侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。


ダージリン→ダー
オレンジペコ→ペコ
アッサム→アッサ
ルクリリ→ルク
ニルギリ→ニル

カチューシャ→カチュ
クラーラ→クラ
アリーナ→アリー

シンディー→シン

黒森峰隊隊員A・B・C・・・・→黒森A・B・C・・・・


Chapter22:クラーケンの帰還です!

ほんの少し時間は戻り、マウス二両による挟撃が始まった直後。

みほはダージリンら中央隊から見て北側の住宅街に構え、無線通信を続けていた。

 

みほ 「マウスで重圧をかけ続け、完全に意識が東西に分かれた瞬間に北側から中央部を叩きます。逃げ切られる前に可能な限り撃破してください」

麻子 「南を封鎖しないのは何故だ?完全に囲んでしまえば全滅も狙えるんじゃないか?」

みほ 「逃げ道を完全に塞げば相手は覚悟を決めてしまいます。仮にも向こうは全国大会出場の猛者ばかり、こちらも痛手を被る危険があります」

華  「あえて包囲を緩くすることで反撃の可能性を下げると言うわけですね。お見事です」

みほ 「ありがとう、五十鈴さん。上手くいけば向こうのチームの総数はかなり下がる。行方不明のフラッグ車がこのまま姿を見せなくても、四十両撃破で勝利を狙えます」

麻子 「だが、島田愛里寿のセンチュリオンが行方不明らしいじゃないか。既に四両やられているし、ここに駆けつけられたら厳しいんじゃないか?」

 

みほ 「この地図を見てください」

 

みほはこの一帯の地図を広げる。

 

みほ 「私たちのいる場所はここ、相手の反対が位置しているのはここです。そして、センチュリオンを追いかけやられた四両の位置は、ここ」

 

みほが地図を指さした位置を確認すると、みほたちが現在構えている位置とやられた四両の位置はだいぶ離れている。

 

みほ 「センチュリオンは自分を追っている戦車の総数までは分からないはずです。彼女にはマウスによる挟撃の連絡が行っているでしょうから、駆けつけることはあってもこちらの本当の狙いはまだ気が付けないでしょう」

麻子 「交戦している隊の中心部にはそれぞれの隊長格がいる。私たちの奇襲が成功すれば相手の戦力や統率がかなり下がるな」

みほ 「はい。この作戦がうまく決まればこのまま決着がつく程までの決定打を与えられます」

沙織 「本当にうまく行っちゃいそうで心配・・・・」

みほ 「え?武部さん、どうしたの?」

沙織 「あっ、ううん!何でもないよ!」

 

沙織が慌てて取り繕っていると、砲弾を調べている優花里に気がつく。

 

沙織 「ゆかりん、何してるの?」

優花里「ああ、砲弾の残弾を調べているんです。初日に江の島攻略隊と交戦したときに、だいぶ撃ち合っていたので」

沙織 「あの時何とか突破しようといっぱい撃ってたもんね。あと何発くらいあるの?」

優花里「ちょっと待ってくださいね、たしか・・・・」

みほ 「残り四十九発」

 

みほがさらりと残弾を述べる。

 

沙織 「えっ」

みほ 「初日に撃ち合った時に消費した弾数はニ十ニ発。さっきの作戦(釣り野伏せ)のとき放ったのが九発。IV号戦車は搭載数が八十だから、残りは四十九発だよ」

華  「もしかして、数えていらしたんですか?」

みほ 「うん。特に今回は長い試合だから、弾切れしちゃわないように残弾数には気をつけてるんだ」

 

にべもなく言ってのけるみほに唖然とする一同。

 

優花里「すごいです西住殿!戦闘や全体指揮を行いながら、残弾の管理まで完璧だなんて!」

みほ 「ううん、これは慣れだから。逆に細かすぎるって言われちゃうこともあるくらいだし」

沙織 「でもほんとすごいよみぽりん!私なんてお買い物行った後の財布の残高だってわかんないもん。デートの時お金足りなくなっちゃったら恥ずかしいよね〜」

華  「誰とデートに行くんですか?」

 

などと話していると、通信が入る。

 

黒森A『予定通り、両勢力はマウスに引っ張られ側面が疎かになっています。叩くなら今です!』

みほ 「了解しました。引き続き注意を引き続けてください。くれぐれも誘いを悟られないように」

黒森A『了解!』

 

無線を終えたみほの顔は一層凛々しさを増す。

やがてIV号の周囲に待機していた戦車たちも集まり、十両ほどの小隊が位置についた。

IV号を中心に置き、Vの字のように展開する蜂矢の陣である。

この陣形の特徴は敵陣を貫くがごとくの突進力にあり、決着をつけに行こうというみほの決意が見て取れる。

 

みほ 「ではこれより南下し相手小隊の中心部を叩きます。この作戦の重要な部分は『どれだけ相手を混乱させられるか』です。可能な限り戦場をかき乱し、立ち直る隙を与えさせないでください」

黒森B「了解!くーっ、やっと前線で戦える!」

黒森C「これまでずっと後方だったもんね」

 

本隊なだけありこれまで目立った交戦がなかったチームメンバーらは、訪れた活躍のチャンスに胸躍らせていた。

と、無線にマウスの乗組員から連絡が入る。

 

黒森A『プラウダ、グロリアーナの隊長車も動き出しました、仕掛けるなら今です!』

みほ 「わかりました!では行きましょう、パンツァー____」

 

みほがそこまで言いかけた時だった。

 

バァァアン!

