侵略!パンツァー娘   作:慶斗

49 / 104
第4話・貫き通さなイカ?

ある日の昼下がり。

いつもより厳しい顔をしている愛里寿が大学艦校舎の廊下を一人歩いていた。

と、前方に二人の人影が。

一人は愛里寿のチームに所属する隊員だ。

 

隊員A「あ、隊長おはようございます!」

 

気が付いた隊員が敬礼をする。

もう一人も生徒のようだが、隊員ではなかった。

 

愛里寿「おはよう」

 

そのまま脇を通り抜け、角を曲がる。

そのまま去っていこうとしたが__

 

学生 「ねえねえ、今の誰!?」

 

愛里寿のことを知らなかったらしい学生が隊員に話しかける。

その言葉に、思わず足を止める愛里寿。

 

隊員A「うん?島田愛里寿さん、ウチのチームの隊長さんだよ」

学生 「ええええ、あの子が島田愛里寿!?初めて見た!」

隊員A「あれ、知らなかったの?」

学生 「うん、話に聞いただけだったから。そっかー、今の子がそうだったのか。・・・・こんなこと言うのもなんだけど、けっこう怖い顔してるね。年下とは思えない」

愛里寿「・・・・」

 

角に隠れて話を聞いている愛里寿。

 

隊員A「ああ、近いうち大事な試合があってさ。それで今ピリピリしてるの」

学生 「そうなんだ。普段はもっとかわいいの?」

隊員A「そりゃもう可愛いってレベルじゃないわよ!普段はこう、胸元にボコのぬいぐるみ抱えてトコトコ歩いてるんだから!」

学生 「何それ!?超かわいいんだけど!」

隊員A「それにお部屋をちょっとだけ見たことあるんだけど、部屋もボコグッズだらけだし、それに何と言ってもあれよ!」

学生 「どれよ!?」

隊員A「試合中いつも隊長は後方指揮に回ってるんだけど、押され始めると隊長自ら前に出てくるのよ。ボコのテーマ口ずさみながら!」

学生 「はーーっ・・・・!たまんないわねそれ!」

隊員A「そうでしょそうでしょ!あれが見たくてチームにいるようなものだもの!」

愛里寿「・・・・」

 

話が進むにつれ表情が曇っていく。

 

学生 「そこばっかりは年相応__いえ、けっこう幼い部分があるのね」

隊員A「まあ、飛び級の天才と言っても隊長はまだ年端も行かない年齢だもの」

愛里寿「・・・・っ」

 

いたたまれなくなり、そこまで聞くと愛里寿は駆け出して行ってしまった。

 

隊員A「・・・・でもさ、息苦しい所もあると思うよ?天才とはいえ、同級生に同年代の子とかいなんだもん。だから、せめて戦車道やっているときは友達と思ってはもらえなくても、仲間と感じては欲しいかな、って」

学生 「あんたんとこのチーム凄い強いって有名だもんね。勝たなくちゃって気を張るところがあるかも」

隊員A「うん。だから隊長の心の支えになってるボコとか、みんなで理解していってあげないとね」

 

バタンッ

 

自室に戻ってきた愛里寿。

ベッドの上に置いてある、お気に入りのボコのぬいぐるみを手に取る。

 

愛里寿「・・・・」

 

そしてそれをじっと見つめた後__

 

ボフン!

 

クローゼットの中に投げ入れた。

 

イカ娘「書けたでゲソ!」

 

場所は変わり、由比ヶ浜の相沢家。

イカ娘は栄子の部屋で椅子に座り、いつものようにボコリスへの手紙を書き終えた。

 

栄子 「相変わらず書き終わるの早いな。またどうせ一行や二行程度しか書いてないんだろ。たまには相手のように二枚や三枚くらいになるように書いたらどうだ」

イカ娘「栄子は私を侮っているでゲソ。私の分には文字数以上に深い意味と感情が込められているのでゲソよ?」

栄子 「ほー。で?今回はどんな深い内容を書いたんだ」

 

ひょい、と手紙を手に取る。

そこには一行、

 

『お主、愛里寿でゲソか?』

 

と書かれていた。

 

栄子 「」

 

絶句してしまう栄子。

 

イカ娘「ふっふっふ、どうでゲソ。私の鋭い洞察と表現力が凝縮されたこのメッセージ!」

栄子 「いや、ダメだろ!」

イカ娘「何故でゲソ?きちんと意味は伝わっているじゃないか」

栄子 「だから、伝わっちゃダメだろ!」

イカ娘「?」

栄子 「『何訳の分からないこといってるんだ』みたいな顔するな!いいかイカ娘、文通ってのはお互いが望まない限り素性を明かさない、明かそうとしないのがルールだ。これみたいに相手の素性を探ろうなんてマナー違反もいいとこだぞ」

イカ娘「探ってないでゲソ。確固たる確信があってのことでゲソ」

栄子 「同じことだろ!__ていうか、なんで文通相手が愛里寿ちゃんだってわかるんだよ」

イカ娘「これを見るでゲソ」

 

