侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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第2話・遭遇しなイカ?

いつもの夏の日。

たけるは友達と合流するために公園へ走っていた。

 

たける「おーい!」

少年A「お、たけるが来たぞ」

 

いつも通行止めマークのTシャツを着た少年Aがたけるに気づく。

 

少年B「おーい、こっちこっちー」

少年A「これで全員揃ったな!」

たける「今日は何して遊ぶの?」

少年A「ああ、今日はな・・・・」

 

少年Aは何か意味ありげにふっふっふと笑う。

 

たける「?」

少年B「今日は、山に探検に行こう!」

たける「山に?」

少年A「ああ!」

 

そう言って指さす先には、見慣れた山々が遠目に見えた。

 

たける「でも僕たちだけで山に行くなんて、危ないんじゃないの?」

少年B「俺たちだけだからいいんだよ。大人が一緒だと、何か見つけても危ないって没収されちゃうだろ?」

少年A「話に聞いたところによると、あの山のどこかに凄腕の冒険家が残した『伝説の秘密基地』があるらしい。それを見つけるのが今回の目的だ!」

 

ふと違和感に気が付くたける。

 

たける「今日はイカ姉ちゃん誘わなくていいの?」

少年A「ああ、今回はウワサが本当なのか確かめるのが目的。イカ姉ちゃんを呼ぶのは、伝説の秘密基地を見つけた時だ!」

少年B「オイラたちが基地を占領したら、イカ姉ちゃんには秘密基地のボスになってもらうんだ!」

たける(相変わらず僕たち世代には大人気だなあ、イカ姉ちゃん)

 

かくしてたけるたち秘密基地探索隊は、バスに乗って噂の山のふもとへやって来た。

 

たける「この山のどこかに、伝説の秘密基地が・・・・」

少年B「それにしても、やっぱり広そうな山だよな。探す当てはあるのか?」

少年A「噂によると、山のとある岩場から見渡すと場所がわかるらしい。まずはその岩場を探そう!」

たける(行き当たりばったりだなあ)

 

そうは思いつつも、口には出さず一緒に山へ登り始めるのであった。

登山道に沿い、周囲を見渡しながら進む一行。

しかし当然ながら、そう簡単には目的の物は見つかるはずもない。

 

少年A「うーん、見当たらないな」

たける「目印の岩も見つからないね」

少年B「あっ!あそこに大きな岩が!」

少年A「なにっ!」

 

道の端、斜面の縁に乗っかるように大きな岩が鎮座している。

ぴょん、と上に飛び乗る少年A。

すぐ下は急な斜面になっていて、草が生い茂り木が生え、下がどうなっているか全くわからない。

しかし気にも留めないように少年たちは岩場に乗り、周囲を見渡し始めている。

 

たける「あっ、危ないよ!」

少年B「大丈夫だって、たけるも一緒に__」

 

ズルッ

 

たけるに声をかけようと体をひねった瞬間、足が滑り少年Bが体勢を崩す。

 

少年A「危ない!」

 

少年Aが咄嗟に手を伸ばし掴むが、少年Bは体勢を持ち直せず岩から滑り落ちそうになる。

 

たける「!」

 

たけるも慌てて少年Bの手をとるが、不安定な体制のせいで引き上げることもできず、手をつないだまま__

 

三人 「わああああ!」

 

ガサササササササッ!

 

三人とも斜面を滑り落ちていった。

__しばらく時間がたってから。

 

たける「ううん・・・・」

少年A「おっ、たける!気が付いたか!」

 

たけるが目を開けると、少年AとBが安堵した表情でたけるを見ていた。

 

たける「あれ、僕は・・・・」

少年A「三人まとめて岩から落ちたんだよ。だいぶ滑り落ちちゃったみたいだな」

 

たけるも少年二人も、どうやらケガはなかったようだった。

見上げると、眼前には急な角度の緑の斜面。

 

