少女達の真影、正義の味方の証明   作:健氏朗

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お久です! 少し調子がいいので連続の投稿です。またいきなりなチョイスの鯖ですが…しょうがないのです、サイコロの言う事は絶対なのです(ゴリ押し) さぁ、みんなでモーさんの可愛いところを見ながらニヤニヤしましょう!!


2章 モードレッド前編 「従わずの騎士」

空気が軋むような緊張感が部屋全体に広がる。その圧迫感の一因である彼女は威風堂々と自らのシンボルとも言える剣を手に駆ける。その一撃一撃は嵐のように激しく、裂帛の気合は咆哮を思わせる重圧を放ち、その眼光は嫌というくらい"叩き斬る"という意思を明確に伝えてくる。

 

彼女の剣をまともに受けてはならない。それは悪手、この上ない自殺行為だ。そんなマネをすればこの双剣は砕け、この身が一撃のもとに両断されるだろう。ならば俺にできることは一つ。彼女の剣を受け流して捌ききること。

 

_____一撃を凌いだ

 

しかしまだ終わらない。彼女は闘志をむき出しにしながら次の一撃を振るう。今度はスピードを上げてきたか…、本当に呆れた膂力だ。これでもし魔力放出を使っていたら諸共吹き飛ぶぞ。

 

_____二撃、身をずらして上へと弾く

 

攻防が続く度に彼女は獰猛な笑みをさらに深める。返す刃で振り下ろした剣を限界にまで高めた反射神経で躱す。横へと転がってはすぐさまに態勢を立て直す。元より彼女と剣を交えることすら困難だ。常人を遥かに超えた剣戟は相手の武器ごと斬りかねない代物だ。

 

…だが、あと一撃だ。それだけでいい。この一撃さえ凌げれば…。対する彼女は闘気が収まることなく、接敵する。こちとら防御に手一杯だというのに向こうは止まることを知らない。

 

…まあ、カルデアに喚んでからすでに知っていた事だ。そう、一度剣を抜けば相手が誰だろうと何だろうとぶった斬る。それこそが…

 

「どうした、シロウ! まだまだこんなモンじゃねえだろ!!」

 

…アーサー王伝説でも名高い、叛逆の騎士モードレッドという剣士だ。

 

 

____________________

 

 

「おーい、いつまで拗ねてるんだ?」

 

「べっっつに…、スネてねぇし」

 

所変わってカルデアの休憩室。トレーニングルームに隣接しているこの部屋では先ほどまで訓練をしていた士郎と何やら不貞腐れた態度のモードレッドが座り込んでいた。

 

備え付けの椅子に脚を組んだ姿勢でどっかりと座り込み、テーブルに頬杖をついたまま口を尖らせている様はどこからどう見ても拗ねているようにしか見えない。かと言って指摘しようものなら元から短気な彼女はさらに機嫌を損ねてしまう。手の掛かるサーヴァントに士郎は早くもお手上げ一歩手前だ。

 

「あのなぁ、そもそもあれは訓練であって殺し合いじゃないはずだぞ?」

 

「あ? 訓練だろうが実戦ばりにやった方が効果的だろ。ヌルい鍛錬をしたって強くなれねぇよ」

 

「お前…、やっぱり本気でやったな?」

 

そう、士郎はついさっきまでトレーニングルームにてモードレッドに稽古をつけてもらっていたのだ。とはいえ、サーヴァントと手合わせする時は基本防御に徹して活路を見出すスタイルで戦うわけだがモードレッドのような好戦的なサーヴァントが相手だとたまに加減を忘れてしまう。

 

全力を出してこそいないが人間相手なら軽く腕の一本や二本は落とされる。だと言うのに当のモードレッドは悪びれる様子もなく反論する。まあ、彼女とて本気で士郎を殺そうとしていたわけではなくそれくらいの力を出しても対応できるというある種の信頼のあらわれでもあるが…。

 

「あれくらいならどうとでも出来るだろ? 仮にもオレのマスターだからな」

 

「この鍛錬は設定時間の経過まで攻撃を防ぐものだったのは分かってるよな?」

 

いくら士郎が魔術師として異端だとしても人間とサーヴァントでは身体能力差が違い過ぎる。そのため、士郎が英霊たちと鍛錬をするときは決められたルールで行われる。具体的には何手まで捌ききれるか、時間内に一撃当てられるか、撤退戦を模した鬼ごっこまであるとか。

 

今回は時間いっぱいモードレッドの猛攻を防ぎきるというものだが、当の彼女は加減を少し忘れてしまったのか途中からエンジンがかかってしまったようだ。ただでさえ英霊の中でもトップクラスにも入るモードレッドがその気になれば怪我では済まない。うっかり魔力放出なんて使ってしまった日には士郎の半身が吹き飛んでしまっても不思議はない。

 

「んなことは分かってるっての。だからちょいとレベルを上げただけだろ? 思ったより対応出来てたからもう一押しっつーとこで時間切れだったけどな」

 

反省の色もなくさらっと流すモードレッド。要はもうちょい本気を出して士郎を小突き回そうとしたところでタイムアップを迎えてしまい、不貞腐れたわけである。自身の向上としては特に問題はないがシャレにならないレベルで死にかけたのなら話は別だ。その上謝罪のしの字もない態度だ。

 

「全く……まぁいい、いつものことだし」

 

士郎の呆れた態度に首を傾げる。いつもならもっと苦言や小言が飛んでくるのだが今日はやけにあっさり事が済んだ。内心はうるさく言われない事に安堵したが同時に彼女の直感が警報を鳴らし続ける。

 

「さて、これから夕飯の支度しなきゃならないんだが…そういえば今日は珍しくベーコンチーズバーガーを作ろうかと思っていたな」

 

「っ!!?」

 

ベーコンチーズバーガー、もちろんこれは魔法の呪文というわけではない。その名の通り大人から子供までみんなが食べたことある、あのベーコンチーズバーガーだ。これだけならモードレッドが反応するまでもないが"士郎の特製の"がつくと話は変わる。

 

なにせバンズは士郎がパン作りの際に一から焼き上げ、パティは士郎が独自に研究し尽くした調味料から下味をつけ、ケチャップとマスタード? なにそれと鼻で笑うかのような手間暇かけたAAAの自家製ステーキソースで彩り、厳選に厳選を重ねたレタス、トマト、オニオン、それどころかピクルスまで士郎の手ずから漬けたものを使用。

 

そしてなにを隠そう、この士郎特製ベーコンチーズバーガーこそがモードレッドの大好物なのだ!!

