活動報告でも書きましたが、ゲームにはまってました…。はい。
あと、仕事が忙しかったのもあります。
なんて言い訳をしつつ、ついに90話です…。でもたいして進んでません。
とりあえず、エレオノールには、シエスタのために用意した部屋(※スピリットが出た部屋)で寝てもらうことにした。もちろん、魔物が…、幽霊系が出たことは黙っておく。
あの日から、ベットも新調したので分かりやすいように扉を開けておいた。
「トゥ、あんたはどこで寝るの?」
「ここで寝るよ。ソファーなら寝やすいし。」
「えっ? それまずいわよ。」
「ずっとルイズと一緒に寝てたけど、約束は約束だから。」
「もう…。」
今更ながらエレオノールの来訪のせいで厄介なことになったと、ルイズは頬を膨らませた。
今までずっとトゥと一緒に寝てきたのだ。今更離れて寝るなんて考えられないし、寝られる気がしなかった。…勘違い家出の時など、トゥが隣にいないという事実に押しつぶされそうになったものだ。
「でも、ルイズ。いいの?」
「なに?」
「家を捨てていいの?」
「いいわよ。あんたと一緒に居られるなら。」
「あんなに、大事にしていた家族なのに?」
「……そうだったかしら?」
「ルイズ?」
「なぜかしらね? あなたと一緒にいられなくなることに比べたらって、思っちゃうの。」
「ルイズ!」
「…私…、おかしい?」
驚愕しているトゥに、ルイズは上目づかいで聞いた。
「ねえ、ソファーに座らない?」
「う、うん…。」
ルイズに促され、トゥはルイズと一緒にソファーに座った。
すると、トゥの横にルイズが寄り添ってきた。
「ルイズ?」
「…このまま、もう少し…。」
「ねえ、ルイズ…、私…。」
「なぁに?」
「ルイズのためなら…。」
「私のため?」
「………ううん。なんでもない。」
「そう…。」
それからしばらく、二人は身を寄せ合った。
「ねえ、トゥ。」
「なぁに?」
「…キスして。」
「いいよ。」
珍しくトゥは、ルイズの期待に応えた。
***
後日。
「…はあ…、眠れないわ。」
単純に夏だから暑いとかいうのもあるが、起き上がったルイズは、両手首に結んだヒモの先を交互に見た。
左右には、シエスタとタバサがいる。ルイズの両手首のヒモの先は、彼女達の片手首に結ばれていた。
これは、放っておくと、シエスタとタバサがトゥのところに行くのを防ぐためだ。
「エレオノール姉様も酷いわ。私、トゥ無しじゃ寝られないのよ。」
やはり予想していたとおり、トゥがいなくて寝られなかったのだ。
「医学的見地から、そんなこと許されないわ。」
などと、根拠も無いことをブツブツと呟く。
「そうよ…。五分くらいならいいわよね…? エレオノール姉様に見つからなきゃいいのよ。五分なら、キスだってできるわ。安眠のため…、そう安眠のためなのよ。」
そうと決まればと、ルイズはうきうき気分で両手首のヒモを外そうとした。
その時、バターンと扉が開いた。
「どうもなのね。」
シルフィードだった。
そして、シルフィードは、タバサとつながっているヒモを囓りだした。
「なにしてんのよ?」
「決まってるのね。お姉様を連れて行くのね。」
「どこへよ?」
「お前の使い魔のところへなのね。」
「んな!」
カッとなったルイズは、立ち上がろうとしたが、両手首のヒモがあって立ち上がれなかった。
シルフィードは、シルフィードで、うまくヒモを食いちぎれずにいた。
「何なのね、このロープ! おい、ちび桃!」
「なによ、その呼び方!」
「髪が桃で、ちびだからなのね。」
シルフィードの言葉にまたカッとなったルイズは、シルフィードが咥えているヒモを引っ張った。
噛む対象を失ったシルフィードの上下の歯がぶつかりあい、ガチンっと鳴った。
「なにするのね。」
「獣の分際で、人間様の部屋に軽々しく入ってこないでちょうだい。」
「人間風情が何言ってるのね。我々韻竜は、泣く子も黙る古代の眷属なのね。しょせん、お前達とは歴史や文化や積み重ねてきたものが違うのね。」
「ロープをガシガシ口でかみ切ろうとしてて、よく言うわよ。」
ルイズは、呆れた目で言いながら、シルフィードからヒモを奪い取ろうと動いた。
その動きで、シエスタとタバサが目を覚ました。
「…なに?」
「なんですか、なんですか?」
「きゅい! お姉様、やっと目を覚ましたのね。」
シルフィードは嬉しそうにタバサに抱きついた。
「シルフィがお姉様を無事解放して、行きたいところへ運んであげるのね。背中を押して。」
「どういうことですか? 貴族同士の密約ですか? 一日交替とかそういうアレですか?」
「違うわ。そこのバカ竜が勝手に余計なことをしようとしただけよ。」