たける「これを登るのは、無理そうだね・・・・」

少年A「だよな・・・・。迂回して戻れる道がないか調べてみよう」

 

と、周囲を探るが目に入ってくるのは大きな木と地面を隠すほど生い茂る草ばかり。

見た限り登山道などありそうにない。

 

少年B「どうしよう・・・・」

 

不安げに呟く少年B。

たけるたちの頭の中に、『遭難』の文字が浮かぶ。

 

少年A「こうなったらこの斜面に沿って進もう。そうすれば、少なくとも方向を見失わずに済む」

たける「なるほど!」

 

かくしてたけるたちは思いつきに希望をはせ、斜面沿いに歩き始めた。

が__

 

少年B「はあ、はあ・・・・」

 

進めど進めど斜面は緩くならず、藪はますます深くなる。

このまま斜面沿いに進むのは危険な雰囲気さえしてくる。

 

たける「このまま進むのは危険だよ。何が出てくるかわからないし」

少年A「だけどどうするんだ?まだ斜面は登れるところがないし、先に進めないんじゃ__」

 

と、立ち止まったまま悩んでいると、たけるの耳に何か音が聞こえてくる。

 

たける「待って。・・・・何か音が聞こえるよ」

少年B「音?どんな?」

たける「・・・・」

 

耳を澄ましていると・・・・

 

たける「こっちだ!」

 

斜面とは反対方向、森の方へ歩き出すたける。

 

少年A「お、おいたける!そっちは逆だぞ!」

少年B「待てってば!」

 

たけるを一人にするわけにはいかないと追いかける二人。

しばらく進むと__

 

たける「あった!」

 

突如視界が開け、目の前に小川が現れた。

 

少年A「川だ!」

 

藪を抜けた安心感からその場にしゃがみ込む少年たち。

 

たける「うーん、川には誰もいないね。誰かいたら助けてもらえたんだけど・・・・」

少年B「とりあえず休もうよ。疲れちゃった」

 

提案もあり、とりあえず休憩することになった。

川に近い岩に座りながら各々持ってきたリュックを開ける。

母親に作ってもらったのか、少年たちはおにぎりや弁当箱を取り出した。

たけるも千鶴に用意してもらったおにぎりをほおばる。

 

少年A「これからどうしようか?川を下れば誰かに会えるかも__」

たける「ううん、この場合、川の上流を目指さないとダメなんだ」

少年B「ええっ!?下れば帰れるんじゃないの!?」

たける「川を下っても人に会えるとは限らないし、どこに出るか保証もないし。でも川上に向かえば、山頂に近づく。そうすれば登山道だって発見しやすくなるし、山頂に近づけば人も多くなるはずなんだ」

少年A「は~・・・・」

 

説得力のあるたけるの説明に感心する。

 

少年B「すごいじゃんたける!どこでそんなこと覚えたの?」

たける「あはは、千鶴姉ちゃんに教えてもらったんだ。前に遭難しかけたことがあって、いい機会だから覚えておきなさいって詳しく教えてくれたんだ」

少年A(さすがたけるの姉ちゃん、タダモノじゃない)

たける「でもすぐに実践することになるとは思わなかったけどね」

 

かくして食べ終わり、たけるたちは川上を目指し始めた。

お腹が膨れたことにより気が軽くなったため、三人の足取りは軽い。

 

少年A「ケータイを持ってれば助けを呼べたのにな」

たける「僕たち誰も持ってなかったもんね」

少年B「今回なくて大変だったって言ったら、買ってくれるかもな!」

たける(怒られるのが先だと思う)

 

そうしながらしばらく歩き続けていると、今度は__

 

たける「滝だ・・・・」

 

今度は大きめの滝が行く手をふさぐ。

周囲を見渡すが、またしても迂回路が見当たらない。

 

少年A「どうするたける?引き返すか?」

たける「うーん、今から引き返すと結構距離が・・・・、__あれ?」

 

たけるの耳に再び何かが聞こえてくる。

 

