侵略!パンツァー娘   作:慶斗

30 / 104
※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。

カチューシャ→カチュ
クラーラ→クラ
アリーナ→アリー
プラウダ生A、B、C..→プラA、B、C..

イカチューシャ→イカチ


※〈〉内の台詞は、全てロシア語で話しているとご解釈ください。


第5話・乗り越えなイカ?

カチュ「ふ・・・・ふあぁ・・・・」

 

とある朝、プラウダの学園艦にて。

カチューシャが廊下で大きなあくびをする。

 

イカチ「おはようでゲソ!」

 

通りがかったイカチューシャが声を掛ける。

しかしカチューシャはどこかうつろな様子で反応がない。

 

イカチ「む?カチューシャー。おーはーよーうーでーゲソ!」

カチュ「うえっ!?・・・・ああ、イカチューシャだったのね。おはよう・・・・あふぁ・・・・」

 

少し大きく呼ぶと、びっくりしたようにしてやっと気づく。

 

イカチ「カチューシャ、眠いのでゲソ?」

カチュ「べっ、別に眠いわけじゃなわよ!」

 

慌てて否定するカチューシャ。

 

イカチ「ふむ、そうなのでゲソ?」

カチュ「起き抜けだから目が覚めてないだけよ」

イカチ「ふむ、そうでゲソか。今日は『食堂の日』でゲソ。これから食堂に向かうのでゲソ?」

カチュ「そうよ。せっかくだから一緒に行きましょうか」

イカチ「うむ!」

 

連れだって廊下を歩く。

 

イカチ「昨日ノンナが言ってたのでゲソが、どうやら今日の朝ご飯はエビボルシチなのだそうでゲソ!楽しみでゲソね~♪」

カチュ「そう・・・・。それは、すごくたのしみね・・・・」

イカチ「カチューシャ?」

 

カチューシャの顔をうかがい見ると、目はほとんど閉じ、歩きながら舟をこぎかけている。

 

イカチ「カチューシャ、起きるでゲソ!歩きながら寝たら危ないでゲソ!」

カチュ「うえっ!?」

 

イカチューシャが触手で体中をゆすりカチューシャを起こしにかかる。

しかしその瞬間だけは意識がはっきりするものの、

 

カチュ「寝てない、ねてないったら・・・・」

 

少しするとすぐ瞼が落ちそうになる。

そしてまたイカチューシャが起こす。

はっとして目を覚まし、そしてまた寝落ちかける。

そんなことを繰り返しながら、やっと二人は食堂へ到着した。

 

ノンナ「おはようございます、カチューシャ、イカチューシャ」

クラ 〈お席は用意してあります〉

イカチ「うむ!」

カチュ「ええ・・・・」

 

ノンナとクラーラに案内され、席に向かうカチューシャたち。

席に着くと同時に出来立てのエビボルシチが差し出された。

目の前には出来立て熱々の美味しそうな、エビたっぷりボルシチ定食がある。

 

イカチ「おおっ!すごくおいしそうじゃなイカ!」

 

目を輝かせ、湧き出るよだれが抑えきれないといった様子のイカチューシャ。

やがて食堂にいる全員にボルシチが配られるが、まだ誰も手を付けない。

 

ノンナ「全員分行き渡りました。ではカチューシャ、朝食の号令をお願いします」

 

プラウダではカチューシャより先に食べ始めるのは不敬として、カチューシャの号令が無ければ食べ始めてはいけないという暗黙のルールがあった。

故に誰も食べ始めることが出来ず、カチューシャの号令をひた待つ状態にある。

しかし__

 

カチュ「むにゅ・・・・」

ノンナ「カチューシャ・・・・?」

 

当のカチューシャは座ったまま、こっくりこっくり舟をこいでいる。

そのまま大きく頭が落ち、ボルシチに顔を突っ込んでしまいそうなところをイカチューシャが触手で阻止する。

 

ノンナ「これは困りました」

 

カチューシャの意識はすっかり途切れ、朝食どころではなさそうである。

 

ニーナ「どうするんだべか、カチューシャ隊長寝ちまったべ!朝飯はどうすりゃええんだべ!?」

アリー「だけんじょ、先に勝手に食べたら後が怖いなぁ・・・・。このまま朝食抜きとかいわんべな!?」

 

様子がおかしいことにどよめき始める食堂内。

と、クラーラがイカチューシャに何か耳打ちして、イカチューシャがうむ、と頷く。

そして、すうっと息を吸い込み__

 

イカチ「プリヤートナヴァ・アペティータ(召し上がれ)!」

 

と、出来る限りカチューシャの雰囲気を出しながら声を上げる。

 

プラ生「!__スパスィーバ!」

 

それをカチューシャの号令ととらえたプラウダ生たちが、ようやく朝食にありつき始めた。

 

ノンナ「ご助力感謝いたします」

イカチ「お預けはつらいでゲソからね。それにしても__」

カチュ「くー・・・・すー・・・・」

 

触手に支えられながらも起きる気配は見せず、カチューシャは眠りこけてしまっている。

 

