侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※このシリーズは、各校編一話を先にお読みいただいているともっとお楽しみいただけます。


※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。

アンチョビ→チョビ
ペパロニ→ペパ
カルパッチョ→カル


ウィッグ・ウォー!

お昼のピークを過ぎた海の家れもん。

お客さんもほとんどはけ、店内にはあんこうチームが一組残っているだけだった。

 

チョビ「あづい・・・・」

 

アンチョビが顔を赤くしてしんどそうに顔をお盆で扇いでいる。

 

カル 「いつもそうでしたが、今日は特に暑いですね・・・・」

ペパ 「そうだなー・・・・うおっ、これすごい!見てください姐さん!」

チョビ「んー・・・・どうした?」

ペパ 「ほら!火つけてないのに目玉焼きが!」

 

ジュワ~~

 

直射日光を浴びた部分の鉄板の上で、生卵が焼けている。

 

チョビ「うわっ、これは本当にやばいな・・・・。気を付けないと熱中症で倒れかねないぞ」

 

言いながらお盆で扇ぐ。

 

チョビ「うあー、あつ・・・・」

ペパ 「そんな暑いなら無理せず外せばいいじゃないっすか、そのウィ」

チョビ「地・毛・だ!ことあるごとに私の髪ネタでいじるな!」

ペパ 「すんません姐さん!」

栄子 (地毛だったのか・・・・)

千鶴 (地毛だったのね・・・・)

渚  (地毛だったんだ・・・・)

優花里「それにしても、アンチョビさんの髪って本当にお手入れが行き届いてますよねー」

 

そんな会話に気づいた優花里が近づいてきた。

軽くふわっとアンチョビのロール部分に触れる。

 

優花里「ほら、軽く触ったくらいじゃ崩れないし、とても柔らかいです!」

華  「本当ですね。キメ細やかで、お手入れが行き届いています」

麻子 「どれどれ」

沙織 「私も私も!__うわっ、すっごいふわふわ!」

みほ 「あっ、わ、私もいいですか?」

チョビ「おっ、おおっ?」

 

次々と触りに来るあんこうチーム。

アンチョビの周りに人だかりができる。

 

優花里「これだけのものとなると毎朝セットも大変でしょう?ウィッグではないかと言いたくなるのも分かります!」

チョビ「まあな?アンツィオーのドゥーチェたるもの、身だしなみひとつままならないのでは威厳など保てないからな。それに毎日やってたから、慣れたもんだ」

優花里「はー・・・・」

 

感嘆の声が漏れる。

 

華  「優花里さんのご実家は床屋さんですものね。感じるものがあるのではないでしょうか」

優花里「あはは、私も昔はこういう長い髪に憧れてはいたんですが、いかんせんこの髪では・・・・」

 

そう言って頭のくせっ毛をいじる。

 

みほ 「私も一時期伸ばしたことはあるんだけど、お手入れとか行き届かなくて諦めちゃった。長い髪を保てるみんながほんとすごいなあ」

麻子 「私は放っておいても沙織がやってくれる」

沙織 「麻子はもうちょっと自分でお手入れする努力をしようよ!それこそ面倒だったらウィッグで__あ、そうだ!」

 

言いかけて何か思いついた沙織。

 

沙織 「ちょっとそこで待ってて!すぐ戻ってくるから!」

 

言うが早いか、沙織はそのまま店を飛び出していった。

 

みほ 「沙織さん!?」

 

そして。

 

沙織 「じゃ~~ん!」

 

ドサッ

 

沙織は大きな袋に沢山ウィッグを詰めて戻って来た。

テーブルには色とりどり、バリエーションに富んだウィッグが広げられている。

 

ペパ 「うわっ、すっごい数のウィッグっすね!」

千鶴 「これ、全部沙織ちゃんの?」

沙織 「えへへ、一時期イメチェンしようと集めたことがあって。結局いつもの髪に戻っちゃったんですけど」

千鶴 「でも今の沙織ちゃんの髪型も、とても似合ってるわよ」

沙織 「えへへ、ありがとうございます」

 

照れる沙織。

その間にもテーブルに置かれたウィッグに興味津々な一同。

 

みほ 「沙織さん、ちょっと触らせてもらってもいい?」

沙織 「うんいいよ、そのつもりで持ってきたし!」

 

沙織の許可も出て、各々手に取り始める。

 

みほ 「えっと、えっと・・・・あれ?」

 

うまくつけられず、ウィッグが落ちてしまう。

 

沙織 「ああ、みぽりんちょっと頭貸して。これは、ここを、こうやって・・・・」

栄子 「おお!」

 

そこには、サイドテールのウィッグを付けたみほがいた。

ウィッグの色合いも近いので、全く違和感がない。

 

