侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。


アンチョビ→チョビ
ペパロニ→ペパ
カルパッチョ→カル

アマレット→アマ
ジェラート→ジェラ
パネトーネ→パネ

アンツィオ高校の生徒たち→
アンツィオ高校生A、B、C・・・・→アンA、B、C・・・・

南風の店長→南風
ニセイカ娘→偽イカ
偽エルヴィン→偽エル


第6話・迎えに行かなイカ?

夕方も近くなった、海の家れもん。

 

客A 「ごちそうさまでした~」

客B 「評判通り、おいしかったね!」

客A 「うん!」

ペパ 「まいどー!」

 

去っていく客に向けてペパロニが声を掛けた。

 

栄子 「これでお客さんは全部はけたな」

千鶴 「ええ。お片付けが終わったら私たちも帰りましょう」

イカ娘「ふー、やっと終わったでゲソ」

カル 「連日満席ですものね」

栄子 「最近はアンツィオコラボを聞きつけて、県外からくるお客さんもいるって話だよ?ほんとアンツィオさまさまだよ」

ペパ 「ま、こんくらいドゥーチェと私たちにかかれば軽いもんっすね!」

 

ふふん、と誇らしげなペパロニ。

 

ペパ 「ね、ドゥーチェ!」

チョビ「うぇあ!?・・・・あ、ああ、そうだな」

 

いきなり話題を振られ、戸惑うアンチョビ。

 

栄子 「?」

チョビ「さあ、もうひと踏ん張りだ。終わったら今日はみんなで銭湯だ!」

ペパ 「ひゃっほー!」

 

そして銭湯。

 

ペパ 「いえーい!一番風呂だー!」

 

湯船に飛び込み、水柱が上がる。

 

チョビ「うわっぷ!こらペパロニ!行儀悪いぞ!」

ペパ 「いいじゃないっすかー、まだ誰もいませんよー?」

チョビ「そういう問題じゃない!ちゃんとマナーをわきまえろー!」

 

そして銭湯も入り終え、待合室で牛乳瓶を買う。

 

カル 「ドゥーチェはコーヒー牛乳、ペパロニはフルーツ牛乳、イカ娘さんはノーマルの牛乳ですね」

 

各々の好みを熟知したカルパッチョが牛乳を振り分ける。

 

カル 「はいたけるくん、フルーツ牛乳」

たける「ありがとう、カルパッチョ姉ちゃん!」

 

そして牛乳も飲み終え、銭湯から出てくる一同。

そこへ駆け寄る一つの陰。

 

早苗 「イカちゃああああああああああああん!」

 

ガバァ!

 

イカ娘「ギャアアアア!」

 

早苗が目にも止まらぬスピードで抱き着いてくる。

 

早苗 「イカちゃんひどい!私に黙って銭湯に行っちゃうだなんて!私だって、イカちゃんと一緒のお風呂入ったり、洗いっこしたり、お風呂上がりの牛乳を飲みまわしたりしたかったぁ~!」

イカ娘「そういうことしようとしてくるから内緒にしてたのでゲソ!」

早苗 「私も一緒に入りたかった入りたかった入りたかった~!」

イカ娘「離すでゲソーッ!」

 

しがみついて駄々をこねまくる早苗の腕をガッ!と掴む笑顔のカルパッチョ。

 

カル 「早苗さん。そんな入りたいなら、私と一緒に入りましょう?」

早苗 「えっ、カルパッチョ!?でも、今出たばっかりなんじゃ__」

カル 「大丈夫。私は何度でもお風呂入っても構わないくらいお風呂好きだから。さっ、行きましょう」

早苗 「ちょっ、待って、ならイカちゃんも一緒に!待って!イカちゃん!イカちゃ~~~~ん!」

 

ズルズルズルズル

 

そのままカルパッチョは早苗を引きずって再び銭湯に消えていった。

 

栄子 「・・・・いいのか?放っておいて」

チョビ「あー・・・・カルパッチョはわがままが過ぎる奴にはああやって笑顔でお仕置きするんだ。ありゃ早苗の奴、当分開放してもらえないぞ」

パペ 「先帰ってようぜ。メシの準備してる間に帰ってくるって」

栄子 「ま、早苗にとってはいい薬か」

イカ娘「あのままずっと開放しないでいてほしいでゲソ」

 

夜の相沢家。

椅子につき、夕飯を囲う一同。

 

チョビ「今日はいいエビが買えた。だから今夜は海鮮ましましのアクアパッツァだ!」

イカ娘「やったー!エビでゲソ!」

 

嬉々としてエビに箸を伸ばすと__

 

サッ!

 

イカ娘「あっ!?」

 

早苗がそのエビをかすめ取る。

そして__

 

早苗 「はいイカちゃん、あ~ん♪」

 

その箸で食べさせようとする。

 

イカ娘「自分で食べるからいいでゲソ!邪魔するなでゲソ!」

早苗 「そんなこと言わないで~♪ほらほら、おいしいエビだよ~♪」

 

エビに釣られまいと必死に耐えるイカ娘と、なんとしても釣ろうとする早苗の攻防。

 

カル 「早 苗 さ ん?」

 

カルパッチョが笑顔で早苗を呼ぶ。

 

早苗 「っ!?__ご、ごめんなさい・・・・!」

 

途端におとなしくなる早苗の様子を見て、カルパッチョの知られざる部分を垣間見たイカ娘だった。

 

栄子 「ごちそーさまでした!いやー、今回は特にうまかった!」

イカ娘「毎晩至福でゲソ・・・・」

 

料理を平らげ満足な笑みを浮かべる。

 

チョビ「そうか、それならなによりだ」

栄子 「?」

 

何だか歯切れの悪いアンチョビに違和感を覚える。

 

チョビ「・・・・ち__」

千鶴 「アンチョビちゃん。はいこれ」

 