イカ娘が取り出したのは、これまで文通してきたボコリスからの手紙。

 

イカ娘「よく読むと、ボコリスと知人の行動に心当たりがありまくりでゲソ」

栄子 (確かに、手紙の中では知り合いとかとしか書かれてないけど、お化け屋敷作りを手伝ったとかボコショーでボコに助けてもらったとか、挙句の果てにこないだ大会で組んで優勝して伊勢エビ食ったことまで書いてある)

 

イカ娘はどうだ、と言わんばかりの顔をしている。

 

栄子 (こりゃ確かに正体ばれてもしょうがないかもしれないが・・・・それにしても愛里寿ちゃんも語りすぎだろ。まあ、相手がイカ娘だと思ってなかったからなんだろうが・・・・)

イカ娘「じゃあ、手紙出してくるでゲソ!」

栄子 「ちょっと待て!」

 

さっさと投函しようとするイカ娘を咄嗟に引き留める。

 

イカ娘「何でゲソ。邪魔するなでゲソ」

栄子 「イカ娘、お前文通相手の素性を暴こうとすることの意味が分かってるのか?」

イカ娘「意味?お互いが誰かわかるのはいいことじゃなイカ」

栄子 「そうか、ならもう止めん。結果はきちんと受け止めるんだな」

イカ娘「どういう意味でゲソ」

栄子 「文通相手を暴こうっていうのは相手にとってものすごく不快なことだ。その結果文通を切られても文句は言えないからな」

イカ娘「えええええっ!?」

 

予想しなかった忠告に驚いて手紙を落とす。

 

イカ娘「そんなの嫌でゲソ!もっと文通したいでゲソ!」

栄子 「だからやめろって言ってんだよ。それでもいいならさっさと出してこい。ホレホレ」

イカ娘「やややややっぱりやめるでゲソ!正体なんてあばかないでいいでゲソ!きっとボコリスは愛里寿なんかじゃないでゲソ!」

 

慌てて手紙を破り捨てるイカ娘。

 

イカ娘「ふう・・・・」

栄子 「やれやれ」

 

危機一髪だったと胸をなでおろす栄子。

 

配達員「郵便でーす」

イカ娘「!」

 

階段を降りて手紙を受け取るイカ娘。

 

イカ娘「これは・・・・」

栄子 「誰からだ?またボコリスからか?」

イカ娘「いや・・・・なんだかいつもと違うでゲソ」

 

受け取った封筒はいつもの文通に使われる封筒だったが、差出人名義がボコリスではなかった。

 

千鶴 「この名義・・・・文通コーナーからだわ」

栄子 「文通コーナーからイカ娘に手紙?今までそんなことなかったよな」

 

封筒を開き、内容を読むと・・・・イカ娘は固まった。

そこには、

 

『申し訳ありませんが、文通登録されております『ボコリス』さまからのご要望により、文通のお取り扱いを終了とさせていただきます。またのご利用をお待ちしております』

 

とあった。

 

栄子 「どういうことだ・・・・?」

千鶴 「文通の関係を、向こうから切って来たということね」

イカ娘「どどど、どういうことでゲソ!?何で急に!?はっ、まさか私が正体を暴こうとしたから!?」

栄子 「いやいやいや、その手紙は出さなかっただろ。タイミングから見るに、それと文通終了の件は関係ないはずだ」

イカ娘「じゃあどういうことでゲソ!?どうしてボコリスは怒ってるのでゲソ!?」

栄子 「別に怒ってるとは断定出来ないだろ。家庭の事情、飽きた、文通を続けるのが難しくなった、理由はいくらでもある。まあ、もうやりとりできないから聞き出すのも出来ないけどな」

千鶴 「相手のプライバシーはコーナーの編集者がきちんと管理しているから、聞いても教えてもらえそうにないわ」

イカ娘「なら・・・・直接本人に問いただすでゲソ!」

 

そう言ってイカ娘は部屋を飛び出す。

 

栄子 「おいイカ娘!本人にってどうするつもりだ!」

 

場所は戻り、学園艦の愛里寿の自室。

部屋に足を踏み入れたバミューダトリオは、言葉を失っていた。

 

ルミ 「こ、これは・・・・」

 

愛里寿の部屋から、ボコグッズが一切姿を消していたのである。

 

愛里寿「ルミ、どうした?報告があるんでしょ」

ルミ 「はっ、はい!明日に控えたくろがね工業社会人チームとの試合に向け、各小隊の訓練成果をリストアップしてきました」

愛里寿「ではあとで目を通す。他には?」

ルミ 「えーっと、他には・・・・」

メグミ「あの、隊長・・・・」

愛里寿「何だ?」

アズミ「その、随分と部屋がすっきりしちゃったな~、っと・・・・」

愛里寿「ああ・・・・そのこと」

メグミ「どこへ仕舞われたんですか?増えてきちゃったから保管場所を用意したとか・・・・」

愛里寿「__もう必要ないから、処分したの」

ルミ 「は__」

 

言っている意味が理解できず、気の抜けた声しか出ない三人。

 

