侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※このシリーズは、各校編一話を先にお読みいただいているともっとお楽しみいただけます。


バンガイ・ウォー!
セカンドアンコウ・ウォー!


大洗女子学園、戦車演習場にて。

 

みほ 「では、今日はお話しした通り、イカ娘ちゃんが一緒に練習に加わってくれます」

イカ娘「みんなよろしく頼むでゲソー」

杏  「よろしくねー」

 

さっそくチーム分けがされ、あんこう、アヒルさん、アリクイさん、イカ娘が同乗するレオポンさんで構成されたAチームと、カバさん、カモさん、ウサギさん、カメさんで構成されたチームのBチームに分かれることとなった。

 

みほ 「では早速__」

杏  「あ~西住ちゃん、ちょっといいかな?」

みほ 「はい、何でしょうか会長」

杏  「今日の演習さ、負けた方に罰ゲーム用意したいんだけど」

沙織 「ええっ!?」

華  「罰ゲームって、何をするのですか?」

杏  「ふっふふ~♪私らで罰ゲームって言ったら、コレでしょ!」

 

杏はおもむろにピンク色の全身タイツのようなものを取り出した。

 

典子 「そっ、それは!」

杏  「そう!負けたチームにはあんこう踊りを披露してもらうかんね!」

あけび「あれは伝説の罰ゲーム、あんこう踊りのコスチューム・・・・!」

沙織 「やだやだやだー!あんなのまたやったら今度こそお嫁に行けなくなるうー!」

妙子 「だ、大丈夫です!勝てばいいんですから、勝てば!」

忍  「負けられない・・・・この試合だけは、絶対に!」

 

罰ゲームが発表されると、全チームに異常なほどの闘志のようなものが湧き出る。

 

イカ娘「おおっ、すごい気迫でゲソ!あんこう踊り、というのはそこまでみんなのやる気を引き出すものなのでゲソか」

沙織 「イカ娘ちゃん、勝とうね!絶対にっ!」

イカ娘「う、うむ!」

 

こうして乙女の誇りとあんこう踊りをかけた勝負が幕を開け__

 

ドカーン

シュポッ

 

杏  「や~ら~れ~た~」

 

イカ娘の加わったAチームが辛勝した。

 

梓  「いやあああー!」

あや 「負けちゃったよおおお!」

優季 「あそこであゆみが外すから~」

あゆみ「ええっ!?わたしのせい!?」

桂利奈「あいいい~・・・・」

沙希 「・・・・」

イカ娘「さすが西住さんでゲソ。作戦通り、勝てたでゲソ!」

みほ 「そんなことないよ。イカ娘ちゃんのあの機転が無かったら、どうなってたかわからなかったよ」

杏  「あ~、負けちゃったね~」

柚子 「桃ちゃん、あんな至近距離で外すから・・・・」

桃  「は、外したんじゃない!相手が避けたんだっ!」

沙織 「さーて、会長?自分で仰ったこと、忘れてませんよね?」

 

沙織があんこうスーツを持って杏に歩み寄る。

 

杏  「わーってるって。Bチームのみんな~、着替えましょうかね~」

梓  「うわああああん!」

 

十分後。

 

イカ娘「おお・・・・まさにあんこうでゲソ」

 

Bチーム全員があんこうスーツを着終え、整列した。

恥ずかしさで真っ赤な者、務めて平静を装うとしている者、ひょうひょうと笑顔を見せる者と、多種多様だった。

 

杏 「それじゃあ~・・・・ミュージック、スタート!」

 

杏がボタンを押し、プレーヤーから曲が流れてくる。

 

~♪

 

曲に合わせあんこう踊りを披露するBチームの面々。

そんな彼女らを、Aチームの面々は何より安堵の表情で見つめていた。

 

沙織 「よかった・・・・!勝てて、本当によかった・・・・!」

麻子 「過去のどんな試合より、勝利をかみしめてるな」

華  「あらあら、みなさん楽しそうですね」

みほ 「あはは・・・・」

みほ (あんこう踊りって、はたから見るとあんな風に見えるんだ・・・・。じゃあ、今まで私もあんな風に・・・・)

 

過去の自分に照らし合わせて、赤面するみほ。

 

優花里「どうしました西住殿!?踊ってないのに顔真っ赤ですよ!?」

 

『自分じゃなくてよかった』、そんな思いでBチームを見ていたAチームだったが、イカ娘だけ表情が違った。

 

イカ娘「な・・・・な・・・・!」

 

信じられないものを見た、といった表情でイカ娘はあんこう踊りを見つめている。

 

あけび「そっか、イカ娘ちゃんはあんこう踊り見るの初めてだったもんね」

忍  「仕方ないよ。誰だってあんな踊りをさせられそうになってたと思ったら__」

イカ娘「なんて再現度でゲソ!」

忍  「・・・・へ?」

イカ娘「あんこうの姿を完璧に模したあのスーツ、そしてあの動き・・・・!まごうことなき、あんこうそのものじゃなイカ!?」

あけび「ええー・・・・?」

イカ娘「まさか人類がここまであんこうを理解していたなんて、驚いでゲソ!」

 

イカ娘はあんこう踊りを、滑稽とは微塵と思わずただその再現度に驚いている。

 

イカ娘「だが、まだ甘いでゲソ!本当のあんこうの動きは・・・・こうでゲソ!」

 

突如イカ娘がまだ踊っているBチームに踊り入り、あんこう踊りに混ざる。

 

イカ娘「~♪」

みんな「!!」

 

イカ娘があんこう踊りを踊り始めると、一同騒然となる。

 