何か言いだそうとしたアンチョビの言葉を遮るように、一通の封筒を差し出す千鶴。

おもむろにそれを受け取ると__

 

チョビ「!千鶴さん、これ!?」

 

すぐに中身が何なのか分かったようだった。

 

千鶴 「ええ。今日までのアンチョビちゃんたちのバイト代。ひとまとめに渡すことになってごめんなさいね」

 

ふっ、とほほ笑みを浮かべる。

 

チョビ「・・・・千鶴さん。気づいてたんですか」

千鶴 「この間、大澤さんが来て、認められた時。あの時、決断をしていたのね」

イカ娘「何の話でゲソ?」

 

千鶴はふっと笑って、アンチョビに優しく手をかける。

 

千鶴 「アンチョビちゃんたちが帰る日が来たのよ」

 

次の日。

海の家れもんでは、千鶴が料理をふるまっていた。

店内には客の姿はなく、席にはアンチョビ、ペパロニ、カルパッチョ、イカ娘、栄子、早苗、たけるたちが座っていた。

 

イカ娘「いきなりさよならを言い出すなんて水臭いでゲソ」

チョビ「すまんすまん、いつ話を切り出そうか考えているうちにギリギリになっちゃってな」

栄子 「でも考えてみたらいつまでもバイトしててもらう訳にはいかないだろ。いつかはアンツィオに戻る日が来るんだから」

たける「元気でねアンチョビ姉ちゃん!また遊びに来てね!」

チョビ「ああもう!いい子だなあたけるは!」

早苗 「私としてももうちょっとドゥーチェと色々したかんだけどな~」

ペパ 「だったら早苗もアンツィオに来たらどうだ!?あいつらならゼッタイ歓迎してくれるぞ!」

カル 「そうね。早苗さんだったらみんなとすぐ仲良くなれそう」

早苗 「え~、どうしようかな~?(チラッ)」

イカ娘「こっち見ても引き留めてなんかあげないでゲソ」

早苗 「ああ~ん♪」

千鶴 「おまちどうさま」

 

次々とテーブルに並べられたのは、アンツィオやイタリア由来の料理。

どれもアンチョビが来てから千鶴が会得した料理である。

 

千鶴 「めしあがれ」

一同 「いただきまーす!」

 

一同は別れを感じさせない、ことさら陽気な食事会が始まった。

 

千鶴 「アンチョビちゃんといる間に色々なお料理のレパートリーが増えたの。すごく参考になったわ」

チョビ「それはこっちも同じです。これまでないほどにいい経験になりました」

ペパ 「そうっす!アンツィオにいたら見れない技術や調理方法が色々見られて大収穫っす!」

カル 「それにとても貴重な戦車まで乗らせてもらって・・・・。千鶴さんには感謝の念が堪えません」

栄子 「そういえば、あれはどうするんだ?アンツィオに持ってく?」

チョビ「いやいやいや、そういう訳にはいかんだろう!」

カル 「あれは歴史的にも価値のある戦車ですし・・・・さすがにあれほどデリケートな戦車を管理する設備が、残念ながら今のアンツィオには・・・・」

千鶴 「そうなの。じゃあ、あの子はうちで預かっておくわ。迎えに来れる準備ができたら、いつでも引き取りに来てね」

チョビ「ぜ、善処します」

たける「そういえば聞いたことなかったけど、アンツィオの人たちってどんな人たちだったの?」

ペパ 「ありゃ、聞かせたことなかったっけ?」

イカ娘「みんなパペロニみたい、って聞いたことはあるでゲソ」

チョビ「あー、そう考えて問題ないぞ」

ペパ 「ん?そりゃどういう意味っすか?」

チョビ「いや、そこまではひどくはないか」

ペパ 「ちょー!」

カル 「みんな自分の気持ちに正直で、こうと決めたことは引き下がらない芯の強さを持った子たちです」

チョビ「いい意味で自由、と言ったところかな・・・・」

ペパ 「時々言うこと聞かないところもあるっすけどね。でもいっつもドゥーチェを見るとドゥーチェ、ドゥーチェって駆け寄ってきてて、めっちゃドゥーチェを信頼してるっす」

???「ドゥーチェーーーッ!」

ペパ 「そうそう、こんなふうに・・・・あん?」

 

どこからか聞こえる聞き覚えのある声に辺りを見回す。

すると、浜辺の方から少女が三人、こちらへ向かって駆けてくる。

その姿は__

 

栄子 「あれ・・・・あの子たち、制服着てないか?」

チョビ「え?」

 

言われてアンチョビたちも振り返る。

と__アンチョビの目が見開く。

 

チョビ「な、ま、まさかあいつら!?」

ペパ 「どうしてここに!?」

カル 「あらあら」

 

れもんへ駆けてきた少女らは、間違いなくアンツィオの制服に身を包んでいた。

 

チョビ「アマレット!ジェラート!パネトーネ!?」

 

やがて少女たちはれもんへたどり着き、そのままの勢いでアンチョビに飛びついた。

 

アマ 「ドゥーチェーッ!」

ジェラ「会いたかったっすよー!」

パネ 「マジ寂しかったんですから!」

チョビ「お前たち・・・・どうしてここに!?」

 

目を丸くするアンチョビを見て、三人は悪戯っぽい笑みを浮かべながら沖合を指さす。

そこに浮かぶものを見て、アンチョビはまた言葉を失った。

 

カル 「あれは__」

ペパ 「アンツィオの学園艦!?」

 

そこには、アンチョビたちなら見間違いようもない、アンツィオ高校の学園艦が浮かんでいた。

 