シュポッ

 

一番東寄りに位置していたIV号突撃戦車が被弾、白旗を上げた。

 

みほ 「!?」

沙織 「えっ、何!?なにごと!?」

黒森B『センチュリオンです!センチュリオンが襲いかかってきました!」

みほ 「!」

 

バァン!

ドオン!

 

隊の最左翼、東側では単騎飛び込んだセンチュリオンが暴れ回り、どんどんと輪を乱していく。

 

麻子 「こちらに気付いていたのか」

優花里「しかもこのタイミングに来るなんて!?」

華  「となると作戦は相手本隊にも筒抜けかもしれませんね」

みほ 「・・・・!」

 

みほは左翼、センチュリオンのいる側を悔しそうに睨む。

 

みほ 「・・・・仕方ありません、総動員してセンチュリオンを仕留めます!相手本隊が自由になる前に彼女を倒せば、幾分かの有利が____」

 

ドガアン!

 

みほ 「!?まさか!?」

 

みほが作戦変更を伝える前に、今度は右翼西側から砲音が響き渡る。

 

黒森E『こちら右翼隊!奇襲を受けています!』

みほ 「右翼隊、車種はわかりますか!相手は何両ですか!?」

黒森E『しゃ、車種は確認できません!気がついた時にはすぐに建物の影に隠れてしまっていて・・・・!でも、一両しかいませんでした!』

 

みほは悔しそうに拳を握る。

この作戦は決まれば決着がつくほどのダメージを与えられるはずだった。

しかしそれは見破られた挙句、逆に自分たちが奇襲を受けるという目も当てられない事態に追い込まれている。

しほが観ている試合でこんな醜態を晒している、みほにとってはそれが一番悔しくもあり、同時に大きな動揺を招く事態となった。

 

華  「みほさん・・・・」

 

そんなみほの様子を気にした華が声をかける。

それに一瞬はっとした表情を見せたが、すぐに気を取り直し表情を戻し咽頭マイクに手を当てる。

 

みほ 「・・・・残念ですが、作戦は看破されていたということになります。現在襲撃してきたのは両翼に一両ずつなので、各四両ずつで迎撃に当たってください。左翼には島田愛里寿、右翼の相手も戦力は未知数ですが同等と構えて挑んでください」

無線 『了解!』

 

続いて挟撃をかけているマウス小隊にも無線をかけようと、咽頭マイクを入れ直そうとすると___

 

ヴィイイイイン

 

各所から聞こえる交戦の音に紛れ、一つの戦車の駆ける音が聞こえてくる。

はっとしたみほは音の聞こえた方を向く。

 

ヴィイイイイン

 

しかし姿は見えず、音だけが駆け抜けていく。

 

ガコンッ

 

IV号は旋回し、未だ姿の見えない襲撃者に備える。

 

みほ (四両の追跡を撒き、この距離に近づいてもなお姿を現さないなんて、まさに忍者戦術、もしくは・・・・)

 

みほは脳内にここ一帯の地図を思い浮かべる。

西住流の教えである『関わる場所は細部に至るまで地図を頭に叩き込む』を忠実にこなしたみほは、自分の立っている位置はおろか現在の戦場である住宅地の細かな私道の入り組みですら完璧に把握できている。

右翼側の戦車は姿を隠しているが、発見場所と味方の動き、そして音からおおよその位置の予測をつけていたみほは____

 

ガキンッ

 

道ではなく、とある家に砲口を定める。

そして、

 

みほ 「撃て!」

 

バァン!

チュドオン!

 

躊躇せずその家に向けて一撃を放つ。

その砲弾は建物を貫通し、反対側へ抜けた。

そこには____

 

イカ娘「うわあああ!?」

栄子 「あっぶねぇぇぇえ!?」

 

建物の影に身を隠し奇襲するタイミングを測っていたイカ娘の五式の目の前を通り抜ける。

 

みほ 「!あれは、五式!?」

 

砲弾が貫通し穴が空いた建物越しに、みほが五式を目視した。

ほぼ同時にIV号を目視したイカ娘と目が合う。

直後、

 

みほ 「撃て!」

イカ娘「全速前進でゲソー!」

 

バァン!

ギュイイイイン!

 

IV号の次弾と五式の加速が同時に放たれ、砲弾が五式を掠める。

そのまま加速し姿を隠す五式だが、IV号も同じ方向に加速し始める。

 

バァン!

ドォン!

 

建物越しに次々と放たれるIV号の砲弾。

僅かその先を駆け抜ける五式。

 

優花里「次弾装填しました!」

みほ 「撃___」

 

そう言い合える前に、

 

ドガァン!

 

砲撃の合間を突いた五式が民家を突き破ってIV号へ突進する。

一瞬怯んだみほだったが、

 

みほ 「撃て!」

 

バァン!

 

即座に平静を取り戻し砲撃を放つ。

しかしその一瞬を突いた五式は砲撃をかわし、そのままIV号の横っ腹に体当たりをする。

 

ガッシィン!

 

全速力の五式の体当たりを食らったIV号の車体左半分が浮き上がる。

 

沙織 「うひゃあ!?」

 

車体が持ち上がり傾き始めた車内で沙織が声をあげる。

 

みほ 「・・・・!」

 

ヴィィィィィン!

