侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。

バミューダトリオ→バミュ


第2話・抜け出さなイカ?

由比ヶ浜沖に停泊している大学学園艦。

その学生寮の一室が愛里寿の自室となっている。

部屋はボコグッズや戦車の模型が数多く飾られ、好きなものに囲まれた快適な部屋に見えるが__愛里寿の顔は暗い。

机に突っ伏し、小さなボコのぬいぐるみを手でいじりながら浮かない顔をしている。

 

コンコン

 

千代 「愛里寿」

 

千代がドアをノックして入ってくる。

 

愛里寿「お母様」

千代 「・・・・、これから、少しだけ(・・・・)陸に出て戦車道連盟の方と会議をしてきます。いい子で待っていてね」

愛里寿「はい。・・・・行ってらっしゃいませ、お母様」

千代 「お土産、買ってきますからね」

 

千代は最後まで愛里寿に視線を向けながら、ゆっくりとドアを閉めた。

はあ、とため息をつく愛里寿。

窓の外は海、そして由比ガ浜の海岸が広がっているが、あまりにも遠く感じる。

 

愛里寿「・・・・退屈」

 

愛里寿はぽつりと呟いた。

そんな一連の様子をのぞき見していたバミューダトリオ。

 

ルミ 「隊長、憂鬱そうね」

メグミ「そりゃそうでしょ、ここんとこ戦車道の訓練以外じゃ部屋の外にも出れてないんだもの」

アズミ「あれじゃほとんど軟禁よね。隊長、可哀そうに」

 

先日の愛里寿の書置き騒動。

チームの間では『探さないでください事件』と言われているあの騒ぎは、千代の愛里寿への過保護を強めてしまっていた。

 

メグミ「いくら心配だったからって、どこにも行かせられないっていうのはたとえ家元でもやりすぎよね」

ルミ 「言葉や行動で縛ったりはしないけど、ちょっとでも姿が見えなかったりすると取り乱しちゃうんだもの」

アズミ「あれじゃ、気まずすぎて隊長もうかうか出かけられないわよ」

ルミ 「メグミ、ちょっと家元に掛け合って改めていただけるよう言ってちょうだいよ」

メグミ「何で私なのよ!ルミが行きなさいよ!」

ルミ 「嫌よ!私まだ死にたくないもの!」

メグミ「そんな厄介な役目人に押し付けようとしないで!」

 

ギャーギャーとかしましいだけで解決策が出せない状況にやきもきするバミューダ。

 

アズミ「結局のところ__今の隊長のためになるのは、これだけというのが悔しい話だわ」

 

アズミはすっ、と封筒を取り出す。

 

コンコン

 

愛里寿「どうぞ」

 

ノックの音に突っ伏したまま返事を返す愛里寿。

 

ルミ 「失礼します、隊長」

 

そのまま部屋に入る三人。

 

愛里寿「何かあったの?今日の練習は休みのはずだけど」

メグミ「いえ、隊長にお届け物です」

愛里寿「私に?」

アズミ「はい、隊長。先ほどこちらに着いたばかりですよ」

愛里寿「!」

 

そう言って封筒を差し出すアズミ。

その封筒は愛里寿にとって見なれた、待ちわびたものだった。

急に目を輝かせ、たたた、と駆け寄って封筒を受け取る。

 

メグミ「では隊長、私たちはこれで」

ルミ 「私たちは寮内にいますので、何かあったらお知らせください」

愛里寿「うん__ありがとう」

 

去り際の三人に、愛里寿は元気が出たように笑顔を向けた。

 

パタン

 

ルミ 「良かった、少し元気出たみたい」

メグミ「やっぱりあの手紙は効果てきめんみたいね」

アズミ「私たちにも普段からあんな可愛い顔見せてくれないんだもの。ちょっと妬けちゃうわね」

メグミ「それにしても、手紙ひとつで隊長をあれだけ元気にできるなんて・・・・何者なのかしら、『エビカマボコ』って」

 

ポスン

 

愛里寿はベッドに転がりながら封を開ける。

そこにはエビカマボコからの文通の返事が入っていた。

 

手紙 『ボコリスよ、元気でやっているでゲソか?こっちはこないだキャンプに行ってきたでゲソ。そしたら、夜に熊が出たのでゲソ!じっとしていたらどこかへ行ったのでゲソが、同じクマでもボコとは大違いでゲソ!ボコと言えば、この間友達がご当地のボコを__』

愛里寿「キャンプ・・・・」

 

ベッドで横になりながらつぶやく。

キャンプどころか外へも出られない状況を思い出してしまい、再び気が落ちる。

 

愛里寿「・・・・ううん、気を落とさないようにしないと。いつまでもこのまま、なんてある訳ないし・・・・」

 

