侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※この話は、何編までとか、劇場版とか、そういう細かいことを考えずにいるとよりお楽しみいただけます。


※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。

ダージリン→ダー
アッサム→アッサ
オレンジペコ→ペコ
ローズヒップ→ローズ

カチューシャ→カチュ

アンチョビ→チョビ


ユクトシ・ウォー!

十二月三十一日。

今年もあと数時間で終わりという頃、大洗女子学園艦では年越しの準備がほぼ完了していた。

もちろん学園に通う生徒たちには実家に帰る者も多かったが__

 

みほ 「ふう・・・・。うん、大掃除おしまい!」

 

みほは学園寮に残っていた。

ふと、時計に目が行く。

 

みほ 「!いけない、急がなきゃ!」

 

みほはせわしなく部屋を後にするのだった。

現在、大洗女子学園艦は母港である大洗市に停泊している。

船を降りると、そこにはあんこうチームの面々がみほを待ち受けていた。

 

みほ 「ごめんね、遅くなっちゃった」

麻子 「いや、私も今来たところだ」

沙織 「謙遜とかじゃなくてほんとその通りだよね。なんで一番最初に用事終わってるのに着くのが最後から二番目なのよ、麻子」

麻子 「おばあのうちに行くとなるとそれは相当の覚悟が必要になるんだぞ」

沙織 「なんでおばあちゃんの家に行くのに覚悟がいるの」

優花里「でも五十鈴殿、本当に良かったのですか?ご家族で年越しなされなくても」

華  「お母さまにはしっかりお許しをいただいてきました。それに、何だかいけないことをするみたいでわくわくします」

沙織 「いや、ただの二年参りなんだから、そんな言うほどじゃないと思うけど」

みほ 「あはは・・・・。それじゃあ、行こうか」

 

かくして一行は足並み揃えある場所へと向かうのだった。

日も沈み、映っているテレビも年越しの話題ばかり。

そんな映像を見ながら、相沢家の面々はこたつに入ってぬくぬくしている。

 

栄子 「今年もあと数時間で終わりかー」

千鶴 「そうね。あっと言う間の一年だったわね」

たける「来年はどんな年になっているのかな?」

イカ娘「きっと私の侵略が完了し、地上はもっと住みやすい場所に変貌を遂げているのでゲソ」

栄子 「寝言は寝てから言え」

イカ娘「酷いじゃなイカ!妄想なんかじゃないでゲソ!」

栄子 「だったらこたつから出て、今からでも近所の一つや二つ侵略してこいよ」

イカ娘「・・・・暖かくなってきたら再開するでゲソ」

栄子 (こいつ春になったらなったで眠くて動けないとか言いそうだな)

 

ピンポーン

 

たける「あれ?お客さん?」

千鶴 「誰なのかしら?今日うちに人が来る予定は無かったはずだけど・・・・」

栄子 「イカ娘、行ってこい」

イカ娘「なんで私なのでゲソ!」

 

ぶつぶつ言いながら玄関を開けるイカ娘。

 

イカ娘「誰でゲ__」

ローズ「ハッピーニューイヤーですわー!」

 

ドアを開けた瞬間、ローズヒップが飛び込んできた。

 

イカ娘「うわっ!?」

アッサ「ローズヒップ、その言葉は数時間早くてよ」

ペコ 「お騒がせして申し訳ありません」

 

そこには、アッサムをはじめとした聖グロリアーナの面々が立っていた。

 

栄子 「アッサムさん?みんな勢ぞろいでいったいどうしたんだ?」

 

聞きつけた栄子たちがリビングから出てくる。

 

ペコ 「実はこの度、ダージリン様からのお届け物をお渡しに参りました」

イカ娘「む?」

 

差し出された封筒を受け取る。

いつぞや見た、封蝋で閉じた上品ないで立ちをしている。

それを開くと、中には__

 

『Welcome to New Year Party』

 

と書かれた招待状が入っていた。

 

ダー 「今頃、招待状を受け取ってもらえた頃かしら」

 

その頃、ダージリンはカチューシャと共に自室内でティータイムを楽しんでいた。

 

カチュ「ここにイカチューシャを招待して新年を祝うなんていいアイデアじゃない。思いつく限りで二番目にいい案よ」

ダー 「あら、では一番の案は何かしら」

カチュ「もちろん、プラウダで迎える新年が一番いいに決まってるわ!ねえノンナ」

ノンナ「当然です」

 

ふふん、と口の周りをジャムまみれにしながらのカチューシャは得意満面だった。

時同じくして、由比ヶ浜の道路を進む戦車の一団があった。

 

メグミ「隊長、あの角を曲がれば相沢家へ到着いたします」

愛里寿「わかった。私が直接誘うからみんなは待機してて」

 

一団を抜け、愛里寿のセンチュリオンだけで相沢家へ向かう。

 

ルミ 「ウチの大学で行われる年越しパーティへのサプライズお出迎え。イカ娘ちゃんきっと喜ぶわね」

アズミ「仕入れた情報によればイカちゃんはお家で年越しする予定らしいから、間違いなく在宅しているわ」

メグミ「でもやっぱりお家の人に事前に連絡しておくべきだと思うのよね。もし同じようにサプライズを狙う人がいたら__」

 

そこまで言いかけた時、角から一台の戦車が姿を現した。

愛里寿と目が合う。

 

愛里寿「あ」

ローズ「あ」

 

しばしの沈黙、そして__

 

ローズ「全速離脱ですわー!」

 

ギュイイイイイイイ!