イカチ「起きないでゲソね」

ノンナ「珍しい事態です」

クラ 〈カチューシャ様は私がお支えします。お二人はその間にお召し上がりください〉

ノンナ〈そうはいきませんよ、クラーラ〉

クラ 〈残念です〉

 

そんな二人にカチューシャを任せボルシチを幸せそうにほおばるイカチューシャであった。

そしてその後。

 

カチュ「すー・・・・すー・・・・」

イカチ「結局、目を覚まさなかったでゲソね」

 

全員が食べ終わり、後片付けが終わった後もカチューシャは目を覚まさなかった。

 

ノンナ「とにかく、カチューシャを一度隊長室へお連れします。クラーラ」

クラ 「はい。料理を隊長室へ運ぶためのワゴンは既に手配してあります」

ノンナ「貴女はプラウダの誇りです」

 

ノンナはカチューシャをおんぶしながら、クラーラはワゴンを押しながら、そしてイカチューシャは連れだって一緒に隊長室を目指す。

 

イカチ「昼寝の時間が近くなってこうなることは多かったでゲソが、朝からこうなったのは初めてでゲソ。たまにあることなのでゲソか?」

ノンナ「いいえ。こういったことはこれまでありませんでした」

イカチ「ふむ・・・・。それじゃ、夜更かしでもしたのでゲソかね?私も前に夜更かししすぎて、昼に寝る習慣が付いたことがあったでゲソ」

ノンナ「それもあり得ません。カチューシャは昨晩もいつも通りの時間に就寝されていました」

イカチ(どうして知ってるのでゲソかね)

ノンナ「ともあれ、カチューシャが目覚めるまで待ちましょう。スケジュールはそこから調整します。イカチューシャ、申し訳ありませんがその旨を皆に伝えていただけますか」

イカチ「わかったでゲソ」

 

そう答えたイカチューシャは戦車道メンバーが待機する、談話室へ向かった。

その途中__

 

♪ジャカジャカジャカジャカ♪

 

イカ娘のケータイに着信があった。

 

イカ娘「む?__もしもし?」

 

電話に出るイカ娘。

 

イカ娘「ああ、千鶴でゲソか。私は元気でやってるゲソよ。__ふむ、ふむ、__え?・・・・そうでゲソか、わかったでゲソ」

 

ピッ

 

通話が終わり、少し浮かない顔でケータイをしまうイカ娘。

そのまま談話室に向かい、ドアを開けた。

 

ニーナ「あ、イカチューシャさんだあ」

アリー「カチューシャ隊長の様子は、どんなだっただべか?」

 

待機していたニーナたちが聞いてくる。

 

イカチ「カチューシャはまだ目を覚ましてないでゲソ。ノンナが隊長室に連れてって、起きるのを待つことになるでゲソ」

ニーナ「そうかー。んだら、午前の授業はずれ込みだなあ」

イカチ「どういうことでゲソ?」

アリー「私らプラウダ生は、カチューシャ隊長が起きない限り授業を進めちゃなんねえんです。んな訳で、それまでは自由時間ちゅうことだべ」

イカチ「ふむ。では待つしかないでゲソね」

 

談話室でニーナたちと談笑したり一緒に戦車道について知識を深めあったりしていたが、昼頃になってもカチューシャは現れなかった。

 

ニーナ「カチューシャ隊長、現れねえだが・・・・」

アリー「このまんまじゃ、私ら授業の終わりが夜になっちまわねか!?」

 

いい加減ニーナたちが不安に駆られていると、

 

ノンナ「皆さん」

 

談話室の扉を開けて、ノンナが姿を現す。

 

ニーナ「あ、ノンナさん!隊長はお目覚めになったんで!?」

 

ノンナはただ静かに首を振る。

 

ノンナ「どうやら一向に目を覚ます気配はありません。ですので、今日の授業は休講となります」

 

おおっ!と一同の顔に喜びの色が浮かぶ。

 

ノンナ「その代わり明日は今日の分の遅れを取り戻すため濃縮されたカリキュラムとなります。皆さん明日への準備を怠らないようにして下さい」

 

うへー、と一同の顔に疲弊の色が浮かぶ。

 

ノンナ「では、解散。あ、イカチューシャは私とともに隊長室へいらして下さい」

イカチ「うむ、承知したでゲソ」

 

ノンナと一緒に隊長室にやって来たイカチューシャ。

隊長室に設置されたベッドには、未だカチューシャが寝息を立てながら眠りについている。

傍らではクラーラが心配そうな顔でカチューシャを見つめている。

 

イカチ「目覚める気配がないでゲソね」

ノンナ「前例がない事態のため、こちらも対処をこまねいています。原因がわかれば対処もしやすいのですが」

クラ 「イカチューシャさま、何か心当たりはないでしょうか?」

イカチ「ふーむ・・・・」

 

少しの間考えていると__

 

イカチ「あ」

 

ふと、思い出したという風の声を上げる。

 

