名前:綾乃 桂子(あやの けいこ)
性別:女
年齢:16
誕生日:10月4日
CV(イメージ):日高里菜
国籍:日本
身分:K県立霧山城高等学校学生
趣味:野良猫の世話
家族構成:両親と飼い猫1匹
好きなデュエリスト:ブルーエンジェル(デュエルは最近始めたばかり)
性格:引っ込み思案だが、努力家。ある理由で異性が苦手。
好きな食べ物:チーズケーキ
「う、うう、うう…」
ゆっくりと目を開き、ぼやけた視界をどうにかしようと目をこする。
けだるい感覚がし、こうして腕を動かすのも今は辛い。
「ここ…は…?」
視界が元へ戻っていき、ひびが入ったり、壁紙がはがれている部分のある天井が見えてくる。
ドアが開き、そこから見覚えのある男性が入ってくる。
「どうだ?調子は」
目を覚ました誠を見た彼は安心したように見つめる。
「あなたは、ホットドッグ屋さんの…」
「草薙だ。君は1日ここで寝ていたんだ」
「1日…。そうだ、直葉は…!うう…!」
直葉のことを思い出した誠は起き上がろうとするが、体に力が入らず、起き上がれない。
これが今の自分の体かと疑ってしまう。
「無理もない。LINKVRAINSで大きなダメージを受けたんだ。本当なら体に障害が残ってもおかしくない。1日で意識を取り戻すことができているだけでも奇跡だ」
「はあ、はあ…」
「直葉…君と一緒にいた女の子は今、病院で眠ってる。意識不明で、今も回復のめどが立っていない」
「直葉が…。くそう…くっそぉ…!」
力が入らず、ただ丸めただけの手を敷布団にたたきつける。
意識不明になっている原因はあのステージ2であることは分かっている。
しかし、誠はデュエルに持っていくことができないまま、彼が逃げるのを見ていることしかできなかった。
「草薙さん、彼は目を覚ましたか?」
「ああ。入ってきてくれ」
今度は遊作がデュエルディスクをつけた状態で入ってきて、悔しさで涙をためている誠を見る。
「遊作…君…?」
「お前には、いろいろと聞きたいことがある」
遊作は誠の枕元近くで座り、じっと彼の眼を見る。
「ここは俺の家だ。だから…ここではお前に何をしようと自由、ということだ」
「自由…それはどういう…」
「お前には、聞かなければならないことが3つある。1つ、あの黒い烏の化け物が何者かについて。2つ、奴が使ったシンクロ召喚について。3つ、お前本人についてだ」
「僕に…ついて…」
「お前は奴の居場所を追跡しているわけでもないのに気づいていた。つまりは奴とお前に何かがあるということだ」
同年代なのに、自分とは違ってかなりクールで優れた分析をする彼に驚いたが、気になるところがあった。
「黒い烏の化け物…?なんで、君がそれを知ってるの…?」
「お前と戦ったプレイメーカーというアカウント。それは…俺だ」
「うぉぉーいい!?遊作!?何あっさりと自分の正体をバラしてんだよー!?」
遊作のデュエルディスクから飛び出したAiは両腕をバタバタ振りながら遊作に叫ぶ。
本来なら布団から飛び出してしまうくらいびっくりするのだが、この状態では驚くことも飛び出すこともままならない。
「黒い…精霊?」
「精霊、というよりはバカなAIだ。名前はAi」
「馬鹿な、は余計だ!!俺はスペシャルにグレートでハンサムなうえにキュートなAIだぁー!!」
「さあ、1つずつ質問に答えてもらうぞ」
「無視すんなー!!」
Aiの言うことなど無視し、遊作はじっと誠を見る。
ここが彼の家だということ、そして彼がプレイメイカーの正体だということはあそこで意識を失った後、彼によって命を救われたということになる。
その恩を返すためにも、この質問に答える必要があるだろう。
「分かった。じゃあ…その1つ目の質問から答えるよ。あれはステージ2。精霊に取り付けれた人間が2段階目になってしまう姿だよ…。あのカラス姿になった人の名前は確か…大原信也」
「精霊?なんだ、それは」
「信じられないかもしれないけれど、デュエルモンスターのことだよ。精霊は…人間にとりつくことができるんだ…」