カル 「どうして?たしか予定航路では北回りだから、こちらへ寄港する予定はなかったのに・・・・」

ジェラ「へへへ、それがですねー」

パネ 「ついこないだ、カペッリーニ先輩がアンツィオに来たんっす!」

チョビ「先輩が?」

アマ 「それで、ドゥーチェがついに『アンツィオ炒め』をセンパイに伝授されたって聞いたんす!そんでアタイら、いてもらってもいられなくなって!満場一致でこりゃドゥーチェを迎えに行くしかないってことになったんすよ!」

パネ 「それで、船舶科の奴らの尻ひっぱたいて、夕方まで無理やり寄港させたんすよ!なんかギャーギャー言ってたけど、気にしないっす!」

チョビ「ちょっ!?・・・・はあ、あとで船舶科の所に菓子折り持ってくか・・・・」

栄子 「こりゃあ、確かに・・・・」

イカ娘「自分に正直で自由でゲソね」

チョビ「はは・・・・だろう?」

 

先行していたアマレットたちに遅れながらも続々れもんへアンツィオ生たちが訪れる。

やがて店内は席が足りない程の人数でひしめき合うことになった。

 

イカ娘「これ、全部アンチョビの所の戦車道チームでゲソか?」

チョビ「ああ。はねっ返りが多くはあるが、頼りになる仲間たちだ」

栄子 「そりゃ見ればわかるさ。学園艦の進路を強引に変えてまで迎えに来るなんて、すごく慕われてないとありえないことだからな」

ペパ 「そうでしょそうでしょ!」

 

まるで自分のことのように嬉しそうに頷くペパロニ。

 

ジェラ「あっ!あなたが千鶴さんっすね?お話は聞いてるっす!」

千鶴 「あら、どんな?」

パネ 「何でもペパロニ姐さんすら超える料理の腕前を持ってるっていうじゃないっすか!」

アマ 「マジベネっす!」

ペパ 「そうだぞお前ら!」

ジェラ「あ!ペパロニ姐さん!」

ペパ 「千鶴さんはそりゃもう凄いんだからな!料理に関しては私も自信はあったけど、千鶴さんは次元が違うからな!」

アマ 「マジっすか!」

 

三人がキラキラした目で千鶴を見る。

ちょっと困った素振りをしたが、ニンジンと玉ねぎを取り出し、空中に放る。

そして__

 

シュパパパパパパパ!

 

目にも止まらぬ包丁さばきが野菜を捉え__

 

ストトトトトトトト

 

細切れになった野菜が鍋に中に吸い込まれていった。

 

アマ 「マンマミーーーーア!」

 

大はしゃぎする三人だった。

 

アンA「千鶴姐さん!ドゥーチェがお世話になったお礼に、パスタをご馳走するっす!」

アンB「じゃあ私はピッツァ焼きます!」

アンC「それじゃあアタシはラザニアを!」

千鶴 「あらあらまあまあ」

 

手際よく調理し始めるアンツィオ生たちを楽しそうに見つめる千鶴。

 

栄子 「ほんとみんな料理好きなんだな」

ペパ 「そりゃ当然!みんな勉強よりバイトより、まず食事が大好きだからな!」

栄子 「学生がそれでいいのかよ・・・・。まあ、好きなことが何より優先、てのは共感できるが」

イカ娘「何気に自分を正当化させようとしてるゲソ」

アンD「おお!この子がたける君っすね!」

アンE「きゃー!かわいいー!」

たける「はじめまして!」

 

初対面でテンションが高いアンツィオ生たちにもきちんと挨拶するたける。

 

アンD「きちんと挨拶できてるし!可愛すぎ!」

 

むぎゅっと抱き寄せる。

 

たける「わぶっ!」

アンE「あっ、ずるい!私も!」

たける「むぎゅっ!?」

 

もみくちゃにされ、おもちゃのように振り回される。

 

カル 「みんな、たける君をいじめちゃだめよ」

アンD「わかってますってカルパッチョ姐さん!」

アンE「私らちゃんと可愛がってますんで!」

たける「むぐー!」

 

二人にはさまれて身動きできないでいるたける。

 

アマ 「アンタがこっちでドゥーチェと組んでくれてた子だっけ?たしかサナエって言ってたか」

早苗 「ええ、そうよ!ドゥーチェに是非にって言われちゃって~♪」」

ジェラ「カルパッチョ姐さんも褒めてたぞ?自分の装填ペースを考えた砲撃をしてくれる子だって」

早苗 「ドゥーチェの指導がよかったおかげよ。私だってチームを組むまでは実戦経験なかったんだもの」

パネ 「だがドゥーチェが認めたのは事実!そしてドゥーチェが認めたのならアタイらは仲間!そうだよな!」

アン生「おー!」

 

フリに応え全員で返事する。

 

早苗 「みんなー!ありがとうー!」

 

立ち上がり手を振って応える早苗、更に盛り上がるアンツィオ一同。

 

イカ娘「あの喧噪・・・・早苗が何人もいるみたいでゲソ」

栄子 「みんなして早苗並のテンションの高さか・・・・。並じゃないな」

アンF「あっ!アンタがイカ娘だな!?」

イカ娘「ゲソッ!?」

 

ついにアンツィオ生たちがイカ娘に絡み始めた。

イカ娘の返事を待たず各々が触手を掴む。

 

イカ娘「ちょっ、何するでゲソか!」

アンG「へーっ、これが触手かー!」

アンH「話には聞いてたけど、たしかにウネウネしてる!」

アンF「なんだかぺとぺとしてるなあ」

イカ娘「勝手に触るなでゲソ!アンチョビの仲間だからって、何やってもいいわけじゃないでゲソよ!」

 

しゅるっ!