 

狼狽えずみほは指示を送り、IV号は急加速、五式から離脱する。

 

ドッシャアン!

 

そして勢いよく水平に車体が戻る。

 

沙織 「あいたー!?」

 

その衝撃で体が浮かび上がり、沙織は頭をぶつけていた。

 

ギュイン!

 

体制を立て直したIV号が砲塔を回し、五式を捉えようとすると____

 

ガギィン!

 

距離を詰めた五式が再び体当たりし、照準を定まらせない。

そのまま互いの砲身が互いの砲身にぶつかり、さながら鍔迫り合いのような体をなした。

 

みほ 「・・・・!」

イカ娘「ぐぬぬぬぬ・・・・!」

 

膠着状態に陥り、お互いの車長の目線が火柱を上げる。

 

ギュイン!

 

と、IV号が砲塔を反対方向に急旋回した。

 

イカ娘「うわあっ!?」

 

鍔迫り合いの最中に相手砲身が引き、勢い余った五式の砲塔はあさっての砲口を向く。

 

ギュイイイイン!

 

そのまま砲塔を一周させたIV号が、再び五式に狙いを定めた。

 

栄子 「こんにゃろ!」

 

ガシィンッ!

 

咄嗟に五式が信地旋回、IV号をコマのように弾き飛ばす。

 

みほ 「っ!」

 

その遠心力に吹き飛ばされないようキューポラの蓋を掴んで踏ん張るみほ。

 

ギュイイイイン!

 

IV号が体勢を整える暇を与えず、再び五式が体当たりを仕掛ける。

何度も食らってたまるかとIV号側も信地旋回、進入角度が浅くなり二両が横並びのようになる。

 

麻子 「凄い勢いだな」

栄子 「ふぬぬぬぬ・・・・!」

 

変わらぬ様子で操縦桿を握る麻子と、顔を真っ赤にして操縦桿を握りしめる栄子。

密着しすぎているため砲弾を放つこともできず、お互い弾き飛ばされまいと踏ん張り続けている。

 

そこへ.

 

ヴィィィィィン!

 

さらにもう一両戦車が近づく音。

はっとしたみほとイカ娘が目を向けた先には____

 

イカ娘「愛里寿!」

 

左翼側で四両を相手にしていたはずの愛里寿のセンチュリオンが猛スピードで迫って来る。

 

優花里「左方向!センチュリオンが迫ってきますー!」

沙織 「愛里寿ちゃん!?相手してたみんなは!?」

 

プシュー・・・・

 

左翼側では、既に愛里寿によって撃破された四両が黒煙を上げながら白旗を上げていた。

 

華  「流石愛里寿さん、お見事ですね」

 

突如ニ対一に追い込まれたIV号。

迫るセンチュリオンがIV号の側面に砲口を定める。

すぐにでも砲撃指示を飛ばしたい愛里寿だが・・・・砲撃は放たれない。

 

愛里寿「無理か・・・・、このままだとイカ娘に当たる」

 

愛里寿の登場で窮地に陥ったはずのIV号だったが、みほはその中でも冷静に務めていた。

センチュリオンの砲撃タイミングを見据え、放たれた瞬間急バックでかわし五式に当てさせるつもりだったのだが、それを愛里寿は察したのである。

 

愛里寿(やっぱり、どこにいてもみほさんはすごい。・・・・なら!)

 

ヴィィィィィン!

 

沙織 「ちょっ!センチュリオン突っ込んでくるよ!?」

 

センチュリオンは止まるどころかIV号に向かって突撃を敢行した。

 

麻子 「ゼロ距離で確実に仕留めるつもりか」

みほ 「っ!」

 

ギュイイイン!

 

センチュリオンの突進を見たみほの指示で、IV号がこれまで以上に履帯を回し始める。

そして、

 

ギャルッ

 

IV号の旋回力が勝ち、五式が張り付いたまま車体が回り始める。

そこへ浅い角度で突入したセンチュリオン。

 

ガッシィン!

 

進入角度が浅いせいで威力が殺され、センチュリオンもIV号の側面に張り付く形になった。

両側を五式とセンチュリオンに挟まれ、異様な状態に陥るIV号。

サンドされた状態で攻められていても小刻みな動きで履帯への負担を極力減らしている。

そんな進展が見えない膠着状態を続けていると、事態に気付いた右舷側の戦車達が駆けつけ始めた。

このままこの状態が続けば不利なのはイカ娘達。

 

愛里寿「・・・・」

 

ふと、愛里寿がイカ娘へアイコンタクトを送る。

 

イカ娘「・・・・(コクッ)」

 

愛里寿の意図を察し、頷く。

 

ヴィィィィィン!

ギュィィィィン!

 

直後、IV号を挟んだまま両車が履帯を激しく回し始める。

そしてそのまま南が、建物に向かって動き始める。

それに気づいたみほが履帯を逆回転させようとするが、ガッチリ挟まれた二両に争うほどの出力はなかった。

 

ギギィ・・・・

 

そして挟まれたIV号も徐々に加速し始め、しまいにはかなりの速度で三両横並びで建物に向かって突っみ始めた。

 

沙織 「目の前!麻子!ぶつかるー!」

麻子 「舌噛むなよ」

 

ドガシャーン!

