侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※今作は、ハーメルンで小説を投稿されている他作家さんのオリジナルキャラをお借りして構成しています。
本編と作風・傾向がやや違う部分が生じることも少なからずありますので、お読みになる際はあらかじめご了承いただけるようお願いいたします。


※今回お借りした作品は、Dr.クロさんの『こっちあっち…いや逆だ?!』から設定をお借りしています。
あっちこっちの世界に東方Projectのキャラクター・鬼人正邪が迷い込み、共に学校生活を送る内容となっています。


※この話は、知波単学園編第2話まで先にお読みいただいているともっとお楽しみいただけます。


こっちあっちに行かなイカ?~前編~

千葉県にある、猫毛海岸駅前商店街。

その一角で、複数の男女がとある一転を固唾をのんで見守っている。

 

つみき「・・・・」

伊御 「・・・・」

 

さりげなく伊御の袖を握りながらハラハラしているつみき。

それに気付いているのかいないのか、伊御はいつもの調子で見つめている。

 

榊  「行けーっ!そこだ!怒涛の百回転ー!」

姫  「はわわ!?そんなに回したら中身全部出ちゃいますー!?」

 

ハイテンションで声援を送る榊。

姫は目を><にしながら祈るように手を合わせている。

 

真宵 「わたしの計算によると、確率は0.00000001%と出たのじゃよ。つまり確率はゼロじゃない!奇跡を起こすのじゃ~!」

正邪 「応援してるのか絶望させたいのかどっちなんだい!」

 

電卓で確率計算した結果をビシッと示す真宵。

正邪はガラポンのレバーを握りながら困惑している。

六人がいるのは商店街の福引会場。

景品一覧には、『特賞(金)豪華江の島老舗旅館ペア旅行ご招待券!』と書いてある。

そして出玉の皿には__金の玉がすでに二つ転がっている。

 

伊御 「特賞を二連続で出すなんて、やっぱり正邪はすごいな」

つみき「一回出すだけでもすごいのに・・・・」

真宵 「もう一回特賞を出せば、六人みんなで旅行に行けるのじゃよ~!」

正邪 「うお、うおおおおおぉおおお・・・・!」

姫  「はわ、みんなで江の島は行きたいですけど、プレッシャーかけちゃダメですう~っ!」

榊  「・・・・そうだな。正邪一人に全部背負わすなんて間違ってた」

伊御 「ごめんな。俺たち、次がどんな結果になっても正邪を責めたりなんてしないからな」

真宵 「ゴウカオンセンリョカンナンテイキタクナイヨ~。ミンナジモトデユックリスルノガイインジャヨ~」

姫  「棒読みがすごすぎますう~!」

 

みんなの気を使う言葉が余計に重圧になって、ガラポンを回せないでいる。

 

つみき「私たちは気にしないで。早く終わらせて、はちぽちでケーキ食べましょ」

正邪 「はちぽちのケーキ!」

 

意を決してガラポンを勢いよく回し始める。

 

正邪 「そうだな!こんなのはとっとと終わらせて、私はケーキを食べるんだぁーーーっ!」

 

ガラガラガラガラガラ!

コトンッ、コロコロコロ・・・・。

 

そして、一週間後。

 

榊  「夏だー!」

真宵 「海だー!」

正邪 「江ノ島だーっ!」

 

一行は神奈川県の江ノ島駅に降り立った。

ハイテンションで大はしゃぎする三人。

 

つみき「まさか本当に三連続で特賞出すなんて思わなかったわ」

伊御 「そうだな。きっと、あの時のつみきの一言で余計な力が抜けたんだよ」

つみき「そ、そうかしら」

姫  「きっと、あの時福引よりケーキを食べたいと思ったから結果が『逆さまになった』んじゃないでしょうか」

伊御 「・・・・そうかもしれないな」

つみき「あの後、はちぽちが臨時休業でケーキを食べられないと知った正邪の落ち込み具合はすごかったわ」

伊御 「でもそのおかげで俺たちは江の島に来れたんだ。感謝しないといけないな」

つみき「うん、そうね」

キクヱ「は~い皆さん、集まってください」

 

一番最後に電車から降りてきたキクヱ(引率のため自腹で同行)が音頭を取る。

素直に集まる一同。

 