「余計なことじゃないのね。主人の気持ちを代弁しているだけなのね。」
「いいから、代弁なんかしなくていいから、外へ行きなさい。竜は外で寝る生き物よ。」
ルイズとシルフィードがにらみ合う。
その間に、シエスタがタバサに本当に代弁しているのかと聞いたりしていた。
しかし、やがてシエスタが失礼しますと言い、タバサの身体を触った。
そして。
「ミス・ヴァリエール。」
「あによ?」
「ミス・タバサですが…。明らかに発情しています。」
「!」
顔を赤くしたタバサが自由になる右手で杖を握ってサイレントの呪文を使い、シエスタの言葉を消した。
言葉を封じられると、シエスタは、身振り手振りで伝えようとするので、タバサは、シエスタの頭をポカポカと叩いた。
ルイズは、ため息を吐き、タバサに近寄って、耳元で囁いた。
するとタバサは目を見開き、口をぽかんと開けた。
「トゥはね。私のこと…、あの夜、殺しかけたのよ。」
「ミス・ヴァリエール!?」
「きっと、トゥは、戦ってるわ。自分の中にある、ナニかと。それを邪魔する気?」
「何分かったように言ってるのね?」
「私は、トゥのこと分かってるわ。」
「お姉様も分かってるのね。」
「そうかしら?」
ルイズとシルフィードがにらみ合った。
「お姉様は、おまえの使い魔の中に根付いてるモノのことをちゃんと理解してるのね。」
「…それでも、トゥを求めるの?」
「叶わない恋だって分かってるのね…。でも、その気持ち、お前にはよく分かってるはずなのね。」
「…っ。」
そう言われてしまうとルイズは、言葉を詰まらせた。
「けど、ダメよ。」
ルイズは、タバサを睨んだ。
「タバサは、…トゥを追い詰めるようなことをしたわ。あんただって、本当は、食べたいんじゃないの、シルフィード。」
「そ、それは…。」
自分にも話を振られ、シルフィードは焦った。ついでに涎を口の端から垂らした。
「…やっぱり、一番にあんたを土に返すべきかしらね?」
「ま、待つのね! 絶対に食べないのね!」
「なら、まずは、涎を拭きなさい。」
「あわわわ。あー! お姉様! 杖を向けないでほしいのね!」
タバサに杖を向けられ、シルフィードを大慌てで涎を乱暴に拭った。
そうこうして、大騒ぎしていると、扉がばたーんと開かれた。
「あなた達! 今何時だと思ってるの!」
エレオノールだった。
この後、エレオノールに二時間、こってり怒られた。
あと一時間もすれば、夜が明けるだろう。
エレオノールをはじめとした、ルイズ以外の面々が眠気に耐えきれず適当に寝ていると、ルイズは、そろりと部屋から出て行った。
***
足音を殺して、トゥがいる部屋に来ると、ベット代わりのソファーに、トゥが腰掛けていた。
「起きてたの?」
「うん。ルイズも?」
「…うん。」
「ずっと一緒に寝てたもんね。」
トゥは、クスッと笑った。
「そうね…。」
つられて笑ったルイズは、トゥの隣に座った。
ルイズは、横にいるトゥに寄りかかった。微かに香るトゥの匂いに目を細める。
ふと、トゥを見上げると、トゥは、何か考えているような顔をしていた。
「…何考えてるの?」
「…聖戦のこと。」
「やっぱり、納得できない?」
「うん。」
「そりゃ、教皇聖下の言うことはもっともよ。住むところが無くなるもの。でも、あんなに強力なエルフを相手にするんだものね…。」
「交渉って…。要は、こっちのことが怖くないとできないよね。」
「そんじょそこらの魔法じゃダメよ。」
「ルイズ…。」
「…きっとその時が来れば使えるようになるわ。」
「あのね。ルイズ。」
「なによ?」
「さっき、ティファちゃんから手紙が届いたの。」
「早く言いなさいよ。」
トゥは、手紙をルイズに渡した。
ルイズは、その手紙に目を走らせた。
そこには、教皇からの指示でド・オルニエールに向かえと言われたことが書かれていた。
「明日、来るんだ…。え? ここで使い魔を召喚するですって!?」
「そうなんだよ。」
トゥは、困ったように言った。
「いよいよってことだよね。四の四を揃えるって。」
「そうね…。」
ルイズは、声が震えた。
間近に迫った聖戦に、そしてその戦いの要となる己が背負わなければならないハルケギニアの未来の重たさに、知らず知らず身を固くしたルイズの肩をトゥが抱き寄せた。
「大丈夫だよ。ルイズ。」
「トゥ…。」
「もしも…、エルフ達が、私達に『そんなの知るか。勝手に滅びろ』っとか言ったら…。私が…。」
「トゥ、勘違いしないで。」
「えっ?」
「背負うのは、あなただけじゃないわ。」
「ルイズ…。」
「…一緒よ。」
ルイズは、トゥの手を握った。
原作より、強気(?)なルイズです。
次回は、元素の兄弟との再戦と、エルフの襲撃です。