「精霊…モンスター…」
前に遊作なら、そんなものは存在しないと否定したかもしれない。
しかし、彼はデータストームの中に何度も入っており、その中にいる道のモンスターたちの姿をおぼろげながら見ており、そこにアクセスして手に入れたモンスターたちが今、エクストラデッキの中にいる。
その筆頭が《ファイアウォール・ドラゴン》だ。
「では、精霊にとりつかれた人間はどうなる?」
「ステージ2になった場合は体に変化が起こって、暴走する。暴走した後は…」
その後どうなるか、それを誠は答えることができなかった。
自分に精霊に憑依された人間のことを教えた菊岡は彼らがそのあとどのような段階になっていくのかを教えなかった。
立件できない犯罪を重ねるステージ2を警察は逮捕することなく、処理することが多いということだけだ。
「答えられないか…。まぁいい。では、2つ目のシンクロ召喚についてだ」
遊作本人はシンクロ召喚を見ていない。
草薙がLINK VRAINS全体をハッキングし、それによって見ているため、シンクロ召喚の内容については彼から話を聞くことで知っている。
分かることがあるとしたら、リンクモンスターと同じくエクストラデッキから特殊召喚されるモンスターであること。
そして、自分フィールドに存在するチューナー1体を含めたモンスターを墓地へ送り、そのモンスターたちのレベルの合計と同じレベルのシンクロモンスターがフィールドに出る。
モンスターを召喚する方法は理解したが、問題は彼がどうやってシンクロモンスターを手に入れたか、そしてシンクロ召喚という召喚法を習得したのかだ。
「わからない…。僕も、シンクロ召喚なんて見たことも聞いたこともないし、それを使ったデュエリストも初めてだから…」
「これについては情報を聞き出せそうにないな。あいつ、嘘ついてないみたいだし」
Aiは表情筋などの顔の筋肉の動きから、誠が嘘をついていないかを確かめていた。
しかし、それらにうそをついた時に見せるような、いつもとは違う動き方が見られない。
AIであるため、第三者としてみることができると勝手に思っているのだろう。
「なら、最後の3つ目だ。お前は何者だ?」
「僕は…結城誠。霧山城市から来たんだ」
「霧山城市は…確か、K県にある田舎の市だな。そこからあのステージ2っていう化け物を追いかけてきたのか?」
「はい。取りつかれた人は霧山城市に観光に来ていて、このDen Cityが出身だということを知ったので…」
「なるほど…。じゃあ、その情報の出どころは?」
「霧山城市立病院の菊岡先生から聞いたよ。彼が…僕に精霊についても教えてくれて…」
菊岡、という名前を聞いた草薙は何か考えるような表情を見せる。
そして、1つの名前を思い出すと彼の眼を見て、確認するように尋ねる。
「その菊岡っていう医者のフルネームは菊岡誠二郎って名前かい?」
「はい。知ってるんですか…?」
「名前を聞いたことがあってね。詳しいことは思い出せないが…」
なぜ、名前だけ思い出せるのだが、その人物が何者なのかを思い出せないのか、草薙は疑問に思った。
ハッカーとして、遊作とともに仕事をしており、重要な人物の名前と素性については頭に叩き込んでいる。
仮に忘れてしまったとしても、名前を言われたらすぐに思い出せるくらいのバックアップもできている。
名前を憶えているということは、何か重要、もしくは警戒すべき存在として彼の存在を認識しているということになる。
にもかかわらず、名前を思い出せても彼の素性を思い出すことができなかった。
質問に答え終えた誠はゆっくりとベッドから出て、両腕を使って匍匐するように移動する。
「おい、まだ体が回復しきれていないだろう!?LINK VRAINSへ行ったとしても、そんな回復していない体だとスピードデュエルもできないぞ!?」
「それでも…行かなきゃ…直葉が…捕まったままで…」
「だからなおさらだ。今、俺たちがその男を探している。見つかるまで、君は回復に専念するんだ」