少年B「どうした?」

たける「うん。何だか・・・・音楽が聞こえてこない?」

少年A「音楽?・・・・それじゃあ、つまり!」

たける「うん!人がいるよ!」

少年B「探そう!」

 

音楽の主に希望を託し、音の方へ歩みを進める。

岩を足場に川を渡る。

そして、少し進んだ森の中に__

 

ポロロロン♪

 

戦車があった。

 

たける「えっ」

 

山の奥で戦車に出会い、面食らうたける。

よく見ると、戦車の上に誰かいる。

 

ミカ 「おや?」

 

__それは、カンテレを弾いているミカだった。

 

ミカ 「初めまして、かな?」

たける「は、はい!はじめまして!」

 

突然の挨拶に慌てて返すたけるたち。

そして__

 

アキ 「ミカ、その子たち誰?」

ミッコ「ふあーあ、どうしたー?もう交代の時間?」

 

薪を抱えたアキと、BT-42の中で仮眠していたミッコも姿を現した。

その後。

 

たける「かくかくしかじか」

ミカ 「なるほど」

 

自己紹介を終えた後、たけるが事情を包み隠さす話す。

 

ミッコ「そりゃ災難だったねー。でもいい判断だよ」

 

アキと一緒に薪を組み立てていくミッコ。

 

少年A「お姉さんたちはどうしてここに?それ戦車でしょ?」

ミカ 「うん、戦車だね」

たける「それって、戦車道の戦車だよね?」

ミッコ「おっ、その年で戦車道知ってるのか!将来有望だねえ」

たける「うん、うちの姉ちゃんたちもやってるから」

少年B「それじゃあ、ここで戦車道をやってるの?」

 

その質問に一瞬ギクリとする継続一同。

 

アキ 「いや、その、そのつもりはなかったんだけどね?」

ミカ 「・・・・どうやら運転手さんが曲がる道を間違えたらしくてね」

ミッコ「うぇっ!?__あ、あー、そうだね!やー、アタシったらうっかり!あはははは」

 

自分のうっかりを笑いながらミカをにらむミッコ。

ミカは涼しい顔でカンテレを弾いている。

 

たける「そうなんだ」

少年A「それじゃあ、すぐ道に戻るの?俺たちも一緒に行っていい!?」

 

差し込め始めた希望の光に目を輝かせる。

 

ミカ 「うん。そうしてあげたいのはやまやまだけどね。__どうやらガス欠間際でね」

たける「ええっ!?」

アキ 「そ、そうそう。だから、下手に動かすとそれこそ往生しちゃう」

ミッコ「正確な帰り道もわっかんないしねー」

少年B「じゃあ、お姉さんたち__遭難したの!?」

ミカ 「この状況をそう言うのなら、きっとそうなんだろうね」

 

どことなく他人事に語るミカ。

 

ミカ 「まあ、私たちはこういった状況には慣れているつもりだからね。心配は無用さ」

たける「そうなんだ・・・・」

 

何だか納得いかないが、心配無用と言われるとそれ以上追及できないたけるだった。

 

ミカ 「そういえば、君たちはお昼はもう済んでるかな?」

少年B「うん、さっきお弁当食べたんだ」

ミカ 「それはなによりだね」

アキ 「それじゃミカ、行ってくるよー」

 

声に振り向くと、アキがカゴらしきものを持っている。

 

たける「どこに行くの?」

ミッコ「お昼の食材の調達にね。ここらは自然が豊富だから、いろいろ見つかるだろう」

少年A「山の中で探すの!?」

ミカ 「自分で探し、自分で調理し、自分で食べる。自給自足こそ、人の本来あるべき姿じゃないのかな?」

アキ 「そう思うんだったら、少しは手伝ってくれる?」

 

ミカはカンテレをポロロンと弾く。

 

アキ 「もうっ」

 

最初から手伝いを期待していなかった体でアキは食材探して出かける。

そんなアキを見ていたたける。

 

