※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。
ダージリン→ダー
オレンジペコ→ペコ
アッサム→アッサ
ルクリリ→ルク
ローズヒップ→ローズ
ニルギリ→ニル
アンチョビ→チョビ
ペパロニ→ペパ
カルパッチョ→カル
カチューシャ→カチュ
クラーラ→クラー
※〈〉内の台詞は、全てロシア語で話しているとご解釈ください。
第1話・集まらなイカ?
イカ娘「れもんの貸し切り予約、でゲソ?」
千鶴 「ええ。今朝まほちゃんから電話があって、明後日行われる隊長面談会の打ち上げに、うちを使わせてほしいそうなの」
栄子 「おお!そりゃ結構な人数になるんじゃないか?」
千鶴 「まほちゃんによると、大洗、聖グロリアーナ、サンダース、プラウダ、黒森峰の子たちが来てくれるそうよ。人数はおよそ二十人前後になるらしいの」
渚 「二十人ですか。大人数ですね」
千鶴 「それに各校、それぞれテーマにしている校風があるでしょう?出来るだけ多国籍なお料理がいいと思うの」
カル 「それぞれの校風に合わせ、かつ人数分をそろえる。大仕事ですね」
栄子 「大洗はノンセクションでいいだろうけど、グロリアーナはイギリス、サンダースはアメリカ。プラウダはロシア、黒森峰はドイツ。・・・・確かにそれぞれ一つ用意するだけでも一苦労だな」
千鶴 「もちろん私一人で全部仕込むのは難しいわ。でも今のうちには、頼りになる子がいてくれるじゃない」
ペパ 「ういっす!おまかせっすよー!」
ペパロニが腕まくりしてアピールする。
栄子 「おお!」
チョビ「ついでに余裕がありそうだったら我々がイチオシのイタリアンも用意するぞ!」
カル 「れもんとのコラボメニューもいくつか加えたいですね」
チョビ「それもいいな。いっそそのためにオリジナルメニューも考えてみるか!」
ペパ 「サイコーっすよ姐さん!」
渚 「豪華な食事会になりそうですね」
イカ娘「うむ!・・・・あれ?アンチョビ、ちょっと聞きたいのでゲソが」
チョビ「うん?どうしたイカ娘」
イカ娘「明後日、色々なところの戦車道をやっている学校の隊長が一同に会するのでゲソよね?」
チョビ「ああ」
イカ娘「それで、アンチョビもアンツィオ高校の隊長でゲソよね?」
チョビ「・・・・ああ」
言いたいことを察したのか、声がトーンダウンしたアンチョビ。
イカ娘「アンチョビは会に出ないのでゲソか?」
チョビ「あー・・・・何と言ったらいいのか、あれ、そうあれだ」
イカ娘「?」
チョビ「実は・・・・」
ペパ 「私ら戦車道連盟から呼ばれなかったんすよー」
チョビ「うぐっ!」
どう答えようか答えを濁していたアンチョビの横から、ペパロニがズバっと切り捨てる。
イカ娘「呼ばれなかった?どうしてでゲソ」
ペパ 「あー。そりゃあ、ウチはサンダースやグロリアーナみたいに戦車道で有名じゃなかったし、大洗や黒森峰みたいに上位に食い込んだりしなかったっすからねー。まだまだ知名度が足りなかったてことっすね」
チョビ「『去年までは』そうだっただろう!だが今年はついに一回戦突破を果たしたのだ!アンツィオは来年からは強豪校入りだからな!というか優勝するからな!」
千鶴 「その意気ね。来年のアンツィオがどこまで登り詰めるか、私も楽しみにしているわ」
カル 「精一杯頑張りますね」
ペパ 「私らで姐さんの名を上げて見せるっす!」
千鶴 「それで、打ち上げの準備についてだけれど」
千鶴が話を戻す。
千鶴 「料理の量から言って、今うちにある食材じゃ到底全部には足りないの。だから買い出しに行ってきてほしいのだけど。イカ娘ちゃん、お願いできるかしら。行ってきてくれるなら、帰りにエビポテト買ってきてもいいわよ」