キクヱ「では、まずは荷物を置きにお宿へ行くんですの。そうしたらみんなで話し合ったとおりに観光していきましょうね」

一同 「は~い」

 

各自荷物を担いで宿へ向かう。

一泊二日の宿泊予定なのだが__

 

つみき「んっしょ、んっしょ」

 

つみきは誰よりも大きな荷物を持ってきている。

体格に似合わない自分ほどはあるだろう大きなキャリーケースのせいで、かなり持ちにくそうだ。

 

伊御 「つみき、大丈夫か?持とうか」

つみき「ん、大丈夫よ。これくらい何ともないわ」

 

実際、つみきにとって重さはなんともないのだろうが、いかんせん体格にあっていない。

重心がとれずあっちにフラフラこっちにフラフラとキャリーケースに体を持っていかれる。

 

伊御 「つみき、本当に・・・・」

つみき「本当に大丈夫。宿は駅から真っすぐだって言ってたし、そう遠くは__」

 

そこまで言ってつみきは言葉を失った。

確かに江ノ島駅から宿へはほぼ一本道。

しかし途中に江の島へ渡る弁天大橋を挟むため、必要な距離は一キロを超えている。

それに気が付き絶望するつみき。

 

伊御 「つみき」

 

ひょいとつみきを持ち上げる伊御。

 

つみき「え?にゃっ!?」

 

ぽす、とキャリーケースに跨らせると、後ろから押してつみきごと運び始める。

 

つみき「えっ、伊御、いいわよ、悪いし・・・・」

伊御 「いいから。任せておけって」

つみき「・・・・ありがと」

 

真っ赤になってうつむくつみきと笑顔の伊御。

そしてそれを見てニヨニヨする正邪と榊、そして鼻血ブーな姫。

そこへ真宵がトコトコと歩み寄る。

 

真宵 「伊御どの伊御どの。つみきサンを運ぶなら、もっといい運び方がありますぜ?」

伊御 「?」

真宵 「コレをお使いなされい!」

 

じゃん!と取り出したのは一本赤いのロープ。

それをちょちょいと結び付けて__

 

真宵 「できた!」

 

ロープをキャリーケースに結び付けることによって、引っ張って運ぶことができるようになった。

 

伊御 「おお、これなら運びやすい。ありがとな、真宵」

真宵 「ノープロブレムなのじゃよー」

 

ちらり、とつみきを見る。

 

つみき「・・・・あによ」

真宵 「・・・・いやー、自分で提案しといてなんじゃけど」

伊御 「けど?」

真宵 「まるで猫の散歩のようなのじゃよー!」

つみき「にゃっ!?」

 

引き手、赤いロープ、猫っぽい子。

言われてみると図が浮かぶ。

 

真宵 「いやー、これだったら首輪を用意してつみきさんにつけたほうがよか(ボゴシュッ)にゃふおおおおおおおお!?」

 

真宵が言い終わる前につみきの一撃が真宵を襲い、遥か彼方へ吹っ飛ばす。

その勢いは激しく、弁天大橋をも飛び越える勢いだった。

 

つみき「先に宿でチェックイン済ましときなさい」

真宵 「りょおおおかいじゃよおおぉぉぉ・・・・(キラーン)」

キクヱ「あらあら、先生より先に行っちゃだめですの~」

榊  「いやー、吹っ飛んだなあ」

正邪 「過去最高記録なんじゃないか・・・・」

姫  「じゃあ、私たちも追いかけましょう~」

 

かくして一行は弁天大橋を渡り切り、江の島へ到着した。

 

榊  「っしゃー!やっと着いたぜ江の島!」

姫  「あれ?江の島、ですか?江ノ島ではなくて?」

榊  「ああ、俺たちが下りたのは江『ノ』島駅。ここは江『の』島。ひらがなとカタカナの違いなんだ」

姫  「はひ、そうなのですか~!どうしてですか?」

榊  「それはな・・・・」

姫  「そ、それは!?」

榊  「それに触れることは日本古来からのタブーとされていてな・・・・」

姫  「タ、タブー!?」

榊  「もしその謎を追い求めると、古の邪教集団がやって来て闇に葬られてしまうのだぁー」

姫  「ひ、ひ、ひええええーっ!?」

正邪 「コラコラ、嘘を教えるな嘘を」

キクヱ「江ノ島は昭和41年に名称を江の島に改めているんですの。でも江ノ島でも江の島でもどちらでも正しいです。呼びたい方で呼んでお互いに通じる、という形になっているんですよ」