ノンナ「何か心当たりが?」

イカチ「いつもがどうなのかはわからないのでゲソが、私がプラウダに泊まり始めの頃、こんなことがあったでゲソ」

 

イカチューシャは泊まった最初の晩、悪い夢を見て眠れず廊下を歩いていたカチューシャに出くわしたことを語った。

 

ノンナ「成程、それで次の日の朝はご一緒のベッドにいたのですね」

イカチ「うむ。その後も何度か一緒に寝たのでゲソが、最近はもう大丈夫だと一人で寝てたでゲソ」

 

ノンナはどこからかメモ帳を取り出しペラペラとページをめくる。

 

ノンナ「確かに。五日目からはまたお一人で就寝されていますね」

イカチ「それは何の記録でゲソ?」

 

何が書かれているのかと覗こうとすると、ノンナはさっと素早くメモをしまい込んだ。

 

ノンナ「しかしこの様子を見ると、もしかしたらその悪夢はまだ見続けているのかもしれません。もしや、そのせいで十分に睡眠をとれずに・・・・?__イカチューシャ、カチューシャが見たという悪夢の内容をお教えいただけますか?」

イカチ「うむ。確か__」

 

カチューシャの悪夢の内容を説明するイカチューシャ。

 

クラ 「周囲に誰もいなくなって、一人ぼっちになる夢、ですか・・・・」

ノンナ「確かにそれは悪夢ですね」

 

しばし考え込むノンナ。

 

ノンナ「もしその悪夢が続いているというのならば。それはカチューシャにとって不利益以外何物でもありません。早急に悪夢を晴らす必要があります」

イカチ「どうするのでゲソ?」

ノンナ「夢は潜在的な不安などによる精神的なものに作用されます。ならば、カチューシャにそんな不安は杞憂であると知ってもらえばいいのです。クラーラ」

クラ 「はい。すぐに手配します」

 

その日、カチューシャが目を覚ましたのは夕方に差し掛かるかという時刻だった。

 

カチュ「あっ、イカチューシャ」

イカチ「おお、目を覚ましたのでゲソね」

カチュ「ええ。・・・・恥ずかしい所を見せてしまったみたいね」

イカチ「気にするほどではないでゲソ。眠いものは仕方ないでゲソ」

カチュ「そう言ってもらえると助かるわ」

イカチ「あっ、ノンナから言付けがあったでゲソ。えっと__」

 

ノンナからの伝言をカチューシャに伝える。

そしてその晩。

 

ノンナ「カチューシャ、お待ちしていました」

 

大人数を収容できるレクリエーションホールに、戦車道チーム全員が集まっていた。

全員パジャマ姿で。

 

カチュ「イカチューシャに言われたまま来たんだけど・・・・、どういうことか説明しなさい」

 

同じくパジャマ姿のカチューシャが威厳を示そうと強い口調でノンナに詰問する。

 

ノンナ「はい。これまでの試合や結果を省みるに、我々はもっとお互いの距離を詰めるべきと思われます」

カチュ「距離?」

ノンナ「ここまで我々は偉大なる同志カチューシャの元、強固な一枚岩として成り立ちました。次に試みるべきは、その密度をさらに濃い物にするべきと考えます」

カチュ「なるほど、一理あるわね」

ノンナ「これはその一環です。こうして同じ場所で寝起きを共にするチームは更なる結束が育まれると近年の研究データにもあります」

ニーナ「ものすごくもっともそうな理由だべなあ」

アリー「説得力ありすぎじゃー」

カチュ「わかったわ。ノンナがそこまで言うのなら付き合ってあげる!」

ノンナ「恐縮です」

 

皆で寝泊まり、というキーワードに若干ウキウキする心を隠しながら、カチューシャは敷いてある布団に潜り込む。

 

クラ 「これで、カチューシャ様が見ている悪夢を振り払うことが出来るのでしょうか」

ノンナ「恐らくカチューシャが感じているのは『孤独』です。もちろん我々はいつも傍にいますが、もしかしたら一人でお休みになるときは孤独を感じているのかもしれません。ならば、寝るときにも我々がいると思ってもらえれば、悪夢を見ることもないのではないでしょうか」

カチュ「ほら、イカチューシャは隣よ!こっちにいらっしゃい!」

 

カチューシャがぽんぽんと隣の布団を叩いて促す。

 

イカチ「うむ!」

 

隣の布団に潜り込むイカ娘。

 

イカチ「何だかみんなでキャンプにでも出かけたみたいで楽しいでゲソ」

カチュ「あら、それも悪くないわね。今度訓練がない日に皆を連れて八甲田山でも登ろうかしら。多分来週は丸一日空いてるはずだから__」

イカチ「あっ」

 

ふと思い出したように声を上げるイカチューシャ。

 

イカチ「カチューシャ、言い忘れてたのでゲソが私は__」

 

カチューシャに大事なことを伝えようとした瞬間__

 

プラA「てえい!くらえ、76.2ミリ砲~!」

プラB[わぷっ!やったなあ、こっちは85ミリ榴弾だあ!」

 