栄子 「いい感じじゃん!いつもと違って見える」

みほ 「そうですか?変じゃないかな・・・・」

華  「とても似合っています。みほさんも髪を伸ばせばもっと素敵になれますよ」

みほ 「あはは、ありがとう華さん。でも、髪が長いと私じゃお手入れとか行き届かなそうで・・・・」

優花里「それは私にお任せを!毎晩お風呂のたびにお手伝いさせていただきますので!ふんす!」

麻子 「鼻息が荒いぞ、秋山さん」

ペパ 「なー、そろそろいい?」

カル 「もうちょっとだけじっとしててね・・・・うん、できた!」

ペパ 「おっ!鏡鏡!」

 

ぱっと手鏡を覗くと、そこには両肩からボリューミーな黒髪をたらすペパロニがいた。

 

栄子 「おお!髪の長いペパロニもいい感じじゃん!」

ペパ 「そ、そうか?変じゃないかな?」

千鶴 「ううん、とってもいい感じよ。可愛らしさ五割増しね」

ペパ 「え、ええ~っ、そんなにっすか?たはは・・・・」

 

嬉しさと照れくささの入り混じった表情を浮かべている。

 

華  「カルパッチョさんも、いかがですか?きっと新しい発見がありますよ」

カル 「あっ、ありがとうございます。でも私はこれ以上髪の量が増えるとバランスが・・・・」

華  「分かっています。ですから、こちらを」

カル 「これは?」

 

華が差し出したのは、カルパッチョの髪質とは違った明るい赤毛のウィッグだった。

椅子に座ったカルパッチョの頭に丁寧にウィッグを編み込んでいく。

 

華  「さらさらで綺麗な髪ですね。触っていて気持ちいいです」

カル 「そうでしょうか?五十鈴さんに言ってもらえると何だか自信が沸きます」

華  「透き通るような金色の花畑に、野に咲くたくましい一輪の花・・・・できました!」

栄子 「おお!」

 

カルパッチョの金髪に映える赤が交じり、いつもより引き締まった印象を受ける。

 

麻子 「さすが五十鈴さんだ」

みほ 「ウィッグ一つでここまで印象が変わるなんて、私知らなかった!」

優花里「むむむ、ここまで西住殿に好評とは!帰ったらお父さんに整髪技術についてレクチャーしてもらう必要が・・・・!」

 

などと盛り上がり、ワイワイしていると・・・・

 

ペパ 「おーい、みんな!」

 

ペパロニの呼び声に全員が振り返ると__

 

沙織 「ぶふっ!?」

みほ 「ふえっ!?ア、アンチョビさん!?」

千鶴 「まあまあ」

栄子 「んなっ!?」

麻子 「ほお」

チョビ「・・・・」

 

そこには、三つ目の縦ロールを垂らしたアンチョビが気まずそうに立ち尽くしていた。

隣ではペパロニがにっこりしている。

ロールのウィッグがアンチョビの髪色とマッチしていて、全く違和感を感じさせない。

 

渚  「びっくりしました、ここまで自然な仕上がりになるなんて」

ペパ 「どうっすか姐さん!みんなビックリしてますよ!」

チョビ「これはビックリというより引いてるんだ!全く、じっとしていてくれって言うから何するかと思えば・・・・」

麻子 「しかし、あれだな。アンチョビさんの三つ目のロール、ここまで来ると髪と言うより別なものに見えてくる」

沙織 「あ、それ私も思った」

優花里「私もです!・・・・でも、それを口に出すのはさすがにはばかれると言いますか・・・・」

麻子 「触手だな」

みほ (言っちゃった!)

チョビ「まあ、そう見えるだろうな。私だってそう思う」

 

はあ、とため息をつくアンチョビ。

 

チョビ「外すぞー?さすがに三つ目ともなるとちょっと重い」

カル 「外しますね」

 

カルパッチョが丁寧にウィッグを外す。

 

チョビ「ふう、軽くなった。しかしあれだな。頭から四方に髪が伸びて、まさにイカ娘になったような気分だった」

沙織 「そんな感じしてました?」

チョビ「ああ。イカ娘はこんな感じで触手をぶら下げてるのか、とな」

みほ 「どんな感じなんでしょう、触手をぶら下げているのって・・・・」

早苗 「知りたい!?」

 

さなえが とびだしてきた!

 

チョビ「うわっ!?どこから出てきた早苗!?」

早苗 「イカちゃんの話となれば、私が現れるのは当然のことです!」

栄子 「相変わらずイカ娘のこととなるとスペックおかしくなるな。で?何しに来た?」

早苗 「うふふ、実は__これ!」

 

早苗が背負っていた包みを開くと__

 

みほ 「ええっ!?こ、これ・・・・イカ娘ちゃんの触手と帽子!?」

 

そこにはイカ娘のシンボルであるイカ帽子と、そこから伸びる触手がくっついた被り物が複数入っていた。

 

早苗 「イカちゃんは主に頭部で私たちを判別するんでしょ?なら、これを被れば同胞だと思って抱き着いてきてくれるわ♪♪♪」

栄子 「いや、同胞だと思うのはあるかもしれんが、それで抱き着いてくるとは限らないだろ・・・・」

 

試しに持ってみる沙織。

 