姫  「はわー、そうなんですかー」

榊  「ちなみに、由比ヶ浜海岸と由比ガ浜市っていうのが近くにあってな?ここではかつて血で血を争う大戦が__」

姫  「はわー!?」

正邪 「蒸し返すなー!」

 

趣のある並びを通り、一行は目的の宿『大黒屋』へ到着した。

 

女将 「いらっしゃいませ、ようこそいらっしゃいました」

 

女将の丁寧な出迎えを受ける。

 

伊御 「あの、友人が先に来ているはずなんですが」

真宵 「こっちじゃよ~」

 

声がした方を向くと、真宵がエントランスに設置されている椅子に座りながら手をブンブン振っている。

 

真宵 「チェックインはもう済ませておいたのじゃよ。ワタシはもう荷物は置いてきたから、ここで待っとるのじゃよ」

正邪 「そうだな。私たちも早く荷物を置くとしよう」

女将 「では音無さま、こちらへ」

伊御 「え、あっ、はい」

 

突然自分の名前を呼ばれて戸惑う伊御。

 

つみき「伊御の名前でチェックインしたの?」

 

そう尋ねるつみきにヒェッヒェッヒェッと意味深な笑みを浮かべる真宵。

 

女将 「はい。代表は音無つみきさま、と伺っております」

つみき「!」

 

ボシュン!と一瞬で真っ赤になるつみきだった。

時同じくして。

弁財天仲見世通りを歩く六人組がいた。

 

梓  「よかったね、江の島限定ボコのしらすバージョン残ってて」

優希 「西住隊長の分もゲットできたし、上々~♪」

桂利奈「でもさー、もう西住隊長も持ってるかもよ?」

あゆみ「そこはぬかりないよ。この間買いに行ったら売り切れてたって残念がってたもん」

紗季 「・・・・(コクコク)」

あや 「西住隊長のお部屋行ってみた?またボコのぬいぐるみ五個くらい増えてたよ」

 

江の島限定ボコのぬいぐるみを買いに来たウサギさんチームの面々だ。

更に同じく弁財天仲見世通りを歩く五人組が。

 

イカ娘「江の島、侵略完了でゲソ」

清美 「考えてみたら、みんなで江の島まだ行ったことなかったね」

知美 「どうしましょうか?江の島に入った時点で侵略完了にします?」

由佳 「どうせだからお店に入ろうよ」

綾乃 「そうだね、じゃあどこか一つでもお店に入ったら侵略完了ってことで」

イカ娘「異議なしでゲソ!」

清美 「それじゃ、何か食べていこうか」

 

食べ物屋を探通りを歩く侵略部メンバーである。

そして同じく弁財天仲見世通りを歩く六人。

 

つみき「全く、何を考えているのかしら」

真宵 「でも否定はしかなったのじゃね。願望の現れではないのですかな?」

つみき「べ、別に。あそこで書き直すのも宿に迷惑だったと思うっただけよ」

姫  「わあ、いろんなお店がいっぱいですね」

榊  「なんつーか、歴史と言うか趣があるよな。これとか!」

正邪 「おお、その木刀、江の島って書いてあるぞ!まさか限定品なのか!」

伊御 「なぜ江の島に来てまで木刀を買おうとする」

 

江の島観光を始めた猫毛高校六人組が連れだって坂道を歩いている。

 

きゅ~っ

 

つみきのお腹が小さく鳴る。

 

つみき「あ」

 

少し顔を赤くする。

 

伊御 「__何だか腹が減ったな。何か食わないか」

 

さも腹が鳴ったのは自分だと言わんばかりに会話を切り出す伊御。

 

姫  「いいですね~。せっかくだからここの名物とか食べたいです」

正邪 「なあ、江の島の名物って何なんだ?」

榊  「そりゃやっぱり海の幸だろう!今朝そこの海で獲って来たばかりの魚介類!むしろ注文したら直接潜って海からとってくるほど新鮮!」

正邪 「そりゃ新鮮だな!?」

伊御 「いや、そりゃないだろ」

真宵 「おっ、あれを見るのじゃよ」

正邪 「ん?」

 