お泊り会でテンションの上がった一部隊員たちが枕投げを始めた。

どんどん盛り上がりは広がり、あたり一面で枕が飛び交い始める。

 

ノンナ「皆さん、お静かに。カチューシャがお休みになれませんよ」

 

ノンナがぴしゃっと言うと、一瞬で騒ぎは収まった。

 

カチュ「構わないわよ、こういう特別な催しのある時くらい無礼講で。エンリョせず投げなさい」

 

しかし一度収まってしまうとそう言われても再び同じ熱は持てるものではなく、自然に皆布団に潜り込み始めていた。

カチューシャはふう、とため息をつく。

 

カチュ「それじゃ寝ましょうか、イカチューシャ」

イカチ「そうでゲソね」

ノンナ「電気を消しますよ」

 

やがてホールの電気は消され、非常灯の光だけがぼんやり見えるだけの闇に包まれた。

 

ノンナ「おやすみなさい、同志カチューシャ」

カチュ「ええ、おやすみなさい」

 

しばらくすると皆寝息を立て始めた。

 

イカチ(言いそびれてしまったでゲソ。・・・・まあ、明日言えばいイカ)

 

それから、夜も更けたころ。

 

イカチ(・・・・?)

 

ふと違和感を感じたイカチューシャは、隣のカチューシャの布団がめくられいなくなっていることに気が付く。

 

イカチ「カチューシャ・・・・?どこ行ったでゲソ?トイレでゲソか?」

 

しかし少しの不安を感じたイカチューシャは、カチューシャを探しにホールを出た。

廊下もわずかな光が灯っているだけで、どこまでも広がる闇に少し身震いする。

しかし放っておくわけにも、とカチューシャを探そうと歩き出そうとすると__

 

ヒヤッ・・・・

 

どこからか冷気が流れてくる。

 

イカチ「む?」

 

その冷気の流れ出る先を探ると・・・・バルコニーに出るための扉が少し開いていた。

扉を抜けたその先に__夜風に当たるカチューシャが立っている。

その横顔はいつもの勝気なカチューシャらしくない、不安にいっぱいの顔だった。

 

イカチ「カチューシャ」

カチュ「!?・・・・イカチューシャ?こんな時間にどうしたの?」

イカチ「それはこっちのセリフでゲソ。眠れないのでゲソ?」

カチュ「・・・・」

イカチ「夜風が冷たくて気持ちいいでゲソ」

 

カチューシャの隣に立って夜風に当たる。

しばらくの間、沈黙が二人を包む。

 

イカチ「・・・・まだ、あの夢を見るのでゲソ?」

カチュ「!・・・・、ええ」

イカチ「あんなのはただの夢だって言ったじゃなイカ」

カチュ「・・・・」

 

バルコニーの柵をきゅっと握るカチューシャ。

 

イカチ「カチューシャにはみんながいるでゲソ。今日だって、カチューシャが悪い夢を見ないようにって、みんなが一緒に寝てくれたじゃなイカ」

カチュ「やっぱり、そういう理由だったのね」

イカチ「あっ」

 

自分で理由をばらしてしまい、軽く焦る。

 

イカチ「黙っててゴメンでゲソ」

カチュ「別に怒ってなんてないわ。逆に嬉しかった。__だからこそ、あの夢を見るのかもしれない」

イカチ「どういうことでゲソ?」

カチュ「きっと・・・・私は、みんなに見捨てられるのが怖いの」

イカチ「・・・・?言ってる意味が分からないでゲソ。どうしてみんながカチューシャを見捨てるのでゲソ」

カチュ「・・・・イカチューシャは、去年の__うちが優勝した第62回大会のこと、どこまで知ってる?」

イカチ「そこまで詳しくはないでゲソが・・・・たしか、決勝戦は大洗の西住さんがいた頃の黒森峰で、川に落ちた戦車に乗っている仲間を助け出すために、フラッグ車の車長が車両をを放棄して決着がついた、だったでゲソね」

カチュ「そう。その通りよ。仲間を助け出すために勝負を捨てたミホーシャの車両を撃破して、ね」

イカチ「__あれには、大洗の西住さんが乗ってたのでゲソか」

カチュ「そう。そして、その車両を撃つように指示したのは__あの時作戦進行役を担ってた、カチューシャよ」

 

~~回想~~

 

カチュ『撃ちなさい!車長がいなくなって、Ⅵ号はスキだらけよ!』

プラC『ですが、彼女は仲間を助けに飛び出したんです!それに付け込むでだなんて・・・・!』

カチュ『何甘いこと言ってんの!戦車を放棄したのは向こうの意思よ!それくらいのこと理解してやってるんだから、こっちが合わせてあげる理由なんてないわ!』

プラC『だけど、カチューシャさん__』

カチュ『それとも何!?貴女、戻ってくるまで待ってあげて、それで負けたら、責任を全部とれるの!?』

プラC『!』

カチュ『撃ちなさいってば!それで黒森峰の十連覇を阻止して、プラウダが新しい戦車道の王者として君臨できるのよ!撃ちなさい!』

プラC『う、うう・・・・』

カチュ『撃てーっ!』

 

バアン!

