侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※このシリーズは、各校編一話を先にお読みいただいているともっとお楽しみいただけます。


※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。


ダージリン→ダー
ローズヒップ→ローズ


シスター・ウォー!

イカ娘「姉」

千鶴 「うん?」

イカ娘「妹」

栄子 「あん?」

 

とある日の海の家れもん。

イカ娘は千鶴と栄子を見ながら何かつぶやいている。

店内には見知った人物も多い。

 

栄子 「何ブツブツ言ってんだ」

イカ娘「栄子は、妹でゲソよね」

栄子 「ん?」

 

ちら、と千鶴を見る。

 

栄子 「まあ、そうなるな。姉貴がいるわけだし」

イカ娘「そして千鶴は姉でゲソ」

千鶴 「そうね。栄子ちゃんやたけるがいるものね」

イカ娘「やはりでゲソ」

栄子 「何がだよ」

 

答えず店内を歩く。

店内にはダージリンやエリカ、沙織もいる。

 

ダー 「あら?」

 

目の前に立つイカ娘に気が付くダージリン。

 

イカ娘「ダージリンさんは・・・・姉でゲソね!」

 

ビシッと指さして断言するイカ娘。

 

ダー 「あら、ご存知でしたの。仰る通り、私には妹がおりますわ」

イカ娘「やっぱりでゲソ」

 

満足そうに去っていく。

次にエリカの前に立つ。

 

エリカ「・・・・?何か用?」

イカ娘「エリカは絶対妹でゲソ」

エリカ「はあ?」

イカ娘「妹でゲソよね?」

エリカ「・・・・、そ、そうだけど。姉がいるわ」

イカ娘「やっぱり」

 

うんうん、と一人納得した顔で頷くイカ娘。

 

エリカ「何が言いたいのよ」

イカ娘「沙織ー」

エリカ「答えなさいよ!」

沙織 「?どうしたの、イカちゃん?」

イカ娘「沙織は姉でゲソよね?」

沙織 「えっ?うん、妹が一人いるけど」

イカ娘「思った通り、間違いないでゲソ」

栄子 「さっきから何聞いて回ってんだよ」

イカ娘「私はとある事実に気が付いたのでゲソ」

ダー 「あら、興味深いわね。ぜひお聞かせ願えるかしら」

イカ娘「うむ!私が調べたところ・・・・」

栄子 「ところ?」

イカ娘「『姉はしっかりしていて大人、妹はわがままで子供』でゲソ!」

沙織 「え」

 

ゴチン!

 

次の瞬間、栄子のゲンコツがイカ娘の頭部に食い込んだ。

 

イカ娘「痛っ!?何するのでゲソ!」

栄子 「何アホなこと言い出してるんだお前は!」

イカ娘「アホとは何でゲソ!ちゃんと調査に基づいた結果でゲソ!」

栄子 「どこがだよ!」

イカ娘「ほら、よく見るでゲソ!」

千鶴 「試しにスコーンを焼いてみたの。上手く焼けたから食べてもらえるかしら」

ダー 「これは素晴らしい出来ですわ。ちょうど英国から届いたばかりの茶葉がありますの。武部さんもご一緒にいかがかしら」

沙織 「あっ、ありがとうございます!じゃあ私、ポットの準備をしてきますね!」

 

姉三人は紅茶を飲みながら優雅なアフタヌーンティーを楽しんでいた。

 

イカ娘「比べて、お主ら妹勢はどうでゲソ」

栄子 「妹勢」

イカ娘「他人に気遣いも出来ず、分け与えることもせず、ただ享受するだけを良しといている未熟な存在でゲソ!」

エリカ「何で妹ってだけでそこまで言われないといけないのよ!」

栄子 「ていうか、それだけでデータ取ったとか偉そうに言うなよ」

イカ娘「むっ?」

栄子 「姉三人、妹二人を見ただけで人間全てがそうだとか決めつけるのが愚かなんだよ。もっとデータに基づいたと偉そうに言うなら、文句言えないくらいのデータを取ってから言えってんだ」

イカ娘「妹の栄子のくせに言うでゲソね・・・・。分かったでゲソ。私の理論が間違ってないと、確固たる証拠をつかんできてやるでゲソ!」

 

そう言ってイカ娘はれもんを飛び出していった。

 

栄子 「あーあ、行っちまった」

エリカ「ああいうところはまるっきり子供ね」

沙織 「あっ、わたし一緒について行ってきます!」

 

そう言うが早いか沙織はイカ娘を追いかけて店から出ていった。

そんな様子を見ていた千鶴とダージリン。

 

ダー 「結局のところは、こう言った部分の差ですのね」

千鶴 「ふふ、そうね」

 

一連の流れを眺めながら、二人はのんびり紅茶を飲んでいた。

 

沙織 「イカちゃーん!」

 

やがてイカ娘に追いついた沙織。

 

イカ娘「む?沙織じゃなイカ。どうしたのでゲソ?」

沙織 「えっと、一人じゃ調べるのも大変だろうと思って。手伝えることがあるかなって」

イカ娘「それは助かるでゲソ。やはり沙織は姉だからしっかりしているのでゲソね」

 