 

頭に来たイカ娘の触手が彼女らを襲い、あっという間に天井近くまで縛り上げる。

 

アンG「おおおおお!?」

イカ娘「驚いたでゲソ?反省するというのなら降ろしてやらなくもないでゲソよ?」

アンH「すっげーーーーっ!」

イカ娘「ゲソ!?」

アンF「一人でアタイら三人まとめて持ち上げちゃったよ!聞いてた以上にすっげー!」

アマ 「あっ!お前らだけずるいぞー!アタイもアタイもー!」

ジェラ「イカ娘ー!ほら掴んで掴んでー!」

 

自分たちも持ち上げてもらおうとぴょんぴょん跳ねるジェラートたち。

 

イカ娘「ああもう、絡むなでゲソ!」

ペパ 「あーっ!イカ娘!」

イカ娘「ペパロニ、いい所に!こいつら引きはがしてくれでゲソー!」

ペパ 「コイツらだけズルいぞー!やるなら私も持ち上げてくれってばー!」

イカ娘「同類ーーーっ!」

栄子 「いやはや、ノリと勢いがすごいとは聞いたけど、想像以上だな・・・・。イカ娘もタジタジだぞ」

 

と、そこへ沢山の料理を用意した千鶴たちが現れた。

 

千鶴 「あらあら、楽しそうね」

ペパ 「おお、すごい量っすね!」

千鶴 「せっかく来てくれたんだもの、人数分準備しなくちゃ。手伝ってくれてありがとう」

アンA「いえいえ、私たちなんて微々たるものっす!」

アンB「千鶴姐さんマジベネっす!」

アンC「食の世界のラ・チーマっす!」

栄子 「すっかり心酔しとる」

カル 「うちにとって料理の腕は何より尊敬を集めますから。もし千鶴さんがアンツィオに来られたら、ドゥーチェの地位も脅かされるかもしれませんね」

チョビ「千鶴さんほどの人がアンツィオを率いてくれるなら、何も異議はない。むしろそうしてくれれば我がアンツィオは一気に強豪、いや常時ベスト4入りになるぞ?」

ペパ 「ええーっ、でも私はイヤっすよー?ドゥーチェはドゥーチェじゃないと!」

千鶴 「ふふふ、安心して。ペパロニちゃんたちのドゥーチェはずっとアンチョビちゃんだから」

ペパ 「そっすよねー!」

チョビ「全く、たとえ話で何ムキになってるんだか」

 

少しうれしそうに苦笑するアンチョビ。

やがて料理全部が並び終え、臨時に外に設置されたテーブル席にも全員が着く。

 

チョビ「お前たち!今日のプリモピアットとセコンドピアットは千鶴さんが腕によりをかけてくれたんだ!心して味わえよ!」

アン生「シー!」

イカ娘「全員、グラスは行き渡ったでゲソか?」

アン生「|チェルト(もちろん)ー!」

カル 「それじゃあ、みんな」

一同 「いっただっきまーーす!」

 

途端に始まる宴会。

各々が心向く料理の手を伸ばし堪能する。

そんな様子を眺めながら、千鶴は今まで以上に嬉しそうな笑顔を浮かべている。

 

アンC「なあ早苗、一緒にアンツィオ来なよ!」

アンD「そうそう!早苗なら大歓迎だぜ!」

早苗 「う~ん、どうしよっかな~・・・・」

アンE「早苗なら、どんな呼び名になるのかな?」

アンA「フィットチーネ!」

アンB「ボンゴレ!」

アンC「ニョッキ!」

アンD「いやいや、ここはティラミスでどうよ!」

三人 「アイラジョーネ(それだ)!」

 

時間を追うごとにどんどん盛り上がっていく店内。

 

栄子 「いやはや、すさまじい盛り上がり方だなあ」

イカ娘「アンチョビが戻ってくるのが嬉しいのはわかるでゲソが、はしゃぎすぎでゲソ」

カル 「え?」

栄子 「え?って」

ペパ 「ウチのメシ時はいつもこんなもんっすよ?」

栄子 「マジで!?」

イカ娘「食事のたびにこんな全力なのでゲソか・・・・」

チョビ「そうだ。満足いく食事をとり、心と体が満たされてこそ次に全力を尽くせるんだ。ならば食事にも全力を尽くさなきゃ嘘だろう?」

栄子 「全力尽くすために全力尽くしてどうするんだよ・・・・」

千鶴 「本当にいい子たちね。アンチョビちゃんを慕っているのがよく分かるわ」

チョビ「はい」

千鶴 「寂しくなるわ。アンチョビちゃんたちにはもっといてもらいたかったけど」

チョビいつかまた、こいつらを連れて遊びに行きます」

千鶴 「ええ、楽しみに待ってるわ」

 

などと食事を楽しんでいると__

 

南風 「・・・・」

イカ娘「あ、南風のおっさんでゲソ」

栄子 「いつの間に」

 

いつの間にか南風の店長がニセイカ娘を携えて店先に仁王立ちしていた。

 

栄子 「どうしたおっさん、そんなところで突っ立ったままで」

南風 「ああ、今日こそはと改良を加えて挑戦に来たんだがな」

栄子 「まだ諦めてなかったのか・・・・。ていうか、どうして立ってるだけだったんだ?こないだみたいに『たのもーう!』とか大声出さないと気づけないぞ?」

南風 「昼飯を楽しんでる最中だろうが!それを遮って自分の用を押し通すほどガキじゃない!」

栄子 (変なトコで良識あるなあ)

 

そのままじっと待つ南風の店長。

それに気づかず、最後まで食事と会話を楽しんだアンチョビたち。

それを見計らって__

 

南風 「たのもーーーーーーーう!」

 

南風の店長は大声を上げた。

 

