二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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シエスタが、ノーマルじゃないです。
完全なるアブノーマルじゃないけど、恋って同性相手でも関係ないって思うのは私だけでしょうか?

あと、犬の格好、再び。
あと、ルイズにちょっと手を出します。大したことじゃないですが…。


第十六話  トゥ、告白される

 夢を見た。

 

 薄紅色の花の夢。

 綺麗なのに恐ろしい夢。

 この花は、いずれ世界を……。

 

「ーーーーっ!」

「トゥさん! 目が覚めたんですね?」

「…シエスタ。」

 目を覚まして最初に見たのは、シエスタの泣き笑いの顔だった。

「うなされてたからすごく心配だったんですよ…。でもよかった…。目を覚まさないから…。」

「ルイズは?」

「ミス・ヴァリエールなら、あちらに。」

 トゥから少し離れた位置にある、木の傍らでルイズは、座って寝ていた。

「疲れてらっしゃったのですね。トゥさんを看病していて途中で寝てしまわれて…。」

「あ…。そういえば、敵は…。」

「トリスティン軍が勝ちました。あの…、ものすごい爆発があって、それでアルビオン軍の艦隊が全滅したおかげで。」

「ルイズがやったんだ…。」

「ミス・ヴァリエールが?」

「ルイズ、がんばったんだよ…。」

「そうなんですか…。」

 トゥは、起き上がった。

 そして、寝ているルイズの傍に来て。

「ルイズ、ルイズ。」

「…ん? トゥ?」

「おはよう。」

「……バカ。」

「えー?」

「あれから全然、目を覚まさないし…、なんなのよ。」

 ルイズは、なぜか不貞腐れていた。プイッとそっぷを向き、頬を膨らませる。

「ごめん…。」

「もういいわ。」

 そう言ってルイズは、トゥの方を見た。

「鼻血も止まったみたいだし。元気そうね。」

「うん。」

 トゥの鼻には、布が詰められていた。それを外すると、血は垂れなかった。

 

 その後、トゥとルイズは、シエスタの村の人々に崇められ、三日三晩ほど宴会に付き合わされた。

 

 こっそり抜け出したトゥは、お酒で火照る身体を風にさらして覚まそうとしていた。

「トゥさん。」

「シエスタ?」

 そこへシエスタがやってきた。

「ちょっと酔っちゃった。」

「そうですか。無理なら無理って言ってくださいね。そうじゃないとずっと勧められますよ。」

「そうだね。」

「あの…トゥさん…。」

「なぁに?」

 トゥがシエスタの方を見ると、シエスタは、俯き、頬を赤らめていた。

「その…女性の方との………、その…えっと…。」

「なになに?」

「あの!」

「ふぇ!?」

「好きです! トゥさん!」

「えっ? 私も好きだよ。」

「えっと…、そ、そそそそ、そういう…お友達としてじゃなくって…その…。」

 シエスタは、顔を真っ赤っかにして、手をオロオロとさせた。

 トゥは、首を傾げた。

「好きって…、恋人として?」

「そ、そうです…。」

「……。」

 

 『カノジョに無理をさせたくないですからね。』

 

「っ…。」

「トゥさん? もしかして…、い、いやでした? そうですよね…、同性同士で…そんな…。」

「違う…。」

「えっ?」

「ごめんね…。シエスタ…。私…、恋人になれないの。」

「そうですか…。」

「ごめんね。」

「いいんです。ダメもとでしたから。」

「これからもお友達でいてくれる?」

「もちろんです!」

「よかった。大好きだよ。シエスタ。」

 そう言ってトゥは、シエスタの両手を握った。

「そんなこと言われたら…、勘違いしちゃいますよ?」

 シエスタは、そう言って、苦笑した。その目には、少し涙が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして学院に帰ってみると、学院は平和なものだった。

 学び舎であるため政治的なこととは無縁であるためである。

 キュルケからの話によると、朝食の際にオスマンからトリスティン軍の勝利についての話がちょっとあっただけで、それ以外は普通だったらしい。

 タルブ村であんな激しい戦闘があったというのに、ここに来たらそれが嘘みたいだ。それぐらい差がある。

「トゥさん、トゥさん。」

「なぁに?」

「これ、どうぞ。」

「なにこれ、ストール?」

「トゥさんがつけているのボロボロですよね、だから新しい物をって…思って…。出来る限り同じ色の糸を選びました。」

「もしかして手作り?」

「はい…。」

 シエスタは、頬を赤らめて頷いた。

 トゥは、そんなシエスタからの好意を無下にできず、受け取り、それを首に巻いた。

「うん。ありがとう。肌触りも良い。」

「よかった。」

 シエスタは、嬉しそうに微笑んだ。

 そんなシエスタの様子に、トゥは、複雑な気持ちになった。

 自分はシエスタの恋人にはなれない。

 思い出せないが自分には、たぶん、恋人らしき人がいた。

 思い出せないのがもどかしい。心が寂しい。

 この心の寂しさを埋めるために、いっそのこと…なんて気持ちもあるが、それではシエスタを傷つけてしまうと思いとどまった。

「あの、トゥさん…。」

「なぁに?」

「トゥさんには、恋人がおられたんですか?」

「……いたと思う。思い出せないけど。」

「やっぱり、そうですか…。」

 シエスタは、しゅんとした。

「トゥさんみたいに素敵な人を放っておくわけないですよね…。」

「シエスタにも素敵な恋人ができるよ。」

「私は…、ただの田舎娘ですから…。」

 そう言ってシエスタは、委縮した。

「シエスタ…。まだ私の恋人になりたい?」

「えっ…、それは…。」

「いいんだよ。シエスタの気持ちわかってて私もハッキリできなくて。ごめんね、シエスタ。」

「いいんです…。私が未練たらたらなせいですから…。」

 シエスタの目からポロポロと涙が零れた。

 トゥは、そんなシエスタに近づき、いい子いい子と頭を撫でた。

 