イカ娘「本当でゲソか!?任せるでゲソ!」
栄子 (エビでイカを釣っている)
千鶴 「量が多いから、もう一人か二人、同行してほしいのだけれど・・・・」
イカ娘「ならもう一人は渚がいいでゲソ!」
渚 「ええっ!?私、ですか!?」
イカ娘「うむ!渚は最近もっと腕力が付いてきてたでゲソ。きっと沢山荷物を持てるゲソ」
渚 「えっ?」
渚は自分の二の腕の辺りを触って感触を確かめている。
カル 「大丈夫ですよ、渚さん」
カルパッチョがこそっと渚に耳打ちする。
渚 「えっ!?」
カル 「渚さんはまだそんなに腕太くなってませんから。まだまだ細い、女の子らしい腕ですよ」
渚 「あ、ありがとうございます」
考えが読まれたことに若干驚きながらも、同じ装填手から大丈夫と言われ、渚は少し心が軽くなった。
チョビ「じゃあもう一人は私が行こう。他にも追加することになるかもしれないからな」
千鶴 「それじゃあお願いね。買ってきてほしいものはリストアップしてあるから」
そう言って千鶴はメモをアンチョビに渡す。
千鶴 「よろしくお願いね」
イカ娘「万事任せるでゲソ!では出発でゲソ!」
カル 「行ってらっしゃーい」
ペパ 「しっかり頼むっすよー!」
かくして、買い出しに出かけた三人を見届けたのち。
千鶴とペパロニは厨房へ入った。
千鶴 「さあ、これから打ち上げのお料理のための食材の仕込みと、海の家を同時にこなすことになるわ。ペパロニちゃん、覚悟はいいかしら?」
ペパ 「望むところっすよ!」
二人の料理人は不敵に笑い、かつてないスピードで業務をこなし始めた。
その頃。
ナオミ「うーん、この店にも無かったか・・・・」
ナオミはとあるスーパーの売り場を眺めながら唸っていた。
アリサ「ねえ、もういいでしょ?ここで何件目よ・・・・。無いなら近いものでいいでしょ」
ナオミ「分かっていないなアリサ。私にとってあの銘柄でないと合わないんだよ。ファイアフライの17ポンド砲には85ミリ砲の砲弾は合わないのと同じだ。私の口に入るのは、あれ意外にはあり得ないんだ」
アリサ(めんっどくさい・・・・!)
アリサ「無いなら無いでいいでしょ。またどこかで手に入るわよ」
ナオミ「あれがないと集中できないんだ。私の砲撃が当たらなくなってもいいというのか?」
アリサ(ほんっとめんどくさい!)
時同じくして、同スーパーにて。
カチューシャがノンナに肩車されながら店内を回っていた。
カチュ「ふーん。陸の店の割に、なかなかの品揃えじゃない。プラウダ商店の次に仕入れが上手いようね」
ノンナ「カチューシャ。ボルシチ弁当はいくつ購入しましょう」
カチュ「ニエット!無駄な質問だわ!全部買うに決まってるでしょう!」
クラー〈賞味期限を考えない思い切った買い方のカチューシャ様も素敵ですね〉
ノンナ〈分かってますね、クラーラ〉
カチュ「だから二人とも!日本語で話しなさいよ!」
いつもの掛け合いをしながら三人が棚の角を曲がると__
カチュ「あっ」
ノンナ「あら」
クラー〈まあ〉
ナオミ「む?」
アリサ「えっ」
サンダースの二人に出くわした。
カチュ「貴女たち、たしかサンダースの__」
アリサ「プラウダのカチューシャ!なんでここにいるのよ!」
カチュ「何でって、隊長面談のために決まってるでしょう?このカチューシャが忙しい合間を縫ってこんな所にまで来ているんだから、他にある訳ないじゃない」
アリサ「いや、面談会のために神奈川まで来てるのは知ってたけど、なんでスーパーにいるのよ」
ノンナ「それは、この店一押しのボルシチ弁当を買いに__」
カチュ「ノンナ!