愛里寿「もう興味が無くなっちゃったの。卒業したって言うのかな。好きじゃなくなったってこと」

アズミ「えええええっ!?」

愛里寿「しばらくは戦車道にだけ集中する。他に質問は?」

ルミ 「い、いえ・・・・ありません」

 

駆ける言葉を見つけられず、ルミたちは足取り重く戻っていった。

 

愛里寿「・・・・」

 

ふう、とため息をつくと__

 

コンコンコン

 

外の窓を叩く音がした。

見ると、そこには__

 

愛里寿「イカ娘?」

 

触手を駆使し、外側から愛里寿の部屋へたどり着いたイカ娘がいた。

窓を開き、中へ招き入れる。

 

愛里寿「どうしたの?今日来るなんて言ってなかったけど」

 

イカ娘は何も言わず部屋を見渡し、ボコグッズが一切なくなっていることに気が付く。

驚いた表情を愛里寿に見せる。

 

愛里寿「ああ、ボコのぬいぐるみ?もう卒業したの。興味がなくなったから」

イカ娘「え!?」

愛里寿「いつまでも子供っぽい趣味だと思うし、もっと大人らしい趣味を持とうと思って。いい機会だから整理したの」

 

心苦しそうにしていたが、悟られないように平静を装いながら説明した。

 

イカ娘「ウソでゲソ」

愛里寿「・・・・嘘じゃない。本当に好きじゃなくなっただけ」

イカ娘「子供っぽいって・・・・本当にボコをそう思ってるのでゲソか?」

愛里寿「・・・・本当に思ってる」

イカ娘「信じされないでゲソ。あんなにボコが大好きだったじゃなイカ。ボコに囲まれて、とても幸せそうにしてたのに、それを手放してどんな意味があるというのでゲソ」

愛里寿「だから、大人になるんだからもう必要な__」

イカ娘「趣味で子供大人決まるんだったら、私は子供のままでいいでゲソ。大人になるためにボコを見捨てないといけないなら、私は子供のままでいいでゲソ!」

 

考えを変えない愛里寿に苛立ちを覚えたのか声を強める。

 

愛里寿「・・・・それじゃあ、私たちの関係も終りね」

イカ娘「!」

愛里寿「私はボコを卒業して大人になる。あなたはボコを捨てられずずっと子供のまま。だったら二人が対等な関係になんてなるはずもない」

イカ娘「あり__、・・・・わかったでゲソ。もういいでゲソ!ボコを裏切る愛里寿なんて、こっちから願い下げでゲソ!」

 

頭に来たイカ娘は怒りながら部屋から出ていった。

 

愛里寿「・・・・」

 

愛里寿は沸き上がる感情を必死に押さえつけるように、ポケットの中のものを強く握りしめた。

 

イカ娘「見損なったでゲソ。愛里寿があんなに白状だなんて思わなかったでゲソ!」

 

プリプリしながら廊下を歩くイカ娘。

 

アズミ「あら?イカ娘ちゃんじゃない、来てたんだ」

イカ娘「む?」

 

アズミの呼び声に振り向く。

 

イカ娘「ちょっと野暮用で愛里寿に会いに来たのでゲソ。・・・・まあ、もう用事はないのでゲソ」

ルミ 「あー・・・・もしかしてちょっと機嫌悪いのって、隊長のせいだったりするのかな?」

イカ娘「・・・・」

メグミ「あちゃー・・・・。隊長、イカ娘ちゃんにもあのままいっちゃったんだ・・・・」

イカ娘「もういいでゲソ。愛里寿と私は一生分かり合えない仲になったのでゲソ」

アズミ「まあまあ落ち着いて。今ちょっといろいろ立て込んでて隊長も気が立ってるのよ」

イカ娘「聞く耳持たないでゲソ。あやつとの友達関係はもう終わりでゲソ」

ルミ 「まあまあ・・・・あっ、そうだ!いいこと思いついた!ねえイカ娘ちゃん、ちょっと耳貸して」

イカ娘「?」

 

次の日。

 

審判 「ではこれより、大学選抜チーム対くろがね工業社会人チームの試合を始めます」

 

由比ヶ浜戦車道山岳エリアでは、愛里寿率いる大学選抜チームと、かつて大勝したくろがね工業社会人チームが整列していた。

木々が深く生い茂り、視界の悪い山になっている。

 

審判 「今回ルールは五十対五十の殲滅戦で行います。ただしプロリーグ設立へのデータ収集も目的ですので、試合時間は日没までの六時間。決着がつかなかった場合はお互いのチームの戦車の残数で決まります」

メグミ「殲滅戦でありながら制限時間付き、そして残数車両で勝敗を決する。これは速攻勝負をかけて殲滅するか守りを固めて数的有利を維持するか、判断の分かれどころね」

アズミ「どうであれ心配するほどじゃないわよ。なんてったってくろがねは私たちが大勝して注目をあびるようになった相手なのよ?」

ルミ 「そりゃそうだけど、どうにも気になるのよ。あれだけ大敗しておきながら、どうしてくろがねはまた私たちを相手に指名したの?それがどうにも気になって__」

 