 

 その様子を、離れた位置から木の影から見ている人物が一人。

「なによ……。断った割に、イチャついちゃって…。」

 ルイズは、ぶつぶつと文句を言っていた。

 実は、あの時のシエスタの告白シーンをちょうど見てしまったのだ。

 トゥがそれを断ったことに、ルイズは、ホッとしていた。なぜホッとしたのか。それが分からず、こんな感じでトゥの後をつけて様子をうかがうなんてことをしているのである。

「なんでイライラしてるのよ、私…。」

 分からない。よく分からない。

 トゥがシエスタと仲良くしているのを見ると、イライラする。ムカムカする。

「まさか…、やきもち? イヤイヤイヤ! 違う違う! そんなわけない! そんなわけなーい!」

 ルイズは、しゃがみ込み頭を抱えて首を振った。

 しかしその顔は赤面している。

 

「ルイズー、どうしたの?」

 

「はっ?」

 見るとトゥがいつの間にか近くにいて、中腰になってこちらを見ていた。

「なんで…いるのよ?」

「だってさっきからルイズの声が聞こえてたから。」

「!?」

 あれだけ一人で騒げばトゥだって気付く。

 トゥは首をかしげている。ルイズは、プスプスと煙が出そうなほど赤面した。

「お……。」

「お?」

「お仕置きするわよ!!」

「なんで?」

 なんかよく分からないが、お仕置きが決定した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

『理不尽だよな~。理由も言わずによォ…。』

「くぅ~ん…。」

 トゥの腰にあるデルフリンガーが言うと、トゥは悲しそうに声を漏らした。

 また犬の恰好をさせられて、現在教室の後ろでチョコンと座っていた。

『なぁ、相棒、そこまでして犬の真似なんかしなくたっていいんだぜ?』

「だって、しないと怒られるんだもん…。」

 そしてチラリッとルイズの方を見ると、ルイズは、馬用の鞭を片手で弄びながらこちらを見ていた。

 ギョッとしたトゥは、ビシッと背筋を伸ばした。

 ルイズは、それを見ると、前を向いた。

 ルイズの目がそれると、トゥは、しゅんっと俯いた。

 

 

 お昼。

「キャンキャン!」

「まだよ。」

「…わん…。」

 床でしょんぼりと座り込んでいるため、頭を垂れさせたため耳と尻尾を垂れる。

 その様は、まさに叱られてしょんぼりする犬で、それが美女とあっては、食堂にいる男子と男性教師の多くが鼻を押さえていた。

「トゥさん、トゥさん、ご飯食べて元気出してください。」

 そこへシエスタが食事を乗せたお盆を持ってきた。

「わん!」

「こら、勝手に食べちゃダメよ。」

「わん…。」

「待てよ。待て。」

「くぅ~ん…。」

「………………よし。」

「わーい!」

 トゥは、すぐに食事にありついた。

 

 

 夜。

「本当は床だけど、ベットで寝かせてあげる。」

「わん。」

「ただし! 何もしないでよ? したら明日ご飯抜き!」

「わん…。」

 とりあえずベットで一緒に寝るのは許してもらえた。

 そこでトゥは、ちょっと悪戯心が芽生えた。

「わんわん。」

「もう、くっつかないでよ。」

「くぅ~ん、くぅ~ん。」

「こ~ら、くすぐったいでしょ。」

 本物の犬さながらにすりついてくるトゥを、ルイズは笑って迎えた。

 トゥも悪乗りしだして、しまいには、ペロペロと顔を舐めだした。

「あーもう、甘えん坊さんねぇ。」

 なんだか楽しくなってきたルイズは、トゥの頭をワシャワシャと犬みたいに撫でまわした。

 トゥの少しふわっとした髪の毛がとても触り心地がよくて、いつまでも撫でていたくなる。

 肌だってモチモチのふわふわだし、なんて素敵なんだろう…っとルイズがうっとりしていると、トゥの手がゴソゴソとルイズの体をまさぐった。

 嫌な予感がした。

「ルイズ…。」

 トゥの目がトロンっとしている。

 デジャヴ。

 ルイズは、慌ててトゥから距離を取ろうとしたが、そのまま抱き込まれた。

「ちょ…、トゥ! ダメ!」

「ルイズの肌…、甘い…。」

「舐めないでったら!」

「他のところも美味しそう…。」

 ネグリジェの中に、トゥの手が入り込んだ。

「いや…、ダメ…!」

 わき腹を撫でられ、ルイズは、ビクリッと反応した。

「ルイズの、肌、すべすべ…。」

「トゥ! しゃ、シャレになってないから! ダメ、ダメよ!」

 だが抱きしめる腕が強すぎて逃げられない。

 トゥの手が、ネグリジェから出て、ルイズの太ももを撫でた。

「ダメ! ダメだってば!」

 その手が太ももの内側を撫で始めたところで、ルイズは、涙を浮かべた。

「これ以上やったら、あんたのこと嫌いになる!」

「っ…あ……。」

 トゥは、正気に戻った。

 ルイズは、涙目で、顔を真っ赤にして、プルプルと震えていた。

「…ごめん。」

「あんた、明日も犬になってもらうからね!!」

「…分かった。」

 

 お仕置きは、明日も続くようであった。

 

 

 




私は、シエスタをどうしたいのか分からなくなっております。申し訳ない。
最初は友情で収める予定だったんですが、恋愛に発展させました。

犬の格好で、犬みたいにルイズにじゃれついて、途中でちょっと正気を失ってルイズにちょっと手を出しました。


次回は、惚れ薬騒動。

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