこなせるかどうかだ。

「《C.C.バロール》、《C.C.フェニックス》、《C.C.イーゼル》、《C.C.ウルフ》!!!」

誠の手札から一気に4体のC.C.がフィールドに飛び出す。

 

C.C.バロール レベル5 攻撃1900(1)

C.C.フェニックス レベル4 攻撃1600(3)

C.C.ウルフ レベル3 攻撃1000(2)

C.C.イーゼル レベル3 攻撃1200(5)

 

「おぉ!やったな!誠君!ペンデュラム召喚に成功したじゃないか!」

「うん!そうだね…」

「…さぁ、ここから誠君がどう動くのか魅せてもらうよ!」

侑哉はそう言って、誠に目を移す。

その表情は楽しげで、誠がここからどう動くのかが楽しみでしょうがない、そんな表情だった。

「なら…僕はペンデュラム召喚した《イーゼル》の効果発動。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキからC.C.1体を手札に加える。僕は《C.C.リザード》を手札に加える。そして、このカードは僕のフィールドにC.C.が存在するとき、手札から特殊召喚できる」

 

C.C.リザード レベル1 攻撃300(4)

 

「現れろ!星を繋ぐサーキット!」

右手に青い光が宿り、その手を空に掲げると光が飛んでいく。

そして、上空は午前中の雲一つない青空から一転し、田舎で見るような星空に変わっていき、サーキットが出現した。

「アローヘッド確認。召喚条件はC.C.モンスター2体。僕は《フェニックス》と《バロール》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク2!《C.C.ガンレオン》!」

 

C.C.ガンレオン リンク2 攻撃2000(EX2)

 

「リンク素材になった《バロール》の効果発動。このカードがC.C.のリンク素材として墓地へ送られたとき、墓地からこのカード以外のリンク素材となったモンスター1体を手札に加える。僕は《フェニックス》を手札に戻す。そして、再び現れろ、星を繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件は効果モンスター3体以上。僕は《C.C.リザード》、《ガンレオン》、《イーゼル》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク4!《C.C.リ・ブラスタ》!」

 

C.C.リ・ブラスタ リンク4 攻撃2800(EX2)

 

「そして、リンク素材となった《C.C.リザード》の効果発動!相手フィールドに《リザードテイルトークン》1体を守備表示で特殊召喚!」

 

リザードテイルトークン レベル1 守備2000(3)

 

「そして、《リ・ブラスタ》の効果発動。このカードのリンク召喚に成功したとき、リンク素材となったモンスター1体をこのカードのリンク先に特殊召喚できる。僕は墓地の《C.C.ガンレオン》を特殊召喚!」

 

C.C.ガンレオン リンク2 攻撃2000(3)

 

「再び現れろ、星を繋ぐサーキット!」

「ぐう…??」

再び星空にサーキットが出現し、このターンで3回目のリンク召喚を行おうとする誠に警備員の2人は動揺する。

「アローヘッド確認。召喚条件はC.C.モンスター2体以上。僕は《ガンレオン》、《ウルフ》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、リンク3!《C.C.ジェニオン》!」

 

C.C.ジェニオン リンク3 攻撃2500(5)

 

「そして、《リ・ブラスタ》の効果発動!このカードと相互リンクしているC.C.リンクモンスターの攻撃力をターン終了時までこのカードに加える!」

《C.C.リ・ブラスタ》に赤いアーマーが装着され、出力上昇と共に両腕からビームソードを発生させる。

「相互リンクしているのは《ジェニオン》!よって、攻撃力は2500アップ」

 

C.C.リ・ブラスタ リンク4 攻撃2800→5300(EX2)

 

「バトル!《リ・ブラスタ》で《アルティメットサイキッカー》を攻撃!キャリバー・ナックル!」

ビームソードを発生させた腕を回転させながら《アルティメットサイキッカー》に接近する。

腹部を両腕で貫いた後で更に出力を上昇させ、そのまま真っ二つに切り裂く形で撃破した。

 

警備員A&B

LP2700→300

 

「そして、《ジェニオン》でダイレクトアタック!インパクトダガー!」

ナイフを抜いた《C.C.ジェニオン》が大きくジャンプをして2人の警備員の正面に立つ。

そして、手加減をしたのかナイフを投げ捨て、少し距離を取ってから彼らの額に両肩から発射したゴム弾を当ててケ絶させた。

 

警備員A&B

LP300→0

 

倒した警備員は2人とも気を失い、その場で倒れる。

しかし、まだまだ多くの洗脳されたデュエリストがそこにいた。

「これじゃあラチが明かない!!」

「誠…本命の奴が見えたぜ」

「え…!?」

誠は北にある3つある校舎のうちの中央、図書館のある建物に目を向ける。

そこからかすかに《アカシック・マジシャン》の気配を感じた。

「直葉が…直葉があそこにいる!いや…待って、これは!!」

更にもう1つの気配を感じ、それは学生会館4階の放送室からで、そこにはサイキック族のステージ2の気配を感じた。

「…学生会館4階の放送室からサイキック族のステージ2の気配を感じる!」

「放送室…?なるほど、そういうカラクリか…」

誠の言葉を聞いた侑哉は納得したような表情を浮かべて、そう呟いた。

「どういうこと?」

「あのステージ2が前より多くの人達を操れた理由がわかったよ…まぁ、まだ推測の域を出ないけど…」

侑哉はそう言って、さらに言葉を続けた。

「放送室からはこのキャンパス全体に放送を流せる…だから、それを利用してこのキャンパスの人達に精神制御を掛けたんだ、まぁ、さすがに全員とはいかなかったみたいだけどね」

「なるほど…だから、こんなに大勢の人達が操られているんだ…」

侑哉の言葉に誠は納得する。

本人は推測の域を出ないと言っていたが、まず間違いないだろう。

「じゃあ、今頃姉さん達も…」

「…きっと、大丈夫だよ…見た感じ操られていない人達もいるわけだし、明日奈さん達もきっと無事さ!」

侑哉はそう言って、笑みを浮かべた。

「うん…そうだね、そう信じよう!」

「…よし!それじゃあ俺はサイキック族のステージ2の所に行くよ、誠君は《アカシック・マジシャン》の所へ行ってくれ!」

「わかった!侑哉君、放送室の場所はわかる?」

「あ、そういえば…知らないな」

侑哉は困ったような表情をしながら、そう呟く。

別の世界から来た侑哉は当然、このキャンパスに来るのは初めてであるため、放送室がどこかは知らない。

『それは、問題ありません!このキャンパスについては私が調べて、放送室の場所にマスターを案内します!』

「さすがはレイ、頼りになるな!それじゃあ案内は頼んだよ!」

『お任せください!マスター!』

レイは笑みを浮かべながらそう言った。

「それじゃあ、行こうか!」

「待って…きっと、姉さんたちは学生会館にいるから、できたら無事を確かめてほしいけど、頼めるかな?この姿じゃ、会うわけにはいかないから…」

今の誠は変身していて、ステージ2と戦うための姿になっている。

万が一そのことを知られたら、止められるだけならまだいい。

今回のようなステージ2によって積極的に狙われる可能性があり、彼女を巻き込みたくない。

「そうだよな…分かった。明日奈さん達のことは任せろ!」

「うん…じゃあ、行こう!」

誠は図書館へ、侑哉は学生会館へ向かって走っていった。


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