チョビ「うわあっ!?な、何だ!?」

ペパ 「あ!こないだのヘンテコメカのオッサン!」

カル 「何の御用ですか?」

南風 「ああ、風のうわさで聞いたんだが・・・・君たちが今日帰るという話だそうじゃないか」

カル 「はい、相違ありません」

南風 「やはりそうだったか・・・・。そうなる前に是非リベンジを果たして、君たちにウチの店に来てもらいたかったのだが」

チョビ「諦めてなかったのか・・・・」

ペパ 「いいガッツっすね」

カル 「すいません、そう言ったわけでおじ様と勝負するわけには__」

南風 「では君たちにひと勝負申し込む!」

チョビ「人の話聞け!」

南風 「いやいや、まず話を聞け。確かにあの時、君たちのバイト雇用権をかけた勝負は俺の負けだった。しかし結果は戦車道における大事を理解できなかったせいで負けたのだ」

イカ娘「そうでゲソね」

南風 「そして俺はその失敗を雪ぐため、更なる改良に全力を注いだ」

栄子 (海の家経営に全力注げよ)

南風 「そしてようやく努力が日の目を見たのだ!君たちの記憶の中ではきっと俺はロクに戦車道を出来ない男だと思われているのだろう。だから今ここで、そのイメージを払拭したのだ」

カル 「つまるところ、戦車道の試合のお申込みですね」

南風 「要約するとそうだ」

イカ娘「回りくどいでゲソ」

カル 「ドゥーチェ、いかがいたしましょう」

チョビ「我がアンツィオとしては、受けた勝負を投げることはしたくない。しかし、今私たちの都合だけで勝負を受けるわけにも__」

千鶴 「あら、いいじゃないアンチョビちゃん」

チョビ「千鶴さん」

千鶴 「早苗ちゃんもアンチョビちゃんたちとはこれでしばらくお別れだし、最後に一緒に戦車道をやるのもいいんじゃないかしら。それに」

 

ちら、と停めてあるサハリアノを見る。

 

千鶴 「あの子も、最後にもう一度乗ってもらいたいんじゃないかしら」

チョビ「・・・・」

カル 「ドゥーチェ」

 

しばらく考え込んでいたが、かっと目を開く。

 

チョビ「わかった、この勝負受けて立つ!」

ペパ 「サハリアノチーム最後の見せ場っすね!早苗!今のうちに調整しとくっすよ!」

早苗 「うん!任せて!」

 

受けるや否やサハリアノに乗り込みチェックを行い始めるペパロニと早苗。

 

チョビ「それで、ニセイカの戦車はどこだ?またあいつとやればいいんだろう?」

ニセ娘「彼女ラハモウジキ到着シマスゲソ」

栄子 「彼女『ら』?」

 

ギャルギャルギャル

 

気が付けば彼方からみほの髪型をしたニセイカが顔を覗かせる、ニセイカⅣ号がこちらへ向かってきている。

 

イカ娘「おお、来たでゲ・・・・ソ!?」

 

イカ娘は言葉を失った。

 

ギャルギャルギャル×4

 

ニセイカⅣ号の後ろから、更に四両現れたのである。

 

チョビ「何だ何だ何だ!?」

栄子 「増えてる!?」

 

現れたのは三突、八九式、M3リー、そして38(t)。

それぞれのキューポラからそれぞれの車長を模したニセイカ娘の首が生えている。

 

ペパ 「あははははは!すっげえ光景!」

カル 「これって、もしかしてあの時の・・・・」

南風 「ああ。第63回戦車道大会二回戦時の大洗のチーム編成だ。君たちの相手をするならば、こいつが一番だと思ってな」

チョビ「十分すぎるくらいだ。今回は私たちが勝つ!いや、今回からは私たちが勝つ!」

イカ娘「私たちも手伝うでゲソ!」

栄子 「渚ちゃんとシンディー呼んでくるわ」

 

連絡を取ろうとする栄子を、

 

チョビ「待った!」

 

アンチョビが制止する。

 

チョビ「すまんが、この試合は私たちアンツィオだけでやらせてくれ」

栄子 「アンチョビさん・・・・」

チョビ「あの大会で負けた、あの時の西住達のチーム。コピーと言えど、実力は間違いない。だが私たちだってあれから訓練を重ねてきた。あの頃の西住たちくらいは越えているという自負はある!」

カル 「それをこの場で証明したいんです」

ペパ 「やってやるっすよ!」

 

かくして場所を山岳戦車演習場に移し、お互い位置に着いた。

 

チョビ「同じ場所ではないにせよ、戦場が山岳エリアとはな。ますます闘志がわいてくる」

 

南風チームは第63回大会二回戦時の大洗女子と同様の編成。

アンチョビたちのチームはサハリアノ(P40は修理が終わってなかった)、練習用セモヴェンテ、残りがCV33が三両。

ルールも同じくフラッグ戦で、ニセイカⅣ号とサハリアノがそれぞれフラッグ車を務める。

ひらりとサハリアノに飛び乗り、キューポラを空けるアンチョビ。

中にはペパロニ、カルパッチョ、__そして早苗が乗っている。

 

早苗 「ドゥーチェ、まさか降りろなんて言わないわよね?」

チョビ「当然だ。お前は今は、いやお前は私たちのチームメイトだからな!」

 

そしてお互いが位置に着いた。

そして__

 

バアン!

 

試合開始の合図が鳴った。

 

偽みほ「パンツァーフォーデゲソ」

チョビ「アヴァンティ!」

 

同時に全車両が動き出す。

まずセオリー通りにニセイカM3が偵察に出る。

周囲を警戒していると__

 

ヴィイイイイイン!

 

近くをサハリアノがけたたましく通り過ぎていく。

 

偽梓 「サハリアノ発見!右舷を駆ケ抜ケテイキマスゲソ!」

偽みほ『機動力ヲ活カシテコチラノ懐ヘ飛ビ込ンデ、一気ニ勝負ヲツケルツモリデゲソ?』

偽梓 「ココデ仕留メルデゲソ」

 

即座に対応しようと旋回するニセM3。

正確に照準をサハリアノの後部に定め__

 

偽梓 「発射デゲソ!」

 

バアン!