しばらくして、愛里寿は返事を書くべく机に向かうのだった。

数日後、相沢家にて。

 

イカ娘「返事が来たでゲソ!」

 

イカ娘の元に、ボコリスからの返事が届いた。

リビングでわくわくしながら手紙を取り出す。

 

栄子 「おお、もう返事来たのか。向こうも筆マメだな」

イカ娘「む」

千鶴 「どうしたの?」

 

手紙を読むにつれイカ娘がちょっと難しい顔をする。

 

イカ娘「どうやら、ボコリスはちょっとした事情で今外に出かけられないそうでゲソ。キャンプがうらやましいって書いてあるでゲソ」

栄子 「ありゃ、前に出した手紙はキャンプについてだったな。ちょっとタイミング悪かったか」

イカ娘「悪いことしたでゲソ」

千鶴 「知らなかったのだから仕方のないことよ。それを引きずらず、別の明るい話題を振るのがいいと思うわよ」

イカ娘「うむ」

 

しばらくテーブルに向かって手紙の内容を考えるが、

 

イカ娘「うまいのが思いつかないでゲソ」

 

苦戦している。

 

栄子 「話題を選んで書くと、途端に難しくなるのな」

イカ娘「うーむ」

 

触手をうねうねさせながら返事を一生懸命考えるイカ娘。

 

千鶴 「あっ」

 

千鶴が小さく声を上げる。

 

千鶴 「イカ娘ちゃん、絵を送ったらどうかしら」

イカ娘「絵を?」

栄子 「おお、そりゃいいな。趣味の話題とかに出来るし、それなら喜んでもらえるかもしれないな」

イカ娘「どんな絵がいいのでゲソ?」

千鶴 「一般的なのは、風景や似顔絵かしら」

イカ娘「似顔絵でゲソか」

栄子 「自分や相手の顔がベストだろうな。自分の絵を描いてもらうのって、けっこう嬉しいもんだぞ」

イカ娘「でも、私はボコリスの顔を知らないでゲソ」

栄子 「あ、そか」

千鶴 「文通の規約にも、自分の身分や素性を知らせる行為は控えましょう、とあるわ。似顔絵は難しいわね」

イカ娘「うーむ、となると・・・・」

栄子 「あるじゃんか、お前たちの共通で最大のモンが」

イカ娘「む?」

 

一時間後。

 

イカ娘「出来たでゲソー!」

栄子 「あん?」

 

そこには、丸と丸で構成された丸々とした何かが描かれていた。

 

栄子 「何だこりゃ」

イカ娘「言われた通り、ボコでゲソ!」

栄子 「お前手で描いたな?ただの丸の集まりにしか見えねえよ」

イカ娘「むむ・・・・」

千鶴 「やっぱり、触手で描いた方がいいんじゃないかしら」

 

千鶴のアドバイスを受け、触手でボコを描く。

 

イカ娘「完成でゲソ」

栄子 「おお・・・・」

千鶴 「凄いわね」

栄子 「相変わらず高すぎるレベルだよな・・・・。あれ?そういえばこのボコ、そのまんまだな」

イカ娘「どういうことでゲソ?」

栄子 「お前、前描いた時は『触手は繊細だから感じたままを描いてしまう』って、私たちをヘンな風に描いてたじゃんか。ボコはそんな風にならないのか?」

イカ娘「ボコはボコのままだからいいのでゲソ。ボコを強くしたり、無傷な風に描いたらボコの魅力が半減するのでゲソ」

栄子 「相変わらずお前らのボコ基準はわからん」

 

かくして、郵送。

そして__

 

アズミ「隊長、お返事きましたよ」

愛里寿「!」

 

手紙を受け取り、いそいそと開ける愛里寿。

 

愛里寿(あれ?手紙と・・・・もう一枚、紙がついてる?)

 

その紙を広げてみる。

 

愛里寿「!これって・・・・」

ルミ 「うわっ、何ですかその絵!?」

メグミ「写真?・・・・ううん、これ、鉛筆で描いてますよ!?」

アズミ「ウソッ!?これ、手で描いたの!?」

 

そこには、まるで写真に撮ったかのような生き写しのボコが描かれていた。

松葉杖をつきながらギブスで固めた手でシャドーボクシングするボコは、まるで今にも動き出しそうなほどのリアリティを感じさせる。

 

愛里寿「すごい・・・・。まるで生きてるみたい」

アズミ「隊長のお友達、すごい特技をお持ちなんですね」

ルミ 「いや、素人じゃないってこれ。もしかしてプロかなんかなんじゃないの?」

メグミ「一体何者なの、エビカマボコ・・・・!」

 

愛里寿は嬉しそうに、その絵を抱きしめた。

 

イカ娘「喜んでくれたみたいでゲソ」

千鶴 「それは何よりね」

 