 

~~回想終了~~

 

カチュ「あの時の判断は絶対に間違っていなかったと今も思ってる。あそこまでの好条件は後にも先にも無かったわ。もしあそこで撃破しなかったら、負けていたのはこちらだったかもしれない」

イカチ「勝てるときに勝ちに行くのは間違いじゃないでゲソ。大洗の西住さんだってそれが分からず動いていたとは思えないでゲソ」

カチュ「そしてプラウダは勝利と栄光を手に入れ、みんながカチューシャを認めてくれたわ。ミホーシャを踏み台にして」

イカチ「・・・・」

カチュ「あの試合の後、ミホーシャは責任を問われて黒森峰から去ったって聞いたわ。その時もふーん、くらいとしか思わなかった。そして逆にカチューシャはプラウダの頂点に君臨したわ。あの頃から支えてくれたノンナやチームのみんな。そして沢山のプラウダの同志たちがカチューシャを称えてくれた」

 

だがその声に喜びの感情は混じっていない。

 

カチュ「でも今年、第63回大会でミホーシャ率いる大洗に負けて。その後の対大学選抜チームとの戦いにも壊滅的被害を受けて。カチューシャは失態を重ねてる。常勝無敗、最強の『地吹雪のカチューシャ』の名前が失墜していると感じたわ」

 

カチューシャは柵を掴みながらその場にしゃがみ込む。

 

カチュ「・・・・怖いの。カチューシャが勝てなくなったら、威厳が無くなったら、みんなカチューシャについてきてくれなくなる。みんながカチューシャを置いて行っちゃう」

 

イカチューシャはカチューシャに聞いた夢の話を思い出す。

周囲に誰もいなくなって、一人ぼっちで戦車の上で叫んでいるカチューシャの悪夢。

 

イカチ「思いつめすぎでゲソ。みんなカチューシャが強いからとか、勝ちたいからついてくるワケじゃないでゲソ?ノンナだって、クラーラだって、みんな仲間だから一緒にいるんじゃなイカ」

カチュ「__だからこそ、失うのが怖いの・・・・!みんながいなくなったら、カチューシャには何も残らないの・・・・!」

 

小さく縮こまり震えるカチューシャに肩に手を置くイカチューシャ。

 

イカチ「とにかく、今日はもう寝るのがいいでゲソ。いつまでもここにいたらカゼひいちゃうでゲソよ」

カチュ「・・・・うん」

 

小さく答え、とぼとぼと去っていくカチューシャ。

その後ろ姿には、いつもの威厳が消えてしまっている。

 

ノンナ「・・・・これは、根が深いですね」

クラ 「カチューシャ様、おいたわしい・・・・」

イカチ「うわっ!?いたのでゲソ!?」

 

バルコニーの陰からノンナとクラーラがぬいっと姿を現す。

 

ノンナ「例え勝てないとしても、私がカチューシャを敬う気持ちは決して薄れることはありません。皆も同じ気持ちです」

イカチ「それは、私から見てもそうだと思うでゲソ」

クラ 「ですが、今のカチューシャ様はふさぎ込んでしまっています。言葉だけでは届かないでしょう」

イカチ「うーむ・・・・」

 

しばらくの間、沈黙が三人を支配する。

ふと、イカチューシャが案を思い付く。

 

イカチ「こういうのはどうでゲソかね」

 

説明タイム。

 

ノンナ「なるほど・・・・。それは効果がありそうですね」

クラ 「ですが、その場合今度はイカチューシャ様のお立場が危うくなるのでは・・・・」

イカチ「それは心配ないでゲソ。実は__」

 

イカチューシャは千鶴に受けた連絡の内容を話す。

 

ノンナ「・・・・さいでしたか」

イカチ「だから、その前にカチューシャの不安を消してあげたいのでゲソ。協力してくれなイカ?」

ノンナ「無論です」

 

そして、次の日の朝。

 

カチュ「んう・・・・。何かしら?・・・・妙に窮屈な感じが・・・・」

 

かろうじてその日は悪夢に見舞われなかったカチューシャは、寝苦しさで目を覚ます。

 

カチュ「ん・・・・?__ええっ!?」

 

目を覚ましたカチューシャは、自分が宙に浮かんでいることに気が付く。

真下には積もりに積もった層の厚そうな新雪が待ち構えている。

 

カチュ「ちょ・・・・どこなのここ!?ていうかなんで空中!?」

 

事態を確かめようともがくも、全く身動きできないことに気が付く。

カチューシャは寝ていた布団で簀巻きにされている。

それを縛り付け、吊り下げていたのは__

 

イカチ「目が覚めたでゲソね、カチューシャ」

カチュ「イカチューシャ!?」

 

イカチューシャの触手だった。

腕組みをしながら、悪い笑みを浮かべている。

周囲を確認すると、そこは雪で作られた建物のようなものの上だった。

 

