天狗の幻想入り   作:ジャジャジャジャーン

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レミリアと会話をした主人公、藤村大樹は夕食に誘われた。



第12話 永遠に紅い幼き月(R)

 

「ここが今日お客様に泊まっていただくお部屋です。何か不備があれば私にお申し付けを。」

 

「了解です。」

 

相変わらず咲夜の接待口調は変わらない。案内された部屋は寝室とトイレ付き。外見通りの赤色が基調だけど、案外落ち着いた色合いなので部屋としてはいい雰囲気だ。壁には絵が飾られ、机の上にも観賞用の花も設置されている。

高級感溢れている。先ほど訪れたレミリアの部屋とも似ていることから、彼女のセンスかな。

 

「それでは、夕食へご案内します。」

 

「ありがとう。」

 

咲夜さんに一声かけられ、俺はあとを追うように歩く。

 

レミリアの部屋に案内された時もそうだけど、廊下がとてつもなく広い。外見よりもよほど長い距離は歩いている気がする。

 

「あちらがお客様のお席です。どうぞ御座り下さい。」

 

「……。どうも。」

 

案内された後、咲夜さんは消えた。見間違いか? とも思ったけど、突然の事で呆然とする。さっきレミリアが呼んだ時もいきなり出てきたことから、咲夜さんも何かしらの能力を持っているのかな。

 

「あら? 貴方がレミィの言っていたお客様?」

 

知らない声がかかり、俺はその声の方をみる。

 

「あっはい、藤村大樹と申します。」

 

どうやら俺が座った後に後ろを向いていたので、声の主を見ていなかった。薄い紫色の服と帽子を着けた、濃い紫色の長い髪の少女。レミリアとは違い、おとなしい雰囲気を持っている。

 

「パチュリー・ノーレッジよ。ここの図書館の……。管理人? よ。」

 

「はじめまして。ここには図書館もあるんですか。」

 

人里には無い施設。まあ、本屋はあったけど。

 

「そうよ。興味があるなら、今度来た時によればいいわ。外の世界の本もあるから。」

 

「是非、お願いします。」

 

何故俺が紅魔館の常連化したのかは、恐らくレミリアか咲夜さんから聞いたのか。レミリアが言っていた『他の連中』はどうやらパチュリーさんの事か。

 

「それにしても、本当に人間で妖怪なのね。現物を見るのは初めてだわ。」

 

現物って……。そんなに珍しいのかな。

 

「ハハハ……。パチュリーさんも知ってたのですか。」

 

「ええ。レミィからね。」

 

レミリアを愛称で呼ぶあたり、相当仲が良さそうだ。

 

「パチュリーさん。大樹さん。ただいまです。」

 

パチュリーさんと少し喋っていると、人里に向かっていた美鈴さんが帰ってきたようだ。

 

「……人里に向かってたはずなのに、帰ってくるのがとても速いですね。」

 

速いとか、そういうレベルじゃないような気がするけど……。

 

「あら美鈴。お疲れ様。」

 

「そういえば大樹さん、人里の方には大樹さんがここで泊まることを伝えておきました。」

 

「ありがとう。流石に探した俺がいなくなると人里の皆も心配すると思うから、助かったよ。」

 

 

 

 

「お待たせしました。夕食をお持ちします。」

 

10分程経った後、咲夜さんと妖精メイド達が沢山の皿をそれぞれの机に置く。妖怪メイド達は俺と目が合うと少し距離を置いている。きっと怖がっているのだなあと思い、内心ショックを受けた。

運ばれた品はサラダ、スープ、ステーキ、そして米。どれも量が多い。お米食べろってか。

紅魔館の見た目からは、てっきりフランス料理なり、そういう高級料理が出るのかなと。

 

「あら、君は夕食を食べないのかしら。」

 

「あれ、皆もう食べているのか。」

 

パチュリーさんや美鈴さんは既に手を動かしていたみたい。俺は料理を暫く眺めていた。だって、俺のステーキだけ異常に大きい……食べ切れるのかが怪しいくらいに。

 

「モグモグ……。おいしい。」

 

その異常な大きさのステーキから口をつける。程良い脂が乗った、食感が残る肉に味の濃いデミグラスソースがかかっており、まさに絶品。外の世界の食事と比べても劣りはしないレベル。ライスとの相性も抜群。

 

「レミリアは食べないのか? ちょっとしか食べていなさそうだけど?」

 

先程俺に催促したように言ってきたのに、レミリアはほとんど口をつけていなかった。

 

「私は少食なの。それにこの後にメインディッシュも待ってるから。」

 

メインディッシュ? これ以上に何か来るのは考えにくいし……。もしかしてデザートかなぁ。決して、見た目から判断した訳じゃ無いけどね。

 

 

 

「さて。大樹。少しいいかしら?」

 

俺含めて、皆が食事を終えた暫くの後、レミリアは俺に近づく。そういえば、名前でちゃんと呼ばれたのはこれが初めてかな。いつもは『君』って呼ばれるし。名前の方が堅苦しくなくて俺的には楽だけど。

 

「ん? 何だ?」

 

レミリアは俺の右腕を突然掴んだ。その見た目からは考えられない握力が。

 

「俺の腕がどうにかしたか……?」

 

右腕を確認しようにも、レミリアの帽子が視界に入って見ることが出来なかった。

 

「死にたくなかったらあまり動かない方がいいわよ。」

 

「えっ!?」

 

レミリアが何か喋ったその刹那。レミリアが俺の右手首に噛み付く。ただ噛み付かれただけでは大したことはないけど……。そういえば、レミリアは吸血鬼だって言ってたよな。もしかしてレミリアが今やっているのは吸血行為じゃないのか?

吸血鬼に関する事はあまり詳しくないけど、吸われたらまずい事になるんだっけ?

そんな事を考えていると、俺の手首からは激痛と大量の血が吹き出している。レミリアはどうやらその血を舐めているみたい。

俺はパニック状態に陥る。俺の視界には、暗赤色の液体で染め上がったレミリアが映る。あの液体が全て俺の血液だと思うと、急に体中から力が抜けていく。俺にはどうやらショッキングで……。精神的ダメージが大きかったのか。もうレミリアを振り解くほどの力を振り絞る事が出来なかった。

 

意識が朦朧としている最中に俺はもう1度見た。

 

自身の体から出る血飛沫とそれを浴びるレミリア。

服は俺の血の色で染め上がってる。

レミリアの頬には少量の血がついている。

悔しいけど、綺麗だな、と感じてしまう。

 

ああ……。この娘は吸血鬼なのか。

 

そう思いながら目の前の血に溶け込まれる様に意識もだんだん薄くなっていった。

 




ここまでお読みくださってありがとうございます。
このくだりは定番イベントですね。
前回手抜きしすぎたので今回は真面目に文章を少し加えさせてもらいました。

なかなか気取った文章だなあ。

更新不定期です。

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