そこまで言うと、ルミは敵陣を見て言葉を詰まらせた。

 

メグミ「ルミ?どうかした?」

ルミ 「ねえ、あそこ・・・・あの待機してる人、見覚えない?」

アズミ「えー?」

 

言われて目を凝らし、その人物をよく見る。

と、顔色が変わる。

 

アズミ「ねえ・・・・もしかしてだけど、あの人テレビで見たことない?」

メグミ「やっぱり!?私も気のせいかと思ったけど、あの人もしかして・・・・」

ルミ 「間違いないわ・・・・。ドイツのプロリーグで大活躍してる現役の選手よ!」

アズミ「ええええええ?!」

 

気が付いてみればあそこにもあっちにも、社会人チームのある程度のメンバーが外国プロリーグの活躍しているプロ選手にすり替わっていることに気が付いた。

 

徳川 「異議はありませんでしょう?彼女らは正式にくろがね工業の社員としてわが社に雇用されております。社員が会社に所属しているチームに加わっても何ら問題はないはずですが」

 

社会人チームの隊長・徳川や隊員たちが下衆た笑みを浮かべる。

そんな視線をあびせられようとも、愛里寿は全く動じなかった。

 

愛里寿「全く問題はない。さっさと始めて終わらせましょ」

徳川 「ぐっ・・・・!見てなさい島田流!大人の恐ろしさを嫌ってほど味わわせてやるわ!」

 

こうして各々自陣に配置に着いた。

 

愛里寿「全車両に通達。相手は社員と称し二割ほどプロの人間を紛れ込ませている。データにない車両には十分な注意を払え」

メグミ「了解!」

ルミ 「手段を問わない汚い大人に、我々の若い力を見せつけてやりましょう!」

愛里寿「アズミ中隊とメグミ中隊は、十両を率いて両舷を偵察。連絡を密にして動向を逐一報告しろ。くれぐれも数的優位にあっても気を抜くな」

アズミ「了解!」

愛里寿「ルミ中隊、十五両で中央へ。両弦より引いた位置に展開し、正面から来た敵を懐まで引き寄せろ。その場合、両弦から五両ずつ包囲に向けるのを許可する」

ルミ 「了解!プロを連れてきてまで勝とうとする連中に、大恥かかせてやりましょう!」

 

かくして試合が始まった。

指示通りに動くルミたち。

右舷は道なき道を木々を縫うように進み、周囲の警戒に全神経を集中している。

中央は山道も近く、開けた安定な道ではあるが、敵は見えてきていない。

左舷も間隔短く生え並んだ木々に苦戦し、思うように進めないでいる。

 

アズミ「それにしても」

 

最初に口を開いたのはアズミだった。

 

アズミ「隊長、どうしちゃったのかしら」

メグミ「ああ、ボコのこと?」

ルミ 「あれだけ可愛がって肌身離さずだったのに、あんなあっさり切り捨てちゃって」

アズミ「それに、なんだか最近とても背伸びしてるみたい」

メグミ「わかる。前から意識してる風に見える部分はあったけど、最近特に顕著だものね」

アズミ「イカちゃんも戸惑ってたし、西住さんとも繋がりが希薄になっちゃわないといいんだけど」

ルミ 「そうよねー・・・・。戦車道に集中するのもいいけれど、それ以外も楽しんだっていいのにね」

愛里寿「中隊、連絡はどうした。密にしろと言ったはずだけど」

アズミ「あああ、すいません!」

 

慌てて隊全体のチャンネルに切り替える。

 

ルミ 「こちら中央、未だ敵と遭遇はありません」

アズミ「こちら右舷、同じく敵は一切見えません。それどころか一切敵の気配を感じません。気味が悪いくらい静かです」

メグミ「油断しないで。向こうにはプロもいるんだし、どれだけ高度な手を打ってくるかもわからないわ」

 

と__

 

バアン!

ドゴオン!

ドオン!

バアアン!

 

突如無数の砲撃が左舷の方から響き渡り始めた。

 

メグミ「敵部隊と遭遇!迎撃します!」

 

即座に臨戦態勢を取るメグミ。

 

ルミ 「メグミが射程距離に入られるまで接近に気が付かないなんて・・・・」

アズミ「どうやら相手さん、本物のようね」

愛里寿「メグミ、状況を報告して」

メグミ「こちらメグミ車っ、現在敵とっ、右舷下がって!左も前に出すぎ!きゃあっ!」

 

愛里寿が無線を入れるが、どうにも返事がうまく帰ってこない。

 

愛里寿「メグミ?現状はどうなっている?」

 

だが無線から聞こえてくるのは隊員たちの悲鳴と歩やまない砲撃の音。

その音は戦車の外に出てもよく聞こえる。

 

愛里寿(メグミ中隊が集中砲火を受けてる。__でも、砲撃密度と頻度が尋常じゃない。隊を二つ三つに分けたところで実現できるものじゃない)

 

ただならぬ事態に、愛里寿は残りの待機車両を引き連れて左舷へと向かう。

 

愛里寿「メグミ、これからそちらに向かう。被害を最小限に食い止めつつ、少しずつ隊を南東へ向かわせろ」

メグミ「や、やってみます!」

 

メグミ中隊の援護のため森を駆ける愛里寿中隊。

 

愛里寿「ブッシュを警戒しろ。こちらの援護を読んだうえでの横撃も考えられる」

 

しかしメグミのことを考えると慎重に進むわけにもいかず、速度を上げて行進せざるを得ない。

と__

 

ガサササ

 

脇の茂みが揺れる。

罠の可能性を考え注意を向けながら警戒を怠らないでいると__

 

ブイイイン!

