たける「ユルトラチョーップ!」
少年A「グオオオー!」
昼の砂浜で、たけるが友達とユルトラマンと怪獣の人形を使って遊んでいる。
ユルトラチョップを受け、怪獣が大きく怯む。
少年A「ギャオオー!」
少年B「大変だー!傷ついた怪獣が凶暴化したぞ!」
少年A「グオー!」
暴走した怪獣はユルトラマンを押し倒し、今にも噛みつきそうな状態だ。
少年B「ユルトラマンが危ない!今助けるぞ!キーーーン」
少年Bが持った戦闘機で怪獣を攻撃するが、ビクともしない。
少年B「駄目だ、攻撃が効かない!ユルトラマンがやられちゃうー!」
その時!
桂利奈「今だ!」
怪獣に水が吹き枯れられる。
たける「あ、あれは!科学特別隊の対怪獣戦車!」
桂利奈「くらえー!この時のために開発した、怪獣弱体化ビーム!ブシャー!」
桂利奈の持った戦車のおもちゃからどんどん水が飛び出し、怪獣に当て続ける。
少年A「ギャオオオー!」
攻撃を受けた怪獣がひるみ、スキが生まれる!
桂利奈「今だ、ユルトラマーン!」
たける「ユルトラ・・・・パーンチ!」
少年A「ギャオー!」
桂利奈「決まった~!ユルトラパンチ!」
ユルトラパンチを食らった怪獣は大きく吹っ飛んでいった。
その後。
少年A「あー、おもしろかった!」
少年B「お姉ちゃんわかってるね!」
桂利奈「えっへん!」
たける「あそこで戦車を出してくるとは思わなかったよ」
桂利奈「戦車は目立たなくても、こういう確実な出番があるからいいんだよ!脇役の華、ってやつだよ~♪」
しばらくまた遊んだ後。
たける「あっ、お昼ご飯の時間だ」
少年B[帰らなきゃ!」
少年A「またねー、桂利奈お姉ちゃん!」
たける「また遊んでねー!」
桂利奈「うん!ばいばーい!」
走り去っていくたけるに手を振る桂利奈。
桂利奈「さーて、私もお昼にしようかな~・・・・あいいいっ!?」
振り返った桂利奈の目の前には、ウサギさんチームの面々が立っていた。
皆一様に、もの言いたげな顔をしている(沙希を除く)。
桂利奈「み、みんな・・・・どうしたのかな~?」
あゆみ「ううん、別にー?ね、あや?」
あや 「そうそう。私たちたまたま通りがかっただけだし~?」
優希 「ずっと覗いてたわけじゃないし~♪」
梓 「桂利奈、ずっと姿が見えないと思ってたら、こんな所にいたんだ」
沙希 「・・・・」
桂利奈「い、いや、あのね!?ううん、そういうんじゃなくって、あの子たちが一緒に遊ぼうって言ってきて、断るのも年上として大人気ないかな~っと思ってね!?」
あや 「怪獣弱体化ビーム!」
桂利奈「うっ!?」
優希 「今だ、ユルトラマ~ン♪」
桂利奈「ううっ!?」
あゆみ「決まった~!ユルトラパーンチ!」
桂利奈「あいいぃぃ・・・・!」
全てを見られていたと知った桂利奈は、真っ赤な顔で丸まってしまう。
梓 「もう、みんなからかいすぎだよ!桂利奈が特撮大好きなの、知ってるでしょ!」
沙希 「・・・・(コクコク)」
桂利奈「梓ちゃん・・・・!沙希ちゃん・・・・!」
梓と沙希は桂利奈の味方をするが、
あゆみ「怪獣弱体化光線~♪」
梓 「んぷっ!?」
あや 「今だ、ユルトラマ~ン♪」
沙希 「・・・・(プルプル)」
梓は思わず吹き出し、沙希も小刻みに震えている。
桂利奈「うわあああああん!」
桂利奈は泣き出し、走り去ってしまった。
梓 「あっ、桂利奈!ごめんー!」
ひとしきり走った後、桂利奈は決意した。
桂利奈「決めた・・・・!私、特撮を卒業する!オトナのオンナになってみせる!」
その後。
桂利奈は海の家れもんにいた。
千鶴 「いらっしゃいませー」
桂利奈「じー・・・・」
桂利奈は『オトナのオンナ』がどんなものなのか、千鶴を参考にしようとしていた。
桂利奈(料理ができて美人、そしていつも落ち着いたオトナの雰囲気!きっと千鶴さんをマネれば、私もオトナになれる!)
料理の手際、イカ娘の叱り方、栄子のなだめ方、吾郎に向ける笑顔、などなど。
そして__次の日の朝。
あゆみ「桂利奈、おっはよー!」
桂利奈「おはよう、あゆみちゃん」
千鶴のように目を細めた桂利奈が微笑み返す。
あゆみ「!?」
あや 「やー、おっはよー!ユルトラモーニング!」
朝一でからかいに走るあやにも、
桂利奈「おはよう、あやちゃん。ふふっ、朝から元気ね」
オトナの微笑みを返す。
あや 「・・・・どちらさまですか?」
梓 「おはよう桂利奈。えっと・・・・昨日はごめんね」
桂利奈「ううん、気にしないで梓ちゃん。私たち友達じゃない」
梓 「えっ!?・・・・アッ、ハイ」
戦車道の練習でも。
優季 「あっ、ごっめ~ん桂利奈、今の道右だったって~」
梓 「ええっ!?優季、もうちょっと早く言ってよー!」
優季 「ついうっかり~♪」
梓 「んもうー!」
桂利奈「二人とも、喧嘩しちゃだめよ?大丈夫、今から戻れば間に合うから」
優季 「」
ドーン!