カチュ「一体どういうこと!?何のつもりなの!?」

イカチ「どうしたもこうしたも__」

ノンナ「皆さん、あちらです!」

ニーナ「カチューシャ隊長ーっ!」

アリー「ご無事でけろーっ!?」

 

見ると、ノンナを先頭に戦車道チームの面々が駆けたところだった。

 

クラ 「これは・・・・クレムリンのアルハンゲリスキー大聖堂!?」

 

ニーナたちの眼前には、雪で作られた原寸大の建物がそびえ立っている。

 

イカチ「ふむ、役者は揃ったようでゲソね」

カチュ「ノンナ!」

 

その屋上からイカチューシャが見下ろす。

 

ノンナ「カチューシャ、すぐにお助けします!」

ニーナ「イカチューシャさん!?これはどういうことだべ!?」

アリー「なしてカチューシャ隊長を吊り上げとるだ!?」

 

イカチューシャの行為に信じられないといった表情を向ける一行に、イカチューシャは冷たい目線を飛ばす。

 

イカチ「見ればわかるじゃなイカ。プラウダ侵略でゲソ」

ニーナ「侵略!?」

イカチ「そもそも私がプラウダに来たのはここを占拠して私の侵略拠点にするためでゲソ。そしてその時が来ただけのことでゲソ」

カチュ「嘘よ!?だってイカチューシャは__」

イカチ「目的を悟られては侵略などままならないでゲソ。カチューシャの誘いは渡りに船だったでゲソよ」

 

くっくっく、と悪い笑いを飛ばす。

 

イカチ「侵略のためにはどうしてもカチューシャの存在が邪魔だったでゲソ。もし一丸で来られたらさすがの私でも苦戦しただろうでゲソからね」

 

イカチューシャは簀巻きにしているカチューシャをふりふりと揺らす。

 

イカチ「でもカチューシャはスキだらけで楽勝だったでゲソ。現にこうして簡単に捕まえられるほど弱ってたのでゲソからね!」

カチュ「イカチューシャ・・・・」

 

未だ信じられないという表情のカチューシャ。

イカチューシャはすうっと息を吸い込む。

 

イカチ「人間どもよ!お主らの隊長であるカチューシャは私が制圧した!これでもはやお主らに私に逆らうすべは残されてないでゲソ!降伏してプラウダを明け渡し、私のために尽くすというならば生かしておいてやるでゲソ。もし逆らうのならば、カチューシャともども雪下野菜にしてやるでゲソ!」

ニーナ「ウソだべ!」

イカチ「!?」

ニーナ「私らはずっどイカチューシャさんと一緒にいたからわかるべ!イカチューシャさんは分け隔てなくみんなと仲良くしてくれて、そったら悪いことなんざ絶対に考えねえいい子だべ!」

アリー「んだ!こんだらことするんは絶対に理由があるべ!力になるから、正直に話してくんろー!」

 

ニーナたちからの言葉にぼっと顔が赤くなるイカチューシャ。

しかしそれを誤魔化すかのように__

 

イカチ「ええい、どうしても逆らうのでゲソね!ならば__」

 

簀巻きにしているカチューシャを触手が大きく持ち上げ__

 

イカチ「こうでゲソ!」

カチュ「うわああああああ!?」

 

ボフン!

 

勢いよくそのまま眼前の新雪の奥深くへ突っ込ませた。

 

ニーナ「!」

ノンナ「カ、カチューシャ!」

 

全員の顔が青くなる。

 

ズボッ!

 

すぐに雪の中から引き出されるが、カチューシャの顔は雪まみれだ。

 

イカチ「さて、何度目で氷漬けになるのでゲソかね。こうなりたくなければ、さっさと降伏__」

ニーナ「カチューシャさまー!」

アリー「みんな、お助けするだー!」

 

イカチューシャが言い終わる前に、ニーナたちが一丸となってイカチューシャのもとへ駆け出した。

邪魔をする新雪を乗り越えて近づこうと躍起になる。

やがて雪をかき分け、中へ突入し始める。

 

クラ 「これがアルハンゲリスキーをそのまま再現されているのならば、屋上はこちらです!」

ノンナ「クラーラ、道案内は任せました」

 

クラーラを先頭に階段を駆けあがる一行。

 

イカチ「まったく・・・・人類は本当に愚かでゲソね。私が何も用意せずにいるとでも思ったのでゲソか!」

 

バシュン!