 

茂みの反対側から、見覚えのあるトルディが飛び出して来た。

 

愛里寿(やっぱり)

 

予測していた愛里寿は砲口をトルディに向ける。

が__

 

バッ!

 

さらに離れた場所から、迷彩カーテンに隠れていたズリーニィが姿を現す。

その照準はバッチリ愛里寿のセンチュリオンに合わせられている。

 

愛里寿「あなたたちがコンビなのは知ってる。いい三段構えだけど、知っている相手には効果がない」

 

読めていた、と瞬時に砲口をズリーニィに合わせる。

次の瞬間。

 

ブイイイイ!

 

さらにもう一両、警戒していなかった方角から戦車が飛び出して来た。

 

愛里寿(!?あれは・・・・ハンガリーのトゥラーン!?)

 

予想していなかった三両目により、センチュリオンは完全に側面を晒す形になってしまった。

 

愛里寿「しまった・・・・!こちらが向こうの構成を知っているうえでの四段構え!?」

 

バアン!

 

そしてトゥラーンの砲口が火を噴き、吸い込まれるように砲弾がセンチュリオンに飛んでいき__

 

ガッシイイイン!

 

愛里寿「!?」

 

突如別方向からの衝撃により車体がはじかれ愛里寿のセンチュリオンの軌道が変わり、砲弾がすんでのところで車体をかする。

驚いた愛里寿が見ると、そこにいたのは一両のパーシングだった。

 

バアン!

 

パーシングは即座に旋回すると、トゥラーンに砲撃。

が、向こうもも反撃を読んでいたのか、即座に転進し三両とも姿を消した。

ほっと一息つく愛里寿。

 

愛里寿「コンビじゃなくてトリオだった・・・・。あのときの大会の姿見せは、三両目の存在を隠すためのものだったのね・・・・」

 

助けてくれたパーシングにセンチュリオンを寄せる。

 

愛里寿「ありがとう、助かった」

 

パーシングの車長は顔は見せなかったが、キューポラから腕を突き出して親指を立てて見せた。

その腕には、見覚えのある青い腕輪がついていた。

 

メグミ「隊長!」

 

その後、メグミの隊と合流を果たした愛里寿たち。

 

愛里寿「メグミ、被害は」

メグミ「敵の猛攻により五両やられました」

愛里寿「敵の動向は?」

メグミ「それが、どうにも妙なんです」

愛里寿「妙?」

メグミ「私たちが会敵したとき、相手はとんでもない数を引き連れていました。それこそ・・・・三十両はいたはずです」

愛里寿「三十?戦力の半数以上を割いてきたということ?」

メグミ「それにひっちゃかめっちゃかに砲撃してきて、反撃のスキも与えてもらえない程でした」

愛里寿「・・・・でも、今は静かだけど」

メグミ「はい。そこがさらに奇妙なんです。私たち後退しながら応戦していたんですけど、ある特定の場所を境に追ってこなくなったんです」

愛里寿「特定の場所?」

 

離れた位置から双眼鏡を覗く愛里寿。

その先には、赤レンガで作られた大きな建物がそびえたっていた。

 

愛里寿「こんな山の中にあんな建造物が・・・・」

メグミ「敵はあそこを占拠するために進行していたみたいです」

 

しかし建物の周りに戦車は見当たらない。

 

愛里寿(三十両がかりで占拠したのに今はいない?いったいあそこに何があるんだろ)

 

極力音を立てず建物へ近づくら愛里寿ら一行。

建物のふもとにまでたどり着いたが、やはり戦車の気配すらない。

 

メグミ「何なんでしょうね、この建物。けっこう古いもののようですが」

 

センチュリオンから降り、建物へ近づいていく愛里寿。

 

メグミ「あっ、隊長!」

 

メグミの制止も聞かず、建物内に入る愛里寿。

建物内は古い造りなのか、電気の類は一切なく光源は高い位置に作られた窓からの光だけ。

そんな空間の片隅に、誰かが膝を抱えてうずくまっている。

それをしげしげと見つめていたが__

 

愛里寿「__小早川?」

 

声を掛けられた人物__社会人チームの一員である小早川が、一人うつろな顔でそこにいた。

小早川はかつて、大学選抜チーム対社会人チームの試合の時、大学側に内通して社会人チームを混乱の渦に巻き込んだ経緯を持っている。

 