 

そのまま三両は建物に突っ込み、壁や家具を蹴散らしながら家の中を横切る。

そしてその速度のまま建物を貫通し____

 

バガアアアアアン!

 

イカ娘「ゲッソーーーー!」

 

三両は建物を突き抜け南側、カチューシャらの目の前へと躍り出たのであった。

 

 

〜〜回想終わり、現在に戻る〜〜

 

 

ガッシャアン!

 

三両が同時に着地する。

 

カチュ「えっ、何!?イカチュ、えっ、ミホーシャ!?」

 

予想外の展開に混乱したカチューシャが目を丸くする。

グロリアーナ隊とプラウダ隊は東西に現れたマウス小隊を相手取るためそれそれ進行し始めていたため、その中心部はもぬけの空だった。

そこに両陣営のフラッグ車が競り合うように建物から飛び出してきたものだから、それを見た誰もが思考をフリーズさせていた。

 

バァン!

 

そんな中、いち早く反応したのはダージリンだった。

速やかな旋回からの砲撃をサッとかわすIV号。

なおも食いついて離れない五式とセンチュリオンを相手取り大立ち回りを演じている。

 

カチュ「総員反転!一気に叩き込んでフラッグ車を仕留めるのよ!」

 

一歩遅れて平静を取り戻したカチューシャが号令を発する。

が、

 

ニーナ『む、無理でぇーっす!』

カチュ「何でよ!?」

 

返ってきたのは否定的な反応だった。

 

アリー『マウスが目の前におんのに後ろ向けなんて、そんなのおっそろしくて出来るわけないでしゃー!』

カチュ「うっ・・・・!」

 

もっともな意見に言葉が詰まる。

 

カチュ「ならいいわ!カチューシャだけでも仕留めてやるんだから!」

 

ギュン!

 

奮起したカチューシャは反転し、単騎IV号戦車の元へ駆け始める。

それに合わせ、ダージリンのチャーチルも中央へ接近を試みる。

が、そこへ、 

 

ガラガラガラガラ

ギャラギャラギャラ

 

みほの元へは近づけさせまいと言うように、カチューシャとダージリンの前方と後方に合計四両の黒森峰戦車が躍り出た。

二両ずつカチューシャとダージリンの前と後ろに立ち塞がり、行手を阻む。

 

カチュ「くうっ!邪魔よ!どきなさい!」

 

ドォン!

 

躊躇ない砲撃が火を吹き、Tー34/85とチャーチルは各々の相手と戦いを始めた。

 

真里 『ご覧下さい!私の真下では今まさに壮絶な様相を呈した戦いが繰り広げられています!』

 

事態を聞きつけた実況ヘリが辿り着き、状況を目視した真理が声を上げる。

上空ヘリから見ると、両脇からマウス小隊に攻められ、それに応戦するグロリアーナとプラウダ隊。

一つ中寄りになったところには、前後を黒森峰の戦車に挟まれたチャーチルとT-34/85。

そして最中心部にはIV号と、それを囲む五式とセンチュリオン。

幾重にも陣営が入り混じり、混沌とした状況を作り出している。

 

真里 『何という戦いでしょう!これはまさに戦車のミルフィーユ!』

亜美 『朝ごはん、足りなかったでしょうか?』

 

バアン!

 

そんな混み合った状況下の中で、やはり一番注目されているのは中心部のIV号と五式・センチュリオンコンビ。

既にお互いの陣営の残り車両数が四十を切っている現状、つまりどちらかのフラッグ車が撃破されれば勝負は決する。

客観的に言えば、不利なのはニ対一になっているIV号の方だろう。

二両からの攻撃をうまくかわしてはいるが、片方に対して攻撃に転じようとすればもう片方が牽制し自由にさせない。

防戦一方な様相は、時間の問題にも思われる。

 

ドォン!

シュポッ

 

そんな中、カチューシャが挟み込んでいた二両を立て続けに撃破することに成功する。

 

カチュ「よしっ!加勢するわよ、イカチューシャ!」

 

一気に余裕が生まれたT-34/85が、中央の戦いに加わるべく進み始めた。

 

ニーナ『危ねえ!カチューシャ、避けてくだしゃー!』

カチュ「えっ!?」

 

ドゴオオオオン!

 

カチュ「うわぁぁぁぁぁあ!?」

 

フリーになったT-34/85を行かせまいと、マウスが放った砲撃が襲いかかる。

直撃は免れたが、その衝撃により戦車は大きく弾き飛ばされ、回転しながら建物にめり込んでしまう。

 

ダー 「!」

 

嫌な予感を感じ取ったダージリンが振り返ると、やはりそちら側のマウスもチャーチルに狙いを定めている。

それが放たれようとした瞬間____

 

バアン!

