二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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メイド服を着せられたトゥ。

後半は、ルイズ→トゥ要素で、トゥが自分がハルケギニアに呼ばれた理由について少し触れます。(たぶん)


第五十三話  トゥ、真実に近づく

 

 誰しもがルイズの後ろを歩く人物に目を向けた。

 ルイズの後ろを歩くのは、メイドの格好をしたトゥだった。

 トゥは身長があるので、若干サイズが違うが、メイドの衣装を何とか着こなしている。

 男子達は、普段は肌を多めに出しているトゥを見ているので、逆に隠しているのはこれはこれでそそられるとヒソヒソしていたため、覗き事件を聞いていた女子達からキャーキャー言われて避けられていた。

 水精霊騎士隊の少年達は、あの事件後、退学だけは免れたが、罰として学院の清掃を命じられ、女子達にはキャーキャー叫ばれて避けられ恋人がいる者はお仕置きされ、ギーシュに至っては別れ話まで出て、マリコルヌにようやく訪れた春も失われようとしていた。まあ、マゾなマリコルヌは、罵られて逆に喜んでいたのだが…。

 トゥがなぜメイドの服を着せられているのか。

 その理由は、ルイズとシエスタが惚れ薬でラリッている時に止めなかったことを怒られたからだ。

「だって二人とも幸せそうだったんだもん。」

「だからって放っておくんじゃないわよ!」

 効果はすぐに切れたが、ルイズとシエスタにとって黒歴史になった。

「トゥさん、誤解しないでください。キス以上のことはしてませんから。」

「うん、見てたよ。」

「いやん。」

 トゥにそう言われて、顔を赤くしたシエスタは俯き手で顔を覆った。

 シエスタの可愛い仕草に、ルイズは、ムッとなった。

「トゥ、お茶入れて。」

 シエスタから気をそらさせるためにトゥに命令した。

 ハッとしたトゥは、せっせとお茶の用意をした。どこで覚えたのか、いやにお茶の淹れ方などを知っている。元々料理の腕もあるが、それ以外の技能もあるらしい。

 テーブルについたルイズとシエスタのカップにお茶を注ぎ、クッキーも用意する。その手際の良さ。シエスタに匹敵するだろう。

「あんたどこで覚えたのよ?」

「えっ?」

「…まあいいわ。あら、美味しいわね。」

「トゥさんお茶の淹れ方がとてもお上手です! 私が淹れるより美味しいですよ!」

「ありがとう。」

 べた褒めするシエスタに、トゥは笑顔で答えた。

 ルイズは、ムッとしたがそこへトゥがクリームの入った壺をテーブルに置いたので固まった。

「トゥ…、これは何?」

「えっ、クリームだよ。クッキーに塗る奴。」

「なんで今出すの?」

「えっ? だってクッキーに…。」

「少しは考えなさいよぉぉぉ!」

「ふえぇぇ。」

 トゥは、ルイズに叱られた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ルイズがトゥを叱っていると、タバサがシルフィードに乗って窓からやってきた。