小早川「島田・・・・愛里寿」

愛里寿「どうしたの?・・・・あまり、具合がよさそうに見えないけど」

小早川「まあ・・・・良くはないわね。ついさっき、人生が詰んだところだから」

愛里寿「__何があったの」

 

ふっ、と自嘲気味に笑った小早川は、ゆっくり口を開き始めた。

 

 

~~回想~~

 

それは、愛里寿たちがメグミ隊と合流する十五分ほど前。

残弾を考えない過度の弾幕により大学選抜チームを退けた後、社会人チームの面々は倉庫で呆然としていた。

 

宇喜多『どういうこと・・・・どういうことよ!』

 

中隊長・宇喜多のヒステリックな声が響き渡る。

 

隊員C『隊長!こっちも空です!』

隊員B『90mmや105mmはいくらでもあるのに、46.3口径や94mmはひとつもありません!』

隊員D『どうするんですか!?ここを占拠するためにほとんど砲弾は使い切っちゃいましたよ!?』

 

現状を報告され、キッと強い目線を小早川に向ける宇喜多。

 

宇喜多『どういうことか説明しなさい』

小早川『ど、どういうことって__』

宇喜多『砲弾はどこに隠したのよ!』

小早川『か、隠したってどういうことよ!』

宇喜多『この倉庫に砲弾を仕込んでおくのはあんたの班の役目だったでしょう!知らないとは言わせないわよ!』

小早川『ちゃ、ちゃんと仕込んだわよ!46口径も94mmも3ケタ単位でその木箱に__』

宇喜多『じゃあこれはどういうことよ!』

 

ガランガランガラン

 

宇喜多が乱暴に木箱をひっくり返すも、そこには何も入ってはいなかった。

 

小早川『そんな、いったいどうして・・・・』

宇喜多『・・・・もういいわ。退却するわよ』

隊員B『退却、ですか?』

宇喜多『砲弾の補給ができないとあれば、ここにいたら袋のネズミよ。何としても脱出して、本隊に合流するのよ。すぐ準備なさい』

 

指示を受け、バタバタと撤退の準備に入る隊員たち。

小早川も準備を始めようとするが__

 

宇喜多『何のつもり?』

小早川『何のつもり__って、撤退するんでしょう?私も__』

宇喜多『裏切り者を連れていく意義はないわ』

小早川『・・・・何を言って・・・・』

宇喜多『全く・・・・。前の裏切りを許す徳川も甘いけど。一度許されておきながら恩を仇で返すなんて、心底見下げ果てたわ』

小早川『そんな!私は隊長を裏切ってなんて__』

宇喜多『黙れッ!』

 

宇喜多の憎悪に満ちた目を見て、本気でそう思っていると捉えた小早川はその場に立ち尽くす。

 

宇喜多『今回の件、徳川によく言っておくわ。試合が終わった後の身の振り方・・・・よく考えておくことね』

 

そう言い残し、小早川のチームだけを残し残りは全て撤退していった。

 

~~回想終了~~

 

 

メグミ「__ちょっと待ってよ。この建物に補給の砲弾を隠してたってこと!?」

小早川「・・・・」

 

黙ってコクリと頷く。

 

メグミ「そんなの反則じゃない!戦車道規定に則れば、使用できる砲弾は車内に収納できる分及び弾薬庫のみ、例外として競技エリアとなった建物からの意図しない現地調達しか認められていないのよ!?」

愛里寿「偶然手に入れた体を装えば、相手より遥かに総合火力で上回ることができる」

小早川「・・・・今度の戦い、私たちはどうしても負けるわけにはいかなかった。どんな手を使ってもあなたたちを完膚なきまでに倒す必要があった。__だから私の部隊は密命を受けて、試合までにこの倉庫に十分な量の弾薬を持ち込んでおいたのよ」

愛里寿「それは何日前のこと?」

小早川「一週間前よ。ばれないように一定の量を運びこみ続け、目視で必要な量を蓄えたのを確認し、南京錠をかけて厳重に保管した。あとは試合当日にここを占拠し補給を行えば、間違いなく勝てる展開になるはずだった」

メグミ「確かに、あれほどの猛攻を仕掛けた後に十分な補給を受ければ、総火力で絶対とは言えずとも我々は窮地に立たされたはずです」

愛里寿「でも、なんで砲弾が消えたの?」

小早川「・・・・それがさっぱりわからない。確かに一週間前までは十分すぎる量があった。けど今は一発もない。宇喜多は、私がまた裏切って砲弾を運ばなかったと決めつけていたわ」

愛里寿「ここに砲弾が隠されていることは、もちろん私たちの誰も知らなかった。なら、我々でもなくそちらでもない、第三者が砲弾を持ち出したということになる」

小早川「・・・・もうそんなことどうだっていいわ。誰が持ち出してたって私が計画失敗したことに変わりはないんだから」

 

はあ、と小早川はため息をつく。

 

小早川「これでチームからの評価は最低ね。スタメンからも外されるわ」

 