見ると、店先の看板に『たこせんべい』と書いてある。

 

正邪 「はむっ」

 

バリバリ音を立てながらたこせんをほおばる。

 

姫  「おいしいです~♪」

つみき「いけるわね」

正邪 「面白い食べ物だなあ!普通のタコをぎゅーっ!とつぶして開けたらせんべいになってるなんて!」

真宵 「ふぇっふぇっふぇ、これこそ人類の英知が詰まった夢の機械!『なんでもせんべいメーカー』なのじゃよ!」

正邪 「な、なんて浪漫が詰まった機械なんだ!」

つみき「本気にしちゃだめよ」

 

集中してもりもり食べている伊御。

 

伊御 「・・・・ん?」

猫A 「にゃあ~」

 

ふと気づいて足元を見ると、一匹の子猫が足元に寄ってきている。

ぱきっとたこせんを少しだけ折り、猫の目の前に差し出す。

 

猫A 「はむっはむはむ」

 

物おじせずにかぶりつく子猫。

 

猫B 「にゃ~」

猫C 「にゃ~にゃ~」

 

何かをかぎつけたのか、そこらかしこから猫が寄り始めてきた。

 

姫  「はう~っ、可愛いです~♪」

 

鼻血を噴き出す姫。

 

つみき「随分人に慣れた子猫ね」

真宵 「江の島は別名『猫島』と呼ばれておるのじゃよ。島の人や観光客に守られてるから、猫たちも悠々としておるのじゃね」

猫D 「にゃ~にゃ~にゃ~」

正邪 「そうなのかー。・・・・それにしても」

猫E 「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~」

猫F 「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~」

つみき「・・・・多すぎじゃない?」

 

その頃、イカ娘たちはとある店先で桜エビチップスを買っていた。

 

イカ娘「エッビエビ~♪」

 

イカ娘は桜エビをほおばりながら満悦そうな表情を浮かべている。

 

清美 「できたてが買えてよかったね」

綾乃 「それじゃあ食べながら江の島神社にお参りしましょうか?」

由佳 「あっ、いいねー。今度の大会に向けて願掛けしとこっかな」

知美 「それじゃあ__あれ?」

猫G 「にゃ~」

 

見ると、足元に子猫が一匹すり寄って来た。

 

知美 「どうしたの?桜エビ、ほしい?」

 

顔の前に差し出すと、はむはむ食べ始める。

 

綾乃 「かわいい!私もあげたい!」

由佳 「私も私も!」

清美 「人懐っこい子だね」

イカ娘「猫は犬のように追いかけてこないから好きでゲソ。どれ、特別に私もあげようじゃなイカ」

 

おずおずと桜エビを差し出そうとすると__

 

猫G 「!(シュッ)」

 

子猫は何かを見つけたように走り去っていった。

 

イカ娘「あっ、行っちゃったでゲソ」

知美 「どうしたんでしょうね?あっちになにか、あ__」

 

言いかけた知美の口が止まる。

どうしたのかと目線を追った清美も止まる。

 

イカ娘「・・・・何でゲソ、あれ」

 

坂の上から、猫の塊が降りてきた。

正確には、全身を猫まみれにした伊御が降りてきた。

 

つみき「伊御、大丈夫?」

伊御 「ああ、これくらいなら大丈夫」

姫  「はわわ、猫まみれです~」

榊  「まみれと言うか、もはや猫そのものだな」

つみき「重いなら引きはがすわよ」

伊御 「いや、無理やり引きはがそうとしたら飛び掛かられちゃうかもしれない」

真宵 「鈍いですなあ~伊御サン。つみきサンは、猫にまみれていたら抱き着けないからジェラっておるのじゃ(バギッ)よおおおお~!?」

正邪 (また飛んだ)

 

誤魔化しのためのつみきのアッパーカットが炸裂し、真宵が宙を舞う。

しかしその軌道は坂の下、イカ娘たちの方へ真っすぐ向かっていた。

 

真宵 「ぬわっ!?そこのメガネ女子!あ、危ないのじゃよーっ!」

清美 「えっ・・・・?」

 

突然目の前に飛んできた真宵に面食らい、動けずにいる清美。

 

姫  「あっ、あぶなーーい!」

 

ガシイッ!