クラーラはうまく自分の後ろにボルシチ弁当を大量に詰め込んだ買い物カゴを隠している。
カチュ「そ、それで?貴方たちはこんな所で何をしているの?」
アリサ「いや、私は特に買うものはないんだけど、ナオミがガムを探し回って・・・・」
カチュ「ガム?」
よく見ると、ナオミはガムコーナーの棚を睨むような目でガムを探し続けている。
アリサ「うっかりいつも噛んでいるガムを切らしちゃってね。サンダースなら当たり前に売ってる銘柄なんだけど、こっちにはどこにも置いてなくて」
ノンナ「それで、探して回っているという訳ですね」
アリサ「そういうこと」
すると、ナオミははあ、とため息をついて立ち上がる。
ナオミ「ダメだ。ここにもない。アリサ、次へ行くぞ」
アリサ「うえっ!?まだ行くの!?もういいじゃない!」
ナオミ「出た少し先にコンビニがあるのが見えた。そこならあるかもしれない」
ナオミはカチューシャに目もくれずそのまま店を出て行った。
アリサ「ちょ、ナオミ!待ちなさいよ!あーもう、こんな時に隊長はどこ行っちゃったのよ!」
アリサもナオミを追って店を出て行った。
カチュ「ナオミのやつ、カチューシャたちが見えてなかったみたい」
ノンナ「それほど探すのに夢中だったのですね」
クラー〈まるでカチューシャ様がボルシチを食べている時くらい夢中でしたね〉
ノンナ〈見事な例えですね、クラーラ〉
カチュ「日本語で話しなさいってば!」
そんな彼女らの掛け合いにも気づかず、同じく店に来ていたイカ娘たちは会計を終わらせ、店から出た。
イカ娘「よいしょ・・・・これで野菜は全部買えたでゲソね。次はお肉でゲソ」
チョビ「待て待てイカ娘。この暑い中生肉を持ちながら渡り歩くのは得策じゃない。肉は最後にして、他の持ちの良い物を先に買っていくぞ」
イカ娘「む、一理あるでゲソ。えーと、次は何でゲソ?」
アンチョビが買い物メモを見る。
チョビ「えーと・・・・こりゃ骨が折れそうだな」
渚 「何ですか?」
チョビ「ジュースやノンアルコールビール、紅茶などの飲み物一式だ」
飲み物などを中心に扱う量販店にて。
店の一角に、テーブルを囲みティータイムに興じている一団があった。
ダー 「こんな格言を知ってるかしら?考えは言葉になる。言葉は行動になる。行動は習慣になる。習慣は人格となり、人格は運命となる」
ペコ 「イギリスの首相、マーガレット・サッチャーの言葉ですね」
アッサ「まさか、店内に紅茶を頂けるスペースが用意されているなんて。このお店の方は、聖グロリアーナに強い影響を受けておいでですね」
ローズ「そういえば、ダージリンの茶葉の種類もすごい豊富でしたわね」
ルク 「ダージリン様の影響は計り知れませんわね。名声と気品、そして人気の成せる結果と言えるでしょう」
ローズ「そういえば、ルクリリの茶葉はわずかしか取り扱っていませんでしたわね」
ルク 「うっせ!」
ニル 「ルクリリ様、地が出てます」
同店、ノンアルコールエリアにて。
小梅 「まさか黒森峰特産のノンアルコールビールを取り扱っているなんて、思いもよりませんでしたね」
エリカ「黒森峰の認識度を考えれば、当然のことよ。むしろ扱っていなかったらモグリよ」
まほ 「しかしこの店の品ぞろえは多岐にわたっているな。絶対的な紅茶の種類の数はもちろん、ノンアルコールビールもある。コーラの種類があんなにあるなんて、知らなかったな」
小梅 「私も、ノンアルコールウォッカなんて聞いたこともありませんでした」
エリカ「むしろそれはもはや何の飲み物なのかわからなくなるわね」
まほたちがチームの仲間に振る舞うためのノンアルコールビールを買いに来ていたところだった。
そこへ__
沙織 「へえー、みぽりんあまり飲んだことなかったんだ?」
みほ 「うん、・・・・やっぱりおかしいかな、黒森峰にいたのにノンアルコールビール飲めなかったの」
麻子 「別におかしいことじゃないだろう。アルコールが入っていようとなかろうと苦手なものは苦手でいいと思う」
同じエリアにみほたちも訪れていた。
まほたちのいる棚を一つ挟んだ先にみほたちがいる。
