しかし、RPGは、やめどころが分からなくて困る。
今回、ちょっとルイズがヤンデレ気味?
それから、三日。
王宮からの連絡も無く、ド・オルニエールでの日々は平和そのものだった。
…まあ、夜寝るとき、ベットでトゥの左右を、ルイズとシエスタとタバサが奪い合うということを抜けばであるが…。
トゥは、あの夜からボーッと上の空になることがあった。
まるでルイズと出会った頃、ボーッと上の空になっていた頃に戻ってしまったかのように。
ヘレンから噂を聞いたド・オルニエールの住民達が、それを心配してトゥに元気を出して欲しいとお見舞いの品を持ってきたりしてくれた。しかし、一向に良くはならない。
ルイズを無意識のうちに殺そうとしてしまったことが、トゥの心に重くのしかかっているのだ。
ルイズは、気にしてはいなかったが、トゥはそうじゃない。
一瞬、ティファニアに頼んでまた記憶を操作してもらおうかなんて考えも浮かんだが、そんなことでは根本的な解決にはならないと思い考え直した。
今日も今日とで、キャアキャアワアワアピイピイっとルイズ達がトゥの隣を巡って攻防を繰り返している中、ベットの上で体操座りをしてボーッと上の空になるなっているトゥがいた。
「分かったのね。じゃあ、お姉様は、上なのね。」
「はあ!?」
無口なタバサの代わりに攻防をしているシルフィードの言葉に、ルイズが声をあげた。
「両隣がお前らに取られている以上、上しかないのね。」
「何言ってんのよ! それ、ま、ままままま、マズイじゃないの!」
「お姉様は、発情期のお前らとは違うのね。」
「だったら私が上よ!」
「ダメなのね。それこそ、ヤバいことになるのね。まだ清いお姉様のお目汚しになるのね。」
「誰が汚いよ!」
ルイズがギャーギャーと反論する。
「トゥさん、隣、失礼します。」
その隙にシエスタがトゥの隣に来た。
「こら、抜け駆けするんじゃないわよ!」
「じゃあ、早く決めてください。」
「ささ、お姉様、隣に早く上に乗るのね。」
「待ちなさいよ! まだ決着がついてないわ!」
「桃髪つるぺた娘も早く隣に入って寝るのね。夜更かしは身体に悪いのね。」
「だから上はダメーー!」
「……っ…。」
「トゥさん?」
するとボーッとしていたトゥが上を見上げた。
「どうしたの、トゥ?」
「…誰か来る…。」
トゥがそう呟いたとき、階下から扉を叩く音が聞こえた。
「こんな夜中に誰かしら?」
「近所の人では…、ないですよね?」
シエスタがそう呟くと、シエスタは、ハッとして口を押さえた。
「まさか、トゥさんを狙っているという…!」
シエスタの言葉に緊張が走った。
現在牢に入れられている元素の兄弟と呼ばれる殺し屋の一人、ジャックは、何をされてもかたくなに口を開かないと言われている。
トゥは、ベットから降り、壁に立てかけていた大剣を握った。
『俺も連れてけよ。』
そういうデルフリンガーも腰に差す。
ルイズもタバサも杖を握り、シルフィードにシエスタを任せて、トゥとルイズとタバサは、部屋を出た。
そこには、すでにコルベールとキュルケがいた。
お互いに頷き合い、慎重に階下に降りると、いまだ叩かれ続けている扉の両脇を固めた。
目で全員に合図をし、トゥが鍵を外した。
「開いてるよ。」
そう言った瞬間、扉が開き、誰かが飛び込んできた。
左右から魔法が飛び、キュルケは巨大な火の玉を杖の先に作り、ルイズはエクスプロージョンの呪文を詠唱し、トゥが扉から侵入した輩を取り押さえた。
「誰?」
「…あ、あなた達! どういうつもり?」
「えっ?」
その声に、トゥとルイズがキョトンッとした。
キュルケの炎の光で、その人物の顔が見えた。
「え、エレオノール姉様!?」
真っ青になったルイズが叫んだ。
***
その後、こってり怒られた。