 

ローズヒップのクルセイダーが全速力で逃げ出した。

瞬時に察し、顔色が変わる愛里寿。

間髪置かず速度を上げクルセイダーを追い始める。

 

ルミ 「隊長!?どうされましたか!?」

 

突然走り出したセンチュリオンに狼狽するルミたち。

 

愛里寿「先を越された。追いかける!」

 

突如として戦車同士による激しいチェイスが始まるのだった。

その頃、清美は買い物袋を手に歩いていた。

 

清美 「今年もあとわずかかー。年が明けたらイカちゃん誘ってみんなで初詣行こうかな?」

 

などと考えていると、先の交差点で何かを見つけた。

青い、長い棒状のものが背丈より高い所に一直線に伸びている。

 

清美 「?何だろう・・・・。見覚えがあるような・・・・」

 

ヴィイイイイイイン

 

と、交差点に向かって何かが勢いよく近づいてくる。

それは、よく見ると愛里寿のセンチュリオンだった。

 

愛里寿「待ちなさい!イカ娘は渡さないんだから!」

 

愛里寿はキューポラから身を乗り出し、その青い物体の端を掴んでいる。

その物体の先にはクルセイダー。

それに乗せられている、イカ娘の触手が伸びに伸びたものだった。

 

ローズ「ごめんあそばせー!早い者勝ちですわー!」

愛里寿「そうはいかない!私だってイカ娘と年越ししたいんだから!」

イカ娘「どっちでもいいから、少しスピードを落とさなイカー!?」

 

猛スピードで逃げていくクルセーダーを追いかけ、清美の目の前を走り抜けていくセンチュリオン。

 

清美 (年末でも、イカちゃん大人気だなあ)

 

のほほんと、そう思う清美だった。

場所は移り、大洗磯前神社。

多くの人でごった返す中、あんこうチームはなんとかはぐれないようにして人ごみの中を進んでいた。

 

みほ 「すごい人・・・・!」

沙織 「みぽりん、はぐれないように気をつけて!華、こっちこっち!ゆかりん、麻子が沈みかけてるから引っ張り上げて!」

 

なんとか人口密度の低い場所を見つけ、一息つく。

 

みほ 「ふう。すごい人。この神社っていつもこんなに混んでるの?」

沙織 「うーん・・・・そんなことなかったんだけど。去年まではこんなに混んだことはなかったし・・・・」

華  「ここからの初日の出はとても綺麗ですし、それが広まったのかもしれませんね」

優花里「でもどうしましょう?これほど混んでいたらお参りも初日の出も拝むのが難しいかもしれません」

麻子 「お参り済ませたら帰るのはどうだ」

沙織 「うーん・・・・正直なところ、そうすべきな感じもしてきたね。まさかこれほどの人手だなんて・・・・」

 

ともあれせっかく来たのだからと、人ごみをかき分け何とか境内へ。

 

みほ 「えっと、今の時刻は・・・・」

華  「二十三時五十分。あと十分です」

沙織 「今年ももう終わりかー。今年は色々あったね」

優花里「同感であります。特に私にとっては人生が変わるほどの年でありました!」

麻子 「大げさだな・・・・と言いたいところだが、私も同感だ」

華  「はい、私もです」

沙織 「うん、私も」

 

と、四人が一斉にみほをみる。

 

みほ 「えっ?」

 

きょとんとするみほを見ながら、にっこりする四人だった。

と、周囲が騒がしくなる。

 

沙織 「あっ、一分切った!」

麻子 「カウントダウンだな」

優花里「何だかワクワクしてきました!」

華  「はい。__あっ、年が明けた瞬間飛び跳ねるのはどうでしょう?」

みほ 「年明けの瞬間、地球にいなかったっていうこと?」

 

そして周囲でカウントダウンが始まる。

 

ミカ 「ヴィーシ」

 

見晴らしのいい山の上にいるミカたち。

 

西  「四!」

 

知波単学園校庭で焚火を囲う西たち。

 

ケイ 「スリー!」

 

大人数でホールの中でカウントダウンパーティをするケイたち。

 

まほ 「ツヴァイ」

 

満天の星空の下でノンアルコールビール片手のまほたち。

 

チョビ「ウーノ!」

 

アンツイオの大食堂でパスタを口にしながらはしゃぐアンチョビたち。

 

みほ 「ゼロ!」

 

そして、みほたちは手を繋いでジャンプした。

 

 

 

                   ~~来年に続く~~




今年も当作品にお付き合いいただき、まことにありがとうございました。

劇場版は間隔があき気味になってしまっていましたので、それに対する埋め合わせの意味やお付き合いいただけたご挨拶の場を設けるため投稿させていただきました。
来年もより楽しく読んでいただける作品を投稿できるよう奮起いたしますので、これからもお付き合いいただければと存じます。

では、この場を借りまして__よいお年を!

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