すっと立ち上がる。

 

メグミ「どこへ行くの?」

小早川「隊長の所に戻るわ。大人として作戦失敗のケジメをつけないと」

愛里寿「でも・・・・戻ったら厳罰は免れないと思うけど」

小早川「そうだけど、ここで不遜な態度を取ったらそれこそ除名処分を受けかねないわ。格下扱いはされるだろうけど、辞めるわけにはいかないもの」

 

すると__

 

イカ娘「わからないでゲソ」

 

愛里寿の後ろから、イカ娘の声がした。

 

愛里寿「イカ娘!?」

 

思いもよらない人物の登場に目を丸くする愛里寿。

 

イカ娘「そんなつらい思いまでして、仲間に見下されてまで、どうしてやろうと思うのでゲソ。ぜったいそんなの楽しくないでゲソ」

小早川「子供にはわからないわよ。大人には、歯を食いしばって我慢しててでも食いつかないといけないモノってものがあるのよ」

イカ娘「ぜんぜんわからないでゲソ。嫌なものはやらなきゃいいでゲソ。やりたくないことを我慢してまでやろうだなんて、バカのすることでゲソ」

小早川「っ!あんたなんかに何が分かるのよ!戦車道はね、綺麗ごとだけじゃやっていけるもんじゃないのよ!」

 

怒りをぶつけるが、イカ娘は動じない。

 

イカ娘「私は戦車道がをやりたいからやってるのでゲソ。戦車道が楽しいからやるのでゲソ。ボコも好きでゲソ。好きなものは好きだから楽しみたいでゲソ。嫌いなものは嫌だから近づきたくないでゲソ。そんなことくらい、海に住んでいなくったってわかるはずでゲソ」

愛里寿「・・・・」

イカ娘「好きなものを手に取らないで、嫌いなものにかじりつく。そんなことをするやつをバカと言って何が悪いのでゲソ」

小早川「・・・・私だって・・・・」

 

絞るように声を出す。

 

小早川「私だって、戦車道が大好きだったわよ!いえ、今だって大好きよ!でも、戦車道優待でくろがねに入って、所属チームに加わった以上は勝たないと許されない。勝てない選手は試合に出させてもらえない。戦車道をやりたいなら、目をつむってかじりつくしかないじゃない!」

 

そこまで言うと、小早川はさめざめと泣きだしてしまった。

 

小早川「私だって・・・・あんたみたいに素直に言ってみたいわよ・・・・。誰に言われたって、好きなんだからそれでいいって、周囲なんて気にせず心から楽しみたいわよ・・・・。どうして、どうしてこうなっちゃったのよ・・・・」

愛里寿「・・・・」

小早川「好きなものを堂々と好きって言えないことが、こんなに辛かっただなんて・・・・」

 

小早川に同情したメグミが、肩に手を置く。

 

『もう興味が無くなっちゃったの。卒業したって言うのかな。好きじゃなくなったってこと』

 

愛里寿はメグミたちに言い放った言葉を思い出し、ポケットの中にあるものを握りしめる。

 

ドオオン!

 

外から響く轟音にはっとする愛里寿。

 

メグミ「外の見張りから通達。どうやら本隊が近づいているようです」

愛里寿「どうやらそのようね。各自、砲弾の補充は済んでる?」

メグミ「はい。全車両、砲弾の数はマックスにまで回復しています」

 

隊員たちは倉庫にあったパーシングとチャフィー用の砲弾を運び終えていた。

 

愛里寿「なら、ここにはもう用はないわ。打って出ると全員に伝えなさい」

メグミ「はいっ!」

 

メグミが走り去り、各隊員たちも各々外の戦車に戻っていく。

建物内に残っているのは、愛里寿とイカ娘、小早川だけになった。

 

愛里寿「小早川、私たちは行くわ」

小早川「そう。あなたたちがあいつら相手にどれだけできるかわからないけど・・・・せいぜい頑張りなさい」

愛里寿「そうね。・・・・『楽しみながら』相手するとしましょ。イカ娘」

イカ娘「何でゲソ」

愛里寿「あなたの乗っていた戦車は・・・・あれでしょ?」

 

愛里寿は先ほど自分をかばったパーシングを示す。

 

イカ娘「うむ。昨日、ルミたちに誘われてチームに混じったのでゲソ。オープンキャンパスの、戦車道体験?とかに参加していることにすれば問題ない、とかなんとか言ってたでゲソ」

愛里寿「いい動きをしてた。このまま行けるならいっしょに来て。ついてこれるならだけど」

イカ娘「侮るでないでゲソよ?愛里寿くらいの動き、簡単について行ってやるでゲソ!」

愛里寿「なら、後ろは任せる。行こう」

イカ娘「うむ!」

 

かくして各自車両に乗り込み、建物を後にした。

倉庫から出てきた小早川は一人、去っていく愛里寿たちの後姿を見送っていた。

 

ドオン!

ドゴオン!

バゴオン!

