二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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ルイズに異変。

そして、ティファニアとの再会と、仇敵との思わぬ遭遇。

※一部文章を削除。


第四十五話  トゥと、ルイズの異変

 

 ルイズに異変が起こった。

 

 魔法が使えなくなったのだ。

 

 また爆発で終わるのかと言ったらそうじゃない。

 

 不発なのだ。何も起こらないのだ。

 

 ルイズは、ショックのあまりベットにふさぎ込んでしまった。

「ルイズ…。ねえ、デルフ。原因は何?」

『精神力が切れたんだろ?』

「違うと思うよ。だってそれだったら寝たら治るでしょ?」

『そうだな…。そうだ、虚無の場合は、普通の他の系統とは違う。普通の系統なら何日か寝ればだいたい回復するが、虚無は今までコツコツ溜めて来た分を消費する。ほら、いつだったかどでかいエクスプロージョンを放っただろ?』

「うん。あれは、すごかった。」

『あれは、生まれてこのかたずっと溜めて来た精神力を消費してぶっ放したんだ。だからあれだけ大きな奴を撃てたのさ。それからは、少しずつ残りの精神力を消費して来たんだろう。二度とあんなどでかいやつはぶっ放せてないだろ?』

「そういえばそうだね。じゃあまたコツコツ溜めていくしかないの?」

『けどなぁ…、再び虚無を撃てるようになるにはどんだけかかるか分からねぇ。一年か二年か…それ以上か…。』

 トゥとデルフリンガーがそんな会話をしている間、ルイズは、ベットの上で泣いていた。

「ねえ、ルイズ。デルフもこう言ってるし、休もう? ルイズ、ずっと頑張ってたもん。」

「そうは、いかないわ。」

「どうして?」

「こうしてる間にも、どこの誰かが良からぬことを企んでるかもしれない…。やらなきゃいけないことはたくさんあるの。それなのに、このままじゃ私、役立たずじゃない。」

「そんな、ミス・ヴァリエールは、役立たずなんかじゃありませんわ。」

 泣いてるルイズを、シエスタが慰めた。

 だがルイズは、泣き止まない。そんなルイズが可哀想になってきたのかシエスタまで泣いた。

 っと、その時。ギーシュがトゥを呼びに来た。

 アンリエッタからのご下命らしい。

 ギーシュが更に、ルイズも呼ばれていると聞き、トゥは困った。

 きっとルイズの虚無の力を頼りにした命令なのだろう。だが今のルイズには虚無が使えない。

「でも、今ルイズは…、イタッ!」

「行くわよ。」

 さっきまで泣いてたルイズは、いつの間にか立ち上がり、ルイズが魔法が使えない状態であることを言いかけたトゥを抓って止めた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 学院の校門をくぐると、空からシルフィードが降りて来た。

 シルフィードには、タバサとキュルケが乗っていた。

「どうしたの?」

 びっくりするギーシュとは裏腹に、トゥが普通な調子で聞いた。

「私も行く。」

 そう言ったのは、キュルケではなくタバサだった。

 キュルケが言うには、出かけていくトゥ達を窓から見つけてタバサが飛び出していったのだという。

「わあ、本当?」

「うん。」

 タバサが少しモジッとしながら頷いた。

「ルイズー、タバサちゃんが乗せてってくれるって。」

 トゥは、ルイズにそう言うが、ルイズは、一人、馬で行ってしまった。

「ルイズ?」

「あらあら? どうしちゃったの?」

「えっと…。」

 トゥは言うべきか悩んだ。

 そしてやっぱり喋るわけにはいかないだろうと判断し喋らなかった。

 シルフィードにギーシュと共に乗り、先を走るルイズを追った。

「シルフィードちゃん、ルイズを乗せてあげて。」

「きゅい。」

 そしてシルフィードは、馬ごとルイズを咥え、器用に舌でルイズだけを背中に放り投げた。涎でベタベタになったルイズをトゥが受け止めた。

「ルイズ?」

 ルイズは、肩を抱いて震えていた。

「寒いの?」

 トゥが心配し、ルイズの背中を摩った。

 

 シルフィードは、王宮に向けて飛んでいった。

 

 そしてアンリエッタとの謁見で言い渡された命令は。

 アルビオンにいる、もう一人の虚無の担い手を連れて来ることだった。

 つまりティファニアを連れてい来いということだ。

 ルイズが襲われたように、彼女にも魔の手が迫る可能性が高いということで、保護するということだ。

 しかしティファニアは、孤児達と暮らしている。その点について聞くと、生活を保障するから孤児達も連れてきていいということでまとまった。

 アンリエッタがガリアの王女であるタバサと少し会話をし、任務が終わった後、改めて身の振りを相談することになったりした。

 ルイズは、アンリエッタとあんなに仲が良いのに、この時は喋らなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 一行は、シルフィードに乗って、最速でアルビオンに辿り着いた。ちなみに帰りはアンリエッタが船を用意してくれている。さすがに定員オーバーで孤児達を乗せることはできない。

