また独自解釈やオリジナル設定が含まれるかも知れません。ご了承ください。
「まあまあね。避けるのは上手いけど相変わらず攻撃が下手ね。君は。」
今日の練習の評価を下される。
「はあ。避けるのは必死だからな。当てるのは何ていうか……。」
「君が攻撃する事なんて外の世界では馴染みが無かったようね。」
避けるのは、弾幕に当たるのが嫌で必死になる。けれど攻撃するのはイメージがどうにもできない。
「球技スポーツならやってたけど。」
大樹は中学校では野球部、高校伴に卓球部に所属していた。どちらも友達からの誘いを受けて入った。その為かフットワークは軽い方で弾幕を回避するのは出来る。
一方の攻撃は上達できないでいた。その原因としては、俺自信が他人を攻撃するという行為に対して若干の抵抗を持っているからという。外の世界での生活では必要な場面に出くわず、穏やかに暮らしていたからかな?
「ここは幻想郷よ。君のような貧弱な存在は狙われるわよ?」
「そうなのか? 今まで1回も襲われた事無いからなあ。」
幻想郷は危ないと皆がいうけど、実際今まで1度も襲われたことがない。
「うわー、たべちゃうぞー。」
レミリアは手を広げて俺に襲いかかろうとした。無論冗談であるけれど。
大樹は躱すことさへせずただレミリアを見つめた。
「……。何かしらの反応をしなさいよ。」
レミリアは少し悲しそうな顔でこちらを見つめる。
「ん? ああ。うわーやられるー。」
……頼むから、そんなに憐れんだ目を向けないでくれ。
基本的にレミリアの言動は子供みたいだ。性格もそれに準ずる所がある。口調は大人みたいに振舞っているが。
……ズズン……
「? なんだ? 今の音。」
「咲夜!」
レミリアの顔色が突然変わり、どうやら深刻な事態だということが伺える。
「はい。お嬢様。」サッ
紅魔館の下……地下からの音も気になる所だけど。
咲夜さんはいつもどこから来ているのだろうか?瞬間移動……なのかな。けど咲夜さんが部屋に入ってくる時はドアが空いていない。前々から能力か何かかと思っていた。今度聞いてみよう。
「今すぐパチェを呼んで!」
「かしこまりました。」サッ
あ、また消えた。
「君はここから出ない方がいいわ。死ぬから。いいわね?」
死ぬって……。何が起こるんだ?
「何が起こっているんだ? 」
「……。」タタタッ
レミリアは基本的に身内の事は教えてくれない。自分の事以上に。レミリアが紅魔館や紅魔館で暮らしている者達の事を大切にしているからかな。
とりあえず言われたことくらいは守らねば。きっと危ない何かが起こっている。自分から首を出さなければ、かかわらなければ良いと大樹は思った。
……そう思っていたのがフラグになってしまったのか。
空いたドアの方から足音が聞こえる。
その音はだんだん大きくなる。こちらに近づいているようだ。その音を出す主はこの部屋に入ってきたらしい。
「戻るのが速かったな。レミリア。」
「貴方、だあれ? 何でお姉様の名前を?」
そこに立っていたのはレミリアでは無かった。紅魔館で初めて見た人物だ。無論、妖精メイドでは無い。
その少女は大樹の後ろに寄ってきた。金髪赤目の可愛らしい感じだ。身長はレミリアと変わらない感じか。白い帽子には大きな赤いリボン。そして背中にはカラフルな羽らしきものが。レミリアにどことなく似ている。
あの羽で飛べるものだろうか。だとしたら世の物理学者も驚くだろう。
「貴方、名前は? ここの人間? 」
「俺は藤村大樹だ。紅魔館の近くの里で住んでいるよ。今日はここに遊びに来たんだ。」
「じゃあ私とも遊んでくれる?」
少し悲しそうな表情を浮かべる。さっきレミリアも似た表情をしていたけど、やっぱり似ている。妹か、姉か。将又従姉妹か何か……。
「別にいいけど……。君の名前は?」