 

先ほどのお返しと言わんばかりに、補充を終えたパーシングやチャーフィーたちが盛大に火を噴く。

打って変わった猛攻にたじろぎ、次々に撃破されていく社会人チームの戦車。

砲弾も底をつき始めたのか、反撃も出来ずただ後退する車両も多く見え始めている。

だがそんな中、砲弾をかいくぐり、的確な射撃と運転技術で愛里寿たちに迫る戦車も少数ながら存在している。

 

イカ娘「あ奴ら、滅茶苦茶動きがいいでゲソ!」

愛里寿「あれはきっと助っ人のプロ選手。それに弾薬にも余裕があるみたい。つまりあいつらの策には乗っていなかったってこと。むこうのチームも一枚岩じゃないらしい」

 

そこへルミたちから通信が入る。

 

ルミ 『こちらルミ中隊、横撃に成功!敵長砲身の部隊を無力化しました!』

アズミ『こちらアズミ中隊、本隊への背撃に成功。ひっちゃかめっちゃかにしてま~す♪』

 

相手の配置が把握できたこともあり、ルミたちが奇襲を成功させていく。

 

イカ娘「このまま行けば勝てるでゲソ!」

愛里寿「油断しないで。残りの大半はプロ選手。下手をしたら私たちが寄ってたかっても勝てない」

イカ娘「じゃあどうするのでゲソ?」

愛里寿「今回のルールは時間制限付きの殲滅戦。時間切れになれば戦車の残数で勝敗が決まる。数的有利はこちらにあるから、防御を固めて被害を極力抑えればおのずと勝てる」

イカ娘「消極的でゲソね」

愛里寿「確実に勝つためにはこれしかないでしょ」

イカ娘「でもそれって、楽しいのでゲソ?」

愛里寿「・・・・」

 

しばらく黙っていたが__

 

愛里寿「じゃあ、行ってみる?」

 

にこっとイカ娘に笑いかける。

 

イカ娘「そう来なくっちゃでゲソ!愛里寿と二人なら、相手がプロだって問題ないでゲソ!」

 

にっこりと笑いあい、二人は肩を並べるように最前線へと身を投じるのであった。

そして__

 

ピピーッ

 

審判 「時間切れ、試合終了!__統計により、大学選抜チーム残数十、くろがね工業チーム残数九。よって、大学選抜チームの勝利!」

 

わああっ!と上がる歓声。

そんな盛り上がりの中、愛里寿とイカ娘は横並びになった戦車の上で寝転がっていた。

どちらの戦車からも白旗が上がっている。

 

愛里寿「ギリギリ勝てたみたいだね」

イカ娘「やはり最後にプロを一人倒せたのが大きかったでゲソ」

愛里寿「その代わり二人ともやられちゃったじゃない」

イカ娘「それまでに十両倒せたんだから、結果オーライじゃなイカ」

愛里寿「こんな知波単みたいな戦い方して、あとでお母様に叱られちゃうかも」

イカ娘「後悔してるのでゲソ?」

愛里寿「ううん。__こんな戦車道、久しぶりだった。とっても楽しかったよ」

イカ娘「うむうむ、楽しいのが一番でゲソ」

 

笑顔で頷くイカ娘を横目に見ながら、ポケットをまさぐる。

その中から取り出したのは、とても小さなボコのストラップだった。

 

愛里寿「急に大人になろうなんて無茶な話だったね。私は私のまま歩いて行かないと」

 

それをぎゅっと握り、胸に抱える愛里寿だった。

数日後。

 

イカ娘「愛里寿!遊びに来たでゲソよ!」

 

イカ娘が窓を開け愛里寿の部屋へ入ってくる。

愛里寿の部屋はボコグッズが置かれ、元通りの部屋になっている。

 

愛里寿「いらっしゃい、イカ娘」

イカ娘「新しい江の島限定ボコが出てたでゲソよ」

 

イカ娘がしらすを抱いたボコのぬいぐるみを差し出す。

 

愛里寿「わあ、かわいい!」

 

愛里寿は読んでいた手紙を机に置き、ぬいぐるみを受け取る。

 

イカ娘「む?それは例の文通相手からの手紙でゲソか?」

愛里寿「うん。ちゃんと謝って文通再開のお願いしたら、快く受けてくれたよ」

イカ娘「懐が広い相手でよかったでゲソね」

 

うんうんと頷くイカ娘の姿にくすっと笑みがこぼれる愛里寿。

 

イカ娘「む?どうしたのでゲソ」

愛里寿「ううん、何にも」

 

愛里寿はボコのぬいぐるみを抱きながら笑顔で答えるのだった。




自分が好きでたまらないものを他人に否定されたとき、その熱が冷めてしまうこともあるかもしれません。
そんな時、好きなものは好きなんだからいいじゃないか、と言い返せる心の強さを持ちたいものですね。

そういえば、あと一か月で大洗のあんこう祭りですね。
自分は行ったことありませんが、今年はどれほどの盛り上がりになるのでしょうか?
あんこう祭りのためだけに電車のダイヤも変わるほどと言いますし、今年もすごい規模になるのではないでしょうか。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。