 なぜだかコルベールも乗っており、ルイズの部屋に入ったコルベールは、どこか浮かない顔をしていた。

 話を聞いてみると、オストラント号による航行を許してもらえなかったのだという。

「せっかく君の故郷へ行けると思ったのだがね。」

「……。」

「どうしたんだい、トゥ君?」

「あの、先生…。」

「なんだい?」

「私のいた世界には…、行かない方がいいです。」

「だが、私としてはあの戦闘機のような技術のある国を一度この目で見てみたいのだ。」

「あれは、たぶん…旧世界の遺物だと思うの。」

「キュウセカイとは?」

「えっと…、ワン姉ちゃんなら分かるかもしれないけど…。」

「君のお姉さんかい?」

「うん。ワン姉ちゃん、いっぱい本読んでるからすごく色んな事詳しいの。」

「それはぜひ会ってみたいな。」

 ワクワクした顔をするコルベールの様子に、トゥは、苦笑した。

「トゥさん…、元の場所に帰りたいんですか?」

「うーん。覚えてないから、よく分かんないの。」

「あ、そうでしたね…。すみません。」

 トゥの記憶がないことを忘れていたシエスタは謝った。

「私のいた世界は…、ルイズ達の世界とそんなに変わらないかな?」

「そうなのかね?」

「でも魔法主義じゃないし、貴族の人もいるけど、魔法が使えるから貴族ってわけじゃなくって…。」

「ほうほう、全く違う国家体制の世界なのか。魔法がありながら、魔法に凝っているわけではないというのは興味があるね。」

「妖精とか、竜がいるし…。」

「このハルケギニアにもドラゴンはいるが?」

「違う。ちょっと違う。なんて言えばいいんだろう? なんだか違う気がするの。私がいた世界の竜と、この世界の竜は…。」

 トゥは、言いかけて少し黙った。

「近いけど…、とても弱い。」

「弱い? 火竜や風竜など多種にわたるというのかい?」

「最強の竜が必要。」

「さいきょうのりゅう?」

 トゥが無表情で淡々と言い始めたため、全員の目がトゥに集まった。

「花を……、花を…。」

「トゥ? トゥ! しっかりしなさい!」

 トゥがおかしくなってきて、ルイズが慌ててトゥの腕を掴んで揺さぶった。

「……? どうしたの?」

「トゥ、あんた…。」

「トゥ君?」

「ふぇ? 何かありましたか?」

「あっ、いや、なんでもない。疲れているのにお邪魔してすまないね。」

「疲れてませんよ?」

「いいんだ。本当にすまない。」

 コルベールの不自然な気の使い方にトゥは首を傾げた。

 タバサは、ジッとトゥを見ていた。いや、トゥの右目の花を見ていた。

 タバサは、外にいるシルフィードのこと思った。

 韻竜というこの世界では極珍しい竜であるシルフィードは、人語を喋るだけじゃなく先住魔法を使いこなす。

 その韻竜ですら、トゥからしたら弱いのだろうか?

 トゥが言っていた最強の竜というのがどんなものなのか純粋に興味があったが、同時に不安を覚えた。

 シルフィードだけじゃなく、他の竜ですらトゥの花を喰らいたがる。

 それは、何を意味するのか…。

 シルフィードに直接聞こうとしたのだが、シルフィードは頑として言わなかった。だがトゥの花を思い出してか涎を垂らしていた。

「その花は、竜のご馳走?」

 タバサの直球な言葉に、ルイズは目を見開きタバサを見た。

 ルイズは、視線で空気を読めと訴えているがタバサは止めなかった。

「シルフィードも、他の竜も、あなたを食べたがってる。」

「それは本当かね、タバサ君!」

「タバサ!」

「ルイズ。ハッキリさせた方がいい。」

 叫ぶルイズに、タバサが言った。

 トゥは、何の話をしているんだろうかとキョロキョロとしていた。

「あなたは、竜に食べられたい?」

「竜に…。」

「シルフィードは、あなたを食べたがっている。」

「……そう。」

 トゥの目から光が消えていき、けれど笑みを浮かべた。

「嬉しい。」

 本当にうれしそうに、けれど、儚そうにそう言った。

「トゥ! トゥってば! ダメよ、ダメだったらダメだから!」

「トゥさん、しっかりしてください!」

 ルイズは、トゥの腕を掴み揺さぶり、シエスタも声を上げた。

「もしや…、君の花は、竜でなければ駆逐できないのかね?」

「!」

 コルベールがずばり言った途端、トゥの目が大きく見開かれた。

「………最強の竜…。最強の竜がいるの。必要なの。」

「なぜそこまで最強の竜に拘るのかね?」

「そうでないと…、あそこへ……、約束が…。」

「あそこ? やくそく? それは一体?」

「わたし…、私は…。」

「もうやめて!」

 ルイズが大声で叫んだ。

 その叫び声でコルベールとタバサは、びっくりし、トゥの目に光が戻り、ルイズは、ヒックヒックと泣いた。

「私は、トゥに死んでほしくないの! トゥを…、トゥを追い詰めないで!」

「ルイズ?」

「お願いだから、死なないでぇ!!」

 ルイズは、トゥの胸に縋りついて泣きながら言った。

 その後もルイズは、大声で泣き続け、タバサとコルベールは、何も言えなくなった。

「ルイズ…。」

「トゥ…。」

 トゥは、困ったように笑いながらルイズの頭を撫でた。

「どこにも行かないで…。」

「それは、……できないよ?」

「イヤ!」

「ルイズ…、あのね…。」

「イヤだったらイヤ!」

 ルイズは、癇癪を起こす子供のように叫び続けた。

 それからしばらくルイズは、泣き叫び続け、その間にタバサとコルベールは、ソッと退室し、シエスタは、貰い涙を流していた。

 




トゥは、すべてを知って理解しているわけではありません。
キーワードに触れられたので、花とガンダールヴから自然と情報が出て来ただけでほとんど無意識です。

死にたがるトゥに、ルイズが癇癪を起しました。

DOD3の文明レベルって、ハルケギニアとそう変わらない?
でも旧世界とか、ドラゴンとかの強さ的には生物としての強さは圧倒的にDOD世界の方が上かも。

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