 

目をつぶる姫。

しばらくしてから恐る恐る目を開くと__

 

真宵 「おお、おおおおお・・・・!?」

 

真宵が宙を浮いている。

正しくは、真宵の体をイカ娘の触手が空中でキャッチしていた。

 

つみき「な、何なのあれ・・・・」

榊  「やたらとウネウネしてるぞ。蛇か何かか?」

伊御 「・・・・正邪、知り合いか?」

正邪 「流石に幻想郷にもあんなのはいないぞ」

 

ゆっくり真宵を下ろす。

 

真宵 「いやはや、お騒がせしたのじゃよ」

イカ娘「全くでゲソ。人に向かって飛んできてはいけないと教わらなかったのでゲソか?」

榊  「おーい!」

姫  「だ、だいじょうぶですか~!?」

 

伊御たちが駆けつける。

 

綾乃 「あっ、猫だるまの人だ」

伊御 「・・・・?」

 

キョトンとする。

 

伊御 「すいません、連れがご迷惑を」

清美 「あ、いえ、お気になさらず」

真宵 「たはは、一時はどうなるかと」

つみき「ちゃんと謝りなさい」

真宵 「まっこと申し訳なかったのじゃよ~!」

正邪 (もとはと言えばつみきが真宵を吹っ飛ばしたからじゃ)

 

あえて言わない正邪であった。

 

姫  「は~・・・・」

 

気が付くと、姫がしげしげとイカ娘の触手を見つめている。

 

イカ娘「む?」

姫  「はわっ!」

 

視線に気が付きさっと隠れる。

 

正邪 「アンタ、なかなか面白いモン持ってるねえ。どの程度の能力なんだい?」

 

正邪がイカ娘に強い興味を示す。

 

イカ娘「どの程度も・・・・イカなる程度、と言ったところでゲソ」

正邪 「へえ、イカなる能力!流石にアタシの周りにそんなの使える奴はいなかったよ!」

 

話の流れ的にお互いの自己紹介が始まった。

 

清美 「紗倉清美です」

知美 「望月知美です」

由佳 「西村由佳です!」

綾乃 「渡辺綾乃です」

イカ娘「イカ娘でゲソ!」

伊御 「音無伊御です」

真宵 「片瀬真宵なのじゃよ」

姫  「は、春野姫です」

榊  「戌井榊だぜ」

正邪 「鬼人せい__はっ、蛇生神那、だ!」

 

思わず本名を名乗りそうで慌てて言い直す。

 

つみき「御庭つみきよ」

真宵 「いやいやいや違うじゃろう。音無つみk(ボゴォッ)いいいいいいい~っ!?」

 

音速のアッパーカットで上空に舞う。

 

イカ娘「ふぬっ」

 

再び真宵を空中で触手キャッチする。

 

真宵 「重ね重ね申し訳ないのじゃよ」

イカ娘「お主ら本当に人間でゲソか」

 

その後。

 

つみき「へえ、あなたたち、地元の人なのね」

清美 「はい、今日は部活動の一環で・・・・。つみきさんたちは観光ですか?」

つみき「ええ。私たちの友達が福引で宿泊券当ててくれたのよ」

由佳 「へえ!?すごいですねえ!」

姫  「本当、すごいよねえ!尊敬しちゃう!」

正邪 「やめてくれ、そういうの・・・・」

綾乃 「謙遜しちゃって、可愛い人ですね」

正邪 「だーかーらー、そういうのじゃないって!」

 

などとワイワイやっていると__

 

あや 「あれ?イカちゃん!」

 

そこへウサギさんチームの面々が通りがかった。

 

あゆみ「イカ娘ちゃんも江の島来てたんだ」

桂利奈「やっほ~!」

イカ娘「むっ、お主らもでゲソか」

榊  「ん?イカ娘の友達?」

 

ウサギさんチームも合流して大所帯になる。

 