弱った誠を草薙は両手で持ち上げ、ベッドへ送り返す。
掛け布団をかけさせ、彼の肩をポンポンとたたく。
「大丈夫さ。君は1日で意識を回復できるくらいにまで回復したんだ。見つけたことには、元通りに動けるくらいになっているさ」
安心させようと、優しい笑みを浮かべて答える草薙を見た誠はゆっくりと目を閉じ、眠りについた。
眠った誠のことを遊作の家のお手伝いロボットのロボッピに任せ、遊作と草薙は家の前に置かれているホットドッグ屋の営業車に入り、そこにあるコンピュータを使ってステージ2の居場所を探し始めた。
LINK VRAINS内だけでなく、Den Cityでも探さなければならないことから、誠が言っていた大原信也という人物を洗い出す必要がある。
LINK VRAINSにアカウントがあることもあり、彼の身元は簡単に特定することができた。
遊作と同じ16歳で、違う学年に所属する、遊作と同じ学校の生徒。
帰宅部で一人っ子、そして両親がいること、そしてLINK VRAINSだけでなく、親に内緒でネットゲームのアカウントも持っている、はっきり言ってしまうとどこにでもいるヲタクの高校生だ。
それだけであればかわいいものだが、問題は屈託した人格である場合だ。
それが精霊に憑依されたことで解放された場合、挑発的で不快な言動となり、暴走してしまう可能性は大だ。
「草薙さん、大原信也の居場所はどうやって調べる?」
「Den Cityは広い。まずは彼の自宅、そして彼が行く可能性のある場所をリストアップして、そこから洗い出そう」
Den Cityにあるカメラやネットとつながっているデュエルディスクやスマホであれば、草薙と遊作の腕があれば簡単にハッキングすることができる。
しかし、問題はハッキングした後の処理で、自分たちの痕跡を消さなければならない。
そのため、むやみやたらとハッキングを繰り返すと自分たちの身に危険が及んでしまう。
LINK VRAINSにハッキングすることで、彼の住所と電話番号、メールアドレスを手に入れると、さっそく彼の自宅の端末へハッキングする。
そこにあるカメラ機能を使って、家の中の状態を確かめるためだ。
「この端末は…奴の部屋の中のものか?暗い上に、菓子やジュースのゴミがある」
根暗な性格のヲタクの典型的な部屋だ。
自分の部屋の中が殺風景な空間であるため、人のことが言えない遊作だが、こういう部屋よりはマシだという自覚がある。
最近、自分に絡んでくる島というクラスメートがこれと同じような部屋でないことを願いながら、遊作は同じ部屋にある彼のノートパソコンにハッキングする。
市販のウイルス対策ソフトが入っているようだが、その程度では訓練している遊作や草薙にとって、障害にすらならない。
すんなりと中に入ることに成功し、パスワードも解読に成功する。
「ブログか…」
「最近では日記代わりにブログを書く人が多いからな。別に不思議なことじゃない。彼の場合は周りに見られないようにロックをかけられているが、問題は…」
「最近の文章の内容だな」
誠の言っていることが正しければ、精霊に憑依されて戻ってきた彼と普段の彼とでは様子が異なる。
そのため、文章にも違いが現れてもおかしくない。
「更新自体は毎日のように行われている。それは彼が霧山城市から帰ってきた日からも変わっていない。だが、少しずつ書いている内容に変化が出ている…」
精霊に憑依され、人格に影響が出ている証拠の1つとして、ブログに掲載されている画像の変化がある。
普段はアイドルやアニメの美少女キャラの画像が貼られていることが多いが、最近になってから、現実世界やLINK VRAINSのかわいらしい容姿の少女や女性の盗撮写真が貼られるようになっている。
「うん…?この子は…」
貼られている写真の中にある1人の少女を見た草薙は何かを思い出したのか、最近のDen Cityのニュースの確認を始める。
「草薙さん、何かわかったのか?」
「いや、見覚えのある写真なだけだ。確か…あった!!これは…!!」