バアン!

シュポッ

 

偽梓 「エッ!?」

 

瞬間、ニセイカM3の背後に砲弾が命中し、ニセイカM3から白旗が上がる。

アンチョビは自らをおとりにし、注意を向かわせて背後からセモヴェンテが打ち抜いたのだ。

一方背後から撃たれたにも拘わらず、サハリアノはしっかり砲撃を避けている。

 

カル 「作戦成功、二砲門を仕留めました」

ペパ 「よっしゃ!」

早苗 「ドゥーチェの作戦通りね!」

チョビ「よし、これで一両分のアドバンテージはできた。次へ行くぞ!」

偽みほ「M3ガヤラレマシタゲソ」

南風 「やはり一筋縄でいく相手などではないな。ならばこちらもあらゆる手を使うぞ!全車両に通達、『トレ』の展開だ!」

偽みほ「了解シマシタゲソ」

 

周囲を警戒しながら奥へ進むサハリアノ。

 

チョビ「初手から偵察役がやられたとあれば、向こうはそううかつには分散できないはずだ。体制を整えるために集結しているはず、そこを見つけ叩く!」

 

そこへ無線が入る。

 

アマ 『こちら右舷CV!ドゥーチェ、敵の密集地を見つけました!』

チョビ「!」

アマ 『エリアG2、開けた場所に四両とも展開してるっす!』

チョビ「わかった!全車、G2に向かえ!」

アン生『シー!』

 

アンチョビの指示でG2へ集結するCVたち。

と、その道中、CVに乗っているジェラートが何かを見つけた。

 

ジェラ「ちょっと待った、あそこなんかいるよ?」

パネ 「え?」

 

指摘されたところへ向かうと__

同じように開けた広場のようなものがあった。

そこには__

 

ジェラ『こちら中央付近CV、今前方に大洗の戦車四両見つけたっす!』

チョビ「はあ!?さっきと位置が違うぞ!?」

 

突然の報告に戸惑っていると__

 

アンA『こちらCV!ポイントF6で大洗の戦車四両見つけました!』

 

次々と各地で大洗の車両の目撃情報が入ってくる。

しかもどのポイントも四両となっている。

そして__

 

チョビ「ここにもいる・・・・」

 

アンチョビたちが向かう道中、また別の場所にも大洗の戦車が四両密集待機している。

 

ペパ 「どういうことっすか!?まさか向こうの戦車は分裂できるとか!?」

チョビ「そんなことあるわけないだろ!いくら南風のおっさんの技術でも、それはない!」

パネ 『じゃあどういうことっすか!?全部ニセモノとか?』

ペパ 「ニセモノ・・・・そうか!姐さん、マカロニっすよ!」

チョビ「!そうか!」

早苗 「マカロニって・・・・ドゥーチェが大会で使ったっていう、書き割り作戦のこと?」

ペパ 「そう!あん時は運悪くバレちゃったけど、バレてないときはすごい牽制と陽動になるからなあ!」

チョビ「運?」

カル 「まあまあ・・・・。全CVへ。各地で発見された戦車は、ほぼマカロニと思われます。注意深く観察し、それがニセモノであるならば別ポイントへ合流してください。軽はずみに手を出さないように」

ペパ 「てことは、マカロニで脅かして結集するつもりなんすかね?」

早苗 「問題は、どこが本物かってことよね」

チョビ「もしマカロニなら注意深く見ればわかる。ばれないように様子を見るぞ」

 

戦車から降り、そろりそろりと近づき様子を見る。

 

チョビ「書き割りなら、横から見れば平面なはずだ」

 

角度的にもう横に回り込んでいるはずなのだが__

 

ペパ 「平面じゃないっすね」

チョビ「ああ」

 

四両とも平面ではなく、ちゃんと立体だ。

微動だにせず、全車長が同じ方向を向いている。

 

チョビ(メカだからか・・・・整然としすぎて気味が悪いな)

チョビ「私だ。どうやらここにいる四両は全て書き割りじゃない。ここが本物の可能性が高い」

カル 『了解しました。ではこちらへ集結するように指示を出します』

 

カルパッチョへ無線を飛ばし、無線をしまう。

 

アマ 「カルパッチョ姐さんからで、本物見つけたから集まれってさ」

アンC「やっぱりあれってニセモノだったんだー」

アマ 「味な真似してくれるよ、よりによってマカロニを真似るだなんて」

アンC「それじゃードゥーチェのとこ向かうよー」

 

見張っていたCVが動き出す。

それを追いかけるように、ニセ典子の目だけが横に動いた。

 

ペパ 「そんじゃドゥーチェ、戻りましょっか。みんなが集まった時いい位置とっといたほうがいいっすからね」

チョビ「そうだな」

 

腰を上げ、戻ろうと一歩進み__

何かに勘付く。

ひょい、と足元の石を拾い上げ、それをニセイカたちに向けて振りかぶる。

 

ペパ 「ちょっ、ドゥーチェ!?何やってんすか!?」

 

ペパロニの制止も聞かず大きく意思を放り投げ、ニセイカたちの近くの茂みに落ちた。

 

ガサササッ

 

それにより音が立ち__

 

偽みほ「!」

 

その音にニセイカⅣ号のニセみほだけが即座に反応し、首を向ける。

__残りの三両は微動だにしない。

 

ペパ 「あれ?これって・・・・」

チョビ「しまった・・・・これは罠だ!」

カル 『全車両!罠です!マカロニから目を離さないで!』

アマ 「え?」

 

その意味を理解する前に__

 

ガコンッ

 

ニセイカ八九式の砲身がアマレットのCVを捉え__

 

偽典子「根性レシーブデゲソ」

 

バアン!