たける「手伝うよ!!」

 

手伝いを申し出た。

 

アキ 「えっ?」

たける「一人じゃ大変だろうし、探し方を教えてもらえれば僕たちも手伝えるから」

アキ 「でも、君たちは__ううん、ありがとう。それじゃお願いしようかな」

少年A「まかせとけ!キノコ見つけるのは得意だからな!」

少年B「オイラは木の実とか探すよ」

アキ 「離れすぎないように気を付けてね。それじゃたけるくん、これと同じ葉っぱを探して。そこに生えてるから」

たける「うん、わかったよ!」

 

かくして、手分けしたことによりなかなかの速さで食材が集まった。

三十分後。

 

少年A[探せば見つかるもんだな」

たける「そうだね」

 

収穫はキイチゴ少々、様々な種類のキノコ、多数な茎野菜。

カゴいっぱいに集められており、かなりの収穫だった。

 

ミッコ「それじゃ火をおこしとくから、食材の下ごしらえよろしくー」

アキ 「うん」

 

ミッコは組んだ薪の近くでマッチを擦り始める。

 

アキ 「さて。それじゃあキノコの判別をしなきゃね」

少年A「手あたり次第持ってきちゃったけど、大丈夫かな?食べられる?」

アキ 「うーん、いくつか食べちゃいけないキノコも混じってるから、判別していこ」

 

アキは手慣れた手つきでキノコを選別していく。

少年Aも手伝い、いつのまにかミカが後ろから覗いている。

 

少年A「うーん、このキノコすごい色してるけど、食べても大丈夫かな?」

ミカ 「うん、食べられるキノコだね」

少年A「そっか。これは?」

ミカ 「食べたら死ぬね」

少年A「うわっ!?」

 

慌てて投げ捨てる。

 

少年B「これは?」

ミカ 「うん、大丈夫だね」

少年A「これは?」

ミカ 「うん、食べられるね」

 

少年二人とミカでキノコを選別をしているが、それを見ていたたけるが違和感を覚える。

ミカが食べられる、と言っていたキノコと大丈夫、と言っていたキノコをつまむ。

 

たける「ねえミカさん、このキノコは?」

ミカ 「食べられるキノコだね」

たける「じゃあ、こっちは?」

ミカ 「大丈夫なキノコだね」

たける「・・・・どう違うの?」

アキ 「あっ!」

 

そんなやりとりに気づいたアキが声を上げる。

 

アキ 「ダメだよたけるくん、それは食べたら幻覚が見えるキノコだよ!」

たける「えっ!?」

 

慌てて『食べられる』と言われていたキノコを捨てる。

 

アキ 「ミカ!この子たちが毒キノコかどうかわからないからって、からかいすぎだよ!」

ミカ 「嘘は言ってないと思うけどね。毒はあるけど死にはしないし、食べられるキノコであることに違いは__」

アキ 「ミ・カ?」

ミカ 「・・・・」

 

そのまま黙ってBT-42の方に戻っていった。

 

アキ 「もう・・・・。ミカの言うことを鵜呑みにしちゃだめだよ。選びなおそう」

 

さらに三十分後。

なんだかんだあって、立派な野菜とキノコ炒めが完成した。

たけるたちにも振舞われ、一緒に食事をする。

 

ミッコ「へー、山の中にある伝説の秘密基地をねー」

たける「うん、それで探してたら落ちちゃって」

アキ 「危ないところだったねー。無茶しちゃだめだよ?」

少年B「はーい、ごめんなさい」

ミカ 「冒険心を失わないのは大事なことさ。平和な箱の中に閉じこもっていても、世界は見えてこないものだよ」

少年A「それ、誰のこと?」

 

ミカは答えずカンテレを弾く。

しばらくして食べ終わり。

 

たける「あー、おいしかった!ごちそうさま!」

アキ 「おそまつさま」

 

いっしょに洗いものや片づけを全部済ませる。

 