キュルケ達は、相手がエレオノールだと分かると、部屋に引っ込んでいってしまい、残されたトゥとルイズは、足を組んで椅子に座っているエレオノールに睨まれっぱなしだった。気の強さが顔に出ていて、まさに女帝のごとくである。
二人ともシューンっと項垂れている。トゥは、上の空だったのが嘘だったみたいに感情を取り戻している。
「まったく! 私を殺し屋を間違えるなんて、言語道断だわ!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…。」
「本当に、ごめんなさい…。」
謝り続けるルイズとトゥを交互にねめ回したあと、エレオノールは、お腹がすいたと言い放った。
シエスタがいそいそと、食事を用意し、エレオノールは出された食事を食べた。
「で、……姉様、一体今日はどんな用事でこられたの?」
ルイズが恐る恐る聞いた。
するとエレオノールは、わずかに頬を染めた。
「まあ、用事ってほどじゃないけど、しばらくここに厄介になろうかと思ってね。」
「えええええええええええ!?」
「えっ、どういうこと?」
「ま、まあ、たまには郊外の暮らしも悪くないんじゃないかってね。」
「アカデミーは、どうするんですか?」
「ここから通うわ。」
「えっ? どうやって?」
「竜籠を持ってきたわ。あなた達、お世話よろしくね。」
「あの…。」
トゥが何かを感じて聞いた。
「もしかして、怖いんじゃ…。」
すると、エレオノールはビクッとなった。
「ああ。そうよねー。あの話。知ってるのは私達だけだし…。」
「こ、怖くなんてないわよ。」
「うそ。怖いんでしょう?」
「怖くないってば。」
「姉様は、昔からなにげに臆病でしたよね。」
ルイズが言った。
「いいからもう! あなた達は寝なさい! 子供は寝る時間よ! あと、明日はお話がありますからね!」
そんなふうに叫びだしたので、トゥとルイズは、慌てて二階へ逃げた。
そして気を取り直して、ベットに入り、ルイズが右側、シエスタが左側、そしてタバサがトゥの上に乗った。
シルフィードは、ベットの傍らで丸くなってスヤスヤと寝息を立てている。
「タバサちゃん、軽いね。」
「……。」
「トゥ…。」
横を見ると、ルイズがすごい目で見てきていた。
っと、その時。
「ルイズ。私はどこで寝れば……、って! なに! あんた達! ちょっとぉ!」
同じベットで寝ている四人を見て、エレオノールが絶叫した。
「い、いいいい、一体…、ああああ、あなた達は…。」
エレオノールは、泡を吹いて倒れた。
***
エレオノールが復活してから、トゥとルイズは、一階の居間に再び連れてこられて、お説教を受けた。
「さすがに、一緒に寝ているなんて思わなかったわ。」
エレオノールは、これ以上無いほど怒っていた。
「…ま、前から一緒に寝ているんだし、今更です。」
「なんですって! ちびルイズ、なんてはしたないことを!」
「だって寮のベットは一つしか無いから…。」
「適当に床にでも寝転ばせればいいのよ!」
「最初は、そうしようとしたんですけど、トゥが言うこと聞かなくて…。」
「まあ! 使い魔になめられているなんて!」
「でも、同性同士ですし、問題ありません。」
「昔はともかく、今はどうなの!?」
「……それは…。」
「口ごもるんじゃありません! もう問答無用です。」
「えっ?」
「予定は変更。ルイズ、明日一緒に、ラ・ヴァリエールに帰るわよ。」
「そ、そんな!」
「同じ性別の相手をイヤらしい目で見ていて、しかも隣に置いて寝ているなんて始祖ブリミルがお許しになると思っているの? もう、一から母様と父様に教育していただきます。」
「お、お断りします。」
「何を言っているの?」
「私…、やらなきゃいけないことがあるし…。」
「そうよね……、あなた、担い手ですものね。」
エレオノールは、深くため息を吐いた。