優花里「では、今日はどうしてこちらに?」
みほ 「うん。最近また、お姉ちゃんやエリカさん、小梅さんとも何度も会って__ちょっと、黒森峰にいた頃を思い出して。そういえば、苦手だってことを理由にして、あまり一緒にこれを飲めていなかったなあ、って。それで__」
華 「それで、私たちと一緒に飲んでみましょう、と仰ったんですね」
みほ 「うん。__ごめんなさい、何だかみんなを代わりにしているみたい」
優花里「何を縮こまる必要がありましょう!必要とあらばこの不肖秋山優花里、何本でも何十本でも西住殿と酒盛りにお付き合いする所存であります!」
みほ 「ふえっ!?い、一本くらいでいいんだけど・・・・。ありがとう、優花里さん」
沙織 「ねえねえ、このノンアルコールとか美味しそうだよ!あ、でもこっちのはカロリー四分の一か。うーん、どっちがいいんだろ?」
楽しそうに賑わうみほたちの声を、静かに聞いているまほたち。
エリカ「隊長、声をかけましょうか・・・・?」
いたたまれなくなったのか、まほに小声で提案するエリカ。
まほ 「いや。みほは今大洗の友達と一緒に来ているんだ。姉の私が乱入していい空気ではないな」
エリカ「そうですか・・・・」
余計な提案をしてしまったか、と少し落ち込むエリカ。
まほ 「だが『友達』なら乱入しても問題はないだろう。二人とも行ってきたらどうだ」
エリカ「ええっ!?い、いえ、別に私は副隊長と友達とか、そういう関係じゃないというか、違うというか違わない、いえ、チームメイトであって仲間というか__」
まほの提案にどぎまぎするエリカを、まほは少し嬉しそうで楽しそうな笑顔で見ていた。
イカ娘「おっ、重いでゲソー・・・・!」
飲み物を買い終えたイカ娘が、ドリンクがたくさん入った袋を引きずりそうな体制で出口を通る。
チョビ「あー、無茶するな。何本か重いものはこっちに入れていいから」
渚 「私もまだ余裕があるから、入れてくれて大丈夫ですよ」
イカ娘「二人が来てくれて助かったでゲソ。さてと・・・・じゃあ最後にお肉を買って、帰ろうじゃなイカ!」
その頃。
ローズ「ダージリン様!さっき店内でイカ娘さんがたを見かけましたわ!こちらにお呼びいたしますですわ!」
ダー 「その必要はないわローズヒップ。淑女たるもの、無理に出会いを作る必要はありませんわ。優雅に構え、自然の成り行きにお会いした時に礼を尽くすのが聖グロリアーナ生というものです」
ローズ「うーん、深いですわね」
ルク 「というか同じ店にいたからって呼び出されたら相手も迷惑だろうが」
肉屋に到着したイカ娘たち。
イカ娘「む?」
到着と当時に、イカ娘は肉屋の店先に見覚えのある人物の後姿を見た。
ケイ 「あら?スクイーディじゃない!アンチョビも!?奇遇ね?」
イカ娘「ケイじゃなイカ。ここで何をしているでゲソ?」
ケイ 「ちょっとねー。今日はここでグルメツアーをしている、というところかしら」
イカ娘「グルメツアーでゲソか、いいでゲソね。ところで、アリサとナオミはどこにいるでゲソ?」
ケイ 「んー、実はナオミが厄介なスイッチ入っちゃってね。アリサに任せて私はエスケープしてきたところなの」
チョビ「面倒ごとを押し付けたのか・・・・」
ケイ 「アハハハ!そうとも言えるわね!・・・・それにしても、すごい荷物ね。更にここでお肉も買うの?」
イカ娘「うむ。明後日の打ち上げ会に向けて千鶴が準備してるから、その買い出しでゲソ」
ケイ 「へえ。そういえば海の家でアルバイトしてるって言ってたわね。それじゃあ、そっちの子も同じバイト先の?」
渚 「はい、斎藤渚と言います。初めまして」
ケイ 「ケイよ。よろしくね」
イカ娘「ケイはサンダース大付属高校で戦車道の隊長をやっているでゲソ」
渚 「ええっ!?あのサンダースで隊長を!?凄い人とお知り合いなんですね」
ケイ 「そんな大層な肩書きじゃないわ。気軽にケイと呼んでちょうだい」
イカ娘「渚は私と同じ戦車チームで、装填手を任せているでゲソ」
ケイ 「ワーオ!チームメイトでもあったのね!」
渚 「成り行きな部分もありますが・・・・」