少年B「さてと、・・・・この後、どうしようか?」

たける「何とか川上に向かえればいいんだけど、あの滝が問題だね」

ミッコ「ん?川上に向かいたいの?」

 

千鶴に教えられた、迷ったら川上への話をする。

 

ミカ 「正解だね。川は下るより上る方がいい結果に出会いやすい」

アキ 「いいお姉さんだね」

たける「えへへ」

 

千鶴をほめられ、照れくさそうにするたける。

 

ミッコ「川上に向かいたいなら__こっちだな。ついておいで」

 

軽く荷物を持ったミッコが先導し始める。

案内された先は斜面になってはいるが、登れないほどではない。

滑り落ちないように気を付けながら登りきると、滝の上にたどり着いた。

 

少年A「やった!先に行けたぞ!」

少年B「ミッコ姉ちゃん、ありがとう!」

ミッコ「いいってことよ!それじゃあ、気を付けて__」

 

ミッコが去ろうとすると、たけるが一点を見つめている。

 

少年A「たける、どうした?」

たける「うん、あの岩・・・・」

 

たけるの指さした先には、滝の脇に大きな岩がそびえ立っている。

頑張れば登るのも難しくはない。

 

少年B「あっ、もしかして!」

思いついたたけるたちが岩を上り始める。

 

ミッコ「あっ、おい!危ないぞ!」

 

ミッコが止めるも登り続け、三人は岩の上に立つ。

かなり大きめの岩で、あたりがかなり広く見渡せる。

真剣にあたりを見渡すと__

 

たける「あっ!あそこ!」

 

たけるの指さした先、森の中に、明らかに人工建造物を思える屋根が見えた。

 

少年A「ほんとだ、何かある!」

少年B「もしかして、あれが伝説の秘密基地!?」

ミッコ「なにっ!?」

 

ミッコも慌てて岩に登って確認する。

 

ミッコ「確かに建物だな・・・・。あんな木に囲まれてたら、ここから覗かないと気が付けないよ」

たける「じゃあ、きっとあれが伝説の秘密基地だね」

少年B「でも、どうやればあそこに行けるかな?見た限り、すごく深い森だよ?」

ミッコ「ふっふっふ、少年たちよ。アタシたちをお忘れかな?」

たける「え?」

 

ギャルギャルギャル

 

BT-42が森の中を一定の速度で進んでいく。

 

少年A「わあっ、すげえ!」

少年B「どんな道でもどんどん進んでる!」

 

たけるたちはBT-42の外側に掴まり、大はしゃぎしている。

 

アキ 「気を付けてねー。手を放しちゃダメだよー?」

少年B「はーい!」

たける「でも、いいの?そろそろガス欠で危ないんじゃ・・・・」

ミッコ「この距離くらいならまだだいじょーぶ。ゆっくりいけばそこまで消費もしないからね」

ミカ 「それに、この先には私たちの目的も待っているかもしれないからね」

たける「?」

 

しばらく進み__

 

少年A「あっ、あれだ!」

 

かくしてBT-42は例の建造物の目の前にたどり着いた。

赤レンガ造りの重厚な、建物三階分はありそうな建物だった。

 

少年B「すげえ!森の中にこんなのがあるなんて!」

たける「まさに伝説の秘密基地だね!」

 

正面には鉄の扉があるが、南京錠が掛かっていて開きそうにない。

ミカは南京錠を手に取ってカチャカチャするが、頑丈そうでどうしようもない。

中に入れるところがないか周囲を探るが、どこにもそれらしい場所は見つからない。

 

たける「うーん、入れないね」

少年A「くっそー、せっかく見つけたのに、カギがないなんて」

少年B「どこかに宝箱があったのかなー」

 

などと話しながら入口に戻ると__

 

ガチャッ

 

ミカが南京錠を外したところだった。

 

たける「あれっ!?開いてる!」

少年A「ミカ姉ちゃん、カギ持ってたの!?」

ミカ 「うん、それに準ずるものの用意はしていたからね」

 