すぐに返って来た返事には、驚きと称賛、そして溢れる感謝が書き綴られていた。

それからというものイカ娘は返事に描いたボコの絵を同封するようになり、それが愛里寿の心の支えになっていた。

そんなある日のこと。

 

愛里寿「えっ?お母様が?」

ルミ 「はい。どうやら遠出しなくてはならない用事らしく、帰るころには夜更けになるそうです」

アズミ「順調にいってそれですから。もし時間がかかれば、お泊りになる可能性も出てきます」

メグミ「つまり、明日は日中家元が県内にいらっしゃらない、ということです!」

愛里寿「それって、つまり・・・・!__でも・・・・」

 

バミューダの言いたいことを察するが、もしもを考えると一歩を踏み出せない愛里寿。

 

アズミ「大丈夫ですよ隊長、私たちも同行することになっているんです」

メグミ「帰るころになったらすぐ連絡しますし、帰り始めたら一時間以上かかる距離です。連絡を受けてから戻られれば、余裕で間に合います」

愛里寿「でも、それがお母様に気づかれたら、三人が__」

ルミ 「確かに家元には御恩があります。ですが、私たちは副隊長。隊長の望みを叶えるのが役目です!」

愛里寿「ルミ・・・・」

 

しばらく考え込んだ愛里寿。

そして、__

 

千代 「では、参りましょう」

バミュ「はっ!」

 

千代とバミューダトリオは、目的地に向かうため車に乗り込んでいった。

それを窓から見届けた愛里寿。

 

愛里寿「・・・・よしっ」

 

一時間後。

 

愛里寿「綺麗な海・・・・」

 

次の日、愛里寿は由比ガ浜の海岸に水着で佇んでいた。

ボコデザインの浮き輪を身にまとい、耐水仕様のボコのぬいぐるみをお供に付けている。

 

愛里寿(みほさんたちは、招待された高校でデモンストレーションがあって今日一日手が離せない、と言っていた。・・・・残念だけど、私のワガママでみほさんを振り回すわけにはいかないし)

愛里寿「今日は二人で楽しもうか、ボコ」

 

気を落とさないよう気丈に振る舞いながら、愛里寿は持って来たボコのぬいぐるみに語り掛けた。

 

愛里寿「・・・・」

 

浮き輪で浮かびながら波に揺られる愛里寿。

しかしその表情は浮かない。

 

愛里寿(せっかく出られた外なのに、結局一人ぼっち・・・・)

 

更に自分のために叱られる危険を覚悟で手伝ってくれたバミューダトリオや千代が気がかりで、純粋に遊べない。

やっと出られた外であったが、愛里寿の心は晴れなかった。

 

愛里寿(・・・・もう戻ろうかな)

 

と、早々と海からあがろうと浮き輪を掴むと・・・・

 

愛里寿(・・・・?誰?)

 

愛里寿が着替えや荷物、お気に入りのボコのぬいぐるみなどをまとめて置いているシートの所に、男が一人いるのが見えた。

キョロキョロと周囲を見渡したかと思うと__

 

バッ!

 

何と愛里寿の荷物を無造作に抱え込み、そのまま走り去っていった。

 

愛里寿「!ちょっと、待って!私の荷物!」

 

大声を上げるが男は立ち止まらない。

愛里寿はまだ海にいるため、急いで駆け寄ろうにも上手く走れず追いかけられない。

みるみる男の姿が小さくなっていく。

 

愛里寿(やだ・・・・!あのバッグには、みほさんと一緒に買ったボコや、エビカマボコさんに描いてもらった絵も入ってるのに・・・・!)

愛里寿「返して・・・・、返してよー!」

 

力いっぱい叫ぶと__

 

しゅるっ!

 

どこからか青く長い物体が伸びてきて、男を締め上げる。

 

男  「ぐえっ!」

 

身動きを封じられた男が荷物を落とす。

慌てて駆け寄る愛里寿。

その場にたどり着いた時、男は触手でがんじがらめになってその場に転がっていた。

先に駆けつけていた栄子が散らばった荷物を集めている。

 

愛里寿「ごめんなさい、それ、私の・・・・」

 

おずおずと話しかける。

 

栄子 「ああ、これ君の?もしかしてと思ったけど、やっぱり置き引きだったのか」

愛里寿「はい。まさか盗まれるなんて思わなくて・・・・」

栄子 「ここいらはそんなに治安悪いわけじゃないけど、ちゃんと管理してないとこういうのがたまに来ちゃうからね」

愛里寿「ごめんなさい、いつもこういう時は誰かが荷物を見ててくれたから・・・・」

 

自分が遊んでいる間、荷物を見ていてくれた千代やバミューダトリオを思い出す。

 

イカ娘「まったく、危機感が無いでゲソ」

愛里寿「え?」

 

振り向くと、男を縛った状態を維持しながらイカ娘が近付いてくる。

 

イカ娘「自分の身は自分で守る。そんな海では当たり前のこともできないから人類は愚かなのでゲソ」

栄子 「陸では全然身を守れてないお前が言うな」

イカ娘「それは別問題でゲソ!」

愛里寿(ゲソ?)

