天狗の幻想入り   作:ジャジャジャジャーン

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永遠亭で身を潜めていた大樹は、輝夜共々に霊夢と紫の異変解決コンビに見つかってしまう。


第26話 永夜返し

これは非常にまずい。霊夢や紫はもちろん弾幕ごっこが強いだろう。だから、永琳さん達を破ってこれたはずだ。一方、輝夜さんも相当の実力者の感じがする。この中に弾幕ごっこ初心者(笑)レベルの俺は場違いだ。

 

「どうするのあんた。加勢しても、痛い目を見るだけよ。手間が省けるから、あっちに言ってほしいけど。」

 

霊夢に辛辣な事を言われる。

 

「……。女性に協力してほしいといわれて、無視するのは男じゃないだろ。」

 

言ってしまった。何故大した力も無いのに、男気ぶるのか。―ここで逃げたら、最悪のレッテルを貼られて馬鹿にされそうだしなあ。優曇華とかに。

 

「あら。異変に加わる外来人なんて、なかなか面白いじゃないの。」

 

紫さんは笑ってはいるものの、殺気を感じる。

 

「さあ! 私の美しい難題を受けなさい! 」

 

輝夜さんのその一言で、弾幕ごっこが始まる。

 

 

「二重弾幕結界! 」

 

霊夢が札を取り、スペルカードを宣言する。先程まで俺や輝夜さんの弾幕を躱すばかりだった。どうやら少しのスキをついて反撃してきたようだ。霊夢の周りから赤と白の弾幕が列になって放たれる。

 

「光と闇の網目! 」

 

霊夢とタイミングを合わせたかのように、紫さんもスペルカード宣言。赤と青の弾幕が放たれる……だけでなく、細いビームも放ってきた。どうやらゴリ押しするようだ。

 

「ちょっと紫! 私にも当たるじゃないの。」

 

「博麗の巫女なら、これくらいどうってことないでしょう? 」

 

何やら揉めている。そりゃあ、あんな派手な弾幕は味方にも飛んでくるだろう。

 

「躱すわよ! それから反撃ね! 」

 

輝夜さんは俺にそう指示する。簡単に躱せって言われても、この量はシャレになってない。

 

「善処する! 」

 

俺はそう言いながら、秘密の対弾幕回避用の秘密兵器を出す。普通に考えて、凡庸の俺があんな密度の弾幕を躱す事が出来るはずがない。目の前に気を取られると上方、下方、後方からの猛攻を受けるからだ。そこで俺は、魔法の力を借りる。

 

「行け! 半自動カメラ! 」

 

他の人のスペルカードみたいにカッコイイ名前が思いつかなかったので、もっさい名前なのは許して欲しい。このカメラを展開する事で、複数の視点から弾幕を見据える事が出来る万能品だ。仕組みとしては、魔力で作り上げたカメラに魔力で進むエンジンを無理やりくっつける。これで任意の位置にカメラを配置することが出来る。エンジンは魔力で信号を送ることで俺自由に動かす事が可能。そういう意味で『半』自動な訳だ。

そのカメラの信号は、特殊な魔法回路によって、脳に送られる。最初こそは、数台のカメラからの情報量で頭痛が起こってしまうのが難点だった。魔法の先生のパチュリーさん曰く、『普通の人間なら不可能』らしい。

……天狗で良かったと思う数少ない1例。

 

「これで助っ人の方は落ちたわ。」

 

霊夢にばっさり撃墜と言われてしまう。少し悲しい。

 

「……当たってないみたいよ、霊夢。」

 

弾幕をすり抜け、何とかまた輝夜さんと合流出来た。人生で一番死にかけたぞ……。あ、フランドールに刺された時が一番かな。

 

「反撃します! 」

 

「もちろん。蓬莱の弾の枝、虹色の弾幕! 」

 

輝夜さんが放った弾幕は、数多の色の弾幕が放たれる。そういえば、蓬莱の玉の枝って有名な5つの難題の1つだっけ? まあ、『弾』違いだけどね。

 

「行け! 半自動追尾砲! 」

 

俺は勢いよくスペルカードを宣言。さっきのカメラみたいな砲台を射出。それらは霊夢と紫さんの方へ向かう。見た目と運用法は●ァン●ルと同じ、と言うより参考にした。魔法を用いて弾幕はれって言われてもこれしか思いつかなかった。