うんうんと頷くイカ娘。

 

沙織 「あはは・・・・」

 

一緒に連れ立って町中を歩く。

 

沙織 「それで、どういう風に調べていくの?」

イカ娘「決まってるでゲソ。姉か妹のいる者に片っ端から聞いて、確固たるデータを集めるのでゲソ!」

沙織 「でも、誰が姉や妹がいるのか、細かく知ってるの?」

イカ娘「うっ」

 

足がピタッと止まるイカ娘。

 

沙織 (やっぱり知らなかったんだ)

沙織 「私はある程度なら知ってるよ」

イカ娘「本当でゲソか!やはり姉である沙織は頼りになるでゲソ!」

沙織 「えへへ、そうかな~」

 

キラキラした瞳でイカ娘に褒められ、まんざらでもなさそうな沙織だった。

しばらく進むと__

 

???「おどきあそばせー!」

 

後ろから聞き覚えのある声が迫ってくる。

 

イカ娘「?」

沙織 「イカちゃん、危ない!」

 

グイッ

 

沙織がイカ娘を引き寄せると、すぐ傍らをローズヒップが自転車を全力でこぎ抜けていった。

あっという間に姿が見えなくなる。

 

沙織 「今のは・・・・ローズヒップちゃんだったね」

イカ娘「道路をあんなスピードで走り回るなんて危ないでゲソ。きっと妹でゲソね」

沙織 「えっ?・・・・うん、ローズヒップちゃんは上のきょうだいが多いって聞いたよ」

イカ娘「やっぱりでゲソ」

 

また一つ確信を持つイカ娘。

 

そど子「あら?武部さんにイカ娘さんじゃない。お買い物?」

 

風紀トリオに出くわした。

 

イカ娘「うむ、かくかくしかじか・・・・」

そど子「へえ、姉と妹の違い調査。ちょっと興味深い課題ね」

沙織 「そう言えば、そど子さんってお姉さんだったよね」

そど子「ええ。妹がいるわ」

イカ娘「そうだったのでゲソか!そう言われてみれば姉の風格はあるでゲソ。納得でゲソ」

 

うんうんと頷く。

 

ゴモヨ「パゾ美はお姉ちゃんがいるよね」

パゾ美「うん、一人いるよ」

イカ娘「む、そうだったのでゲソ?あまり妹らしくないでゲソね」

沙織 「妹らしくって・・・・」

 

ちらっ、っとそど子とパゾ美を見比べる。

 

イカ娘「まあ、姉がしっかりしているから妹もしっかりしているのでゲソね。きっとこれは特例でゲソ」

そど子「?」

パゾ美「?」

 

何を言っているのわからない二人。

 

ゴモヨ「・・・・イカ娘ちゃん、そど子とパゾ美は姉妹じゃないよ?」

イカ娘「えっ!?」

 

再び街を歩く二人。

 

イカ娘「うーむ、どう見てもあ奴らは姉妹だと思ったのでゲソがね・・・・」

沙織 「まあ、事情を知らないとそう思うのも無理はないよね」

???「へイ!ユー!」

 

と、背後から声を掛けられた。

聞き覚えのある声に振り向くと__

 

イカ娘「ケイにナオミとアリサじゃなイカ」

 

ケイとナオミとアリサがハンバーガーをほおばっていた。

 

ナオミ「二人で出歩いているとは珍しいな。どうかしたのか」

沙織 「かくかくしかじか」

ケイ 「フムフム、妹のいる姉と姉のいる妹の観察、ね」

ナオミ「面白い観察をしてるじゃないか」

アリサ「そう?だいぶ暇なことしてるなと思ったけど・・・・」

イカ娘「アリサはわかってないでゲソねー。これだから妹は」

 

やれやれ顔で語るイカ娘。

 

アリサ「私ひとりっ子だけど」

イカ娘「え」

 

そんなバカな、とケイとナオミを見る。

 

ケイ 「そうね、アリサはひとりっ子よ」

ナオミ「ウソはついてないな」

イカ娘「そんな!」

 

持論が崩れたかとがっくりするイカ娘。

 

ケイ 「まあまあ。一人っ子ならスクイーディの姉妹理論にも適用されないんだし、別にいいんじゃない?」

沙織 「さすがケイさん。お姉さんらしいフォローですね!」

ケイ 「アハハ、ありがとう」

イカ娘「おお、ケイは姉だったでゲソか!なら私の理論は間違っていないのでゲソね!」

 

一喜一憂するイカ娘。

 

ナオミ「良かったじゃないかスクイーディ」

イカ娘「うむ!」

 

喜ぶイカ娘をねぎらうナオミ。

そんなナオミをアリサは怪訝そうに見ている。

 

イカ娘「まだまだデータは足りないでゲソ。もっと行くでゲソよー!」

沙織 「じゃあねケイさん!また会いましょ!」

ケイ 「シーユーネクスト!」

 