 

覚えのある口癖に、愛里寿はまじまじとイカ娘を見る。

 

イカ娘「どうしたのでゲソ?」

愛里寿「あっ、ううん。__ありがとう、荷物を取り戻してくれて」

イカ娘「海を守るものとして当然じゃなイカ。いくらでも感謝して構わないでゲソよ」

栄子 「調子に乗るな」

イカ娘「あ痛っ」

 

栄子のゲンコツが落ちる。

 

愛里寿(・・・・変な子)

栄子 「ホレ、さっさと犯人をお巡りさんに引き渡してこい」

イカ娘「むう、分かったでゲソ」

 

イカ娘は置き引き犯を宙づりにしながら蛍子に犯人を引き渡しに行った。

 

栄子 「大丈夫?荷物は全部ある?」

愛里寿「あ、はい、たぶん全部あるかと__あっ」

 

パサッ

 

バッグの中身を確認していると、中から紙が一枚落ちてしまう。

 

栄子 「あっ、何か落ちたよ」

 

栄子がひょいっと拾うと__

 

栄子 (・・・・ん?)

 

それは愛里寿が持ってきた、エビカマボコに貰ったボコが描かれた紙。

栄子はその絵に見覚えがあった。

 

栄子 (これって、もしかして__)

愛里寿「あっ、すいません」

 

すぐに気が付いた愛里寿に絵を返す。

大事そうにバッグにしまう愛里寿。

 

栄子 (今のって、イカ娘がボコリスに送った絵だよな?どうしてこの子が持ってるんだ?__もしかして)

 

すぐに栄子は察しが付く。

 

栄子 「ねえ君、お昼まだじゃない?」

愛里寿「えっ?はい、まだですけど」

 

急に話題を振られて戸惑う愛里寿。

 

栄子 「ウチ海の家やってるんだけどさ、よかったら寄って行ってよ。特別に割引もするからさ」

愛里寿「えっと・・・・。じゃあ、お言葉に甘えて」

 

誘いに乗った愛里寿は、栄子に連れられ海の家れもんを訪れた。

ふと、店の脇に停めてあるチャーチルに目が向く。

 

愛里寿「あ、チャーチル」

栄子 「ああ、ウチ店で戦車道チームやってるんだ。あれはウチの戦車」

愛里寿「へえ・・・・」

 

海の家と戦車という珍しい組み合わせに少し目を奪われる愛里寿だった。

 

千鶴 「あら、いらっしゃい」

 

店に入ってすぐ、千鶴が声をかけて来る。

 

栄子 「ただいま姉貴。あとお客さん一名!」

千鶴 「あらあら。好きな席に座ってね」

愛里寿「あ、はい」

 

促され、入り口近くの席につく。

 

千鶴 「栄子ちゃん、置き引き犯は?」

栄子 「さっきイカ娘が捕まえてお巡りさんに引き渡しに行ったよ。荷物も無事だった」

千鶴 「そう、それはよかったわ」

愛里寿「その節は、お世話になりました」

 

愛里寿が頭を下げる。

 

千鶴 「かしこまらなくてもいいのよ。こういうのを防ぐのも地元としての使命だもの。それより、ご注文は?」

愛里寿「あ、えっと、カレーライスで」

 

千鶴がさっと仕上げてカレーが運ばれる。

一口食べる。

 

愛里寿「あっ、おいしい!これ、凄くおいしいです!」

千鶴 「ふふっ、お口に合って何よりだわ」

 

夢中になってカレーを食べる愛里寿。

そこへ__

 

イカ娘「戻ったでゲソよー」

 

イカ娘が帰って来た。

 

栄子 「おう、おかえり。犯人はちゃんと引き渡せたか?」

イカ娘「引き渡すとき古川さんちょっと逃がしかけてたけど、捕まえなおしたから大丈夫でゲソ」

栄子 「相変わらずだなあの人・・・・」

イカ娘「む。お主、来てたのでゲソか」

 

と、カレーを食べている愛里寿に気が付く。

愛里寿もイカ娘に気が付き、ぺこりと頭を下げる。

しばらくして。

愛里寿とイカ娘はテーブルを挟んで自然と会話し始めた。

 

イカ娘「ふむ、愛里寿というのでゲソか。一人で来てたのでゲソ?」

愛里寿「うん、他の人たちはちょっと用事があって」

 

抜け出してきた、とは言えず誤魔化す。

 