それと同時に俺は周りに複数の銃を生成。本命の追尾砲を隠すために、その銃から弾幕を放つ。どうやら狙い通り、あの2人は気づいていないみたいだ。

 

霊夢が弾幕を躱しながら、手にスペルカードを取った瞬間を俺は見逃さず、追尾砲達に射撃命令を下す。

 

「夢想h…何っ!?」

 

ビンゴ! 霊夢の死角から追尾砲のビームが放たれる。それを気にした紫さんにもビームを当てる。

 

「貴方、強いじゃない。」

 

輝夜さんが褒めてくれる。せこい戦い方なのは自分で分かっているので、素直に喜べない……。

 

「相手が気づいていなかったのと、油断も重なった偶然ですよ。それに……相手はまだ元気そうですよ。」

 

喜べないのは相手がまだピンピンしてる所も、かな。まともに喰らったはずなのに。仮に俺が当たりでもしたら、一瞬でKOモノだぞ!?

 

「やってくれたわね。」

 

霊夢が怖い顔でこちらを睨みつける。うわぁ、怒らせただけなのか…。

 

「なかなかいい考えだったわよ。けど、一発の威力が小さすぎるわ。」

 

それを横目に紫さんが冷静に解説し始める。確かにあの追尾砲はバレないように砲身も小さくしている為、あまり高火力じゃないんだよなあ。後でもう少し改良する余地が有るようだ。

 

「ねえ紫。私は先にあのうざったらしい鳥を始末したいわ。目障り極まりないわ。」

 

「珍しく意見が一致したわね霊夢。」

 

あれ? 嫌な感じが……。どう考えても『うざったらしい鳥』はオレの事だよな?

 

「えー。私は? 」

 

ここで輝夜さんのマイペースが発動。この発言は相手にとって焼け石に水だろうな。

 

「それに、もうすぐ彼も落ちるわ。ねえ、『これ』、なあに? レンズがついているみたいだけど。」

 

輝夜さんの問いかけに無視した紫さんは、俺に何かを見せつける。……あれ!? 何故俺のカメラを持っているんだ!?

 

「この映像から、さっきの弾幕を躱したみたいね。」

 

「ホいつの間に! 」

 

紫さんはにこりとするだけ。……もしかして、最初からバレてた?

 

「でも、2対1は悪いし……。あ、霊夢。私が暫くあちらの姫の面倒を見るから、1人で片付けなさい。」

 

「たまにいい事言うわねえ。それで良いわ。」

 

どうやら2人は分断させる気だ。そんな事されたら、俺が瞬殺されてしまう。

 

「させない! 」

 

先程まで紫さんに無視され、ふくれていた輝夜さんも動き出す。俺は輝夜さんの近くに移動しようとする。が、時既に遅く、紫さんは結界で自分自身と輝夜さんだけ囲んだようだ。

 

「さあ、覚悟は出来ているかしら? 」

 

霊夢の声が震えていた。どうやら相当お怒りのようだ。例えると、俺は夜寝る時に耳元で飛び回るコバエか。幻想郷と言えど夏はそれなりに気温が高く、夜寝る時にはつい窓を開けたままにしてしまう。エアコンがないからね、仕方ないね。俺も悩まされたから凄く分かる。でも今は分かりたくなかった。

 

「やっぱり、軽い気持ちで助っ人するんじゃなかった…。」

 

今頃何を言っても遅いか。カメラがないので、当然躱すことができない。たとえ対処したところで、俺の攻撃が霊夢に通用しない。これは先の追尾砲で痛いほど分かった。もう投了したい。

 

「いくわよ? 陰陽鬼神玉!! 」

 

霊夢が宣言した後、青白い光の弾が迫ってくる。弾は1つだけだが、でかい。咄嗟に盾を生成したものの一瞬で破壊され、俺の体はその光に包まれる。

 

―善戦したよなあ?

 

その後、霊夢と紫さん相手に輝夜さんが奮闘。『永夜返し』たる技を使って苦しめたらしいけど、負けてしまった。これで『永夜異変』はおしまい。

 

ところで、最初に戻るけど―俺を永遠亭まで連れていったのは、本当に誰だろうか?

 

 

 




ここまでお読みくださってありがとうございます。
いつぶりの更新だろうか……
これから暫く、こういうのが続きます。すみません。

次回更新不定期です。

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