 

57mm砲が火を噴いた。

 

偽杏 「撃ッチャエーデゲソ」

偽エル「フォイア!!」

偽みほ「撃テ!」

 

ほぼ同時に他の場所でも砲撃が起こり、去ろうとしたCVたちやサハリアノの側面を襲う。

 

アンD「うわあああああ!?」

アンE「被弾!敵襲ーっ!?」

 

慌てふためくCVたちに容赦なく浴びせられる砲弾。

 

アンC「どういうこと!?本物いるじゃん!」

アマ 「くそっ!」

 

済んでのところでかわし、反転する。

 

アマ 「お返しだ!」

 

ババババババッ

 

一矢報いろうと機銃を掃射する。

狙いは外れ、八九式の横にある他の戦車に当たり__

 

バアン!

 

他三両がはじけた。

瞬間、アマレットは理解する。

 

アマ 「風船・・・・!ドゥーチェ、マカロニに一両だけ本物が交じってます!他は全部ふうせ__」

 

バアン!

シュポッ

 

直後、直撃を受けたアマレットのCVはひっくり返り白旗を上げた。

ニセイカⅣ号に追撃され、逃げるしかないサハリアノ。

 

チョビ「アマレット!おい!」

カル 「・・・・やられたようです」

早苗 「被害はどう?」

カル 「あの不意打ちでカルロヴェローチェが二両撃破され、もう一両を助けようとしたセモヴェンテも討たれました」

チョビ「一気に三両もだと・・・・!」

ペパ 「特にセモヴェンテやられたのが痛いっすね・・・・。残りはウチらとCV二両っす」

早苗 「え?カルロヴェローチェは残り一両よ?」

チョビ「くっ・・・・!」

 

苦々しい顔をするアンチョビ。

 

南風 「やはり引っかかったな。ニセモノの中に一両だけ本物を混ぜる!これこそ南風式、『マカロニ作戦トレ』よ!」

チョビ「侮っていた訳じゃない・・・・訳じゃないけど、あのおっさんのほうが遥かに上手だった・・・・!」

カル 「私たちがマカロニを得意とした上でマカロニを仕掛け、その裏をついてくるなんて」

ペパ 「悔しいけどすごい策士っす!」

 

ドオン!ドオン!

 

サハリアノを追いかける間にも、ニセイカⅣ号の元へニセイカ38(t)、ニセイカ八九式らが次々と合流し始め、あっという間に三両に追い回される羽目になった。

 

チョビ「うおおおおおおお!?来てる来てる!三両追いかけてきてるぞおー!」

ペパ 「飛ばすっすよ!」

 

ブイイイン!

 

チョビ「ぐはっ!?」

 

急発進に腰を強く打つアンチョビ。

構わず急加速するサハリアノがぐんぐん距離を話す。

 

早苗 「さすがサハリアノね、一気に引き離しちゃった」

カル 「でももう一両はどこ?」

 

カルパッチョは別方向を見ながら何かを警戒している。

次の瞬間__

 

ガサァッ!

 

濃い茂みの中からニセイカ三突の砲身が姿を現した。

その狙いはサハリアノにバッチリ向いている。

 

早苗 「真正面!?」

チョビ「しまったーーーっ!?」

 

そして__

 

ドオオン!

 

ニセイカ三突の75mm長砲身から砲弾が放たれる。

その軌道は吸い込まれるかのようにサハリアノへ飛んでくる。

アンチョビが覚悟を決めると__

 

ジェラ「ドゥーーーチェーーーーッ!」

 

ブイイイイイイン!

 

横からジェラートのCVが全速力で文字通り飛び出して来た。

その車体は三突の射線にバッチリ被り__砲弾をその身で受け止めた。

 

バアアアアアアアン!

 

ド派手な音と爆発に包まれ、CVは空中で何回転もしながら吹っ飛んでいった。

 

チョビ「ジェラート!?パネトーネ!」

 

あまりのダメージのせいか車体はひしゃげ、原形をとどめていない。

 

チョビ「ジェラート・・・・!」

 

その姿を目の当たりにしたアンチョビの目つきが変わった。

 

チョビ「スパーラ!」

 

ドオン!

シュポッ

 

即座に反応した早苗の砲撃により、ニセイカ三突は仕留められた。

 

チョビ「全速離脱!」

 

直後に全速力で離れ、背後からの砲撃をかわす。

 

チョビ「残りは私たちだけだ。だがこれは敗北じゃないぞ!ここから一気に勝利を掴む!」

ペパ 「よっしゃー!やるぜ早苗!」

早苗 「うん!カルパッチョさんも準備はいい!?」

カル 「もちろんです!」

チョビ「巻き尺作戦、決行するぞ!」

 

ドオン!

バアン!

ズドオン!

 

背後から幾重もの砲撃を受けながら逃げ続けるサハリアノ。

やがて林を抜け、開けた場所に出た。

アンチョビがアイコンタクトを飛ばし、ペパロニが頷き、早苗が構え、カルパッチョが砲弾を持ち上げる。

 

チョビ「回せーーーっ!」

ペパ 「よっしゃーーっ!」

 

ブイイイイイイン!

 

サハリアノが全力で信地旋回を行い、車体がコマのように回りだす。

そんな速度で振り回される車内で、ペパロニたちは必死に形相で振り回されないように踏ん張り続ける。

 

ドオン!

ボオン!

 

機動がつかめないせいかニセイカたちも回り続けるサハリアノを捉えられずにいる。

そんな中、早苗が照準器を覗く。

車体が回り続け、当然視界も高速で回っている。

その中で__

 

早苗 「私にも仲良くしてくれた、みんなやドゥーチェのため!」

 

ドオン!

 

高速回転する中で放たれた砲弾は、それでも相手を捉えていた。

 

バアアアン!