 

マウスの側面に着弾し、車体を揺らす。

それにより狙いがブレたマウスの砲弾は、あさっての方角に飛び去り爆音を立てた。

 

ニル 「側面からの砲撃!?」

ルク 「一体誰だ!?」

 

予想外な砲撃にグロリアーナ隊がざわめいていると____

 

西  『お待たせしました!遅ればせながら推参!』

 

無線から西のハキハキした声が響く。

 

ギャラギャラギャラ

ギャリギャリギャリ

 

砲撃が放たれた方角、南西から西のチハ(旧)を筆頭に知波単戦車団、そして清美らのオイが追従した一小隊が進行していた。

アリサと八九式のタイマンを見届けるためサンダース勢は稲村ヶ崎温泉に残っていたが、西ら知波単勢は先行し中央隊の交戦を聞きつけ駆けつけてきたのだ。

 

由佳 「うわ、あの戦車ものすごくおっきくない!?」

知美 「オイよりもっとデカい戦車なんて初めて見たよ!」

綾乃 「砲も凄いサイズ・・・・。当たったらタダじゃ済まなそう」

清美 「うん、当たらないように気をつけよう」

 

西側のマウス小隊に対し、東から迫るグロリアーナ隊と南から迫る知波単隊。

二方向から攻められ始めた西側マウス小隊は余裕が無くなり、守りを固めるように密集し始める。

 

ダー 「お見事なタイミングですわ西さん。全車前進、この機を逃す手は無くってよ」

 

ダージリンの号令により一挙に攻め入り始めるグロリアーナ隊。

それに合わせてか考えなしか、加速しどんどん近づく知波単隊。

ペースの違うそれぞれの攻めに戸惑う西マウス隊。

戦局は一気に変わり始めていた。

 

カチュ「ああもう、やってくれたわね!」

 

ガラガラガラ

 

ようやくめり込んだ建物から脱したT-34/85。

京成が有利になりつつある西側、未だ激闘を繰り返す中央部、マウスの砲撃に晒され続けている東側のプラウダ隊を見比べる。

中央部のイカ娘と愛里寿、みほの戦いが気になってたまらない様子だったが、

 

カチュ「くっ!」

 

振り切るように東側に向き直り、東マウス隊の攻略に乗り出すのだった。

 

ドゴオオオオオン!

 

爆音と共に火を吹く西マウス。

着弾部に大きな衝撃と黒煙が上がるが、それくらいで止まる知波単勢ではない。

 

西  「我に続け!この勝負の命運はこの突撃の先にあり!」

 

自分が隊の中心であることを忘れているかのような号令のもと突っ込んでいくチハ(旧)。

 

玉田 「西隊長!」

細見 「ええい、隊長一人を危機に晒すものか!」

寺本 「死なば諸共ーっ!」

福田 「それは意味が違うであります!」

 

西の吶喊に触発された他の隊員たちも西に続き、一丸となった戦車たちが西マウス小隊に食いかかる。

その勢いと気迫に押され、目を離せなくなる西マウス小隊。

だが、

 

バアン!

シュポッ

 

そんなよそ見を見逃すはずもないグロリアーナ隊の横撃を浴び、一両また一両と数を減らしていく。

そんな中、西マウスの動きが止まる。

 

玉田 「む!?何だ!?」

 

先程までの狼狽えた照準があっちこっちに向いていた状態とは違い、一切の迷いを切り捨てたように砲口は全くブレていない。

 

福田 「どうしたのでありましょう、覚悟を決めたのでしょうか?」

西  「いや、違う・・・・あれは!」

 

西マウスは、横からの被弾もあえて受ける選択をし照準を一つに絞った。

狙うは知波単戦車隊、西を中心とした複数の戦車たちだった。

 

西  「しまった、乾坤一擲!一撃に全てを賭ける気だ!全車散開ーっ!」

 

狙いに気づいた西が慌てて指示を飛ばす。

 

寺本 「ま、間に合いません!」

 

しかし反応が遅れた知波単戦車たちは散開しきれずにいた。

それを逃さぬと西マウスの剛弾が放たれた。

 

西  「しまった!」

 

覚悟を決める西。

次の瞬間、西たちの前に躍り出る一両の戦車があった。

 

清美 「西さん!」

 

ドゴオオオオオオン!

 

西の目の前に飛び出たのは・・・・清美のオイだった。

オイの巨体が西を完全に影に隠し、衝撃全てを一身に受ける。

その衝撃はオイの巨体さえ大きく弾き飛ばす。

 

西  「紗倉殿!」

 

直撃を受けたオイは主砲が完全に吹き飛び、履帯は切れ車体は傾き無残な姿になっていた。

だが従来持ち合わせた重装甲のおかげか、白旗が上がるまでには至っていない。

 

清美 『私たちは大丈夫です!西さん、今のうちです!』

西  「・・・・っ!」

 

あれほどのダメージを受けながらも西に行けと促す清美の気丈さに西は言葉を詰まらす。

だが、すぐに前を向き直す。

 

西  「全車全速!紗倉殿たちの屍を越えて行けーっ!」

知波単「おおーーーっ!」

知美 「いや、私たちまだやられてないんですけど」

 

オイの挺身を見た知波単勢はさらに猛り一丸となってマウスに突撃していく。

その加速にマウスは対応し切れず、新旧チハたちが差し迫る。

 

黒森D「まずい!取り囲まれるぞ!」

黒森E「焦るな!たかだか47mm砲程度でマウスの装甲を貫けるものか!」

 

実際マウスの装甲は三突の75mmすら跳ね返す重装甲を誇っている。

張り付かれても撃ち倒されることはない、そう見てどんと構えるマウス。

迫る知波単戦車。

しかし妙な予感が拭えないマウス車長。

 

黒森D (妙だな・・・・。知波単の連中は後先考えない猪突猛進な奴らだが、それにしたってここまであからさまに差がある相手に仕掛けようとするか?)

