天狗の幻想入り   作:ジャジャジャジャーン

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七夕の日、主人公である藤村大樹は謎の黒い空間に呑み込まれてしまった。

……気がついたらどこだか検討もつかない森の中であった。どうしよう。

追記 後から手直しさせて頂きました。


第1話 幻想郷へ(R)

 

先程…あの黒い空間に襲われる前は確かに自室に居たはずだ。だが今大樹の目の前に広がっているのは豊かな木々で囲まれた森の中であった。

 

「あれ? さっきまで黒い空間に襲われたはずじゃ?」

 

あの空間とこの場所が繋がっていたかもしれない。

 

「ここはどこか分からないし……。それに人の気配がまるで無いな。」

 

この森にはほぼ人の手が加えられていないようだ。辺りから流れているのであろう川のせせらぎが聞こえてくるのみである。

 

「うーん……。あんまり動き回らない方がいいかもしれないが、とにかく歩くか。」

 

幸いな事にも、自分が倒れていたのはちょうど山の獣道であった。微妙に下り坂なので、もしかしたらこの道を進めば下山出来るかもしれない。

普段の学校生活では目にできない大自然。山など行くのはいつ以来だろうか……。

 

鳥の鳴き声が聞こえる。小さな川で魚がはねた音が聞こえる。近くを通った獣の足音が聞こえる。

 

そういえば小学生の頃、両親と車で遠出して山を登ったことがあった。あれ以来山には来ていなかった。

普通の家庭の幸せは、あの頃には確かにあった。

 

「綺麗な森だな。鳥も魚も虫もいる。けど人には誰1人会わないなぁ…。」

 

大樹が最初に感じた通り人の気配が全くない。……登山が好きな人とかはこういう所に来そうなのになぁ。大樹はひたすら歩いた。

 

暫く時間が経過した時、その山道に終わりが見えた。

 

「出口が見えたぞ! とりあえずこれでここがどこなのか分かるかもしれないな。」

 

出口を出ると、周りは見開いた草原が見えた。

その草原にも道は続いており、その奥を見ると人工物……家や塀が見えてくる。標識は1つも無く、その建物も昭和、それ以前のものに見える。

 

「とりあえず人がいそうな所はあったけど……。この周りは畑と山しか見えないな。」

 

他に行く所も無いので大樹は向こう事にした。

 

 

 

「そこの君。見ない顔だね?服装も変だけど…。」

 

少し歩いた先の集落に着き、大樹はそこの門番らしき人に声をかけられた。

 

「すみません。少しお尋ねしたい事が。」

 

「ん? 何だ? 聞こう。」

 

「ここはどこです? 見たこと無い場所なので。」

 

そう問うと、その門番は少し驚いたような口ぶりで大樹に答える。

「何言ってるんだ? ここは幻想郷唯一の人間の安全地帯、人里だよ? ……もしかして。」

 

「……幻想郷?」

 

どこかで見た事がある地名だった。それはつい起きる前までに読んでいた母親からの手紙からだ。

 

「そう反応するのも納得出来る。君は外来人だな。……少し待っててくれ。すぐに案内の者を呼んでくる。」

 

「……!? はい。分かりました。」

 

インターネットで検索にかからなかった場所に、まさか訪れる事が出来たなんて。

そしてここが母親の出身地、幻想郷。と同時にたくさんの疑問が大樹の脳内に巡った。まずここは日本なのか。本当に母親の出身地なのか。だとしたら他にも天狗がいるのか。天狗がいるなら他の妖怪はいるのか。そもそもこれまでの事は夢なのか現実なのか。

 

 

 

「待たせて悪かったな。では行こうか。……えっと、君の名前は?」

 

門番が立ち去って少しした後。門番が呼んだという案内人は大樹よりも小さい少女であった。

 

「藤村大樹です。それで行くってどこにです?」

 

「門番の奴が言ってなかったのか? 君にこれから案内する場所は、『博麗神社』だ。」

 

「博麗神社?」

 

これもまた聞いた事の無い神社だ。……もしかしてここは異世界か何かなのか?

 

「ああ。まあ外来人は知らない場所だから私が案内する。自己紹介が遅れたが私の名前は……」

 

そういい案内人の彼女は大樹に手を差し出す。

 

「上白沢慧音だ。よろしくな、大樹」

 

「慧音さんですか。よろしくお願いします。」

 

「気軽に慧音で構わんぞ。」

 

大樹は慧音と握手を交わし、そのまま博麗神社へと向かう事にした。

 




ここまでお読みくださってありがとうございます。
やっと幻想郷とそのキャラの登場です。
更新は不定期です。

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