姫  「えええっ!?おっ、大洗女子学園の戦車道チームの人なんですか!?」

伊御 「姫、知ってる人なのか?」

真宵 「伊御さん朴念仁にもほどがあるのじゃよ!?今年夏の戦車道大会で全国制覇した、伝説の大洗女子学園じゃて!」

姫  「日本全国の女の子憧れですぅ~!」

伊御 「・・・・ごめん、そういうのに疎くて。つみきは知ってたか?」

つみき「・・・・名前くらいは。じゃあこの中の誰かが、西住みほさん?」

桂利奈「ううん、違うよ~。私たちはウサギさんチーム!」

正邪 「ウ、ウサギさんチーム?」

梓  「西住隊長はあんこうチームで、他にもカメさんチーム、カバさんチーム、アヒルさんチーム・・・・」

姫  「何だかほんわかして可愛いチーム名ですね~♪」

あや 「でしょでしょ!けっこう気に入ってるんだ~♪」

優希 「そういえば小耳に挟んだんだけど~、清美ちゃんたち、戦車もらったんだって~?」

清美 「いえ、貰ったって言うか預かった、と言った方が」

伊御 「戦車を、預かる・・・・」

 

その独特な感覚についていけなそうな伊御。

 

桂利奈「ねえねえ!このあと時間ある?」

知美 「え?」

あゆみ「清美ちゃんたちの戦車と勝負させてよ!」

清美 「ええっ!?ウ、ウサギさんチームの皆さんとですか!?敵いっこありませんよ!」

あや 「謙遜しない!清美ちゃんたち、乗ったばかりとは思えないほどのいいセンスを持ってるって西さん超べた褒めだったし!」

梓  「無理強いはダメだよ。でも正直なところ、清美ちゃんたちは思っている以上に強いはずだよ。むしろ私たちが胸を貸してほしいくらいだよ」

優希 「重戦車キラーとして、もっと経験を積みたいし~♪」

綾乃 「部長、どうします?」

清美 「・・・・」

 

しばし考え込む。

 

清美 「・・・・わかりました!ぜひお願いします!」

桂利奈「やった!」

梓  「ありがとう、清美ちゃん!」

真宵 「あの~」

あゆみ「あっ!ごめんね、放置しちゃったみたいで」

真宵 「いえいえ。それより一つ、お願いがありまして~♪」

梓  「え?」

 

場所は移り、由比ヶ浜戦車演習場。

 

つみき「そろそろかしら」

正邪 「何だかワクワクしてきたぞ」

 

演習場を見渡せる観戦席で、六人は座席につき始まりを待っていた。

 

真宵 「しかし・・・・皆よかったんじゃろか?」

 

申し訳なさそうに真宵がつぶやく。

 

伊御 「どうした?」

真宵 「いや~・・・・確かに『試合してるところが見たい』と言ったのはワタシじゃが、何もみんな付き合わなくてもよかったんじゃけど・・・・。せっかく江の島にきたんじゃし」

榊  「何言ってんだよ真宵!こんな目の前で戦車道の試合してるところ見られるんだぜ!それだけでもここに来たかいがあるってもんだろ」

姫  「正直わたしも見てみたかったのです。それに、一人よりみんなで見た方が楽しいですしね」

真宵 「榊しゃん・・・・姫っちぃぃぃ」

 

いつもらしかぬしおらしい様子を見せる真宵。

 

伊御 「旅行は明日もある。今やりたいことをすればいいだけさ」

つみき「伊御の言う通り。下手な気づかいなんて真宵には不要よ。ちょっと気持ち悪い」

真宵 「ひどっ!?」

正邪 「おっ、来たぞ!」

 

正邪が声を上げ、一同の視線が向く。

見ると、遠くからM3リーが、そして別方向からオイがやって来た。

よく見ると、オイのキューポラからは清美とイカ娘、二人が顔を覗かせている。

 

清美 「ごめんねイカちゃん、つき合わせちゃって。やっぱり私たちだけで試合するの不安だから」

イカ娘「水臭いでゲソよ。清美たちが助力を申し出るなら、断る理由などないでゲソよ!」

真宵 「あっちはM3リー、ウサギさんチームの車両じゃよ。そして清美ちゃんたちは・・・・まさかのオイときたもんじゃよ!」

榊  「デッケー・・・・!あんなデカい戦車を中学生が動かしてるのか」

姫  「見てるだけで大迫力ですぅ~!」

つみき「はたから見ると戦力差は歴然よね」

伊御 「ああ。一発撃たれたら終わっちゃいそうだな」

真宵 「ふっふっふ、それを戦略や腕でひっくり返すのが戦車道の醍醐味なのじゃよ!」

正邪 「うおおおー!何だかこっちまで燃えてくる!どっちもがんばれー!」

 

かくして、試合の火ぶたは切って落とされた。

 

ドオオオン!

