少女達の真影、正義の味方の証明   作:健氏朗

4 / 19
皆さん、一週間ぶりです。今回は忍学生たちの修行模様をお送り致します。戦闘描写を書くのは何分初めてなのでうまく表現できてるか分かりません(;´Д`A それではどうぞ……


もう一つ上の段階へ

ここは冬木市に建つ高校、国立半蔵学園。国会の支援を受けて、伝説の忍びである服部半蔵の名を付けられた学園。その高校の生徒数は総勢1000人を超え、世間にも大きく知られているマンモス進学校だ。

 

しかしそれは"表向きは"である。半蔵学園の実態、それは今も影に潜む忍の育成。冬木市には数こそ減りはしたが昔から代々忍の血を受け継ぐ家系が存在する。その系列に連なる学生を鍛え上げ、世を守る"善忍"として送り出すのがこの学園の使命だ。

 

 

半蔵学園隠し部屋にて___

 

 

「さて、今回は秘伝忍法について話そう」

 

隠し部屋の一角で弁を振るう男の名は霧夜。普段は学園で数学を教えているが裏ではこうして忍学生の担当顧問もしている。

 

「秘伝忍法とは各々の忍が扱う忍術の奥義。その威力の強力さ故に戦況を覆せる奥の手だ」

 

手に巻物を携えながら霧夜は語る。手の中の巻物は忍にとって必須の代物であり、その巻物により転身することで忍の真価を発揮できる。先ほど説明している秘伝忍法も転身することで初めて使えるのだ。

 

「そして秘伝忍法にはそれぞれ型が存在する。飛鳥の場合は蝦蟇、斑鳩は火の鳥、葛城は龍、柳生は烏賊、そして雲雀は兎という風にな。…まあ、若干一名は諸々の事情で使えないが」

 

「う〜っ…」

 

暗に飛鳥の事を指摘する霧夜。飛鳥の家系は代々土遁術を得意とする忍であり、その中でも蝦蟇を使役する術を極みとしている。しかし当の飛鳥は子供の頃からカエルが苦手で召喚しようものならその場で卒倒してしまうのだ。

 

……昔その関連で咄嗟に飛鳥が士郎に抱きつきトラブってしまったことはまた別の話である。

 

それはさておき………

 

「響きだけは便利に聞こえるがどんなものでも欠点は存在する、秘伝忍法とて例外ではない。口で説明するのは簡単だが今日は実際に体感してもらう」

 

_________

 

_学園屋上_

 

「では本日の修行を始める。お前たち5人にはそれぞれ木人形100体と組手してもらう。授業で話していた内容を頭に留めて臨め」

 

「「「「「はいっ」」」」」

 

 

 

斑鳩side

 

指定された位置に移動して左手にある我が家の宝刀、飛燕を握りしめる。さほど待つ間も無く周囲に複数の煙幕が上がる。

 

「来ましたね」

 

煙の中から現れたのは丸太で組み上げられた等身大の人形。腕の先には拳大の鉄球がついており大の大人並みの打撃力を有している。

 

見た目こそは簡素だがその中身は恐ろしいほどに精巧な構造になっているため人間と全く同じ動きを再現できるほどの代物。

 

「見慣れたものとはいえ、油断をすれば私でもただでは済みませんね」

 

静かに飛燕の柄に右手を添える。意識を切り替えて眼前の敵に注視する。

 

「斑鳩、舞い忍びます!」

 

言霊と共に襲い掛かる木人形の群れ。その様はまるで迫り来る壁…いや、津波の如く。恐れることは何もない、焦ることも何もない。躱すための隙間がないのなら………

 

「斬り開くのみです!」

 

木々の津波の一点へ目掛けて駆ける。そのスピードは正しく疾風。あと少しで人形の壁に接触しようとした瞬間…

 

…刀の鯉口を切る音が鳴り響いた。

 

突撃した箇所を中心に剣をふるい、"抜け道"を確保したのだ。その証拠に突貫した場所にいた木人形たちはバラバラに斬り裂かれている。

 

障害を駆け抜けた拍子に宙を舞いながら巻物を取り出す。そしてそれを投げ放ち、己が忍としての姿を体現するべくキーワードを紡ぐ。

 

「忍…転身!!」

 

巻物は光へと姿を変え、帯を伸ばして体を包む。

 

………毎度ながら思うのですが、なぜ私たちは転身する時に一々裸になるのでしょう?

