あんこうチーム→あん
ダージリン→ダー
アッサム→アッサ
オレンジペコ→ペコ
ニルギリ→ニル
ローズヒップ→ローズ
聖グロリアーナの生徒たち→グロ生
聖グロリアーナ生A、B・・・・→グロA、グロB
カチューシャ→カチュ
あん 「あけまして、おめでとう!」ございます!」
着地したあんこうチームの面々は、顔を見合わせ同時に言い放った。
華 「今年もよろしくお願いいたします」
みほ 「こっ、こちらこそよろしくお願いします!」
華の丁寧なお時宜に慌てて頭をぺこりと下げるみほ。
沙織 「さーて、年も越したしお参りしていこうか!」
ぎゅうぎゅうの人ごみをかき分け、みほたちは何とか初詣にこぎつけた。
そして再びぎゅうぎゅうの中を潜り抜け、境内を抜けたころにはへろへろになっていた。
麻子 「もう無理、歩けない」
道の端で青い顔をした麻子が座り込んでしまった。
沙織 「麻子!こんなところで座り込んだら迷惑だよ!せめてもっと外側に」
麻子を引っ張り、参道から逸れた芝生にビニールシートを敷き、そこに座る。
華 「優花里さんの準備があって助かりました」
優花里「いえいえ、こんなこともあろうかと思いまして」
麻子 「うう、死ぬかと思った・・・・」
麻子はビニールシートに寝転がっている。
優花里「冷泉殿、大丈夫でありますか?」
麻子 「いや、私はもうダメだ。せめて温かい飲み物があれば・・・・」
沙織 「確かにじっとしてると寒いね。どこかで甘酒振舞ってないか見てくるよ」
その場を立とうとする沙織を、
優花里「お待ちください!」
優花里が呼び止めた。
沙織 「どうしたの、ゆかりん?・・・・まさか」
優花里「こんなこともあろうかと!」
サッ!と優花里がリュックから取り出したのは何本もの保温水筒。
その一本を開けると、ふわっと甘い香りと湯気が上ってくる。
麻子 「この香り・・・・まさか」
優花里「はい!ホットミルクセーキです!」
人数分のカップを用意し、皆に振舞う。
かなりしっかりした保温水筒に入っていたミルクセーキは、寒空の下でもしっかりとみほたちの体を温めた。
みほ 「おいしい!」
華 「はい。冷えた体にとても優しい味です」
麻子 「はあ、生き返った」
優花里「他にもいろいろありますよ?これには緑茶、こちらはコンソメスープ、これはホットコーヒーです」
麻子 「よし秋山さん、結婚してくれ」
沙織 「真顔で何言ってんの」
ブーッブーッ
と、みほのケータイが震える。
みほ 「あっ、メール」
ケータイを開くと、差出人はまほだった。
件名:あけましておめでとう
とても簡略なメールだったが、添えられたボコのスタンプに心遣いを感じた。
みほもあけましておめでとう、と返事を返す。
と__
ブーッブーッブーッブーッ
みほ 「わっわっわっ」
立て続けにみほのケータイがメールを受信し続ける。
沙織 「なんか立て続けに来てるね」
みほ 「うん、いったい誰から・・・・あっ」
受信メッセージ欄には、覚えのある人物たちからのメールが立て続けに届いていた。
アヒルさんチームやウサギさんチーム、大洗のチームメンバーや、ケイ、ダージリンといった他校の隊長格らからもあけおめメールが次々と届いている。
そんなメッセージに埋まる受信欄を見て、顔が緩むみほ。
しかしその後しばらく、全員に返信を送るのでいっぱいいっぱいになっていた。
しばらく談笑しながら色々飲み比べて体が温まって来た一行。
沙織 「よしっ、じゃあ体も温まったし、そろそろ行こうか」
立ち上がり、移動を促す沙織。
それに倣いみほたちも腰を上げるが、麻子だけは立ちたがらない。
麻子 「あー、まだ寒い。動けない。ここに座ってる」
沙織 「何言ってんの、誰よりも一番飲んでたじゃない」
麻子 「あれしきでは私の体は温まりきらない」
沙織 「そんなこと言って、おばあちゃんの所に挨拶行くのが億劫なだけでしょ!ほら、立ちなさい!」
引っ張り上げようとするが、麻子は立ち上がってなるものかとふんばり続ける。
華 「どうしましょう?かと言っていつまでもここに座っていては迷惑になりますし」
みほ 「それに優花里さんが持ってきてくれた水筒にも限界があるし・・・・」
優花里「ご心配なく!こんなこともあろうかとサバイバルにも使える携帯湯沸かし器を__」
麻子 「それだ!」
???「麻子おッ!」
と、そこに突然凛とした声が飛び込んできた。
ビクッ!と身をこわばらせる麻子。
恐る恐る振り返ると__
麻子 「!?お、おばっ・・・・!?」
そこには怒り顔の麻子の祖母・久子が仁王立ちしていた。
沙織 「あれ!?おばあちゃん!?どうしてここに?」
久子 「いつまで経っても来やしないから、どうせこの子が足引っ張ってるんだろうと思って見に来たんだよ。案の定じゃないか!」
華 「おばあさま、あけましておめでとうございます」
久子 「はいおめでとう。ご丁寧にありがとねえ。どっかの横着と違って」
華と話しているスキにそーっとその場を去ろうとする麻子。
そんな麻子の襟元をむんずと掴む久子。
久子 「ほれ行くよ!いつまでも友達に迷惑かけるんじゃないよ!」
麻子 「まま、待っておばあ!せめてコーヒーをあと一杯・・・・」
沙織 「おばあちゃん、手伝います!」
華 「では、及ばずながら私も」
久子に味方した沙織と華が麻子の両手を掴む。
麻子 「う、裏切り者おおぉぉー・・・・」
麻子は恨み節をあげながら引きずられていった。
そんな光景を見届けてから、みほと優花里は後片付けを終わらせ後を追うのであった。
グロ生「ハッピーニューイヤー!」
パンパンパパン!