ドオオオーーーン!

 

__そして、その夜。

 

姫  「はわー・・・・。すごい試合でしたねー・・・・」

つみき「ほんとよね。まだ体にビリビリ振動が来てる気がするわ」

 

ウサギさんチームと清美たちの試合観戦を終えた後、一同は宿に戻り、温泉でくつろいでいた。

 

キクヱ「戦車道の試合ですの~。皆さん、いいものが見られたいですのね~」

つみき「本当に。ここに来て、あんなすごいものを見られるとは思わなかったわ」

正邪 「動きもさほど速度を出せず、弾幕も張れず、スペルカードもなし、ましてや食らいボムなどもってのほか。・・・・あんな条件下でどうしてあんないい勝負ができるんだい」

真宵 「それが戦車道の奥深さなのじゃよー。五身一体六身一体。チームが一丸になればなるほど、戦車は一つの生き物になっていくのじゃよ。洗練されたチームワーク、流れるような車体さばき、一撃にかけるロマン!あああああああああ、たまらんのじゃよー!」

 

自分を抱くようにしてクネクネ身もだえする真宵だった。

 

伊御 「真宵、大満足みたいだったな」

榊  「そうだろうな。大洗女子の戦車道は憧れでもあったみたいだし」

 

女湯の敷居の向こう側は男湯。

声だけならいくらでも届いてくる。

 

伊御 「しかしすごい勝負だったな。戦車道はわからないが、あの二両がすごくうまいのはわかる」

榊  「大洗女子のウサギさんチームはそうだが、清美ちゃんたちの方も凄かったぜ」

伊御 「ああ。早く動けないには動けないなりの戦い方があるんだな」

榊  「勉強になるぜー・・・・。次に真宵と勝負する時、あえて動かず待ち構える戦略をとってみるか。ドッチボールとかの時」

 

微動だにせずボールを当てられまくる榊のイメージが沸く。

 

伊御 「いや、避けろよ」

榊  「あれ?」

 

ふと、榊がとあることに気が付く。

 

榊  「せんせー。自由行動の時、どこにいたんですかー?」

 

榊が敷居越しに語り掛ける。

 

キクヱ「ぎくっ!?」

姫  「そういえば、私たちが江の島探検に行くとき、『ここからは各自自由行動ですの~。江の島の中だけなら、どこへ行ってもいいですの~』って、どこか行っちゃいましたよね」

キクヱ「ぎくぎくっ!?」

 

次々に質問され、狼狽えるキクヱ。

 

正邪 「そういえば観光案内にあったぞ。江の島には沢山のパワースポットがあるらしい」

姫  「そうなのですか~。どんなのがあるのです?」

正邪 「えーっと、目についた限りでは商売繁盛金運アップ、旅の安全に新願成就・・・・」

つみき「随分多機能な場所ね」

正邪 「心願成就に女子力アップ」

真宵 「む?」

正邪 「子宝安産、良縁祈願__」

キクヱ「ささささささあ春野さん!長湯しちゃ体に毒ですの!上がりますのー!」

姫  「ええっ!?ま、まだ入ったばかりですぅ~!?」

 

慌てた様子で露天風呂から飛び出すキクヱ。

姫をひっつかんで逃げるように姿を消した。

 

榊  「みいこ姉の同伴を押しとどめてまで引率を買って出たって聞いてたけど・・・・。これが目的だったのか?」

伊御 「神頼みしたくなるほどだったのか・・・・」

榊  「ご利益、あるといいな」

伊御 「・・・・ああ」

 

その後。

夕飯として出された海の幸を堪能し、はしゃぎ、夜更けの枕投げ十本勝負を経たのち__一同は就寝の運びとなった。

更に夜も更けた深夜。

 

伊御 「・・・・ん」

 

おもむろに伊御は目を覚ました。

隣の布団には同室の榊が眠っている。

起こさないように慎重に歩き、ベランダへ出る。

夜風を受けながら、横を見ると__

 

伊御 「・・・・つみき?」

つみき「あっ__」

 