 

夏に大学選抜チームと戦うために共闘した時、アヒルさんチームが先導しいくつもの奇抜な作戦で何両も撃破した功績は知っている。

そんな経験を積んだ彼女らが果たしてここまで無計画に突っ込んでくるものだろうか?

そんな疑念を持ちながら様子を伺っていると___

 

西  「総員!アヒル殿作戦第三!」

知波単「応!」

 

ギュィィィィン!

 

西の号令のもと、新旧合わせた四両のチハが二両ずつ縦に並ぶ。

チハ(新)が前、チハ(旧)が後ろに着く。

そしてマウスの目前に迫った瞬間、チハ(新)が急ブレーキをかける。

 

ギギィッ!

 

火花が散り、チハ(新)がつんのめるようにして車体後部が浮く。

そこに____

 

ギュイイイイン!

 

速度を緩めないチハ(旧)が突っ込む。

 

ガシンッ!

 

それによりチハ(旧)が前のめりに立ち上がったチハ(新)を持ち上げた。

その結果、チハ(新)の砲口が地面スレスレになる。

その体勢のまま突っ込み____

 

久保田「知波単魂ーッ!」

玉田 「闘魂ーッ!」

 

ドゴォン!!×2

 

マウスが唯一装甲に守られていない部分、地面に接した履帯に向けて榴弾を打ち込んだ。

爆風と炎が上がり、地面はめくり上がり、マウスの履帯と転輪は吹き飛ばされた。

 

シュポッ

 

真里 『マウス、転輪大破により戦闘不能!』

亜美 『大洗の影響を受けた、彼女たちらしい作戦でしたね』

 

しかしその作戦の代償は大きく、ゼロ距離で榴弾を炸裂させたため二両のチハ(新)も砲身が吹き飛び、撃破判定と相成ってしまった。

 

福田 「玉田先輩殿!浜田先輩殿!」

 

駆け寄る福田の前に、元気に玉田と浜田が砲塔から姿を見せる。

 

玉田 「見たか福田!これぞ弾と散る粉骨玉砕の最たるものだ!」

浜田 「私と引き換えにあれが倒せたのなら、無駄死にだけは回避できたということね」

 

相打ちとなりこれで退場でありながら、玉田たちの顔は誰よりも誇らしげだった。

 

バァン!

シュポッ

 

そして主力であるマウスを失った西マウス小隊は、つつが無く攻め続けたグロリアーナ隊によって全滅した。

 

ドォン!

シュポッ

 

ほぼ同時に自らを取り囲んでいたパンターGを仕留め、ダージリンのチャーチルも一息ついていた。

 

ダー 「僅か二両を引き換えにあれを仕留めるとは、西さんたちも侮れませんわね」

ペコ 「はい、これからの認識を改めなければいけませんね」

 

オレンジペコの言葉に微笑みを浮かべたダージリンは、未だ戦いを続ける中央と東側を振り返るのだった。

 

沙織 「西マウス、および小隊のみんなやられちゃったよ!」

 

その間にも戦闘を続けていたIV号の中で、沙織が声を上げる。

 

華  「知波単の皆さん、予想以上の参加を上げられましたね」

麻子 「これで西はガラ空きだ、このまま攻め込まれたら飲み込まれるぞ」

優花里「西住殿、ここは退却するべきかと・・・・!」

みほ 「・・・・!」

 

沙織の報告と優花里の提案に長い顔をするみほ。

しかしあまりにも状況が悪いのはみほも理解している。

西側の味方が全滅した以上、自分たちが隊の最前列に位置してしまっているのだ。

このままグロリアーナ隊と知波単隊が合流して攻め込んでくれば、あんこうチームとて無事な保証はない。

だが、

 

みほ 「撤退・・・・」

 

その言葉を口にするみほは、キューポラの蓋を掴み辛そうな表情を浮かべる。

 

ダー 『随分まほさんとは違うのね』

 

昨晩岩本楼でダージリンに言われた言葉がみほの脳裏にリフレインする。

その言葉が振り払えず、次の指示を口に出さずにいる。

みほの迷いも加わり、五式とセンチュリオンを相手し続けるのも厳しくなってくる。

 

沙織 「みぽりん!?」

 

みほの様子に気づいた沙織が声をかけるが、みほはその声が届かないのかどこかを見つめ続けている。

 

麻子 「そろそろ限界だぞ」

 

平静を装いつつも、やや焦りが混じり始めている麻子。

戦況を整理し、体制を整えたグロリアーナ・知波単隊がみほたちに注意を向ける。

このまま迷い続ければ最悪な展開になるのは目に見えている。

 

華  「みほさん!」

みほ 「・・・・」

 

華の懇願にも応えず、固まるみほ。

そこへ、

 

???『何やってんのアンタ!』

 

ドガァァァァン!