沙織 「うわっ、すごい!触った触感がイカ娘ちゃんの触手とおんなじ!」

早苗 「うふふ、そうでしょう?前にもらったイカちゃんの触手を忠実に再現した魂の傑作なんだから!」

栄子 「いや、あれはもらったってより手品のために切り捨てた部分を持って帰っただけだろ(※侵略!イカ娘第68話・『手品しなイカ?』より)」

ペパ 「はー、相変わらず早苗は手先器用だなー」

カル 「被ってみていいですか?」

早苗 「うん、どうぞ!」

 

各々被ってみる。

 

みほ 「わあっ、みんなイカ娘ちゃんになってる!」

華  「イカ娘さんはいつもこのような感じで生活しているのですね」

沙織 「それでいて自由に動かせるんでしょ?便利そうだよね」

麻子 「ちょっと重い」

優花里「わわわ、冷泉殿傾いてますよ!」

カル 「これは見事な再現度ですね」

ペパ 「ははは、この触手変な感覚!」

 

各々楽しそうに被り心地を確かめている。

そんな中、アンチョビは被りながらちょっとしんどそうにしている。

 

カル 「ドゥーチェ、どうなさいましたか?」

チョビ「ああ・・・・たしかによくできてるんだが、被ってる間に重さで髪がぺったんこになってしまってな」

沙織 「わ、ほんとだ!頭がぺしょってなってる!」

華  「あまり長時間楽しめないかもしれませんね」

早苗 「それじゃあ・・・・」

 

早苗が器用にイカ帽子の帽子部分だけを取り外し、触手部分だけが残るようにした。

そこから上手く髪に絡め合わせ、まるで頭から触手が生えているように見える。

 

チョビ「おお、これなら被りやすい!」

麻子 「ちょっと不格好だが、イカ娘気分を味わうにはこれでもいいな」

早苗 「うーん、もっと改良が必要かしら?」

ペパ 「おもしろいっすねー。こんなウィッグ作って売ったらウケるんじゃないっすか?」

みほ 「こんな所をイカ娘ちゃんが見たらどう思うかな?」

カル 「『同胞がたくさん!』って喜ぶかもしれませんね」

 

などと話していると__

 

イカ娘「ただいまでゲソー。千鶴ー、頼まれた買い物済ませてきたでゲソよー」

 

イカ娘が帰って来た。

 

みほ 「あっ、おかえり、イカ娘ちゃん!」

 

触手帽子を被ったまま一同が出迎える。

 

イカ娘「っ!?」

 

みほたちに気が付き、驚きの表情で固まるイカ娘。

 

みほ 「?どうしたの、イカ娘ちゃん?」

 

様子に気が付き一同が歩み寄る。

ヒレ部分がないイカ帽子を被ったままで。

 

イカ娘「ひいっ?!」

 

恐怖におののく表情のまま後ずさりし__力なくぺたん、とその場にへたり込む。

目には涙が浮かび始めている。

 

チョビ「イカ娘!?どうした、おい、大丈夫か!?」

 

体の具合が悪いのか、と慌ててアンチョビたちが駆け寄ると__

 

イカ娘「ギャアアアアアアアアア!」

 

イカ娘は悲鳴を上げて気絶してしまった。

__しばらくして。

 

イカ娘「はっ!?」

 

イカ娘が気を取り戻した。

慌てて周囲を見回すが、そこにはいつも通りのみほたちがいた。

もう誰もイカ帽子を被っていない。

 

イカ娘「・・・・あれ?今そこに・・・・あれ?」

栄子 「急にどうした?帰ってくるなりぶっ倒れたりして」

イカ娘「えっ?」

麻子 「暑い中買い物して帰って来たから、日射病になったんじゃないか」

千鶴 「今日はもう大丈夫だから、先に家に帰ってていいわよ」

 

何だか釈然としない、という表情だったが、

 

イカ娘「分かったでゲソ・・・・」

 

と、イカ娘は相沢家へ帰っていった。

 

カル 「・・・・ばれなかったようですね」

 

隠していたイカ帽子を取り出す。

 

栄子 「忘れてたよ。あいつらの種族は帽子が取れると死ぬらしかったこと」

華  「考えてみれば、先ほど私たちは全員して帽子が取れた状態でイカ娘さんに詰め寄っていたわけですね」

麻子 「つまり、人間に置き換えてみれば頭蓋骨が割れて脳みそ飛び出したような状態で動いていたようなものか」

沙織 「グロいよ!?」

早苗 「・・・・」

栄子 「・・・・」

チョビ「・・・・早苗、悪いがそれ持って帰ってくれ」

早苗 「・・・・うん」

 

その後、早苗がイカ帽子を持ってくることはなかった。




最終章は本編の三・四か月後なので、髪が伸びた際にイメチェンを図るキャラがいるのでは?と思っていましたがそんなことはなかったですね!
ゲームなどには良くあることでしたが、こちらにはなかったようで。
それがよかったという方もいれば、残念に思った方もいたのではないでしょうか。

果たして、イカ娘の帽子が完全に取れてしまった時、何が起こるのか・・・・?
想像以上に恐ろしいことになりそうで、あまり考えたくはないです。。。

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