愛里寿「・・・・」

 

愛里寿はじーっとイカ娘を見つめる。

 

イカ娘「?どうしたのでゲソ?」

愛里寿「あっ、ううん、べつに」

イカ娘「ふむ」

 

そんな二人を遠巻きに見ている栄子と千鶴。

二人に聞こえないようにこっそり話す。

 

栄子 「なあ姉貴、あの子って__」

千鶴 「そうね。__島田愛里寿。十三歳で大学に飛び級して、大学選抜チームを率いる隊長さん。まさかうちに来てくれるなんて驚きね」

栄子 「ええっ!?そうなのか!?あの子が島田愛里寿!?」

千鶴 「あら、知らなかった?それじゃあ、何を言おうとしたの?」

栄子 「あの子さ、盗られた荷物の中に絵があったんだよ。それがさ__イカ娘が、文通相手に送った絵みたいだったんだよ」

千鶴 「えっ?それじゃあ・・・・」

栄子 「あの子が『ボコリス』かもしれない」

 

顔を見合わせて愛里寿を見つめる。

 

愛里寿「外にあったチャーチル。あれ、あなたも乗ってるの?」

イカ娘「いかにも!何を隠そう、私が車長でゲソ!」

 

えっへん、といわんばかりに胸を張るイカ娘。

 

愛里寿「あなたが車長?・・・・そう」

イカ娘「むっ、何でゲソその反応」

愛里寿「別に。ただ・・・・随分雑な使い方してるな、って」

イカ娘「どういう意味でゲソか」

 

二人の間に何やら険悪な雰囲気が漂う。

 

愛里寿「さっきちらっと見たけど、車体が傷だらけ。履帯も何度も切れた後が見受けられるし、砲身も少し曲がってる。相当被弾してる証拠だし、傷がそのまま残ってるってことは手入れが行き届いていないってこと。少なくとも戦車を大事にしていないってことだけは分かる」

イカ娘「聞き捨てならないでゲソ!私はチャーチルを大事に思ってるでゲソ!大事な相棒でゲソ!」

愛里寿「ちっともそうは見えない。仮に思ってても、思ってるだけ。実際にメンテナンスチェックや、修理をしたことあるの?」

イカ娘「うっ、それは__」

 

イカ娘が言葉に詰まる。

修理はその場しのぎが多く、修理はたまにレオポンさんチームにメンテナンスしてもらうくらいで、ほぼ放置してしまっている。

 

愛里寿「戦車道は乗って戦うだけじゃない。戦車を自分の一部同然として、次の試合に向けて万全に仕上げるのも腕前の一つ。それを怠っているようじゃ、いい車長なんて呼べるわけがない。何か間違ってる?」

イカ娘「ぐぬぬ・・・・!」

 

理路整然と戦車道理論を語る愛里寿に言い返せないイカ娘。

そんな二人を、栄子たちは違った意味でハラハラしながら見ている。

 

栄子 「何だかものすごく険悪だな・・・・。いっそお互いの正体を教えたほうが円満に解決するんじゃないか?」

千鶴 「待って栄子ちゃん。もし今の状態で教えたら、お互い『そういう人だったんだ』みたいなことになって、お互いの関係が終わってしまう危険があるわ」

栄子 「ああ、そっか・・・・。厄介な関係だよ」

千鶴 「それに、ああして本音をぶつけ合うのも人生には必要なことよ。エスカレートしすぎないように見守りながら、二人を好きにさせましょう」

 

そんな千鶴たちの心遣いには気付かない二人。

口が上手くはないイカ娘は、やがて何も言い返せなくなってしまい、涙目になってしまう。

 

愛里寿「戦車道は軽い気持ちで続けていいものじゃない、仲間と戦車を大事に思っているなら、もっと気を回すことよ」

イカ娘「うっ・・・・分かった、でゲソ・・・・」

 

ついに根負けし、がっくり肩を落とすイカ娘だった。

その後、愛里寿に苦手意識を持ったのかイカ娘は愛里寿に近づくことは無かった。

そんなイカ娘を見つめる愛里寿。

 

愛里寿(それにしても・・・・あの口ぐせ。どこかで聞いた気がしたと思ったら、エビカマボコさんと同じだ)

 

愛里寿がイカ娘とエビカマボコの共通点に気が付き始める。

 

愛里寿(もしかしたら・・・・。・・・・ううん、いくらなんでも都合がよすぎる、それに、エビカマボコさんはあの子みたいに適当な人じゃない)

 

しかし気になってしまう愛里寿。

どうにか同一人物か否かを確かめたいと考えるが、直接聞くのも気が引ける。

 

愛里寿(・・・・、そうだ)

 

ふと閃く愛里寿。

 

愛里寿「ねえ、イカ娘」

イカ娘「むっ・・・・、な、なんでゲソか」

 