シュポッ
最後の最後、あと一撃が間に合わずわずかの所で撃破されてしまう。
沙希 「・・・・(シュン)」
装填が間に合わなかったことに沙希が責任を感じていると__
なでなで
桂利奈が沙希の頭をなでる。
沙希 「・・・・?」
桂利奈「沙希ちゃんは何も責任を感じる必要はないわ。次に頑張ればいいじゃない」
沙希 「・・・・(ポカーン)」
__と、(自分なりに)千鶴を真似た桂利奈がチームメイトに大人ぶって振る舞う。
梓 「今日の桂利奈、絶対変だよね」
あや 「もしかして、昨日私たちがからかったから?」
優季 「何だか、別人みた~い」
あゆみ「オトナっぽいと言えばそうっぽいけど、背伸び感ハンパないよね」
梓 「そのうち元に戻るとは思うけど・・・・ちょっとやりにくいなあ」
あゆみ「別に、桂利奈は桂利奈のままでいいのに」
優季 「オトナぶりたいお年頃、ってやつかしら~?」
あや 「早く元に戻るといいんだけど」
あゆみ「もし、戻らなかったら?」
沙希 「・・・・(ガクガクブルブル)」
梓 「こういうのは無理に言ってもしょうがないよ。桂利奈が自分で結論を出すまで、見守ろうよ」
と、チームメイトの意見は一致した。
その後、桂利奈は浜辺にいた。
桂利奈(これでかなりオトナらしさは周囲に振り撒けたはず!最後は・・・・あの子と決着をつける!)
たける「あっ!桂利奈姉ちゃ~ん!遊ぼう!」
浜辺に立つ桂利奈を見つけたたけるたちが嬉しそうな顔で駆け寄る。
桂利奈(『ごめんねたけるくん、お姉さんオトナだからもうお人形遊びは卒業しちゃったのよ』・・・・よし、これでいくぞ!)
桂利奈「ごめんねたけるくん、お姉さ__」
言葉を返そうとした桂利奈の言葉が、たけるを見て止まる。
__正確には、たけるの手に握られた人形と戦車を見て、止まる。
桂利奈(まっ、まさか、まさか、アレは!?幻のグッズ、ユルトラマンジロウのアクションフィギュアと特撃隊仕様のKVー2セット!?)
桂利奈の元へ駆け寄ってきたたけるの手元を確認する。
桂利奈(間違いない!どうしてこんなレアモノをたけるくんが持ってるの!?)
たける「家の物置きを探してたら見つけたんだ!桂利奈姉ちゃん、戦車好きでしょ?今日はこれで遊ぼう!」
桂利奈(ううううっ、触りたい、動かしたい、遊びたい!でも私はもうオトナ、そう、オトナ、オトナ、オトナ・・・・!)
葛藤している桂利奈の傍らで遊び始めるたけるたち。
少年A「くらえユルトラマンジロウ!超人殺しビーム!」
たける「ぐわーっ!」
少年B「大変だ、ユルトラマンジロウがやられる!誰か、助けられる奴はいないのかー!」
たけるたちが桂利奈に目配せをする。
桂利奈(ううっ、うう、うううー・・・・!)
たける「も、もう、ダメ、だ・・・・!」
少年B[ああっ、ユルトラマンジロウがー!」
桂利奈(うう、あ、あああああ!)
桂利奈「あいいいーっ!ユルシウム補給ビーム発射ー!」
桂利奈の持った戦車から水が噴き出し、ユルトラマンジロウに注がれる。
たける「これは、ユルトラマンジロウの力の源、ユルシウム!これで戦えるぞ!」
少年A「こしゃくな!これで勝てると思うなよ!」
少年B「がんばれユルトラマン!援護は任せろー!」
桂利奈「あいい~っ!」
結局いつも通りに戻って、たけるたちと夢中に遊んでしまう桂利奈。
そんな桂利奈を、梓たちは遠巻きに見つめていた。
梓 「あっという間に元に戻っちゃったね」
あゆみ「あはは、でも桂利奈はそこが可愛いんだよ」
あや 「そうそう。背伸びなんてしたってしょうがないもん」
優季 「桂利奈、楽しそう~♪」
沙希 「・・・・(コクコク)」
たける「やっぱり桂利奈姉ちゃんと一緒に遊ぶと楽しいね!」
桂利奈「あいいいい~~っ!」
桂利奈は、笑顔を浮かべながら泣いている。
しかし、その様子は心から楽しんでいるようにも見えた。
桂利奈はチームメイトにからかわれながらも愛されるウサギさんチームのマスコットたる存在だと思います。
ですが、劇場版における一瞬見せた冷静な一言(「違うと思う」の部分)を垣間見ると、もしかしたら一番最初に化けうるんじゃないか、という印象もありますね。
ともあれ、今の無邪気な桂利奈も捨てがたい、そんな魅力のあるキャラだということでしょうか。