 

いえ、確かにその…ぼ、房中術などと言った自らの肢体を駆使して異性を籠絡する技術を磨くのもくノ一の本分であるのは分かっているのですが。何も戦闘中にまでそれをやる必要はないような…。

 

それに転身している時は数秒も間があるように感じるのに周りから見るとほんの一瞬でしかないなんて一体どういう仕組みなのでしょう?

 

と、考え事をしているうちに転身を終えて降り立つ。

 

「行きます!」

 

裂帛の気合いと共に駆け出す。様々な武装を携えた人形達は進路を阻まんと立ち塞がる。木刀、棍、刃の潰れたクナイ、それぞれの特性を活かして行動する。

 

正面の木偶が上段から木刀を振り下ろす。人形達が扱う木刀には鉄の芯が仕込まれており簡単には斬れない作りなっている。しかもその重みゆえに通常の木刀より威力がある。

 

もっとも……

 

「(簡単に当たるほど私も甘くはありませんが…)」

 

すれ違いざまに木刀を回避して背後へと回り込む。そして人形に向かって振り向きながら一閃を放つ。木偶は逆袈裟に斬り裂かれて沈黙。

 

と、左へと半身をずらして飛燕を構える。後方からの棍の一撃を捌いてそのまま攻撃へと転じる。忍にとって乱戦、集団戦は日常茶飯事。死角、特に背後からの奇襲などは常に想定されるもの。

 

雪崩れるように襲いくる木人形。息をつかせる間も無く四方八方から攻める。しかしそれも予測済み。彼らはもうこちらの間合いに入っている。

 

鞘に納めておいた飛燕を回転しながら抜刀する。自らを囲んだ人形たちは真っ二つになり、その残骸を晒す。

 

飛燕は長さ三尺余りを誇る長刀。故にその間合いは通常の刀より広く、応用できればこのような包囲戦法にも対処できる。

 

斬り捨てられた木偶たちが無様に転がる。しかしそのうちの2体が再び起き上がる。見てみるとその2体は傷こそはついてはいるものの完全に倒すには至ってない。

 

おそらく先ほどの一撃のタイミングが早過ぎたのだ。もう少しだけ辛抱していれば残りの人形をも撃破できていただろう。結果、刃は胴の表面を斬りつけるだけに留まり余波に吹き飛ばされただけ。

 

「…私もまだまだですね」

 

おそらく自分は苦虫を噛み潰したかのような顔をしている事だろう。しかし己の未熟を自覚出来ている内はまだ救いがある、それでこそ人は精進できるのだから。自らの未熟を理解できずに進み続けるほど愚かなことはない。

 

気を取り直して飛燕を再び鞘に納める。反省はあとにしよう、今はただ……

 

「行きます!!」

 

…残敵を駆逐するのみ!

 

 

斑鳩side out

 

 

______少女無双中______

 

 

「…そろそろ潮時ですね」

 

組手ノルマの半分に差し掛かろうかというタイミングで斑鳩は呟く。接敵していた人形を蹴り飛ばして間合いを離す。吹き飛ばされた人形は射線上にいた木偶をも巻き込んで倒れこむ。

 

(よし、これなら…)

 

構えながら腰を落とす。斑鳩が得意とするスタイルは速さと瞬発力を重視した抜刀術。本来なら瞬時に鞘から抜き放つなど不可能な長刀を用いることで多対一での戦闘をより効率化したもの。

 

「秘伝忍法……」

 

是より放つは彼女が操る抜刀術の奥義が一つ。繰り出される刃の檻を以って瞬斬せんと鯉口を切る。

 

「飛燕鳳閃…っ!」

 

その時、斑鳩は感じ取った……いや、"辛うじて感じ取れた"。自らに迫る何かの微かな気配に戦慄し、本能に従って後ろへと刀を振り払う。

 

金属特有の甲高い激突音はしない。代わりに木製の何かがカランっと落ちる乾いた音が響いた。音の発生源へ視線を落とすとそこには……

 

「…矢?」

 

そう、矢があった。訓練用のものであるため先端に革布が巻いてあるがこれが本物であったなら無事では済まないだろう。

 

矢の射線方向を見ると一段高い位置に人形が弓をかまえているのを捉える。どうやらあの木偶はあそこで息を潜めて機を待っていたようだ。

 