愛里寿に直接呼ばれ、しぶしぶ歩み寄るイカ娘。

 

愛里寿「あなた、ボコられグマのボコを知ってる?」

イカ娘「ボコ?知ってるでゲソが、それがどうかしたのでゲソ?」

愛里寿「ちょっと、ボコをここに描いてみてもらえる?」

 

そう言って紙とペンを手渡す。

 

イカ娘「私は仕事中なのでゲソがね・・・・」

 

ぶつぶつ言いながら、愛里寿から早く離れようと『手で』ボコをさっと描く。

じっとそれを見つめる愛里寿。

 

イカ娘「出来たでゲソよ」

 

イカ娘から差し出された紙には、手で描かれた丸だけで構成されたようなお世辞にはうまいと言えないボコが描かれていた。

それを見てほっとする愛里寿。

 

愛里寿(下手・・・・。よかった、やっぱりこの子はエビカマボコさんじゃなかったんだ)

愛里寿「ありがとう、もういいから」

イカ娘「何だったのでゲソ・・・・」

栄子 (奇跡的なくらいにすれ違ってるな)

 

事情を知っている側としては面白くなってきた栄子はずっと様子を見守っている。

そこから少し時間が過ぎて、お昼過ぎごろ。

 

プルルルル

 

愛里寿のケータイが鳴る。

 

愛里寿「もしもし」

 

ケータイに出る愛里寿。

 

電話 『あっ、隊長!メグミです!』

愛里寿「うん、わかってる。どうしたの?」

 

電話の向こうで慌てるメグミの声と、何かの機械音が聞こえる。

 

メグミ『あの、それが・・・・すいません!』

 

突然メグミが謝る。

 

愛里寿「メグミ?何があったの?」

メグミ『実は・・・・家元が、すでに学園艦に戻り始めているんです!』

愛里寿「えっ!?」

 

~~回想~~

 

出先の戦車道関連施設にて。

 

千代 「では、今後の計画はこれで進めるという方針で」

役員 「いやはや、流石島田さん。一日かかるかと思われた議題を、わずか半日で全て解決せしめるとは」

千代 「お褒めに預かり、光栄ですわ」

 

千代は信じされないほどの手腕と劇的な改善案の提案で、会議の時間を半分以下にまで短縮し、全ての議題を解決させてしまった。

 

ルミ 「ちょ、ちょっと、もう全部終わったの!?一日はかかる案件じゃなかったっけ!?」

アズミ「今日の家元、神がかってたわね・・・・。協会の人たちも、一部のほころびのない見事な立案って褒めてたわよ」

メグミ「まずいわよ、予定より早く終わっちゃったって、隊長に知らせないと__」

 

慌ててケータイで愛里寿に連絡を取ろうとすると__

 

役員 「どうでしょう、これからご一緒にお食事でも。いいお店を知ってるんですよ」

千代 「申し訳ありませんが、娘を待たせていますので。お気持ちだけ受け取っておきますわ」

 

そう言って切り上げ、毅然とした態度でバミューダトリオに近づく。

慌ててケータイを隠すメグミ。

 

千代 「用件は終わりました。戻りましょう」

ルミ 「うえっ!?で、ですが予定より早く終わったのでは、帰りの列車の手配もすぐにはできませんよ!?」

アズミ「そうですよ家元。予定より早く終わったのですから、少しゆっくりしていきましょうよ!」

メグミ「私、こっちのほうで見ていきたい資料館が__」

千代 「今すぐ戻ります。・・・・いいですね?」

バミュ「は、はいいっ!」

 

千代の静かな迫力にびしっと背筋を伸ばすバミューダトリオ。

 

千代 「帰りの足の心配はありません。すでに手配してあります」

メグミ「え?」

 

ふと、外から何か音が聞こえてくる。

千代についていくと、そこには__

 

バババババババババ

 

ホバリングしながら降下してくる物々しい軍事ヘリの姿があった。

 

千代 「これで帰ります」

ルミ 「こ・・・・これって・・・・!」

メグミ「現代社会において最速最強の軍事ヘリ・・・・」

アズミ「アパッチ!」

 

~~回想終了~~

 

アパッチ内部にて。

 

メグミ「というワケなんです・・・・!今それで飛んでる真っ最中でして、このままじゃあと二十分もかかりません!」

愛里寿『二十分て・・・・!それじゃ、急いでも学園艦にも戻れない!』

メグミ「ごめんなさい隊長、でも止めきれなくて__」

千代 「メグミ、誰と話してるの?」

メグミ「あっ、いえ、誰も!?」

 

慌ててケータイを切ってポケットにしまう。

 

ルミ 「いやあ、それにしても凄いスピードですね、さすがアパッチ!」

千代 「そうでしょう?知人に無理を言って手配してもらったの」

 