時同じくして聖グロリアーナ女学院学園艦内・パーティホールでは、集まったグロリアーナ生たちでクラッカーを鳴らし、新年を祝いあっていた。
ペコ 「ダージリン様、あけましておめでとうございます」
ダー 「ええ、おめでとうペコ。今年もよろしく」
ニル 「アッサム様、あけましておめでとうございます!」
アッサ「ええ、おめでとう。今年もいい年になりますように」
ローズ「ダージリン様、あけおめですわ!」
ルク 「こら!ダージリン様になんて失礼な口聞いてんだお前は!」
イカ娘「相変わらず賑やかな連中でゲソね」
漫才のようなローズヒップらのやりとりを見ながら、イカ娘はずらりと用意されたビュッフェを皿に盛る。
食べては盛り、食べては盛りを繰り返す。
__と、とある区域からやたらと料理の毛色が変わっていることに気が付く。
カチュ「さすがイカチューシャ、我がプラウダの精鋭が用意した豪華料理に気が付いたようね!」
カチューシャが得意満面で話しかける。
イカ娘「ふむ、どうにも違う感じがしていたのでゲソが、ここはプラウダの料理だったのでゲソね。じゃあこのサラダもそうなのでゲソ?」
カチュ「そうよ!プラウダにおいて、新年にサラダを食べないものは新年を祝う資格はないわ!」
イカ娘「マヨネーズまみれでゲソ」
ノンナ「マヨネーズなきサラダなどサラダ足りえません」
イカ娘(マヨネーズの味しかしないでゲソ)
何か口直しになるものはないかとうろつく。
愛里寿「イカ娘、これもおいしそうだよ」
イカ娘「おお、たしかにいけそうでゲソ」
愛里寿のおすすめも味付けが気に入ったのか食べ進める。
そんなイカ娘の反応に愛里寿も嬉しそうだった。
ルミ 「いやまさか、学園艦に逃げ込んでも追いかけていくとは思わなかったわ」
メグミ「しかも慌ててそれを追いかけたら閉じ込められちゃって」
アズミ「否応なしにチームみんなで聖グロのニューイヤーパーティに参加させられるとはね」
会場には愛里寿はもちろん、ルミやアズミ、大学選抜チームの面々も揃い踏みだった。
栄子 「考えてみれば不思議だったんだよね。これまでを考えると、こういう出迎えはダージリンさん自ら率先して出向いてきたのに、今回はローズヒップを差し向けてたし」
メグミ「・・・・もしかして、こうなるのを見越して?迎えに来たローズヒップちゃんと隊長が出くわして、追いかけっこをして、この船に誘い込まれるところまで全部織り込み済み?」
ルミ 「そう考えると、あっちの人数以上に用意された料理と席数にも説明がつくわね・・・・」
バミューダトリオはダージリンの方を見やると、視線に気が付いたダージリンはにっこりと笑みを返す。
アズミ「・・・・今まで西住流ばかり注視してたけど、思わぬ伏兵がいたものね」
戦慄を覚える三人だった。
と、そこでホールの扉がガチャリと開いた。
そこから入って来た人物を見て、生徒たちが歓声を上げる。
入って来た人物は、数名のグロリアーナ生を連れ、両手に大きな蓋を乗せた皿を抱えた千鶴だった。
栄子 「姉貴!?さっきから見ないと思ったら料理してたのか!」
千鶴 「ええ。ここのパーティ料理を見ていたら腕がうずいちゃって」
グロA「ディン・・・・じゃなかった、噂に聞いた相沢千鶴さんの腕前が目の前で拝見できたなんて光栄でしたわ!」
グロB「ええ、それはもちろん。・・・・ですが、ある意味、腕は全くお目にかけられませんでしたわ・・・・」
数人は千鶴の料理の腕に感動しつつも、同時に戦慄もしていたようだった。
千鶴は空いていたテーブルに皿を置き、蓋を取る。
そしてその料理を覗き込むと__周囲に動揺が広がる。
フライドポテトに添えられた、大きな切り身のまま揚げられた白身魚のフライ。
アッサ「これは・・・・まさか・・・・」
ペコ 「フィッシュ&チップス・・・・ですか?」
まさかの料理内容に、手を付けあぐねているグロリアーナ生たち。
そんな中__
ダー 「では、私からいただきますわ」
さっと手を伸ばしたダージリンが一口食べる。
驚きダージリンの反応を見るが__
ダー 「・・・・♪」
ダージリンの顔は至福に満ちていた。