 

みほを叱咤する無線と共に、戦いに割り込むように着弾した黒煙が三両を分つ。

 

イカ娘「うわあっ、なんでゲソ!?まさかマウスの攻撃でゲソか!?」

愛里寿「いや違う、この砲撃の規模は・・・・!」

 

愛里寿は砲撃の放たれた砲撃を見やる。

そこにいたのは、

 

みほ 「エリカさん・・・・!?」

エリカ「・・・・」

カチュ「ティーガーIIですって!?」

 

東マウス小隊の後方に、みほの窮地を聞きつけて駆けつけたエリカのティーガーIIが聳え立っていた。

少し盛り上がった位置に陣取ったティーガーIIは誰にも邪魔される事なく静止射撃出来るベストポジションに陣取り、見える相手戦車全てに睨みを効かせている。

 

優花里「逸見殿の救援です!」

沙織 「これで何とかなるかも!」

 

エリカの参戦により状況が好転すると見たあんこうチームの指揮とみほの表情が明るくなる。

 

エリカ『隊長、聞こえる?』

みほ 「はい、聞こえます!エリカさん、増援感謝します!このままの勢いで盛り返しましょう!」

 

エリカの登場により希望に満ちた表情を浮かべたみほは、エリカと共に反撃に出ようと意気込む。

だが、

 

エリカ『・・・・撤退しなさい。私が援護する』

みほ 「えっ!?」

 

エリカからの思わぬ提案に、一瞬信じられないという顔をするみほ。

 

エリカ『西側のマウス小隊が全滅した今、全戦力がそこに向けられるわ。直ちに北側に抜けて離脱して。私がここから追撃を阻止するわ』

みほ 「エリカさん、どうして!?」

 

到底提案を受けられないと声を上げるみほ。

 

エリカ『ここで攻勢に出ても勝率は極めて低いわ。なら今この場を離れて新たな機会を伺うべきよ』

みほ 「・・・・」

 

エリカの説得を聞きつつも、どうしても聞き入れたくないといった様子のみほ。

 

みほ 「でも、でも・・・・!」

 

納得できないみほがエリカと相手を交互に見る。

 

みほ 「でも、お姉様だったら絶対に退かない(・・・・・・・・・・・・・・)・・・・!」

エリカ『・・・・』

 

みほの言葉にはあ、とエリカはため息をつく。

 

エリカ『いい加減にしなさい、西住みほ』

みほ 「・・・・!」

エリカ『アンタは西住みほ。西住まほじゃないのよ。同じ選択をする理由も、しなきゃいけない理由もないはずよ』

みほ 「エリカさん・・・・」

エリカ『撤退しなさい。それとも、アンタの拘りに全員を巻き込むつもり?』

みほ 「・・・・」

 

エリカの、諭すような叱るような口調に口をつぐむみほ。

 

みほ 「・・・・この場から退却します。各自離脱後ポイントFへお願いします・・・・」

 

ギャリギャリギャリ

 

反転し、北側へ離脱を始めるIV号。

エリカや東マウス隊の援護により、余裕で撤退が叶う。

姿が見切れる直前、みほとダージリンの目線が合った。

みほは、目を伏せすぐに前へ向き直り、IV号は姿を消した。

ダージリンは、そんなみほをただ見送るだけだった。

そして、東マウス小隊とエリカのティーガーIIが姿を消した途端、

 

イカ娘「ぶへえーっ・・・・」

 

イカ娘がキューポラの上で全身の力が抜けたように突っ伏した。

 

カチュ「イカチューシャ!」

 

カチューシャやダージリンたちがイカ娘たちのもとへ駆け寄る。

 

カチュ「無事だったのねイカチューシャ!今まで連絡もなしにどこにいたの!」

ダー 「ご健在で何よりですわ。一時はどうなることかと」

イカ娘「ごめんでゲソ。無線が壊れちゃって、連絡が取れなかったのでゲソよ」

愛里寿「私と合流できたのも奇跡的だった。会えたなかったらどうなってたかわからなかった」

ペコ 「先程の戦い、とても惜しかったです。あと一歩のところで決着がつけられたのに」

渚  「そうでもありませんよ」

 

窓から渚が砲弾を持ちながら顔を覗かせる。

 

ニーナ「それは砲弾ですか?」

シン 「ええ、『ラスト一発』のね」

アリー「ぇ」

栄子 「江の島でまほさんとやり合った時撃ちすぎてさ。西住さんとやり合った時には残弾乏しかったんだ。もう少し戦闘が続いてたら弾切れを悟られて畳み掛けられてたな」

ニル 「まさにギリギリだった訳ですね」

ルク 「あのタイミングに逃げてくれて助かったな」

ノンナ「とあれば、次にすべきことが決まりました」

 

などと話していると、被害状況の整理を終えたノンナたちプラウダ勢も集まってきた。

 

ニル 「次にすべきこと、ですか?」

ノンナ「はい。『野営薬庫探し』です」

ニル 「あっ」

クラ 「皆さんマウスとの戦闘でかなりの量を消費してしまいました」

ニーナ「私らもやられまいとがむしゃらに撃ち続けたらえらいことに・・・・」

ノンナ「焦りからの無駄撃ちが多すぎです。鍛え直す必要がありますね」

アリー「ひぇーっ!」

ダー 「ともかく、被害状況と残存する戦力の把握が急務ですわ」

アッサ「その点に関しては既に手配してあります」

ダー 「流石ね」

 

かくしてアッサムの調査と管理結果今回の戦闘から被撃破数と残弾のデータが判明した。

 

大学選抜&海の家れもんチーム残存車両数:23

内訳→五式

センチュリオン

チャーチルMrk.Ⅶ

マチルダⅡ×2

クルセイダー

シャーマン×3

ファイアフライ

T-34/76

IS-2

KV-2

Tー34/85

チハ(旧)×2

九五式軽戦車

チハ(新)

