二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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気が付けば、五十話越え。
こんなに長く続くとは…。

今回は、ルイズの恋の悩みと決意かな。

感想欄でベアトリスとオスマンへの処分の話がありましたので、無理やりな形でその辺のことを入れました。


第五十話  トゥと、ルイズの苦悩

 

 ティファニアの問題は、とりあえず片付いた。

 ベアトリスは、あの後、ティファニアを殺しかけたことや司教を騙った罪などを問われて停学処分やらその他処分を受け、オスマンもアンリエッタの客人を危うく見殺しにしかけたことを問われて結構な処分を受けて戻ってきた。

 一方で、トゥを恐れる生徒が増えた。

 元々右目に花を咲かせていることから不気味がる生徒は多数いたが、ベアトリスが連れていた竜騎士隊をたった一人で、殺すことなく無力化させた戦いぶりに恐れをなしたのだ。

 七万の敵をたった一人で相手しただけじゃなく、そうしたことをやってのけた腕っぷし。もしその剣が自分達に向けられたらと思ったら気が気じゃない。

「トゥさんは、優しい方です!」

「優しいんだね、ミス・ウェストウッドは。」

「そうじゃないです! どうして皆さん、トゥさんを怖がるんですか!」

 ティファニアが必死に仲裁しようとするが、現状は変わらない。

 それは、エルフよりも得体が知れないからだ。

 杖も使わず、ドラゴンのブレスを弾き返す得体のしれない力。一年生たちはそれを目の当たりにしてトゥを警戒した。エルフのように耳がとがっているなどの特徴もなく、その力が系統魔法や先住魔法でもないことは、貴族として、そしてメイジとして鍛えられた感覚で分かる。

 右目に咲いた花も、正体が分からない。それもトゥが周りから警戒され、恐れられる要因になっていた。

 ティファニアは、アルビオンにいた頃、孤児達がトゥの花に触れようとしてトゥが酷くそれを嫌がったのを覚えている。

「トゥさん。」

「なぁに?」

「その…花は、何なんですか?」

 ティファニアは、こらえきれず聞いた。

 トゥの表情が消えた。

 ティファニアは、しまったと思い謝罪しようとすると。

「この花は…、危険なモノ…。いつか世界を…。」

「えっ? せかいを?」

「……。」

「あっ…、ご、ごめんなさい。やっぱり聞いちゃいけなかったですね。」

「…何の話?」

「えっ?」

 キョトンとした顔で首をかしげるトゥの様子にティファニアは、ポカンッとした。

「…トゥ…さん?」

「?」

「あの…さっきその花が世界をって…。」

「? そんな話した?」

「えっ?」

「トゥ!」

 そこへルイズが駆けて来た。

「あっ、ルイズ。」

「ちょっと、あっち行きましょう。それと…。」

 ルイズは、トゥの背中を押し、それからティファニアに耳打ちした。

「花のことは聞かないで。」

「えっ?」

「いいから。でないとトゥが壊れちゃう。」

「!」

「…お願いよ。」

 ルイズは、そう言い残し、トゥを連れて去っていった。

 残されたティファニアは、二人の背中をただ見つめていることしかできなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ルイズ、どうしたの? 何か用?」