ミカはさっと左手に持っていたものを隠す。

たけるにはそれが、針金の様に見えた。

 

ガゴンッ

 

重い音を立て、鉄の扉が開いていく。

目を輝かせながらたけるたちは中に入っていく。

 

たける「ここが伝説の秘密基地・・・・!」

少年A「すげえ・・・・!」

 

中はかなり広く、所狭しと無数の木箱やスチール棚が並び、工具や砲弾、何かのパーツらしきものが乗っている。

たけるは手元にあったものを持ちあげる。

 

たける(これ・・・・戦車の砲弾?)

 

あたりを見渡すと、戦車の砲身や履帯、追加装甲板のような鉄板も無造作に置かれている。

少年二人ははしゃぎ回っているが、たけるはここがどういう場所なのか少し察しているようだった。

 

アキ 「これ、KV-1の砲弾だね。こっちの箱にはチャーチルの榴弾だよ」

ミッコ「ざっと見る限り、かなりの種類に対応できるみたいだね」

ミカ 「そうかい。やっぱりここがそうだったんだね」

 

たけるには三人が何を話しているのかわからなかったが、どうやら目的の物を見つけられたようだということだけはわかっていた。

その後も散々調べたり遊びまわったりで、気が付いたら夕方になりかけていた。

 

少年A「やばっ、もうこんな時間!?早く帰らないと母ちゃんに怒られる!」

少年B「・・・・でも、どうやって帰るの?」

少年A「あっ・・・・」

 

自分たちが遭難していたことを思い出し、再び気が落ちてくる。

 

アキ 「とりあえず、元居た場所に戻ろう?」

 

建物にカギをかけなおし、BT-42に乗って最初の地点へ戻ってくる。

戻って来てからも、たけるたちは現実に引き戻され、終始暗い顔をしている。

 

たける「どうしよう・・・・」

少年A「母ちゃんに超怒られる・・・・」

少年B「・・・・その前に、帰れるの?」

少年A「!」

 

目的地を見つけたテンションとは正反対に、現状に絶望している三人。

そんな三人に、おずおずとアキが声をかける。

 

アキ 「あのねみんな、実は__」

???「__る、た__るー!」

たける「!?」

 

ふと、声が聞こえてくる。

滝の音に紛れて、誰かがたけるの名前を呼んでいるような声が届く。

 

たける「もしかして・・・・千鶴姉ちゃん!?」

千鶴 「たけるー!どこなのー!?聞こえたら返事をしてー!」

栄子 「たけるー!おーい!」

イカ娘「早く帰ってこないと晩ごはん抜きになっちゃうでゲソよー!」

 

滝の向こう側、少し離れた位置にある登山道で、千鶴たちがたけるを呼びながら探し回っていた。

しかし山の地形と滝の音に阻まれ、お互いどこにいるのか見当がつかないでいる。

 

たける「千鶴姉ちゃーん!栄子姉ちゃーん!」

少年A「イカ姉ちゃーん!」

少年B「ここだよー!」

 

たけるたちも必死に大声を上げるが、滝の音にかき消されてしまう。

 

たける「だめだ、滝があるせいで千鶴姉ちゃんたちに声が届かない!」

少年A「急いで向こう側に渡らないと!」

 

しかしたけるたちに気づけない千鶴たちは、段々と離れていきはじめ、声も小さくなってくる。

 

少年B「あああ、待って!待ってー!」

たける「千鶴ねえちゃーーーん!」

 

たけるが精いっぱい叫ぶと__

 

ミカ 「__トゥータ!」

 

バアン!

 

背後のBT-42が火を噴いた。

 

ドバアアアン!

 

砲弾は滝に当たり、着弾と水しぶきで大きな音が響き渡る。

 

たける「うわっぷ!」

 

たけるたちにも水しぶきがかかり、身を縮める。

と__

 

ガサササ!