その表情に惹かれたのか、一人また一人とさらに手を伸ばしていく生徒たち。
皆、口に入れた途端表情が崩れていく。
ルク 「そんなにうまいのか・・・・?私も」
ぱくっと口に入れるルクリリ。
ルク 「んなっ・・・・!うまっ!」
その美味しさに言葉を失うルクリリ。
ローズ「表現力が乏しすぎですわ」
ルク 「うっせ。お前も食べてみればわかるって」
ローズ「よろしくってよ!(パクッ)うまっ!」
カチュ「ちょっと!カチューシャにもよこしなさいよ!」
ノンナ「いけません。まずは毒見を(ムシャムシャパクパク)」
カチュ「ノンナ!」
千鶴の料理と大学選抜チームという豪華ゲストに、新年パーティーは大いに盛り上がるのだった。
__そして、AM6:40。
大洗磯前神社の大階段を降りた先に存在する、神磯の鳥居。
その鳥居から見られる初日の出を見るために、ここにも人がごった返していた。
みほ 「うわ、ここもすごい人」
久子の家で明け方まで休ませてもらっていたみほたちは、初日の出を拝むべく神磯の鳥居前に来ていた。
麻子はどんなにゆすっても起きなかったため、メンバーが順番に後退しながら背負って連れてきている。
__やがて、初日の出が姿を現した。
みほ 「わあ・・・・」
その雄大な光景に感嘆の声が漏れる。
波が大きく飛沫を上げる岩場に、一刺しの鳥居。
初日の出に照らされるその光景は、まるで別世界にいるかのようだった。
沙織 「・・・・きれいだね」
優花里「はい」
華 「ええ」
みほ 「・・・・うん」
これまでの寒さも忘れ、みほたちはしばしその景色に見とれていた。
と__
みほ 「あれ?」
沙織 「?みぽりん、どうしたの?」
みほ 「うん・・・・あそこ、何かあると思って」
華 「ええと・・・・どこでしょうか?」
みほ 「うん、ちょうど朝日に重なってて・・・・」
言われてよく見ると、朝日を背にするように何かが海に存在してる。
そしてそれは次第に近づいてくる。
やがて__それは学園艦であることに気が付いた。
沙織 「ねえ、あれって!」
みほ 「うん・・・・聖グロリアーナの学園艦だね」
プルルルルル
気が付いた途端、ダージリンからみほのケータイへ着信。
みほ 「はい、もしもし?」
ダー 『私ですわ』
みほ 「はい、あけましておめでとうございます!」
ダー 『ええ、おめでとう。それで今、私どもは大洗沖に出向いているのですが』
みほ 「あ、やっぱりそうだったんですね。こっちからそちらの学園艦が見えたところです」
ダー 『奇遇ですわね。こちらも今、みほさんがたを目視したところですわ』
みほ 「えっ、見つけられたんですか!?」
ダー 『今、こちらでは新年を祝うパーティの最中ですの。よろしければ、是非みほさんがたもお招き存じますわ』
みほ 「あっ、ありがとうございます。じゃあ、今からどこに向かえば__」
ダー 『では、これから迎えが参りますのでお待ちくださるかしら』
と言ってダージリンの電話が切れる。
沙織 「ダージリンさん、何だって?」
みほ 「今から迎えが来るから、ここにいて、って・・・・」
優花里「お迎えのボートが来てくれるんでしょうか?」
などと話していると__
しゅるるるるるるるる!
グロリアーナから触手が五本伸びてきた。
それは瞬く間にみほたちに巻き付きはじめる。
みほ 「!?これって・・・・」
沙織 「イカちゃんの触手!」
ひゅんっ!
そしてそのまま勢いよくみほたちを連れ去っていった。
海上を飛ぶように引き寄せられていくあんこうチーム。
だが、その顔には恐れのようなものはない。
みほ 「今年は、いったいどんな年になるのかな?」
華 「きっと、また今まで体験したことのない出来事がまっているでしょうね」
優花里「楽しみです!ね、西住殿!」
みほ 「うん!」
麻子 「Zzz」
沙織 「いい加減起きろ!」
かくしてあんこうチームの面々は、甲板で笑顔で手を振っているダージリン、愛里寿、カチューシャ、イカ娘らの元へ向かうのだった。
あけましておめでとうございます!
今年もどうぞよろしくお願いいたします。