 ギーシュは、ソワソワしていた。

「なによ、ギーシュってば、ソワソワしちゃって。」

「だ、だって…。」

「トゥちゃん、なんて説明したの?」

「耳が長くて、すっごくお胸が大きい子。」

「あら? 私よりも大きいの?」

「うーん…。」

「そ、そんなに悩むほどなのかい!?」

「ギーシュ、モンモランシーに言っちゃうわよ?」

「! それだけは…!!」

「冗談よ。」

 キュルケは、顔面蒼白になるギーシュをからかって笑った。

 そして一行は、ティファニアがいる村に向けて移動した。

 その最中、キュルケがルイズが様子がおかしいことについて、トゥにヒソッと聞いて来た。

 トゥは、こっそりと、とうとう話してしまった。

「あらまあ、精神力切れ?」

「シッ!」

「…でもちょうどいいんじゃないかしら?」

「なんで?」

「あの子に伝説なんて荷が重すぎると思ってたの。あたしぐらい楽天的な方が過ぎたる力にはちょうどいいのよ。」

「ふーん。」

 トゥは、キュルケの言葉に感心した。

 

 やがてティファニア達が住む村に辿り着いた。

 村は変わってなかった。

「ここにその例の虚無の担い手がいるんだね?」

「うん。ティファちゃーん。こんにちは。」

 トゥがティファニアとの再会に。、はやる気持ちで返事も待たず戸を開けた。

「あっ…。」

「どうしたんだね? …!?」

「どうしたの? …!」

 固まったトゥに驚いたギーシュとキュルケが中を見て同じく固まった。

 そこにいたのは、ティファニアと子供達と…。

 

 二度ほど戦った相手、土くれのフーケがいたのだ。

 

「…ティファちゃん、どういうこと?」

「トゥさん?」

 剣を抜くトゥを見て、ティファニアが困惑した。

「どうして、フーケがいるの?」

「それはこっちの台詞だよ。」

 フーケは、椅子から立ち上がった。

 トゥの後ろでギーシュとキュルケが杖を抜いて構えた。

「やめてください!」

 ティファニアがそれを見て焦った。

「どきたまえ! そいつは敵だ!」

「マチルダ姉さんを傷つけないで!」

「マチルダねえさん?」

 どうも事情があるらしかった。

 一行は、一旦武器をしまい、家の中に入った。

 マチルダ姉さんと呼ばれたフーケは、しばらくギーシュらと睨みあったがやがてしびれを切らし、疲れたようにどかりと椅子に座った。

「ねえ、ティファニア。なんでこいつらと知り合いなのか話してごらん。」

 フーケは、ティファニアに説明を求めた。

 ティファニアは、トゥ達の顔を見て説明をしても良いかと了承を求めた。

 トゥが頷き、ティファニアは、説明を始めた。

「…そうかい。七万の軍を一人で蹴散らしたのは、あんただったのかい。」

 やっぱりまともじゃないねぇっと付け足して、フーケが苦笑した。

「じゃあ、どうしてティファちゃんと、フーケさんが知り合いなんですか?」

 トゥが聞いた。

 ティファニアが、以前話してくれた父親が財務監督官だった話を出し、その時太守の人がいて、その人の娘が、なんとフーケであるのだと語った。

「それだけじゃないの。マチルダ姉さんは、私達に生活費を送ってくださってるの。」

「その生活費って…。」

「言ったら殺すよ。」

 トゥが言いかけたら、マチルダがジロリッと睨んで止めた。

 ティファニアは、トゥに、フーケが何をしてお金を稼いでいるのか聞こうとしたので、トゥは、仕方なく嘘を吐いた。

「えっと…、宝探し?」

「それって…、つまりトレジャーハンターですか?」

「う、うん。」

「わあ、すごい! かっこいい!」

「プッ…。」

「笑うんじゃないよ。」

「だって、ねぇ。」

 睨んでくるフーケに、キュルケが笑いをこらえて言った。

 その後は、ティファニアが戸棚から出したワインで乾杯となった。仇敵同士の奇妙なパーティが始まった。

 一方ルイズは、フーケを前にしても、心ここにあらずな状態だった。

 




スランプですね。

中々、執筆が進まない。

ヨルムンガンドとの戦いまでまだかかるかな?

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