「私、決めたんです。」
ルイズは、背筋を伸ばしてまっすぐにエレオノールを見て言った。
「何があっても…、それこそ世界が終わっても、トゥと一緒がいいって、決めたの。例え、この大地が全部めくれ上がっても! 離れませんから!」
「る、ルイズ…、あなた…。」
「私がトゥを離したくないの! 私とトゥを引き離すなら、アルビオンの艦隊を滅ぼしたあの爆発でこの国を滅ぼして見せましょう!」
「ルイズ…、それはいくらなんでも…。」
さすがにツッコミを入れるトゥ。
「私は、本気よ?」
「えー…。」
「精神力もたっぷり貯まってる今ならやれるわ。」
ルイズは、胸を張って答えた。
エレオノールは、眉間を押さえて、俯いた。
末の妹の恋心が末期どころのレベルじゃないと分かってしまったからだ。
これ以上言ったら、本気で国を滅ぼしかねない…かもしれない。
「でも、あの後、ぐったりしてたじゃん。」
「それは言わないの。」
「…ルイズ。」
「なんですか、エレオノール姉様?」
「…はあ…、もういいわ。」
「っと、言いますと?」
「許したわけじゃありませんからね。」
「許しなんかいりません。私、トゥと一緒にいられないなら、名前だって捨てるつもりですから。」
「! 国はおろか、ラ・ヴァリエールまで捨てるというの?」
「ええ。」
ルイズは、何のことはないように返事をした。
「…この女のどこがそこまでいいのよ…。」
「トゥがいいの。トゥじゃないといけないの。」
「バカ…、バカちびルイズ…。」
「ええ。バカで結構です。」
エッヘンと胸を張るルイズに、エレオノールはますます深くため息を吐き、トゥはオロオロした。
「………ったく、恋は盲目っていうけど、本当ね! でも約束は約束よ。そこのあなた! 私、あなたと約束したわよね? 貴族の仕草を身につけるって。」
「えっ? そんな約束しましたっけ?」
「忘れてんじゃないわよ!」
叫ぶエレオノールを見ながら、トゥは思い起こす。そういえば、そんなことを勝手に決められてしまったような…。
「グズグズしてないで、さあ、やってごらんなさい。」
「はい…。」
トゥは、あの後ルイズに無理矢理教えられたことを実践して見せた。
エレオノールは、黙っていた。
「あの…。」
「全然ダメじゃない! あのね、公爵家の娘が欲しいなら…。」
「あ! 私が嫁いでいいんですね!?」
「あんたはあんたで、なに良い方に解釈してんの!?」
手を上げてピョンピョン跳ねるルイズを、エレオノールが睨んだ。
しかし、やがてエレオノールは、諦めたように大きく息を吐き。
「まったく……。でもこれだけは、約束してちょうだい。今日から同じベットは禁止。いいわね?」
「でもベットは一つしか無いから…。」
「それから、あなた。」
「私?」
「明日から、ビシバシ貴族のなんたるかを叩き込んであげるから、そのつもりで。仮にもラ・ヴァリエールの娘を娶ろうというのだから、それなりでは困ります。」
「私がお嫁さんでいいのね!」
「ルイズは、黙りなさい。…いい? 家柄がないぶん、気品で補っていただくわ。」
「はい…。」
「声が小さい!」
「は、はい!」
「わかったら、もう寝なさい。ああ、私のベットも用意しておいてね。」
そう言うエレオノールに、ルイズは頷いた。
二人が二階に戻っていくと、エレオノールは、食事についていたワインをグラスに注ぎ、ぐーっと飲んだ。
「はあ……、どこかにいい男いないかしら…。」
っと、呟いたのだった。
ルイズが、トゥ大好き!って感じを出そうとしたら、こうなった…。あれ?
エレオノール姉さん、ドン引きです。
このネタでは、ルイズの方が恋に夢中なので、ルイズとその周りをどう書くか、どう動かすか毎回悩んでます。
世界が終わっても一緒がいい。これ、一応今考えてるD分岐での伏線かな?