しかし、本当に驚くべきはそこではない。

 

「(完全に……虚を突かれた!)」

 

秘伝忍法とはいわば大技。そしてあらゆる武術に通ずるように大技には大なり小なり"隙"があるもの。その隙を狙われたのだ。

 

だが、それとてあくまで技を"放った後"の話。件の矢は斑鳩が秘伝忍法を発動する直前に飛んできたのだ。

 

確かに技を放つ前にも隙はあるだろう、けれどもそれは発動後に比べればあまりにも刹那の間だ。達人レベル程となるとコンマ数ナノ秒の世界なのだ。

 

普通なら狙おうと思っても出来ない、なのに人形はその刹那を正確に突いた。

 

「(ならば、…)」

 

目標を狙撃手に変えて接近する。しかしここでまたしても予想外の事態が起こる。

 

「…っ!? 退きなさい!」

 

駆け出そうというタイミングで阻まれた。立ち塞がるのは棍で武装した4体の木人形。障害を斬り払おうと飛燕を振るうが絡め取るように捌かれ狙いが逸れる。

 

攻撃直後の隙ができた左側を突かれるがそれを辛うじて鞘で防ぐ。そこからは劣勢の一途だった。

 

4本の棍が織り成す連携に剣を阻まれ、突破しようと踏み出せば矢が飛んで来る。攻めきれずにひたすら足止めをくらい続ける斑鳩。

 

「いつもより統率が取れすぎている…?」

 

木人形たちは前までこれほど見事な連携を見せたことはない。以前の修行では動きが単調でどちらかと言えばひたすら数で押す戦法しか取らなかったのだ。それが今では阿吽の呼吸と言えるくらいのコンビネーションをこなしている。

 

「これが霧夜先生の言っていた欠点…ということでしょうか?」

 

いつまでも驚いてはいられないと構え直す。たとえ一分の隙がない連携でも必ず突破口があるはず。ならばそれを見つけるまで粘るしかない。

 

「まだまだこれからです!」

 

 

_____________________

 

 

 

「…よし、飛鳥で最後だな」

 

最後の一体を倒した飛鳥を確認した霧夜は改めて5人の顔を見渡す。組手の結果だけを見れば全員無事完了したと言えるだろう。…しかし5人の顔にはいつもより疲労の色が濃く見える。

 

「どうだ? 今回の組手で何か感じたことはあるか?」

 

問いかける霧夜に真っ先に斑鳩が答える。

 

「正直…とてもやりにくかったです。出鼻を挫かれてはペースが乱れるの連続で」

 

「斑鳩もか? アタイも同じく、だな。"まさかここで!?"っつータイミングばかり狙ってきて調子狂わされたな〜」

 

後ろ頭をかきながら悔しそうに言う葛城。どうやら二人とも今回の修行結果が芳しくないと感じ入っているようだ。そして残りの3人も同感だとばかりに頷いている。

 

「しかし、秘伝忍法の後を突かれるかと思えば…まさか直前とは…まんまと嵌められたな」

 

表面上クールに呟く柳生、しかしその目には一杯食わされた感が滲み出ている。……もっともそんな些細な表情の変化に気づけるのはよく一緒にいる雲雀くらいだが。

 

「まあ、そうする様に"調整してもらった"からな。無理もない」

 

「あれ? このお人形さんたちは霧夜先生のお手製じゃないの?」

 

そう問いかけるのはメンバーの中でも一番幼い雰囲気を持つ少女、雲雀だ。つぶらな目を霧夜に向けながら首を傾げる。

 

「いや、人形自体は学園が用意したものだが…今回の課題のためにある"専門家"に依頼した」

 

「専門家?」

 

「ああ、本人は単に機戒いじりが好きなだけと言っているが実際は修理も改造もお手の物だ」

 

それが本当ならとんでもない話である。学園が提供している人形たちは腕のいい職人が組み立ててくれたものだ。それをあそこまで動きを昇華できるのだから。

 

「(じっちゃんの知り合いだったりするのかな?)」

 

思案する飛鳥。祖父である半蔵は忍の関係者とは広い交友を持っている。相当な腕利きとなると知っているかもしれない。

 

……知り合いどころか、かなり身近な人だったりするが。

 

 

「なるほど、さぞ名のある技師の方なのでしょうね」

 