「私はフランドール・スカーレット。お姉様……レミリア・スカーレットの妹……。」
フランドールは恥ずかしそうに言う。やっぱり、レミリアの妹らしい。姉とは違って大人しそうだ。
「それで……。大樹は遊んでくれる?」
「別に構わないけど……。その前に1つ。フランドールはいつも何処にいるの?」
聞いてみると、1段と悲しそうにする。
「地下室。お嬢様や他の人達に閉じ込められてるの。」
「そうか……。」
地下室……。さっきの音はどうやらこの娘が何かしら行った事が原因という可能性が高い。だとしたらとても危険ではないだろうか。パチュリーさんやレミリア、咲夜さんも総動員で対処するべき対象がこのフランドールなら……。
暫く見つめるとフランドールは不思議そうにこちらを眺めている。こんな可愛いらしい娘がまさかなあ。
「……。それで遊びって何をするの?」
「最近お姉様に教えて貰ったやつ。えーっと。」
フランドールは何かを思い出そうとする。レミリアに教えて貰ったと言うことはレミリアはこの娘を嫌っているわけではないらしい。だとしたら何故閉じ込める必要があるのか。
……やはり危険ではないだろうか。
「そうそう! 弾幕ごっこ」ニィッ
「!! 」サッ
フランドールは突然邪悪な笑みを浮かべた。
その顔もどことなくレミリアに似ている……。などと思う暇を俺には与えて貰えなかった。
フランドールが喋り終わった瞬間。フランドールは少量の弾幕を俺に向けて打つ。スピードが速いが、俺は先程警戒していたこともあって何とか避ける事ができた。
「やっぱり! 他の人間はすぐ動かなくなるけど。大樹は強いんだね!」
「……。」
動かなくなる……。要するに、あの弾幕に当たって死んでしまう事か。
「どんどん遊ぼうよ。行くよ!」
フランはそう言いながら部屋の上空へ飛ぶ。俺を見下す体になりながら新たな弾幕を出す。
俺は必死に躱した。1個1個をちゃんと観察しながら。周りを見渡し、他の弾幕に警戒しながら。
レミリアが練習に出したそれとは密度が違う。レミリアはどうやら手を抜いてくれていたらしい。
対して、フランドールは全力なのだろうか。
俺も練習の成果が出ていた。常人なら一瞬で弾に囲まれ襲われておかしくないが、最低限の動きで避ける。
細かい動作で何とかやり過ごす。どうにか反撃しようと『スペルカード』を手に取り、フランドールのいるはずの上空を見つめると。
「っ!! 」
そこにはフランドールの姿が無かった。
「やっぱり人間は人間だわ。すぐ壊れる。脆い、つまらない。」
「いつの間に後ろにっ!」
弾幕を躱す事で精一杯でフランドールの位置を把握していなかったのは痛恨のミスか。
「貴方、もう壊れたわ。」グサッ
鈍い音が、弾幕でめちゃくちゃになった部屋に響き渡る。
「……グハッ……。」コホッ
俺は口から血を吐き出す。咄嗟に自分の体を見ると―
フランドールが出したらしい剣が俺の腹部を貫通していた。俺は激痛に襲われた。だが既に、痛みに反応して叫ぶ気力を持ち合わせていなかった。この前の吸血された時より深刻だ。出血量は大差ないが腹部の傷はかなり深く、そして何よりも広い。
次第に大樹の意識は朦朧としていく。フランドールが剣を抜いたらしく大樹は自力では姿勢を保てず倒れた。
目の前には床。元々赤いが自分の血に染め上がった。
ああ。――本当に死ぬのか。
「じゃあね大樹。ばいばい。」
大樹の耳にはフランドールのその言葉が残る。
脳内で繰り返し再生される。
いつの間にか。大樹の意識は消滅した。
ここまでお読みくださってありがとうございます。
私事ながら更新は次回以降一週間1話とさせていただきます。暇ができた場合投稿するので一応更新不定期の形で取らせていただきます。
たくさんのアクセスありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。