 

突如踊り場から、壁を突き抜け触手が飛び出してくる。

 

ひょい

ぽいっ

 

隊員を一人掴んだと思うと、下に放り投げる。

 

プラD「うひゃあああ!」

 

ボスンッ

 

そのまま積んであった柔らかく積んである雪山に落下し、隊員は雪の中に沈んだ。

 

ニーナ「一人やられたべ!」

アリー「あれなら大丈夫だべ!とにかくここを突破して上を目指すだ!」

 

ウネウネと威嚇する触手に怯むことなく突貫するプラウダ生たち。

その後も何人も投げ飛ばされつつも、大半が突破することに成功した。

 

ニーナ「しかし、イカチューシャさんはなしてこったらことしとるんだべ!?」

アリー「私にもわからねえべ!すけ、会って確かめんと!」

 

その間にも何本も触手が襲い掛かり、何人も脱落していく。

気が付けば残っているのはニーナ、アリーナ、ノンナにクラーラだけとなった。

 

クラ 「これを登れば屋上です!」

 

やがて屋上に続く階段に辿り着き、それを駆け上がろうとすると__

 

ニーナ「!ありゃなんだべか?!」

 

後ろからまとめた触手で作られた大きな手が、掴みかかろうと猛スピードで後ろから迫ってくる。

 

アリー「うひゃあああ!?でっけえ手だべえええ!?」

クラ 「ここは私が!」

ノンナ「クラーラ!」

 

ガシッ!

 

クラーラが両腕で巨大な手を掴み、膠着状態に持ち込ませる。

 

クラ 「今です!カチューシャ様をお願いします!」

アリー「クラーラさん!」

ノンナ「任せましたよ。__行きましょう!」

ニーナ「は、はいっ!」

 

ノンナたちは勢いよく階段を駆け上がっていった。

そして、しばらくクラーラは巨大な手と力比べをした後・・・・ゆっくり手を離した。

手は瞬時に数本の触手にばらけ、一瞬で引っ込んでいく。

 

クラ 「後はノンナ様に任せましょうか」

 

クラーラは髪を手でさらっと払いながらひとり呟いた。

 

イカチ「・・・・来たでゲソね」

ノンナ「カチューシャ!」

カチュ「っ!ノンナ!ニーナ!アリーナ!」

 

屋上には、いつでも落とせる位置にカチューシャを吊り下げているイカチューシャがいた。

眼下にはなんとかできないかとうろうろしている隊員たちの姿が見える。

 

イカチ「よくぞここまで来れたでゲソ。誉めてやろうじゃなイカ!」

ノンナ「イカチューシャ、ここまでです。今すぐカチューシャを開放してくれれば、罪には問いませんよ」

イカチ「許しを請うのはそちらでゲソ。こっちは手加減なんてできないでゲソよ?」

 

にらみ合いが続き、冷たい風が両者の間を吹き抜ける。

 

カチュ「ねえイカチューシャ、もうやめましょうよ!こんなの貴女らしくないわ!」

イカチ「うるさいでゲソ!無力な人質は黙ってるでゲソ!」

カチュ「だって__」

ノンナ「・・・・お二人とも、耳を」

 

カチューシャとイカチューシャが言い合っているスキにノンナがニーナたちに耳打ちする。

 

ニーナ「えっ、そったらこと__」

ノンナ「頼みましたよ」

 

言うが早いか、ノンナは瞬間的に駆け出しでイカチューシャに接近する。

 

イカチ「!」

 

不意を突かれたイカチューシャが何本も触手を飛ばしてくるが、それをことごとくいなしてイカチューシャに接近していく。

 

ニーナ「ええい、やるしかねえべ、アリーナ!」

アリー「んだ!」

 

やぶれかぶれな風に二人はカチューシャに向けて駆け出す。

 

イカチ「!やらせないでゲソ!」

 

ニーナたちに気が付いたイカチューシャが触手を伸ばそうとすると__

 

ノンナ「懐がお留守ですよ」

 

注意がそれた瞬間をついたノンナが、イカチューシャの眼前に迫る。

 

イカチ「!?」

 

反射的に触手で攻撃しようとするが__

 

ノンナ「甘いですね」

 

それも読んでいたノンナがしゃがんでかわし、そのままイカチューシャの太もも付近を掴み、そのまま横向きに持ち上げる。

 

イカチ「うわわわわわ!?」

 

ボフン!

 

持ち上げたそのままの体制でイカチューシャを積んであった雪山に自分ごとイカチューシャと突っ込む。

バランスを崩し、カチューシャを掴んでいる触手が大きく揺れる。

 

カチュ「わわわわわ!?」

 

直後。

 

イカチ「あ痛たたたたたたたた!?」

 

雪山の中からイカチューシャの悲鳴が聞こえてくる。

雪山から姿を現したイカチューシャは、ノンナに首元をがっちりと抑え込まれながら、もう片腕で腕を捻りあげられていた。

 

ニーナ「コマンドサンボ!?」

アリー「ありゃー痛そうだべー・・・・」

 

もはや技が完璧に決まり、勝敗は決したように見えた。

 

イカチ「おのれー!こうなったら、死なばもろともでゲソー!」

 

パッ

 

イカチューシャが簀巻きにしていたカチューシャから触手を放した。

 

カチュ「きゃああああ!」

ノンナ「カチューシャ!」

 

そのまま真っ逆さまに落ち始めるカチューシャ。

もうおしまいかと諦めかけた瞬間__

 

ニーナ「カチューシャさまー!」

カチュ「えっ!?ニーナ!?」

 

落ちたカチューシャを追いかけて、そのままニーナとアリーナが飛び降りてきた!