チョビ「おーい、買い終わったぞー」
ケイとイカ娘が離しているうちにアンチョビは買い物を済ませ、大きな袋をいつくもぶら下げている。
ケイ 「アンチョビ。その袋、貸してちょうだい」
ケイはアンチョビから肉屋の袋を受け取る。
ケイ 「ワオ、けっこう重いわね。お肉を買ったということは、買い出しはこれで終了、ということかしら」
イカ娘「うむ!あとはれもんに持って帰るだけでゲソ」
ケイ 「それならそこまで一緒するわ。行きましょう」
イカ娘「おお、助かるでゲソ!」
こうしてケイを加え、帰路につくことになった。
ケイ 「へえー。れもんの料理を食べるためにわざわざここへ?」
チョビ「そうだ。それで、色々あって今は住み込みバイトで相沢家に世話になっている」
ケイ 「相変わらず逞しいわねー、アンツィオは。・・・・あら?それじゃ、隊長面談でここに来てたわけじゃなかったの?」
チョビ「聞くな!」
わいわいと会話が弾み、一行は海の家れもんへ到着した。
イカ娘「ふーっ、やっと帰って来れたでゲソー」
千鶴 「お疲れ様。みんな暑い中ありがとう。あら?そっちの子は」
イカ娘「この間話した、サンダースのケイでゲソ。運ぶのを手伝ってくれたのでゲソよ」
千鶴 「あらあら、ありがとうね、ケイちゃん」
ケイ 「ノープロブレム!打ち上げではお世話になるんだし、これくらいはね!」
千鶴 「みんなもありがとう。これ飲んで休んでちょうだい」
お使い班を労い、千鶴が人数分の冷えたジュースを差し出した。
チョビ「はー、落ち着いた。ところで千鶴さん、買ってきた野菜はどこに保存すれば__」
冷蔵庫に入れようかと厨房を見たアンチョビは固まった。
厨房には、こんもりと三メートルにわたる緑色の山が__もとい、キャベツの千切りが積み上げられていた。
チョビ「な、何だあれは!?」
ペパ 「あ、ドゥーチェおかえりなさいっす!」
千切りの山の裏からペパロニが顔を覗かせる。
チョビ「ペパロニ!何だこのキャベツの山は!?」
ペパ 「いやー、仕込みを頼まれてとにかく切ってたんすけど、その様子がお客さんに妙にウケたみたいで。んで、リクエストに応えて切りまくってたら、こんなことに!」
ケイ 「ワオ、ファンタスティック!」
チョビ「切りすぎだろ!」
千鶴 「大丈夫よ。これもちゃんと使い道を考えてあるから」
ペパ 「さすが千鶴さん!料理人の鑑っす!」
チョビ「お前は反省しろ!」
渚 「ともかく、これで予約に向けての買い出しは完了、でしょうか」
千鶴 「そうね。あとは私たちの出番だわ。何としても間に合わせるから、任せてちょうだい!」
ペパ 「っす!」
かくして、千鶴とペパロニの超人的な仕込みと経営力のにより__
その後、滞ることなく準備は完了し、隊長面談会の開かれるその日となった。
まほ 「それではみんな、面談会お疲れだった。__乾杯!」
みんな「かんぱーい!」
差し障ることもなく会も終わり、一同は打ち上げを行うため海の家れもんへ集まっていた。
千鶴 「今日は貸し切りよ。みんな遠慮なく食べていってね」
みほ 「千鶴さん、ありがとうございます」
千鶴 「こちらこそ。イカ娘ちゃんもお世話になってるし、こうしてうちを選んでくれて嬉しいわ」
沙織 「千鶴さんの手料理・・・・!しっかり味付けを覚えて帰らなくちゃ!」
各テーブルには多国籍にわたる料理が並べられ、各々が食事を楽しんでいる。
華 「こんなに沢山並んでいると目移りしちゃいますね。どれから手を付ければいいのか・・・・」
麻子 「『こんなに食べられない』という認識は無いのか」
優花里「私もお手伝いします!これを運べばいいですか?」
イカ娘「気遣いは無用でゲソ」
優花里がジュースの入ったポットを運ぼうとすると、イカ娘が触手を使って難なくテーブルに配置していく。
おお~、と歓声が上がる。
ノンナ〈今日もイカチューシャの触手の栄えは健在のようですね〉
クラ 〈私も一本欲しくなってきました〉
ノンナ〈今度お願いしてみましょう〉
カチュ「何言ってるかわからないけど・・・・今日は無礼講よ!このカチューシャが寛大なる心で許してあげるわ!」