草薙が見つけたニュースはDen Cityでの意識不明者に関するものだ。
例のブログに貼ってある少女とそのニュースにある写真の少女が一致している。
おまけに、ニュースサイトではその少女は1週間前から突然LINK VRAINSからログアウトできなくなり、意識不明の状態になっているという。
それは今、現在進行形で意識不明となった直葉とほぼ同じで、彼女のアカウントについても消息が分かっていない。
「ブルーエンジェルの時は、アカウントそのものが行方不明になるということはなかったが…」
先日のブルーエンジェル=財前葵という少女がハノイの騎士によって、暴走させられた挙句、意識不明となった事件を思い出す。
そのときは彼女のアカウントはSOLテクノロジー社セキュリティー部長であり、彼女の兄である財前晃が抑えており、ブルーエンジェルも意識を取り戻していなかったが、アカウントそのものが行方不明になることはなかった。
「奴はリボルバーとデュエルをしていた。そして、リボルバーは彼に敵意を向けていたことは彼から聞いている。ということは…」
「ハノイの騎士とは関係ない…ということか…。だが、このまま放置するわけにもいかないだろう」
精霊に取りつかれた彼は3VS1という状況に途中から持ち込むという卑怯な手を使ったものの、あのリボルバーを倒した。
そんな彼がLINK VRAINSで暴れまわると、以前のハノイの騎士による《クラッキング・ドラゴン》を使ったLINK VRAINSでの破壊活動を上回る人的被害が発生することが目に見えている。
そうして、仮にLINK VRAINSが閉鎖されるようなことになった場合、遊作たちはハノイの騎士を追いかけるための手段を失ってしまう。
「遊作。あいつの次のターゲットがわかったぞ」
「それはいったい…」
「あいつが次に狙っているのは…財前葵だ」
昨日の深夜の更新されたブログには、遊作の同級生である葵の姿が写った写真が載せられていた。
「ハア、ハア、ハア…」
「もう動けるようになったか。大したものだ、戻ってきたときにはかなりのダメージを受けていたにもかかわらず…」
ハノイの騎士のサイバー空間の中で、AIのデュエリストを相手にリハビリ代わりのデュエルをしているリボルバーの背後に青が混じった灰色の髪をオールバックにした、白衣の男性が現れる。
デュエルを終えたリボルバーは息を整えながら、彼に目を向ける。
「申し訳ありません。卑怯な手を使われたとはいえ、あのような男に敗れるとは…」
「構わんさ。だが、我々としても奴は不確定要素でありすぎている。ところかまわず牙をむく奴をこのまま放置するわけにはいかん。新たな戦いのためにも…」
白衣の男は左手に握っている青いキューブを見る。
来るべき時のためにしてきた準備のすべてがそれにあり、それを邪魔されるわけにはいかなかった。
「リボルバー…狂犬である点ではプレイメーカーよりも奴が脅威だ。是が非でも止めろ。そのためなら…」
「ええ。わかっています」
「へへーん!今度は、こんな感じでーー!!」
「兄貴、かっこいー!」
遊作のデュエルディスクの上で、ボディビルダーのように赤いパンツ1枚はいた状態で、ムキムキボディーとなり、ポーズを見せるAiにロボッピはすっかり魅了されている。
彼のデュエルディスクは鍵付きの棚に入れられていたが、実はロボッピの手で解錠された上、こうして外で面白おかしく楽しんでいる。
布団の中からその光景を見る誠は苦笑した。
(にぎやかだな…。それにしても、ロボッピってこんなに感情豊かだっけ…?)
自分の家にいるロボッピのことを思い出す。
最近組み立て終えたばかりの彼女は現在、明日奈の店の掃除の手伝いをしている。
明日奈もロボッピに話しかけたりするが、ここまで感情豊かにはならないし、会話パターンもそんなにない。
Aiの影響なのか、それとも遊作による改造の影響なのかはわからないが、少しうらやましく思う。
(そういえば、シャドーはどうしたんだろう…?)
