二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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心神喪失状態から召喚。


A分岐
プロローグ


 その青い髪、青い瞳の女性は、地面にへたり込み、ただ宙を見上げていた。

 上の空。

 まさにその通りな状態だった。

 傍らには、彼女には似つかわしくない大きな剣が地面に刺さっている。

 美しい体に、まるで下着のような露出の高い服。周りにいた男子達は思わず息を飲んでしまうほど美しかった。

 

「ちょっと…、大丈夫?」

 

 ルイズは、その女性に話しかけた。

 だが女性は反応しない。まるでルイズの声が聞こえていないようであった。

「…ミス・ヴァリエール。契約を。」

「えっ…、しかし…。」

「次の授業があります。契約を。」

 コルベールに急かされ、ルイズは、仕方なく青い髪の女性と契約を結ぶべく、彼女の頭の上に杖をかざした。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え。我の使い魔となせ。」

 そしてルイズはかがみ、青い髪の女性に口づけた。

 口付けられても女性は反応しなかった。

 まるで人形みたいだと思ったが、呼吸はしている。

 やがて女性が、急に糸が切れたように横に倒れた。

「ミスタ・コルベール!」

「ああ、これはいけない。すぐに保健室へ運びましょう。」

 念のためコルベールは、女性の脈や呼吸を確認した。

 脈はあり、呼吸はある。

 そして女性は、スースーっと眠っていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 保健室に、様子を見に来たルイズは、ベットで寝ていた青い髪の女性を見た。

 まだ寝ている。

 ベットの傍らには、彼女のものと思われる大きな剣が立てかけられている。

 念のため体を調べたところ、左手にルーンが刻まれており、使い魔の契約は成立したことが判明した。

 ルイズの使い魔となった女性は、まだ眠っている。

「……いい加減起きて欲しいわね。」

 寝ている女性に、ルイズは、不満げに言った。

「おーきーろ。」

 っと、額にデコピンをした。

 すると、パチッと女性が目を開けた。

「!!」

 ルイズは、突然のことに驚いたが、女性は、ガバリッと起き上がり、ルイズをジッと見た。

「えっと……、起きた?」

 なんと声を掛けたらいいか分からなかったのでとりあえずそう言った。

 女性は目をぱちくりさせ、ルイズを見ながら、ゆっくりと首を傾げた。

「……あなた、誰?」

 女性が言った。

 綺麗な声だった。

「私は、ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。今日からあなたのご主人様よ。」

「ごしゅじんさま?」

「そう、あなたは…不本意だけど使い魔になったの。分かる? 使い魔よ、つ・か・い・ま。」

「つかいま?」

「左手を見て。」

 女性は、言われるまま左手を見た。青い布で覆われていて見えない。

「それ外して。」

 言われるまま外すと、左手の甲に文字のようなものが刻まれていた。

「それが使い魔のルーンよ。あなたが私の使い魔になった証。分かった?」

「分かった。」

 女性は素直に頷いた。

「あなたの名前は?」

「なまえ……、なまえ?」

 女性は首を傾げた。

「自分の名前、分からないの?」

「分からない…、私の、名前…。」

 ふと女性はベットの傍に立てかけられている剣を見た。

 顔を寄せ、そこに刻まれている字を見た。

「………トゥ……。」

「えっ?」

「トゥ……、なまえ?」

 顔を上げた女性は、また首を傾げた。

「それがあなたの名前なの? っていうか、その剣あなたのなの? はっきりしてよね。」

「トゥ…名前…、私の、剣…。」

 トゥという女性は、愛おしそうに剣を握り、軽々と持ち上げた。本人もルイズも気づいていないが左手のルーンが光った。

「ルイズ、ご主人様。私、使い魔。」

「うん…、そうよ。」

「…うふ…、ウフフフ。アハハハ。」

 トゥは、嬉しそうに笑い出した。

「よろしくね、ルイズ!」

「きゃっ!」

 急にトゥに抱き付かれ、ルイズは、そのまま床に押し倒された。

 頭を打ち、怒ってトゥを引き離そうしたが、物凄い力で抱きしめられ苦しくて呻いた。

「うぅぅ! 苦しい…。」

 骨がきしんでいる。内臓が潰れそうだ。

「あ、ごめん。」

「死ぬかと思ったわ! いきなり抱き付かないで! 頭打ったじゃないの!」

 ルイズは、トゥに説教した。

 しょんぼりするトゥ。

 あらかた叫んだルイズは、一息つき。

「はあ…、次から気をつけてね。」

「うん!」

「えっと…まあ、よろしく…。」

 元気よく返事をするトゥに、ルイズは若干たじろいた。

 

 ルイズは、謎の女性トゥを使い魔とし、新学期を迎えることとなった。

 




ガンダールヴの印を刻まれたことで記憶を失い、精神が戻りました。

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