チョビ「やあ西住!ちゃんと楽しめているか?」
まほ 「ああ。どの料理も引けを取らない完成度だ。特にこのパスタ焼きそばが美味いな」
ペパ 「へへー、それはれもんとウチらの必殺コラボメニューっす!今一番人気なんすよ!」
カル 「アンツィオに帰ったら、新しい名物が増えますね」
エリカ「それにしても、貴女たちがここでアルバイトしてるとは知らなかったわ」
チョビ「かくかくしかじか、色々あってな」
エリカ「食べに来たらアルバイトすることになったって、どんな縁よ」
その頃、別のテーブルでは。
ケイ 「あれからどう?スクイーディ。戦車道は楽しめてるかしら?」
イカ娘「もちろんでゲソ!あれからいくつも激戦を繰り広げて、私は一段と成長を遂げたのでゲソ!」
ナオミ「凄いな。それじゃあ次は本気で狙っていかなくちゃな」
イカ娘「そこはちょっと手を抜いてくれても構わないでゲソ」
ケイ 「アハハハ!」
ダー 「それにしても」
イギリス料理のテーブル席につき、いつものように紅茶を飲んでいたダージリンが口を開く。
ダー 「皆さんがイカ娘さんたちと既にお知り合いだったとは、存じませんでしたわ」
みほ 「私もです。ダージリンさんにケイさん、アンチョビさん、カチューシャさんたちに・・・・お姉ちゃんもお付き合いがあったなんて知りませんでした」
まほ 「私もだ。打ち上げ会場を海の家れもんにしよう、と聞いた時は驚いたぞ」
イカ娘「試合とかで戦ったり、一緒に戦ってたりしていたのは知っていたでゲソが、みんなこんなに仲がいいとは思わなかったでゲソ」
ダー 「私たちは戦車道を志す者同士、前から多少なりの交流はありましたわ。ですが・・・・」
ケイ 「そうね。その結びつきがもっと強くなったのは、今年になってからだったわ」
チョビ「そうだな。そして、その結びつきを強固にしたのが__」
全員の目線がみほに向く。
みほ 「えっ、えっ?」
カチュ「とぼけちゃって。全部ミホーシャ中心なんだから!」
みほ 「わっ、私ですか!?」
うろたえるみほを、みんながにんまりと笑顔で返す。
イカ娘「ふむ、どうやら大洗の西住さんとみんなとは何かあったらしいでゲソね」
ダー 「ええ。一言では言い表せない、深い縁。とでも申しましょうか」
イカ娘「是非聞きたいでゲソ!」
ペコ 「そうですね。お話すれば長くなりますが、まずどこからお話したものでしょう」
まほ 「そこは、私から話そう」
みほ 「お姉ちゃん」
まほ 「気構える必要はない。これまでのみほの道に、恥じることなど一つもないのだからな」
そしてまほの話を皮切りに、各校とみほ、ひいては大洗との繋がりが語られ始めた。
ルク 「ダージリン様たち、思い出話に花が開き始めてるな」
アッサ「これまで色々あったもの。時には振り返ることも必要ですよ」
ニル 「私も大洗の人たちとはまた語らいたいですね。特にⅢ突のあの方たちと」
ルク 「お礼参りか?」
ニル 「もう!違いますよ!」
アリサ「私もいつかⅣ号にリベンジしたいわ。追いかけっこじゃなく、お互い正面きった勝負で、ね」
ルク 「私は・・・・いや、もう八九式はお腹いっぱいだわ」
アッサ「・・・・それにしても、ローズヒップはどうしたの?こういった席であの子が静かだなんて珍しいわね」
アッサムが周囲を見渡すと__
ローズ「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
ローズヒップはありとあらゆるテーブルを辺り歩き、皿に料理を乗せては平らげて回っている。
アッサ「あの子は・・・・!」
ニル 「ま、まあまあアッサム様、今日は無礼講ですし落ち着いて__」
アッサ「無礼講にも限度というものがあります!」
アッサムはローズヒップに近づき、制止しようとする。
ローズ「!」
そしてその動きを感知したのか、ローズヒップはいち早くその場から離脱する。
そしてアッサムがそれを追いかけ始めた。
栄子 「やあ、楽しんでる?」
栄子がルクリリたちに話しかける。
ニル 「はい。存分に楽しませていただいております。一部、楽しみすぎな方も・・・・」