納得いった顔で素直な賞賛を送る斑鳩。しかしそれを聞いた霧夜は思わず苦笑いを零す。

 

「霧夜先生?」

 

そんな様子の霧夜に斑鳩を含めた5人は訝しげな顔をする。

 

「いや、何でもない。今日の修行はここまでとする、あとは各自自由だ。では解散」

 

霧夜の一声に少女たちは校内へと戻っていく。全員が屋上から居なくなったことを確認すると突然背後へ声を掛ける。

 

「…"名のある技師"だそうだ」

 

振り向く視線の先には何もない。しかし、誰も居ないはずの空間から突如人影が姿を現わす。

 

「あの子たちにそこまで言わせるとは大したものじゃないか、"士郎"」

 

布らしきものを自ら取り払いながら現れた士郎は些か複雑そうな顔を見せながら答える。

 

「技師って…そんな大層なものじゃないですよ、霧夜先生」

 

「相変わらずの謙遜ぶりだな…それより悪かったなこんな事頼んでしまって。他のものにも頼もうとしたが誰も捕まらなくてな」

 

そう、今回の修行で用いられた木人形。その調整を依頼されたのは他でもない士郎である。

 

「いえ、これくらいなら大丈夫です。調整の方はあれで良かったですか?」

 

「ああ、ばっちりだ。しかもあれだけ相手の裏をかく戦術を組み上げるとは流石だな」

 

「俺はあくまで霧夜先生が課題とした項目に沿って手を加えただけです。本当にすごいのはそれだけのポテンシャルを秘めた人形を作った本人ですよ」

 

 

過小評価ここに極まれり、である。自身が施した改造の技術をあくまでオマケ程度に捉えて手中の布を霧散させる。

 

「その布も魔術ってやつか?」

 

「そんなところです」

 

他愛のない会話を終了して自分も帰ろうと霧夜に解釈して入り口に向かう士郎。

 

「ああ、それと半蔵様が呼んでいたぞ。帰る前に応接室に向かう様に」

 

「俺をですか?」

 

「そうだ、おそらく"仕事"だろう」

 

仕事というキーワードを合図に士郎は表情を引き締めて頷く。

 

「分かりました、では失礼します」

 

背を向けて再び入り口を目指す。そして屋上には霧夜だけが残された。

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

「それにしても恐れ入ったな」

 

士郎の背中を見送った霧夜はそう呟かずにはいられなかった。確かに自分は士郎に修行の課題のために協力を頼んだがまさかここまでのものに仕上げるとは流石に思わなかった。

 

当の本人は"飛鳥たちが強くなれるなら"と快く承諾してくれたのは有り難かった。同時にそれだけ飛鳥が大切なのだろう。

 

つくづく彼が味方で良かったと思う。あの様に相手を封殺する様な戦術を立てれる士郎はそれだけでも厄介だ。そしてそれを士郎本人が実行していたなら……

 

「…実戦であれば何回死んでいたことやら」

 

仮に士郎が敵に回り、先ほどの木偶たちの戦術を使って戦う光景を想像する。正直、ぞっとするばかりだ。

 

「さて、こっちもそろそろ取り掛かるか…」

 

ぼやく霧夜は後片付けをするべく、そこいらに転がっている武器を拾い始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで修行編でした。戦闘シーンを書く時に擬音を書くとどうしても違和感が生じてしまい、結果として全部文章で表現させて頂きました。次回は半蔵様の登場です! 正直これから原作のキャラを絡ませていくと思うとわくわくが止まらないですね〜(´∀`*) それでは皆さん、また会いましょう。

あ、そうそう。実は先ほど士郎が改造したという人形を一体だけ借りました。曰く、今回の修行で使うには危険すぎるためボツにしたとのことです。こういうのって間近で見たくなるんですよね〜。ではぽちっとな。

「起動、武装開始シマス」

お〜、本当に人間の動きと遜色ない! いや〜士郎もいい仕事しますね〜。

「目標、前方ノ外敵排除」

あれ? なんかこっちに刀向けてる? というかあの構え方誰かに似てるなぁ。あ! そうだ確かあれは沖t…


アナウンサー「それでは次のニュースです。今朝〇〇市△町で惨殺された遺体が発見されました。遺体には三箇所の急所に刃物による外傷が見受けられ………」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。