シュポッ

 

わずかにずれたのか、砲弾はニセイカⅣ号のすぐ隣にいたニセイカ38(t)に直撃、白旗を上げた。

 

チョビ「まだだ!次!」

 

振り飛ばされないようにこらえるアンチョビの声を聴き、カルパッチョが苦しそうにしながらも手早く砲弾を装填する。

回転は速度を落とさずサハリアノは回り続ける。

 

ドオン!

バアアアン!

シュポッ

 

今度はニセイカ八九式に命中し、撃破する。

しかしフラッグ車のニセイカⅣ号は健在だった。

やがて回転は弱まっていき__側面を晒す形で停まってしまった。

 

チョビ「うええ・・・・気持ち悪い」

 

当然ながらその高速回転に耐えられるわけもなく、アンチョビはキューポラの上でぐったりしている。

 

偽みほ「チャンスデゲソ」

 

正確に照準を付け、しっかり狙い__

 

偽みの「撃テデゲソ!」

 

バアン!

 

砲弾が放たれた瞬間。

 

ヴィイイイイイ!

ボオン!

 

サハリアノは全速力でバックをかけ、済んでのところで砲撃を交わした。

 

偽みほ「エエッ!?」

 

バアアアン!

 

最後にニセみほが見たのは、ぐったりしながらもニヤリと笑うアンチョビと、自分を狙う75mm砲の砲口だった。

 

アン生「かんぱーい!」

 

打ち上げが行われているれもんで、アンツィオ生たちがお別れ会を兼ねた盛大な宴会を行っている。

連絡を受けて宴会にだけは間に合った渚やシンディーも一緒に楽しんでいる。

 

イカ娘「何かにつけて宴会でゲソね」

千鶴 「ふふふ、いいじゃない?楽しいもの」

南風 「まさかあれでも勝てんとはな。勝てて当たり前だと思ってたんだが」

ペパ 「へへん、当然っすよ!ウチらは大会の時より成長してるんっすからね!大会の時の西住さんたちに負けるはずはないっすよ!」

偽みほ「素晴ラシイ試合デシタゲソ」

カル 「ええ、あなたたちもとても強かったわ」

 

偽みほをはじめ、各車両の車長役を務めたニセイカたちも共にテーブルを囲んでいる。

 

ジェラ「それにしても驚いたなー。まさかマカロニをあそこまで改良しちゃうなんて」

南風 「改良を加え自分のものに仕立てるのは技術屋として当然のことだ。それはメカだろうが料理だろうが同じことよ」

栄子 「いやだから・・・・まあいいや、いい試合だったしな」

アマ 「でもほんとアレが風船だなんて思わなかった。パスタだと思ったらラーメンだったくらいにビックリ!」

イカ娘「それってどれくらい違うのでゲソ」

南風 「何にせよ・・・・いい試合だった。アンツィオに帰ってもしっかりな。応援するぞ」

 

そう言って店を去る南風の店長たち。

 

アン生「ありがとうございましたー!」

南風 「おう!」

 

きちんと挨拶をしたアンツィオ勢に、南風の店長は後ろ手に手を振って帰っていった。

 

チョビ「さて・・・・名残惜しいがそろそろお開きだ」

栄子 「そっか・・・・。お別れだな」

たける「みんな、元気でね!はい、これ」

 

お小遣いをはたいたのか、たけるが花束をカルパッチョに渡す。

 

カル 「ありがとう、たける君。近くに寄港したらまた来るからね」

たける「うん!待ってるよ!」

ペパ 「栄子!次会う時はモリオカート絶対にぶっちぎるかんな!」

栄子 「望むところだ!ベストラップ見せてやる!」

早苗 「ドゥーチェー・・・・」

 

早苗が涙ぐみながらアンチョビに抱き着く。

 

チョビ「世話になったな、早苗」

早苗 「うん・・・・」

チョビ「元気でな。離れててもちゃんと戦車道の練習はしてくれよな?」

早苗 「うん・・・・」

チョビ「あと、あんまりイカ娘に迷惑かけるなよ?」

早苗 「・・・・」

チョビ「いや、そこは『うん』だろ!」

イカ娘「やはり早苗は早苗でゲソ」

 

思い思いの別れの言葉を交わし終えたころ。

 

千鶴 「アンチョビちゃん」

 

千鶴が人数分の飲み物を差し入れる。

 

千鶴 「最後にみんなで乾杯して、お開きにしましょう」

チョビ「はい」

 

やがて全員にグラスが行き渡る。

 

チョビ「それじゃあ!今後のアンツィオとれもんの更なる発展と成長を願って!」

一同 「かんぱーい!」

 

そうして、全員ドリンクを一気飲みした。

 

・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

 

ボォーッ・・・・

 

遠くの水平線、沈む夕日に向かってアンツィオの学園艦が汽笛を鳴らしながら進む。

 

チョビ「ん・・・・」

 

閉じていた瞼を開き、アンチョビは目を開ける。

そして__

遠ざかっていく学園艦を店内からぼーっと眺めた。

 

チョビ「・・・・ん?」

 

違和感を感じて周囲を見渡す。

今いる場所は、海の家れもん。

周りのテーブル席や床には、カルパッチョやペパロニ、アンツィオ生たちが全員寝入っている。

 

チョビ「・・・・」

 

段々青ざめながら再度海を見る。

 

海の向こうへアンツィオの学園艦がどんどん去っていく。

 

チョビ「ああああああああああああああああーーーーーー!」

 

アンチョビはあらん限りの大声で絶叫するのであった。




その後、イカ娘は店裏に捨てられている大量の睡眠導入剤の空きビンを見つけたそうです。
一体誰が、何に使ったのでしょうね?(すっとぼけ)
しばらくれもんや相沢家は大所帯でとても賑やかなことになるでしょう。

さて、夏編最終話もそろそろ残り半分となってまいりました。
このペースを崩さぬまま走り抜けたいですね。

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