アッサ「ローズヒップ!待ちなさい!ステイ!」
ローズ「もぐもぐもーぐもぐもぐ!」
アッサ「口に食べ物を入れて喋りながら走らない!」
逃げるローズヒップ。
追うアッサム。
アリサ「まるで犬ね」
栄子 「ははは・・・・」
はしゃぎすぎているローズヒップたちを見て苦笑する栄子。
小梅 「それにしても、本当に美味しいです。さすがアンツィオですね」
ペパ 「へへん!アンツィオとれもんの料理が合体すればこんくらいワケないね!」
沙織 「私もお料理には自信あったんだけど、これ見ちゃうと自信揺らいじゃうなぁ・・・・」
麻子 「心配するな。沙織の料理も十分うまい」
沙織 「うん、ありがと麻子。私もここでアルバイトしようかなー。そしたらもっと上手になるかも」
優花里「応援いたしますよ!」
華 「沙織さんのお料理がもっと美味しくなったら私通いつめちゃうかもしれません」
小梅 「私も是非ご相伴に預からせてください」
ペパ 「もしバイトするんなら、あたしらで千鶴さんに話し通しておくっすよ!」
麻子 「海の家にいれば、出会いもあるかもしれないしな」
沙織 「私、やる!海の家で運命の相手を見つけてみせる!」
ペパ 「あれ?料理の話はどこいったっすか」
やがて。
イカ娘「ほー。壮絶な話だったでゲソー」
イカ娘はみほの黒森峰の出来事から大学選抜とのエキシビションまでのあらましを聞き終えていた。
千鶴 「みほちゃんとみんなの絆は、こうして深まっていったのね。素敵だわ」
みほ 「あう・・・・」
みんなから思い出を存分に語られ、みほは顔を真っ赤にして俯いている。
イカ娘「みんなに慕われてうらやましいでゲソ。私も大勢の中の中心として君臨してみたいでゲソ」
チョビ「何言ってるんだイカ娘。お前はここではとっくにみんなの中心じゃないか」
イカ娘「え?」
みほ 「そうですね。海に来るの時、由比ヶ浜を選ぶのはイカ娘ちゃんとれもんがいるからですし」
ダー 「私たちが滞りなく同時に人数分の紅茶を用意できるのも、イカ娘さんの卓越した技術あってのことですわ」
ケイ 「うちのチームの子たちも、次はいつあなたと一緒に演習できるのか、楽しみにしてるのよスクイーディ?」
カチュ「イカチューシャの名前を冠する以上、人の上に立つのは当然ね!イカチューシャはプラウダにおける無二の存在でもあり、偉大な同志の呼び名なんだから!」
まほ 「君が思っているより、我々は君によって結びつく時がある。そしてこれからも、君を中心とした輪は広がっていくことだろう」
チョビ「そもそもお前があの時れもんの前にいなかったら、私たちはここにはいなかった。それこそ、お前が私たちの中心であることの一番の証明じゃないか」
イカ娘「・・・・!」
口々に褒められたり慕われたりしていることを聞き、イカ娘の顔が少し赤くなる。
千鶴 「あらあらイカ娘ちゃん。うふふ」
イカ娘「な、なんでゲソか!言いたいことがあればちゃんと言わなイカ!」
赤面したままわめくイカ娘を見て、一同は和やかに笑い声をあげた。
__その後も宴会は盛り上がり、やがて終わりの時間がやって来た。
チョビ「む、そろそろ終わらせないといけない時間だな。イカ娘、お前が締めの挨拶をしてくれ」
イカ娘「うむ!任せるでゲソ!__みんな、注目でゲソ!」
イカ娘は箱の上に乗り、一同の注目を集める。
そして、イカ娘は締めの言葉を放った。
イカ娘「いつか必ず、私がお主らを戦車道でも侵略してみせるでゲソ!覚悟するでゲソよ!はっはっは!」
栄子 「いろいろと台無しだろが!」
栄子の拳骨が落ちる。
イカ娘「痛っ」
かくして、みんなの笑顔と笑い声で会は無事終了した。
突如追加させていただきました『十校十色編』。
たくさんの方に見ていただき、話数も伸びてきた矢先に生じた問題を自己流に解決するために用意する運びとなりました。
その事情や意図するもの、それによる変更点などは活動報告の方に挙げさせていただきますので、お手数ですがお気にかかる方はそちらのほうもご覧ください。
そして、もう一つ企画していた『あれ』が、そろそろ展開できそうな運びです。