隣の部屋、つみきと正邪の部屋に当たるベランダにつみきが立っていた。

 

伊御 「どうした?寝れないのか」

つみき「・・・・」

 

答えず、海を見つめる。

 

伊御 「・・・・」

 

問い詰めたりせず、一緒に海を見つめる。

 

伊御 「昼間見た戦車道の試合、すごかったな」

つみき「うん」

伊御 「戦車なんて初めて見たけど、あんなに迫力あるんだな」

つみき「・・・・うん」

 

うーん、と背伸びする伊御。

 

伊御 「明日は何をしようか?せっかくの海だし泳ぐか」

つみき「う、うん・・・・そうね」

伊御 「海の家もいくつかあったし、昼はそこで食べよう」

つみき「・・・・うん」

伊御 「水族館もあるらしいぞ。クラゲで有名らしい」

つみき「うん」

伊御 「大仏もあるぞ」

つみき「うん」

伊御 「つみき」

つみき「うん」

伊御 「・・・・戦車道、やりたいのか?」

つみき「うん。・・・・はっ!?」

 

流れでうんと言ってしまい慌てふためく。

 

つみき「ちちちち違うのよ、今のは流れで思わず言っちゃっただけで・・・・」

伊御 「じゃあ、戦車道やりたくないのか?」

つみき「や、やりたくないわけじゃないけど」

伊御 「いい機会じゃないか。ウサギさんチームの人たちや清美ちゃんたちもいるし、戦車道に触れるにはもってこいだ」

つみき「でも、せっかく海に来てるのに・・・・」

伊御 「海で泳ぐのはまた別の時にすればいいじゃないか。やりたいって言えばみんな乗ってくれるはずだぞ」

つみき「でも・・・・」

真宵 「伊御さんのおたんちーん!」

 

ガラッ!

 

突然もう一つ奥、真宵と姫とキクヱの泊っている部屋のサッシが開き、真宵が飛び出てくる。

 

伊御 「真宵?」

つみき「盗み聞きしてたの」

真宵 「ろ、論点はそこじゃないのじゃよ!伊御さん!しゅたっ!」

 

真宵はひらりとベランダを飛び越えつみきの部屋に侵入、例の大きいキャリーケースを引っ張り出して来た。

 

真宵 「これを見よー!」

 

バッとケースを空ける。

中から飛び出して来たのは__

ビキニ。

タンキニ。

チューブトップ。

フレアビキニ。

パレオ。

スク水。

ありとあらゆる種類の水着が詰め込まれていた。

 

伊御 「__これは」

つみき「__っ!」

 

理解できない伊御と、真っ赤になってあわあわしているつみき。

 

真宵 「つみきサンはあらゆるニーズに応えられるよう持てる限りの水着を持ってきたのじゃよ!その努力が無駄になるやもしれぬ、でも戦車道もやってみたい、でも水着姿を見せたい、でも戦車乗りたい!そんな中で揺れ動く乙女ゴコロを何故理解できぬのじゃ~!」

つみき「真宵」

 

つみきが真宵の肩に手を置く。

 

真宵 「礼には及ばぬのじゃよ。これも友として当然(ボゴシュ)にょほおおお~っ!?」

 

ザッパーン

 

真宵は吹っ飛ばされ、夜の海に消えた。

真っ赤になりながら、黙々と水着を回収するつみき。

流石の伊御も気まずいのか、何も言えないでいる。

 

伊御 「つみき」

つみき「忘れて。全部忘れて」

伊御 「いや、つみk」

つみき「フシャーッ!」

伊御 「わ、わかった。忘れる」

 

これ以上追及するのも悪いと部屋の中に退散する伊御。

顔を赤くしながら俯き気味に部屋に戻るつみき。

 

そんな様子を、正邪は薄目を開けながら見つめていた。

 

~~後編へ続く~~




結果的に四作品のクロスオーバーとなっております今作、読みづらくならないように気を付けたつもりではありますが、いかがでしょうか。

すでに導入で文字数を使ってしまったため、前後半となります。
後編ではもっとそれぞれの作品の特徴を生かした立ち回りが始まりますのでご期待いただければ幸いです。

ふとしたきっかけで今まで知らなかった作品に触れるのもいい経験になりますね。
やはりこういったご提案から来る機会はありがたいものがあります。

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