人里らしきものを訪れると突然博麗神社という場所に連れてもらうことに。
追記 後から手直しさせて頂きました。
「あのー。慧音に質問良いかな?」
歩き出してすぐに大樹は口を開いた。
「ん?何だ?」
「その博麗神社という場所にはどれ位かかるの?」
「そうだなぁ……数時間はかかると思っておいた方がいいぞ。」
数時間か……。先程の下山で体力が消耗したので、足がもつかどうか少し心配だ。
「了解。それまでに幾つか質問良いかな?」
「分かった。ただ私が答えられる範囲でな。」
「ありがとう。早速だけど、『博麗神社』には一体何をしに行くのかな?」
「そこを説明する為にまず幻想郷について軽く説明しておく。いいか?」
「その事も後から聞こうと思っていたんだよ。」
「分かった。ではまず幻想郷から。幻想郷は大樹の住む日本という場所と同じだ。」
日本語が通用している辺りから、おおかた幻想郷が日本である事は推測出来ていた。だがこの場所の存在を何一つ知らなかったのは何故なのだろうか。
「幻想郷なんて言う地名なんて聞いた事無いよ。」
「ふむ。確かに幻想郷と言う名は誰も知らないだろうな。一応日本の何処かの1部分らしい。では次に何故日本ではこの場所が知られていないかだが。」
「日本の何処か……? どんな科学を使ってもとても日本の1部分を隠すことなんて出来なさそうだけど。」
日本の1部なのに世界で誰も知らないとなると……。大樹は誰かが幻想郷を隠していると思った。
「昔、妖怪の賢者が幻想郷と呼ばれる1部分を博麗大結界という結界で覆い隠したらしい。」
いかにも異世界らしい言葉が出てきたものだ。妖怪、それに結界とは……?
「結界…。その目的は?」
そもそも何故そのような事をする必要があるのだろうか。それに結界でうまく隔離出来るものなのか?
「大樹の周りでは妖怪を信じる人はいないだろうが…。実際、昔日本にはたくさん妖怪が住んでいた。この幻想郷は妖怪が特に集まっていた場所だった。」
「…妖怪、か。俺は今まで見た事が無いけど。」
「まぁそうだろうな。」
確証を持って見た事は無いので、嘘ではない。
「妖怪が集まっていた幻想郷にも人は住んでいた。だが500年前に人間の中でも力を持つ…妖怪退治を行う者が現れ、幻想郷に入ってきた。」
「ふむ。」
漫画や小説では妖怪と戦う人間の姿が描かれるのは多いので、そういう人達がを想像した。
「その人間達が原因で元々幻想郷にあった妖怪社会のバランスが壊れることを防ぐ為に妖怪の賢者が結界を張って外の世界と封鎖した。」
先程考えていた作り話のそれと同じで、結局人間が妖怪に勝ってしまったらしい。……まあこういうのは全て俺の予想だけど。
「そんなこと全然知らなかったよ。」
「幻想郷が外の世界と切り離されると次第に人間社会から幻想郷は忘れ去られてしまったらしいな。」
500年も前から隔たれ、文献が何一つ見つからないのなら、人々の歴史から忘れ去られてもおかしくない。
「なるほど。」
「結界は今も張り巡らせてはいるが完璧ではない。たまにどこかに綻びが生まれる。」
「綻びがあるとどうなるんだ?」
「たまに外の世界の人間…私達は外来人と呼んでいるが。その外来人が幻想郷に迷い込んでしまうらしい。まぁ、実は綻びが原因では無く妖怪の賢者当人が外来人を攫ってしまうとか。」
門番が大樹に対して言っていた『外来人』とは、要するに幻想郷の外から来た人間のことらしい。
「外来人を攫ってどうするんだ?」
「さっき見たとおり、幻想郷に人間が住んでいるのは人里のみ。対して妖怪は山のように存在する。幻想郷では妖怪と人間との間に共存する為に約束事を設けているが…不満を持つ妖怪は多い。」
500年前の因果とは違って、幻想郷に残った人間は妖怪と共存を選択したみたいだ。
「不満って……。襲ったりするのか?」
「襲うだけならまだ可愛い方だな。……妖怪には人喰いもいるからな。共存の為だとはいえ、欲求を抑えることは難しい。」
……だいたい予測出来た。
「つまり、その不満を持つ妖怪の為に…?」
「実際その場面を見たことはないから断定は出来ないのだけどな。」
この話を聞く限り、妖怪に誰にも喰われず、それ以上に会わなかったのは結構な幸運ではないのか?
……今頃になって背筋が凍る。
「幻想郷も複雑だね。」
「その複雑な幻想郷について説明する場所が博麗神社…。だが外来人が博麗神社までたどり着けるのはほんの少しだけだ。」
「もしかしてたどり着く前に妖怪に襲われるのか?」
「そういう事だ。博麗神社に行くまでには妖怪が多く潜む道を行かないと行けないのでな。大樹の護衛の為にも私が面倒を見ることになった。」
「面倒を見るって…慧音は俺より身長低いし。」
妖怪と共に生活出来る分、まだ俺よりも強いかもしれないが……。
「大樹からしたら私は少女かも知れないが私は里で自警団…君の世界での警察?みたいな事をやってるしな。」
「意外だな。と言うことは慧音は強いのか?」
「普通の人間、弱い妖怪相手なら普通に勝てるぞ。そもそも人を襲うのは弱い妖怪だけだからな。」
「どうしてだ?」
「弱い妖怪は強い妖怪には勝てない。だから自分たちでも勝てそうな人間を襲うのだ。」
「へぇ。つまり強い者からしたらここ幻想郷は楽園っていう訳だ。」
「そうだな。でも人間だって行動範囲は限られてはいるが外にさえ出なければ楽園だぞ。最近は人間と友好関係を持つ妖怪だっているしな。」
「住めば都って事か。」
幻想郷も色々あるのだなあ……。
「話は急に変わるけど、俺は元の所へ戻れるのか?」
少し間を置いて、大樹は話題を変える。
「当然。博麗神社にいる巫女に頼めばできるぞ。」
「その為にも博麗神社へ向かうのか。」
「むしろそっちが本音だな。外来人の9割は元々の外の世界に戻る。」
その口ぶりからは幻想郷に来る(迷う)外来人はそう珍しい無いのかも知れない。
「残りの1割は?」
「ごく稀に幻想郷に残るヤツもいる。幻想郷に残る外来人の為にも外の世界で言うアパート?という場所も働き口も用意してある。」
「つまり、俺もここに残るという選択肢があるわけだ。」
「ああ。それを選ぶのは君だがな。」
「今は何とも言えないな。もちろん外の世界に戻りたいけど説明を受けてからだな。」
しばらく歩いて森を抜けるとそこには小さく、少し古びた鳥居が目の前の階段の上にそびえ立っていた。
ここまでお読みくださってありがとうございます。
東方Projectのゲームをやった事がないので場所や専門用語はネットで調べております。
違う点があったら申し訳ないです。