 

「せっかく作るなら手の込んだものをと思ったが、今日は些か無理が祟ってしまったからな…、やっぱりやめておくか?」

 

「ず、ずりぃぞ!士郎!!」

 

モードレッドの直感スキルがいやでも彼女に理解させた。今回のことを反省しないのであれば人質がどうなっても知らんぞ? ということである。…しかしまあ、伝説で語られる叛逆の騎士がたかがハンバーガーで身動き取れなくなるとは。

 

「そうだな…、ここは無理せず別のものを作るとしよう」

 

「〜〜〜っ!」

 

「いやはや、しかし惜しいな。新しいスパイスも思いついたからそれを皮付きポテトで実践しようかと思ったのに」

 

「〜〜〜〜っ!!」

 

「そういえば新作のピクルスもあったな…、それも封印だな」

 

「〜〜っ! 〜〜〜〜…ぃ」

 

「ん? 何か言ったか、モード?」

 

「……でした…」

 

「いつものモードらしくないぞ? "言いたい事は、はっきり言ったらどうだ?"」

 

「…ごめんなさい! すいませんでした!! オレが悪かったです!! これでいいだろ!」

 

ついにモードレッドのやせ我慢は決壊して、謝罪の言葉を並べる。勝ちを確信した士郎は一仕事終えたかのようにため息をついては苦笑いを浮かべる。その顔は手の掛かる子供を見るかのようだ。

 

「よろしい…時間が掛かったとはいえ素直に謝ったことに免じて、夕飯のメニュー変更はなしにしよう」

 

「けっ!…」

 

厨房へと足を向ける士郎の背後で不貞腐れるモードレッド。しかし歩き去ろうとする士郎は足を止める。

 

「それとモード…」

 

「…んだよ」

 

「悪かった、さっきはああ言ったけど。献立を変えるつもりはなかったよ」

 

苦笑いを浮かべながら士郎は再び厨房へ向かう。部屋に残されたモードレッドは士郎の背中を見送りながらそっぽを向く。

 

「けっ…、回りくどいマネしやがって…」

 

悪態こそついているものの、ほっとした表情が覗いていた。

 

「ったく、オレも随分と絆されちまったもんだな」

 

召喚された当初のモードレッドは非常に刺さしい態度が目立っていた。特に酷かったのはマスターであるはずの士郎に対して常に辛辣だった。

 

_________________________

 

〜モードレッド召喚〜

 

「…チっ、こんな奴に召喚されるとはツイてねぇな」

 

開口一番に毒吐くのは赤と銀に彩られた刺々しい鎧の騎士。フルフェイスの兜のせいでその顔は完全に隠されており、声でしか本人の機嫌が窺えない。

 

「えっと…、君が俺のサーヴァントでいいのか?」

 

「あ?…不本意だがオマエに召喚された以上、そういうこったろうな」

 

そうぼやく騎士は心底嫌そうに視線をそらす。直後に赤い騎士は士郎に目を向けて威圧する。

 

「だが勘違いするなよ? オレはオマエを認めたわけじゃねぇ。どうしても言う事を聞かせたいなら令呪を使う事だな…」

 

それからのモードレッドはひたすら態度が悪かった。戦闘で共闘はするものの突出して孤立は当たり前、指示を出しているにも関わらず無視など日常茶飯事、一番酷いのは士郎と顔を合わせるたびに喧嘩腰になる事だ。

 

マスターと呼ばない事を士郎は気にしてはいないが、協調性のなさが深刻な悪影響を及ぼしかねないと危惧した。そしてある日、士郎は行動に出た。

 

「で? 何の用だ?落ちこぼれ」

 

いきなり随分な呼ばれよう。ちなみに落ちこぼれという呼び名はモードレッドから見た士郎の評価だ。魔力量が多いわけでもなく、高度な魔術が扱えるわけでもない。ましてや大部分の魔術に精通しているわけでもない士郎は彼女からしてみれば魔術師としては三流ものだ。ゆえの落ちこぼれである。

 

「モードレッド、取引をしないか?」

 

「取引だと?」

 

「ああ、賭けだと思ってくれてもいい」

 

「回りくどい言い回しはいい、言いたい事ははっきり言え」

 

「…そうだな、でははっきり言おう」

 

目を閉じ、再び開く。その目は覚悟と決意に満ちた鷹の目。

 

「俺と勝負しないか? モードレッド」

 




モード「なんのつもりだ、テメェ!!」(作者を首しめ)

な、なんのつもりも何も(酸素不足により顔面蒼白)

モード「どこまで書くつもりだ!? 言っとくがおかしなマネしたら…」

でも士郎とのやりとりは書かなきゃいけないですし、それにモーさんだって士郎のことすk…

モード「だ、だだだだ誰がだ!! いい加減なこと言ってるとボコすぞ、変態作者が!、!」

ちょ、……モーさん、やめて…、首が……折れ…

___作者の首がへし折れる音と共に放送を終了致します___

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