二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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D分岐エンド。

トゥとルイズが融合した花を、ミハイルが焼き払います。


D分岐
最後まで一緒


 トゥが、海からフネの上に這い上がったときに、見たのは。

 ミハイルのブレスで焼けて溶けていく黒い花だった。

「よかった……。」

「トゥ…、やったわね。」

「うん。あとは……。」

「トゥ。」

「ルイズ?」

 

「…終わったよ。」

 

 そこへ、ミハイルが飛んできた。

 すると、ルイズがよりいっそうトゥに抱きついた。

「ルイズ、離れて。」

「イヤ。」

「離れてよ。じゃないと巻き込むよ?」

「それでいい。」

「えっ、ちょ…。」

「君…、離れないと、一緒に焼いちゃうよ?」

「それでいいわ。」

「ルイズ!」

「あんたと離ればなれになるのは、もうたくさん! 最後まで一緒がイイって言ったでしょ! 例え世界が滅んじゃっても!」

「ルイズ……。」

 トゥがルイズの方を向くと、ルイズは、トゥの胸に顔を埋めてきた。

 ポロリッとトゥの目から涙がこぼれた。

 ルイズは、本気だ。

 本気で、自分と離ればなれになるくらいなら、一緒に死のうとしている。

 ルイズを死なせたくはない。だが突き放すことができない。

「私は……、私は……。」

「どうするの?」

「……。」

 トゥは、泣きながら、ルイズを抱きしめた。

 キラキラと、光の粒子がトゥの体から発せられ始めていた。

 もうすぐ花が咲ききる。

「ミハイル…。」

「……。」

「………咲ききったら…焼いて。」

「……分かった。」

 ミハイルは、承諾してくれた。

 

 やがて、白く、淡い光がトゥとルイズを包み込み、フネの甲板から、空へと舞い上がった。

 同時に、世界が色を無くす。

 光の球体となった花は、白い花弁を開いた。

 

 

「あれが…、トゥ君の花?」

「いいえ。」

「女王陛下?」

「あれは、トゥ殿とルイズの花ですわ。」

 

 

 

 花の中心から生えてきたのは、対照的な美しい二人の女性が混ざり合った白い彫像のような姿だった。

 

 美しい。

 

 世界が滅びる間際だというのに、それを見た人々は、誰もがそう思い、目を奪われた。

 

 やがて、歌声が響き渡り出す。

 

 二人の女性の声。

 

 それは、悲しくも聞こえるし、愛に満ちているようにも聞こえる不思議な歌声。

 

 花の力によって浮かび上がる天使文字と魔方陣が渦巻く。

 

 それは、世界を優しく、けれども終わらせるためのウタ。

 

 ミハイルが、渦巻く天使文字をひとつずつ破っていく。

 

 混ざり合った二人の女性がウタいながら、踊る。

 

 ああ、まるでそれは、ひとつになれたことを喜んでいるかのように。

 

 

「あのバカップル、こんな時でもイチャついて…。」

「まったくだな。」

「もう二度と離ればなれにはならない。だからこそ喜んでいるんだろ。」

 世界が終わろうとしているのに、そんなことをつい暢気に語り合ってしまう。

 それだけ、今目の前で起こっていることが、現実離れしているからだ。

 あまりにも美しくて、悲しくて……。

「トゥさん…、ルイズ…。羨ましいなぁ。」

「私もですわ。ミス・ウェストウッド。」

「おいおいおい、そこ。羨ましがるところがずれてるぞ。」

 ティファニアとシエスタの会話に、ギーシュらがツッコミを入れた。

「ふぉふぉふぉ…、我らがあれほどに恐れておった悪魔が、このように美しいと、逆に拍子抜けするのう。」

「何を言われているのです?」

「…我らは、このウタを忘れてはならん。これからも後世に伝えてゆこう。」

「はい。」

 テュリュークとビダーシャルはそう会話した。

「でも、確かにちょっと羨ましいわね。ねえ、ジャン。」

「そうかね?」

「ええ。ねえ、ジャン? 私達も世界が終わっても一緒よ。」

「待ちなさい。私の方が先に死ぬよ?」

「そしたら後を追うわよ。」

「勘弁してくれないかね。」

 横でそんな二人の会話を聞いてたタバサは、やれやれと言った様子で肩をすくめた。

「お姉様も羨ましいのね?」

「…違う。」

「いつか、お姉様にももっと好きな人が現れるときが来るのね。」

「……来る…かな?」

「きっとくるのね。」

 俯くタバサの背中を、シルフィードが叩いた。

「アリィー。あの花が滅んだら、結婚しましょうね。」

「きゅ、急に何を言い出すんだ!」

「いいじゃない。それともイヤなの?」

「そんなわけ…。」

 ニコニコ笑うルクシャナに、アリィーはタジタジだった。

「ジュリオ…。終わったら、話があります。」

「ええ、なんですか?」

「コレが終わったらですよ。あの謎の女性との関係についてです。」

 黒髪に眼鏡の女性・アコールは、すでにここにはいなかった。

「別に? ただ昔、世界の行く末を見てくれって頼まれただけですよ。何もやましいことはありません。」

「ほんとう?」

「ああ、本当さ、ジョゼット。」

「……愛してるわ、ジュリオ。」

「…僕もさ。」

 ジョゼトとジュリオは、口づけを交わした。

 

 

 やがて、花弁のひとつが崩れ落ちた。

 すべての天使文字の壁を破ったミハイルが放つ炎が、ついに花に到達したのだ。

 花弁が、腕が、顔が、砕かれ、崩れていく。

 花の天敵である竜の炎は、花を等しく焼き払おうとしていた。

 

 

『ルイズ…、ずっと言えなかったことがあったね。』

『なによ、急に?』

『……大好きだよ。』

『…馬鹿。遅いじゃないの。』

 

 

 そして、花の中心を、ミハイルの炎が貫いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 報告。

 この分岐にて、花の駆逐を確認。

 ウタウタイ・トゥは、ウタウタイ・ゼロを倒し、自らの花の駆逐を白き竜・ミハイルに依頼。

 承諾したミハイルは、ウタウタイ・トゥと、ルイズという少女が融合した花を焼き払い、これを駆逐した。

 ミハイルは、再び時空の穴に舞い戻り、違う分岐の花の駆逐するべく旅立っていきました。

 これからも、彼(?)は、花を駆逐するために戦い続けるでしょう。

 しかし、この世界に虚無がある限り、ウタウタイは、再び呼び出される可能性はあり。

 今後も、引き続き観測を続けるべきだと提案する。

 




この分岐では、魔法は無くなりません。
その代わり、虚無も消えないので、再び別のウタウタイが呼び出される可能性が高いです。


これで、このネタは終わりです。
たくさんのお気に入り、そして感想くださり、ありがとうございました。

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