オイ

サハリアノ

ケッテンクラート

BT-42

チャーチルMrk.Ⅵ(水没中)

 

イカ娘「ついに残りが半分切っちゃったでゲソ」

栄子 「今回の戦闘かなり熾烈だったからな、お互いすげえ損害出ちまった」

渚  「確か十両切っても負けでしたよね?そろそろ損害を抑える立ち回りも考えないと」

シン 「それより残弾が問題よ。私たち次交戦しても戦えないのよ?」

鮎美 「砲弾が尽きても負けですからね・・・・」

ダー 「となればやはり野営薬庫の発見が急務ですわね」

アッサ「ローズヒップからも発見の報告はなし、未だ捜索中とのことです」

ペコ 「本当に、どこにあるんでしょうか」

清美 「江の島に無かったとなると、ランドマークには無いのかもしれませんね」

ニル 「そうなるとさらに見当がつきませんね。でもひとチーム全車両を補給するとなると、やはり大きな建物でないと保管しきれないとは思います」

ルク 「なら学校の体育館とかコンサート会場とかか?」

西  「富豪たる協賛の方のご自宅という可能性も!」

福田 「なるほど!では大きな家を探せばよろしいのですね!」

細見 「流石は隊長!なら善は急げですな!」

カチュ「待ちなさいよアンタら!確証も無いのに動こうとしてんじゃないわよ!これだから猪は困るわ!」

ノンナ「ですが的を絞らず探し回るのも非効率です。探すにせよ論理的に、根拠をもって動かねばいけません」

クラ 「大会運営の立場から考えると、やはりどちらかの陣営に偏るエリアに配置したりはしないはずです」

ニーナ「それは鋭い意見だべ!」

アリー「んなら、倉鎌と沢藤の境界辺りを探せば効率いいんでねえか?」

由佳 「その辺りの地理なら、私たち詳しいですよ!」

知美 「侵略部の活動で色々回ったもんね!」

綾乃 「うん、任せてください」

愛里寿「じゃあ、方向性は固まったな」

イカ娘「うむ、ではケイがここに来るまで各自待機して、えーと、待機して・・・・?」

ペコ 「車両のチェックとメンテナンスですよ」

 

イカ娘にこっそりアドバイスするオレンジペコ。

 

イカ娘「壊れてる所がないか、調子悪いところがないか確認するでゲソ!」

みんな「おー!」

 

イカ娘も戻り、展開に希望が見えてきたメンバーたちは元気に返事を返すのだった。

 

ニル 「装甲は・・・・うん、結構削られてたけど、これくらいなら支障ありませんね」

ルク 「ふふん、私は無傷だぞ?まだまだ回避技術はが足りないんじゃないか?」

愛里寿「相手にされてなかっただけだと思う」

ルク 「やめろ!そんなこと言うと傷ついちゃうだろ!」

 

サンダース隊が合流するまで各自修理をしている時間。

各々のメンバーは車両のメンテナンスに勤しんでいた。

そんな中、隊員たちに補修を任せていたカチューシャがイカ娘に歩み寄る。

 

カチュ「イカチューシャ」

イカ娘「おお、カチューシャじゃなイカ。無事で何よりでゲソ」

カチュ「お互いにね」

 

会話を交わしながらちらりと五式を見る。

 

カチュ「ねえ、イカチューシャ」

イカ娘「む?」

カチュ「江の島で、何があったの?」

 

カチューシャの質問に周囲がハッとする。

みんな気にはなっていたが、話題を切り出していいものかと言い出せなかったことをカチューシャは切り出した。

 

カチュ「マホーシャに勝ったあとドーラの砲撃があって、それから貴女は行方不明だった。もしかしたら撃破されちゃってるかとも思ってたけど、貴女たちはこうして元気に姿を現した。それまでの間、どうしてたの?」

イカ娘「いや、それは言えないでゲソ。あのおっさんに、できれば内緒って頼まれてたゲソ」

カチュ「おっさん?」

イカ娘「あっ」

 

口を滑らし、慌てて口を押さえるが時すでに遅し。

 

カチュ「おっさん・・・・って誰?貴女たちが無事だったことに関係があるの?」

イカ娘「うーむ・・・・」

 

カチューシャの質問にイカ娘は答えにくそうに視線を逸らす。

 

愛里寿「イカ娘」

 

話を聞いていた愛里寿も歩み寄る。

 

愛里寿「秘密にしなきゃいけないことなら、私たちは聞かないことにする。言いたくないことを無理やり聞き出すなんて友達のすることじゃないもの」

カチュ「うっ」

 

愛里寿の言葉に気まずそうに黙るカチューシャ。

しばらく考え込んだイカ娘は栄子たちに視線を送ると、栄子は無言で頷いた。

 

イカ娘「お主たちになら、きっと話してもいいでゲソね。でもこれは他言無用で頼むでゲソよ?実は、あのあと__」

 

イカ娘は、ゆっくりと口を開き始めた。




まずは大変期間を空けてしまったことを深くお詫び申し上げます。

色々語ると言い訳になってしまいますが、『書けない』状態が長く続いてしまい、このままではマトモな物が書けないと判断し勝手ながらしばらく執筆から離れていました。

現在では普通に筆を進められるように戻りました。
何としても完結せさる気持ちはありますので、図々しくはありますが今後ともよろしくお願いいたします。

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