「別に…。」

「?」

 ルイズに押されるまま移動したトゥが聞くと、ルイズは、そっぷを向いてそう言っただけだった。

「それはそうと、あんた、ティファニアと随分と仲良いわね?」

「えっ、だって友達だもん。」

「本当に~?」

「本当だよ? どうしたの?」

「ねえ、トゥ。」

「なぁに?」

「あんたは…、大きいのと小さいの、どっちがいいわけ?」

「えっ? なにが?」

「だ、だから…、大きいのと小さいの…どっちがいいわけ!?」

「だから何が?」

「てぃ、ティファニアの、アレとかどう思ってるわけ!?」

「アレって?」

「言わせんじゃないわよ! あんな凶悪なモノ!」

「あっ、おっぱいのこと?」

「はっきり言わないでよ!」

「大きいな~って思ってるよ。」

「それだけ?」

「うん。」

「……そう…。」

 ルイズは、ホッとしていた。

「じゃあ、もう一度聞くけど、大きいのと小さいの、どっちがいい?」

「う~ん…。」

 トゥは、悩む仕草をした。

 ルイズは、睨むようにトゥを見ながら返答を待った。

「…うーん、どっちもいいと思うよ?」

「そんな曖昧な答えはいらないわ!」

「えー。」

 ルイズの叫ぶに、トゥは、困った。

「ちゃんと答えないから、お仕置きよ!」

「えー。」

 ルイズは、どこから出したのか、皮の首輪を出した。

 その時。

「大きい方がいいですよね!」

「えっ?」

 トゥが、びっくりしている隙にいつの間にか現れたシエスタが、自らの胸にトゥの顔を掴んで押し付けた。

「ティファニアさんには負けますが、私だって負けませんよ! どうですか、トゥさん!」

「むぐぐ…。」

「ちょっと、苦しがってるじゃない!」

「ルイズさんには、こんなことできませんものね。」

「っ!」

 シエスタの胸の間に挟まれ苦しがるトゥ。

 ルイズは、自分自身の胸に手を当てた。そこには、何もない。

 勝ち誇るシエスタの顔に、ルイズは、顔を赤くしてブルブル震えた。

「ぷはっ。何するの、シエスタ。」

「トゥさん。大きい方がいいですよね?」

「えっ?」

 ずずいっと詰め寄って来るシエスタに、トゥは思わず後ろに仰け反った。

「どうですか!? どうなんですか!?」

「し、シエスタ、落ち着いて…。」

「私の方がいいですよね!?」

「えっ?」

 シエスタの叫びにトゥがキョトンとしている隙に、ルイズは、走り去ってしまった。

「ルイズ!」

「ダメです!」

 ルイズを追いかけようとしたトゥの手を、シエスタが掴んで止めた。

「どうして止めるの?」

「ルイズさんには、少し考える時間が必要だと思います。」

「?」

 真面目な顔で言うシエスタに、トゥは、首を傾げた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ルイズは、自室のベットで毛布にくるまっていた。

 小さく声を堪えて泣いていた。

 どう足掻いたって、自分には、シエスタやティファニアのようなブツはない。

 トゥは、単純に大きいなっとしか感じていないようだが、それでもこの劣等感は拭えない。

 カッとなってお仕置きだなんて言ったが、よく考えたらトゥに非はない。

 ああ、どうして自分は感情を抑えられないのだろう。

 こんなに恋というのが苦しいのならば、いっそ消してしまえばいいと思って、アルビオンでティファニアに無理やり頼んで忘れてしまったが、結局は裏目に出て、そしてトゥを傷つけたという事実を残して、最悪な形で思い出してしまった。

「馬鹿ね…、私って…。」

 なんでトゥなんだろう?

 どうしてトゥに恋しちゃったんだろう?

 使い魔で、同性で、……人間じゃない…らしい。

 また消してしまいたくなるが、また忘れてトゥを傷つけてしまったら…、もう立ち直れなくなるに違いない。

 どんなに苦しくてもコレは消してはいけないのだ。

 それを身をもって知ったのだから、どんなに苦しくて痛くても、耐えなければならない。

「……キュルケの奴…実はすごかったのね…。」

 恋多き友がいかにすごいのかが分かった気がした。

「って、私は色ボケになりたいわけじゃないのよ! トゥだけ! トゥだけなのよ!」

 っとルイズは、ガバッと起き上がって叫んだ。

 

『相棒。一途に想われてて、幸せもんだなぁ。』

「ルイズ…。」

 

「へっ?」

 声が聞こえてそちらを見ると、トゥが立っていた。

「い、いつからいたの…?」

「馬鹿ね、私って言ったあたりから?」

 割と時間がたっていたらしい。

 ルイズは、ボンッと顔を赤面させた。

「ルイズ。私のこと、好き?」

「な、なななななな、何言ってんのよ! あ、ああ、あんたなんて…、あんたなんて…。」

『嘘はいけねーぜ。アルビオンでも、『やっぱり、大好き』なーんて言ってたくせによ。』

「あんた溶かすわよ!」

「ごめんね、ルイズ。」

「なんで謝るのよ。」

「だって…、私…。」

「あんたが応えてくれないのは…、前々から聞いてたわ。シエスタの告白だって断ってたんだし。」

「でもルイズが私のこと好きって言ってくれたの…、嬉しかったんだよ?」

「……勘違いするからやめてよ。」

「本当だよ。」

「…分かったわ。」

「?」

「あんたを振り向かせられるよう私が努力すればいいのよ!!」

「へっ?」

 突然のルイズの宣言に、トゥは、キョトンとした。

「確かあんたには、恋人もいたって言うし、例えそうでも振り向かせられるよう頑張るしかないじゃない! 覚悟しなさいよ!」

「えー。」

 ビシッと指さして大声で宣言するルイズに、トゥは声を漏らした。

 

 




シエスタ、ルイズが恋敵になって焦ってます。

あとルイズの決意。トゥの全部を含めて愛そうとしてます。
原作と違い、同性なので進展が…。

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