去っていく二人を見送ったサンダース一行。

 

アリサ「・・・・ねえ、どうして名乗りださなかったの?」

ナオミ「ん?何のことだ?」

アリサ「だって・・・・ナオミはお姉さんいるでしょ」

ナオミ「まあな」

 

涼しい顔で答える。

 

ナオミ「私では参考にならないだろう?どうせなら思いきり満足いくまであの子には調べさせたいと思ってな」

アリサ「ホンット、そういうところは大人ねえ、アンタって」

 

その後も忍から話を聞いてる間にビーチバレー大会に引っ張り込まれそうになったり、あゆみに話を聞くうちウサギさんチームに遊びに誘われ本来の目的を見失いかけたりといろいろあったが、イカ娘は順調に姉妹情勢のリサーチを進めていった。

その頃、れもんに__

 

まほ 「お邪魔する」

 

まほがやって来た。

 

栄子 「ああまほさん、いらっしゃい」

エリカ「隊長、お先しています」

 

起立して敬礼するエリカ。

 

まほ 「硬くなるな。今日はプライベートだろう」

エリカ「はい!」

 

やれやれ、と苦笑するまほ。

エリカと同じテーブル席についた。

 

千鶴 「まほちゃん、いらっしゃい」

まほ 「カレーライスをお願いします」

千鶴 「はい」

 

席に座って待ちながら周囲を見渡す。

 

栄子 「どしたの?」

まほ 「ん?ああ、みほとここで待ち合わせなんだが、まだ来てないと思ってな」

千鶴 「そうね、まだ来ていないわよ」

まほ 「あと」

栄子 「ん?」

まほ 「イカ娘の姿も見えないが、今日は非番だろうか」

栄子 「ああ、あいつは今、沙織ちゃんと外に__」

 

イカ娘「沢山のデータが手に入ったでゲソ。やっぱり姉は妹の面倒をよく見てしっかりしてて、妹は姉に甘えてばかりでゲソ」

 

沙織 「うーん、決めつけるのも良くないけど、そういう関係もない訳じゃないしなあ・・・・」

 

栄子が言いかけている所に、一通り回り終えたイカ娘と沙織が帰って来た。

 

栄子 「お、帰って来たか」

千鶴 「有意義な調査はできたかしら?」

イカ娘「うむ!」

まほ 「お邪魔しているぞ」

沙織 「あ、まほさん、こんにちわ」

イカ娘「おお、黒森峰の西住さんじゃなイカ!ゆっくりしてくでゲソ!」

沙織 「あれ?今日はみぽりんとお出かけじゃなかったんでしたっけ」

まほ 「ここで落ち合う約束をしていてな。きっとそろそろ来る頃だろう」

イカ娘「落ち着いた余裕を持った構え。さすが黒森峰の西住さんはお姉さんでゲソ」

まほ 「む?」

沙織 「あはは、実は__」

 

かいつまんで出かけていた目的を話す。

 

まほ 「なるほど、妹のいる姉と、姉のいる妹の意識調査か・・・・。相変わらず面白いところに目が行くな」

イカ娘「それほどでもないでゲソ」

 

まほに褒められ鼻高々なイカ娘。

ふと、重要なことに気が付く沙織。

 

沙織 (あれっ、でも、このままの流れで行くと・・・・)

みほ 「お姉ちゃん、お待たせ!」

 

そこへみほがやって来た。

 

沙織 「あっ、みぽりん」

みほ 「沙織さん。それにイカ娘ちゃん、こんにちわ!」

イカ娘「おお、大洗の西住さん、いらっしゃいでゲ__」

 

そこまで言いかけて気が付いた。

 

イカ娘「・・・・大洗の西住さんは、黒森峰の西住さんの妹でゲソよね・・・・?」

みほ 「え?うん、そうだよ」

イカ娘「わ・・・・」

みほ 「わ?」

イカ娘「私の完璧な理論が崩壊してしまったでゲソーッ!」

 

その後。

 

イカ娘「うう、間違いないと思ってたのに・・・・」

 

理論が正しくないと立証されてしまい、落ち込むイカ娘。

 

エリカ「当たり前でしょ。そんな子供っぽい理論が当てはまるほど、人類は単純じゃないのよ」

イカ娘「ゲソー・・・・」

沙織 「それにさ」

イカ娘「?」

沙織 「イカちゃんも立ち位置的には妹みたいなものでしょ?ほら」

 

言われて振り向くと、そこには栄子と千鶴。

 

イカ娘「・・・・」

栄子 「・・・・」

千鶴 「・・・・」

イカ娘「やっぱり気のせいだったでゲソね」

エリカ「コラ」

 

イカ娘は早々と持論を完全放棄した。




凛とした姉、頼りない姉、甘えん坊な妹、しっかり者の妹。
千差万別、みんなそれぞれ違うからこそいいものですね。

この話を書くにあたりそれぞれの登場人物の家族構成を再確認しましたが、なかなか興味深いキャラも多く感じました。

本編に関しては遅々としてはいますが進めておりますので、もうしばらくお待ちください。

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