沙織 「えっ、何あれ!?あれがあんこう踊りなの!?」

華  「何というキレと無駄のない動き・・・・」

優花里「あれが本当の、あんこう踊り・・・・!」

麻子 「本場の動き、というやつか」

 

イカ娘の完璧なあんこう踊りに目を奪われる。

 

みほ 「イカ娘ちゃん、すごい・・・・!」

 

ふと気が付くと、アヒルさんチームの面々が何だかうずうずしている。

 

あけび「キャプテン!私たちも負けてはいられません!参戦すべきです!」

忍  「そうですキャプテン!!私たち大洗女子のあんこう踊りは、例え本場相手でも見劣りするものではないと証明すべきです!」

妙子 「ここで退けば、大洗女子の誇りからも逃げることになります、キャプテン!」

典子 「お前たち・・・・よく言った!その通り、私たちは戦車道チームでもバレー部でもある前に、大洗の人間だ!例え海からの使者が相手でも、あんこう踊りで負けていいはずがない!行くぞ!」

三人 「オーッ!」

みほ 「えっ、あのっ、磯辺さん!?」

典子 「大洗女子ぃー、ファイトー!」

三人 「オーッ!」

典子 「あん根性ーッ!」

 

決意を固めたアヒルさんチームが踊りの輪に乱入し、あんこう踊りに加わった。

 

みほ 「加わっちゃった・・・・」

優花里「でも気持ちはわかります。あのあんこう踊り、もはや芸術の域に達しています!」

華  「踊っている皆さんもとても楽しそうです」

麻子 「あそこまで動けたら、楽しいだろうな」

沙織 「ダメよ、こらえるのよ、いくら完成度高くてもあれはあんこう踊り、あんこう踊りなんだから・・・・!」

 

気が付けばアリクイさんチーム、レオポンさんチームも踊りに加わっていて、残っているのはあんこうチームのみになっていた。

 

華  「あらあら」

みほ 「踊ってないの、私たちだけになっちゃった」

優花里「でも凄い一体感です。イカ娘さんを中心に、今まで見たこともない洗練されたあんこう踊りになっています」

沙織 「何だろ、この疎外感」

麻子 「・・・・加わるか?」

みほ 「!」

 

ぽつりと呟いた麻子の提案に__

あんこうチームの面々はこくりとうなづき、手をつないで踊りの輪の方へ歩み寄っていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

数日後、大洗女子学園にて。

あんこうチームの五人が連れ立って廊下を歩いている。

 

みほ 「今思い出しても、すごい一体感だったよね」

華  「皆さんと一緒に踊れて、とても楽しかったです」

麻子 「あんこう踊りも極めるとあそこまでのものになるんだな」

みほ 「本物のあんこうそっくりってイカ娘ちゃん言ってたけど、本当にあんこうが海の中で踊ってるのかな」

優花里「まさか、と言いたいところですが、イカ娘殿が言うと説得力がありますよね」

沙織 「聞こえない聞こえない何も聞こえないー・・・・!」

 

沙織の方を見ると、沙織は両耳をふさぎ目を閉じている。

 

優花里「どうしたんですか武部殿。あの時はあんなに楽しそうに踊ってたのに」

沙織 「思い出させないでー!あの後冷静になってから、恥ずかしさで死にそうだったんだからー!」

麻子 「あの中で一番ノリノリだったのは沙織だったぞ」

沙織 「だから言わないでー!あれは気の迷い!そう、場の雰囲気に流された過ちなのよー!」

 

ふと、廊下の一角で人だかりができている。

どうやら壁に張り出された校内新聞を読んでいるらしい。

生徒たちをかいくぐってみほたちがその新聞を見る。

 

みほ 「えっ・・・・!」

 

校内新聞には、あの時のイカ娘を中心とした戦車道チームみんなのあんこう踊りの写真がでかでかと載っていた。

『全国制覇の戦車道チームによる、全国レベルのあんこう踊り披露!』と、見出しに書かれている。

 

沙織 「・・・・!」

優花里「ありゃー・・・・どうやら新聞部のみなさんに激写されちゃってたようですね」

みほ 「ふぇっ!?」

華  「あらあら」

麻子 「また別の意味で校内の注目を浴びそうだな」

杏  「あー、いたいた、西住ちゃ~ん」

みほ 「会長!こ、この記事・・・・!」

杏  「いや~、よく撮れてるね~」

沙織 「それどころじゃありませんよ!ただちに剥がしてください!」

杏  「いや、それがそういう訳にも行かなくになってね?」

みほ 「えっ?」

杏  「このあんこう踊りのことを聞きつけた大洗の町内会が、あんこう祭りで私らにぜひステージ組んで踊ってほしい、って依頼が来ちゃってさ」

沙織 「えええっ!?も、もちろん、断ったんですよね!?」

杏  「二つ返事でOKしたよ~。あんこうチームが出る、って話で」

沙織 「なっ・・・・!」

杏  「これも応援してくれる地元へのサービスだからさ。んじゃよろしくね~」

 

手をひらひらさせて去る杏。

茫然とその場に取り残されるあんこうチーム。

 

みほ 「えー・・・・と・・・・」

優花里「練習、します・・・・?」

沙織 「もーやだー!あんこう踊りなんて、こりごりよおーーーっ!」




という訳で始まりました、番外編!

本編を書いている中で思いついたけど本編に適用するのが難しいエピソードたちの使い道を考えていくうちに、こういった運用法を考え付きました。

こちらは本編や他の話に全く影響を残さない独立した仕様になっています。
でも基本的な関係などは適用されていますので、各校1話を読んでおいてもらえると幸いです。

こちらは本編と違い出す余裕があったらの不定期更新になりますので、気が付いたら更新されてた、くらいの気持ちでお願いします。

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