 

千鶴 「たける!」

 

切り立った土斜面の上の茂みから、千鶴が姿を現した。

 

たける「千鶴姉ちゃーん!」

 

その後は難なく事が運んだ・

イカ娘の触手を使って一人ずつ持ち上げていき、やっと三人は千鶴に保護されたのである。

 

栄子 「全く、心配かけさせてからに」

たける「ごめんなさい・・・・」

少年A「でも、イカ姉ちゃんたちどうしてこの山に俺たちがいるってわかったの?」

千鶴 「たけるたちの帰りが遅いから気になってたら、知り合いの近所の人がたけるたちがバスに乗って山の方に向かった、って聞いたの。それでもしかしたらと思って」

少年B「そうだったんだ・・・・」

イカ娘「それにしても危ないところだったでゲソ。滝があったからたけるたちの声、全然聞こえなかったでゲソからね」

栄子 「あの大きな音がなかったら、危うく素通りするところだったな」

たける「あっ、そうだ!あの人たちに助けてもらったんだよ」

 

たけるは後ろを振り返り、ミカたちのいた方向を指さした。

__が、そこにはミカたちはおろか、BT-42の姿もどこにもなかった。

 

たける「あれっ!?さっきまでそこにいたのに!」

少年B「ミカねえちゃーん!アキねえちゃーん!」

少年A「ミッコねえちゃーん!」

 

しかし返事はなく、ただ静かな森だけがそこにあった。

 

栄子 「誰かいたのか?誰もいないぞ?」

イカ娘「キツネにでも化かされたんじゃなイカ?」

たける「そんなはずは・・・・」

千鶴 「さあ、帰りましょう。そろそろ日が沈むわ」

たける「うん・・・・」

 

千鶴に促され、後ろ髪をひかれるようにその場を後にしようとする。

と、再び振り返り__

 

たける「ミカ姉ちゃーーん!」

少年A「アキ姉ちゃーーん!」

少年B「ミッコ姉ちゃーん!」

三人 「ありがとうーーー!」

 

力いっぱい叫んで、たけるたちは下山していった。

その日の晩。

ミカたちは、同じ森の中で焚火に火をくべていた。

 

アキ 「たける君たち、無事にお姉さんに会えてよかったね」

ミッコ「なかなか可愛い子たちだったよなー。もうちょっと一緒にいてもよかったんだけど」

ミカ 「そうだね。弟も悪くないかもしれないね」

ミッコ「で、アタシらはどうしよっか?目的も果たせたんだし、森に居続ける必要はないんじゃない?」

ミカ 「そうだねえ・・・・。もう少し、人間の原点に触れるのも悪くはないと思うよ?」

アキ 「はいはい。ミカならそういうと思ってたよ。はーあ、お布団が恋しい」

 

うーん、と背伸びするアキ。

 

ミッコ「しかし、ミカの読み通りだったってことは、ここで間違いないってこと?」

ミカ 「うん。その可能性は極めて高いだろうね」

アキ 「うーん・・・・」

ミカ 「あの場所を知ってるか否かは、来る時において重要なポイントになる。私たちがここであれについて調べていたことも、ここにあれがあることも、まだ知られてはいけないのさ」

アキ 「ミカの秘密主義も極まってる感じだよね」

ミカ 「そんなことはないさ。アキたちにはキチンと話しているだろう?」

アキ 「確かに大まかには話してくれたけど、あれで本当に全部だったの?」

 

ポロロロン♪

 

ミカは答えずカンテレを弾く。

 

アキ 「もう・・・・」

 

アキは呆れながらも、慣れたものだところんと横になるのだった。




継続=サバイバル。
サバイバル=継続。
供給が断たれた長期戦などになった場合、一番強いのは継続だと思います。

継続はいろいろ謎が多い高校ですが、黒森峰を苦戦させるほどの実力がある限り、ただの色物ではないという点も魅力的ですね。

いつか継続vsプラウダの試合とかも見てみたいですね。

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