おみやげの入った袋を大事に膝に乗せながら千代が言う。

 

アズミ「ですが、早く予定も終わったのですから、そこまで急いで帰らなくても・・・・。隊長もいい子で待ってくれていますよ」

千代 「だからこそよ」

アズミ「え?」

千代 「思い返してみれば、近頃の私は平静を欠いていました。過剰に心配して、愛里寿を縛り付けたみたいにして。もっとあの子の気持ちを尊重して、自由にさせてあげてもいいのに」

ルミ 「はあ・・・・」

千代 「だから、早く帰って愛里寿に謝りたいの。そして、自分の好きにお出かけしてもいい、って言ってあげるつもりよ」

 

バミューダトリオが青ざめる。

 

メグミ「ヤバいわよ・・・・!せっかく家元が心を改めてくれたのに、これでまた隊長が抜け出してたなんて気が付いたら__」

ルミ 「束縛が・・・・もっと激しくなる!」

 

場面はれもんに戻る。

切れたケータイを手に、愛里寿が青ざめている。

 

千鶴 「愛里寿ちゃん、どうしたの?気分でも悪いの?」

愛里寿「あと二十分たらずで、お母様が帰って来るって・・・・!」

栄子 「えっ?」

愛里寿「どうしよう・・・・どうしよう・・・・!」

 

途端にオロオロし始める愛里寿。

 

千鶴 「愛里寿ちゃん、落ち着いて。どうしたの?」

 

かくかくしかじか、自分が抜け出したことを知ると母が取り乱すと簡潔に説明する。

 

栄子 「そりゃヤバいな・・・・。家はどこなの?」

愛里寿「あそこの、学園艦・・・・」

 

愛里寿が指さした先に寮がある学園艦が海の上に見える。

 

栄子 「学園艦なのか・・・・!」

千鶴 「まずいわね、今からじゃモーターボートでも二十分以内に辿り着いて部屋に戻るなんて到底間に合わないわ」

愛里寿「!」

 

打つ手なしと知り、絶望する愛里寿。

がっくりと肩を落とす。

 

愛里寿(私が悪いんだ・・・・。私がじっとしてなかったせいで、お母様に心配させて、ルミたちにまで迷惑をかけて・・・・)

 

後悔しても何もできず、ボコをぎゅっと抱きしめたまま涙があふれそうになる。

 

栄子 (何か・・・・何か手は無いか!?・・・・そうだ!)

栄子 「イカ娘!」

 

栄子はイカ娘を呼び寄せて、思いついた案を説明する。

 

イカ娘「ええー・・・・。どうして私が愛里寿のためにそこまでしないといけないのでゲソ」

栄子 「可哀そうだとは思わないのか?気の毒な子が目に前にいるっていうのに、お前はほっておくっていうのか」

イカ娘「散々偉そうな口を叩いたのでゲソ、これくらい自分で解決できて当然なんじゃなイカ?」

 

いい気味だ、と言わんばかりの視線を愛里寿に向ける。

当の愛里寿には、そんな嫌味に反応する気持ちさえ残っていなかった。

栄子は、頭をガリガリとかき__

 

ドン!

 

イカ娘に壁ドンをする。

 

イカ娘「な、何でゲソ、脅す気でゲソか!?そんなことしたって、私は__」

栄子 「いいかイカ娘!理由は今は言えない、でも今あの子を見捨てたら、お前は絶対に後悔することになる!絶対に!」

イカ娘「どういう訳でゲソ!?」

栄子 「だから、理由は言えない!だけど絶対助けなきゃいけないんだ!今だけは私の言葉を信じろ!」

イカ娘「・・・・」

 

乗り気ではなかったイカ娘だが、あまりにも真剣な栄子の眼差しに__

 

イカ娘「・・・・分かったでゲソ。今回だけ特別でゲソよ!__愛里寿!こっち来るでゲソ!」

 

しばらくして、スタンバイは終わった。

波打ち際、愛里寿とイカ娘が立っている。

イカ娘は触手を地面に隙間なく並べ、愛里寿はその上に座っている。

 

千鶴 「愛里寿ちゃん、お部屋はあの学園艦の海側、黄色いレンガの建物、上から三番目、奥から四番目の部屋で間違いないのね?」

愛里寿「はい、間違いありません」

栄子 「頼んだぞ、イカ娘」

イカ娘「引き受けた以上はバッチリこなして見せるでゲソ」

 

イカ娘は学園艦を睨むように見つめ、触手のコントロールに全神経を集中させる。

 

イカ娘「行くでゲソよ、愛里寿!」

愛里寿「うん!」

 

愛里寿が両手で脇にある触手を掴む。

そして__

 

シュルルルルルルルルルルル!