落ちながら二人はしっかりとカチューシャをかばうように包み込む。

 

アリー「じっとしててくだしゃー!」

カチュ「アリーナ!?」

 

ボッスーン!

 

そのまま三人は一塊になって柔らかい新雪の中へ落ちていった。

その後、隊員総出で雪をかき分け、すぐに三人が助け出された。

 

ニーナ「カチューシャ隊長、大丈夫だべか!?ケガしてねえか!?」

カチュ「ニーナ!何ムチャしてるのよ!一緒に飛び降りるなんて!」

アリー「ちゅうても、あれしかなかべ!見捨てるなんて、できゃしねえ!」

 

やがて簀巻きも解かれ、やっとカチューシャは地面に足を付けた。

 

クラ 「カチューシャ様!」

 

建物の中からクラーラが飛び出してくる。

そのままの勢いでカチューシャに抱き着く。

 

クラ 「カチューシャ様、ご無事でよかった・・・・!」

カチュ「クラーラ・・・・。・・・・その、ね。みんな・・・・」

 

クラーラに抱き着かれたままもごもごと言いづらそうな様子のカチューシャ。

 

ニーナ「?何だべか?」

カチュ「えーっと、その・・・・、あ、ありがとう、助けに来てくれて」

アリー「!」

ニーナ「!」

 

思わぬ一言に驚く一同。

 

カチュ「・・・・な、何よ、その顔」

ニーナ「いんやー、予想外過ぎて・・・・」

アリー「どってんしたじゃー・・・・」

カチュ「ちょっと!どういう意味よ!カチューシャがお礼を言ったら変だって言うの!?」

ニーナ「いやいやいや!そったら意味ではなぐてですね!?」

カチュ「どう見てもそうでしょ!コラー!待ちなさいー!」

ニーナ「勘弁してくだしゃー!」

ノンナ「いつものカチューシャに戻りましたね」

イカチ「これなら、もう心配はないんじゃなイカ?」

 

元気にニーナを追いかけまわすカチューシャを、屋上から見下ろすノンナと、イカチューシャだった。

その日の午後、イカチューシャの部屋にて。

 

ノンナ「イカチューシャ、お荷物はこちらにまとめておきました」

イカチ「ありがとうでゲソ」

 

イカチューシャはノンナのまとめてくれた着替えなど私物が詰まったリュックを背負った。

 

クラ 「寂しくなりますね」

イカチ「そろそろれもんの方も人手が足りなくなってきたらしいのでゲソ。戻ってきてほしいと千鶴に言われてしまったでゲソからね。また今度、こっそり遊びに来るでゲソ」

ノンナ「お待ちしています」

 

イカチューシャは窓を開く。

窓の外はすぐ海が広がっている。

窓の縁に足をつき、そして飛び降り__

 

バアン!

 

カチュ「ちょっと待ちなさい!」

イカチ「!?」

 

ドアを勢いよく開き、カチューシャが駆け込んできた。

 

カチュ「イカチューシャ!貴女、黙ってプラウダから去るつもり?」

イカチ「うむ。私のプラウダ侵略作戦は失敗したのでゲソ。逃げ帰って別の場所を侵略するでゲソ」

カチュ「__最後まで、お芝居するつもりなの?」

イカチ「えっ?カチューシャ、何を言っているのでゲソ?」

カチュ「とぼけないで。あの騒ぎは、あなたたちで計画したんでしょう?イカチューシャが反乱を起こし、私を人質にして、みんなが助けに来てくれる所を私に見せるために」

イカチ「そんなわけないじゃなイカ。私の計画ではカチューシャが敗れたらみんな見限ってこちらにつくと踏んでいたのでゲソ。みんなで助けに来るなんて、予想外だったでゲソよ」

カチュ「・・・・そう。あくまで、あれは本心からの反乱だと言い切るつもりなのね」

イカチ「つもりも何も、本当のことでゲソ」

 

__と、カチューシャの口元にわずかに笑みが浮かぶ。

 

カチュ「__なら。まさか、これだけのことをしておきながらおめおめと帰れると思ってるのかしら?」

イカチ「ぇ」

カチュ「ノンナ、クラーラ」

ノンナ「はっ」

 

ガッ

 

カチューシャが合図すると、瞬時にクラーラがイカチューシャの両腕を掴む。

 

イカチ「えっ?クラーラ、何をするのでゲソ?」

カチュ「私に逆らって、タダで済むワケないでしょ?__粛清よ!」

 

次の瞬間、ノンナが麻袋をイカチューシャの頭にかぶせた。

 

イカチ「もがっ!?」




バッドエンドではありません、ご安心ください。

作中では自分が絶対君主であるがのようにふるまっているカチューシャですが、彼女だって17歳のうら若き乙女です。
きっと後悔や後ろめたさも少なからずあるのでは、という妄想が膨れ上がりこんな話ができました。
きっと彼女が悩んだり躓いたりすれば、プラウダのみんなが助けに行くはずです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。