天井に目を向け、誠はシャドーのことを考える。
意識を取り戻してから、シャドーの声が聞こえてこない。
1日で意識を取り戻すくらいの回復力があることから、彼がいなくなったことは考えられないが、おそらくLINK VRAINSでのダメージの影響で眠っている可能性がある。
「あ…ヤバい!!!なぁ、そこの兄ちゃん!俺らが遊んでたこと、遊作には黙っててくれー!」
玄関のドアが開く音が聞こえ、ロボッピが大急ぎでデュエルディスクを元の棚までもっていく。
しばらくして、遊作が誠のもとへ戻ってくる。
「何か…わかった?」
「あんた、奴の居場所が分かるらしいな」
「うん…。すごい頭痛がするから、あんまりありがたいものじゃないけど…」
「あんたと、手を組みたい。あのステージ2という奴を倒すために」
手を組みたい、という遊作の言葉に驚いた誠は体を起こす。
2人が調べている間で、体を起こすことができるくらい回復に成功しており、これなら、夕方までには完全回復に持ち込むことができる。
「奴の正体である男の家の端末やパソコンをハッキングした結果、奴が捕らえたアカウントのデータを持っていることが分かった。だが、おそらく奴をデュエルで倒さない限り、捕らえられたアカウントを解放するのは難しい」
「うん…そうだろうね…」
相手はスキルで捕らえたアカウントを召喚し、味方としてデュエルに参加させることができる。
おまけにシンクロ召喚という未知の召喚法を使うことができることから、強力なデュエリストになっていることもわかっている。
そんな彼を倒すのは至難の業で、少なくとも1人で戦うのは無理だ。
「今、奴に勝つための手段として、最善なのは現実世界で奴を捕まえることだ。少なくとも、そうすればスピードデュエルに持ち込むことはない」
「でも、現実世界でどうやって捕まえるの…?」
遊作のいう通り、スピードデュエルのない現実世界であれば、LINK VRAINSにいるよりも捕まえやすいかもしれない。
しかし、ステージ2は普通の人間とは違い、高い身体能力や憑依した精霊の能力を行使することもできる。
無傷では済まない可能性が高いうえ、町に被害を与える恐れがある。
「あんたはステージ2の居場所をつかむことができる。そして…奴が次に捕まえようとしている相手はすでに分かっている。彼女だ」
そういって、遊作はプリントアウトした葵の画像を誠に見せる。
「まさか、LINK VRAINSだけでは飽き足らず、現実でもさらおうと…」
「精霊による乗っ取りが進んでいるということだろう。幸い、彼女の家の場所はわかっている。その近辺に張り込めば、確実に奴を見つけることができる」
「それで、彼が彼女を捕まえる時間は?」
「奴のブログをハッキングして調べた結果、今夜の7時から8時の間だということが分かった。頼めるか…?」
調べ始めてから、2時間近くしか経過していないにもかかわらず、ここまで情報を得た上に計画を練っていることに誠は驚いた。
ハッカーである草薙の協力を得ているとはいえ、本当に彼が自分と同じ高校生なのかと疑ってしまう。
彼がなぜプレイメイカーを名乗り、ハノイの騎士と戦うのか、そして彼がなぜ自分とは無関係であるステージ2との事件に首を突っ込むのかはわからないが、自分1人ではどうにもならないことだけはわかっていた。
遊作のような強い味方が必要だ。
「わかった…。僕も、君流にいうと、戦わなきゃいけない理由が3つあるんだ…」
「3つ…」
「1つ、この事件は僕の故郷で起こっていることで、Den Cityはそれに巻き込まれた。だから、僕自身でけじめをつけないといけない。2つ、ただデュエルで勝つだけじゃだめだ。少なくとも、僕が彼と戦って勝たないと、彼を精霊から解放することができない。3つ、彼は直葉を…僕の幼馴染をさらった。彼女を救い出さないといけない。…どうかな?僕なりの3つの理由は」
「…悪くない。少なくとも、俺よりは健全だ」
「え…?」
「こっちの話だ。頼んだぞ、結城誠」
「…誠でいいよ、遊作君」
苦笑した誠は遊作に右手を差し出す。
なぜ差し出されたのかわからない遊作は何もせず、じっとその手を見ている。
「握手、だよ。一緒に戦うんだから…」
「そうか…」
遊作は誠の右手を握った。