 

愛里寿「__!」

 

イカ娘の触手が愛里寿を乗せたまま、勢いよく伸びていく。

触手は愛里寿を乗せたまま、高速で学園艦寮へと向かって伸び続ける。

 

千鶴 「イカ娘ちゃん、少し角度を上に調整して。__ちょっと上げすぎ・・・・うん、そこでいいわ」

 

どんどん伸びていく触手。

千鶴は観測用の双眼鏡を覗きながら触手の向かう先の微調整をアシストする。

その時、寮の廊下ではすでに到着していた千代たちが早足で愛里寿の部屋に近づいてきていた。

 

メグミ「あの、家元!隊長は今もしかしたらお昼寝の時間かもしれませんし!?」

アズミ「お邪魔してしまうのでは!」

ルミ 「隊長がお目覚めになったらお知らせしますから、お土産を渡すのはその時でも__」

千代 「愛里寿が眠っていたら、枕元にお土産を置いて去ります。起こしたりはしませんよ」

 

必死に時間稼ぎをしようとするバミューダトリオの奮闘も空しく、千代は愛里寿の部屋の前に到着してしまう。

その時、まだ愛里寿を乗せた触手は伸び続けていた。

やがて触手の先がピタリと正確に愛里寿の部屋の窓真下に到着し、愛里寿は窓を開け__

 

コンコン

 

千代がドアをノックする。

 

千代 「愛里寿、入りますよ」

バミュ(ああーっ、もうダメーッ!)

 

千代がノブに手をかけ、ドアを開く。

 

ガチャッ

 

そして、開いたその先には__

 

愛里寿「お母様、おかえりなさい。早かったのですね」

バミュ「隊長っ!?」

 

部屋に立っている愛里寿がいた。

 

千代 「ただいま、愛里寿。用件が予定より早く終わったの。はい、おみやげ」

 

袋から出てきたのは、大きなサイズのご当地ボコのぬいぐるみだった。

 

愛里寿「わあ、ボコ・・・・!ありがとう、お母様!」

 

愛里寿の笑顔にふっと笑みを浮かべる千代。

 

千代 「ごめんなさいね愛里寿」

愛里寿「お母様?」

千代 「あなたのことを思えばこそ、手元から離したくないと思っていたけれど、それが一番あなたのためになっていなかったことに気づかなかった。それに気が付くのにこんなに時間がかかってしまうなんて、駄目な母親ね」

愛里寿「お母様、そんな。お母様が私を大事に思ってくれてるのは誰より私が分かってます」

千代 「愛里寿・・・・」

 

きゅっ、と愛里寿を抱きしめる。

 

千代 「明日、海に遊びに行きましょう。皆も誘って、お弁当を持って」

愛里寿「お母様・・・・。はい!」

 

かくして千代は愛里寿が抜け出したことには一切気が付かず、心安らかに部屋を去っていった。

 

メグミ「はあー、心臓が止まるかと思った」

 

千代がいなくなり、バミューダトリオが安堵のため息をつく。

 

愛里寿「三人ともありがとう。ここまでしてくれて」

ルミ 「いえ、こちらこそすいません。全然手助けできていませんでしたし」

アズミ「それにしても不思議ですね。連絡があってから短時間でどうやってここまで戻って来たんです?陸地に出かけていたんですよね?」

愛里寿「それはね__」

 

愛里寿は窓に歩み寄り、身を乗り出す。

目線の先には由比ガ浜、そして砂浜に並び立つイカ娘たちが見える。

愛里寿は指でOKサインを作り、計画成功を伝えた。

 

愛里寿「変わったイカの子が、助けてくれたの」

アズミ「え?それって、どういう・・・・?」

 

何を言ってるか分からない、といった風のアズミには答えず、愛里寿は微笑みを受かべるだけだった。

 

後日、ボコリスから手紙が届いた。

 

手紙 『拝啓エビカマボコさん。色々あって、外に出られるようになりました。お母さんや友達と一緒に海に行ったり、お買い物をしたり、とても充実した時間を過ごせたよ。あ、そうそう。この間、エビカマボコさんと同じ口ぐせの子に出会ったの。もしかしたらエビカマボコさん本人かも!?と思ったけど、どうやら人違いだったみたい。もしかしたらエビカマボコさんも私とそっくりな子に出会うかもしれません。そうしたら、その時は優しく接してあげてね。ボコリスより』




愛里寿の話になるとスイスイ筆が進む不思議。
千代さんの過保護っぷりは若干オーバーながら、割とあんなものなのかも?なんて思ったりもしています。
(大洗との勝負に負けたのにボコミュージアムを完全リニューアルしちゃうくらいですし)

自分で書いていながら、愛里寿と千代の間であたふたするバミューダトリオ、中間管理職のそれのようですね(酷

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