侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。

サンダース付属校の生徒たち→サン生
サンダース生A、B、C→サンA、サンB、サンC


カバさんチーム→カバ
カエサル→カエ
エルヴィン→エル
おりょう→おりょ
左衛門佐→左衛門


サンダース大学付属高校編じゃなイカ?
第1話・フレンドリーじゃなイカ?


とある日のお昼前。

 

イカ娘「行ってくるでゲソー」

たける「いってらっしゃーい」

 

イカ娘は相沢家を出て、散歩に出かけた。

 

イカ娘「今日は海の家も無いし、戦車道の練習もお休みでゲソ。たまにはノンビリ散歩もいいものでゲソ」

 

しばらく歩いていると、道路に連なって停まっているM4シャーマンの一団を見つけた。

 

イカ娘「おお!戦車がいっぱいじゃなイカ!」

 

歩み寄って眺めるイカ娘。

 

イカ娘「見たことのない戦車でゲソね。それにしても、みんな同じ戦車じゃなイカ。こうも同じばかりのだと、壮観でゲソねー」

ケイ 「ヘイ、そこのあなた!地元の子かしら?」

イカ娘「む?」

 

先頭の車輛に乗っていたケイが、キューポラから身を乗り出してイカ娘に声をかける。

 

イカ娘「そうでゲソが、何の用でゲソ?」

ケイ 「実は私たち江の島に行きたいんだけどね、どう行けばいいのかしら?このまま進めば海に出られるかしら?」

イカ娘「この道は海に辿り着く前に大きくカーブしてて、別の方向に行っちゃうでゲソよ」

ケイ 「オー、リアリー!?危うく迷うところだったわ!で、どこの道に出ればいいのかしら?」

イカ娘「それだと、この先の十字路を右に曲がって、えー、二つ?いや、三つ目の角を・・・・?うーん、思い出そうとすると曖昧になってしまうでゲソ」

ケイ 「つまり、この道から外れればいいのね?サンキュー、また別の道を探してみるわ」

イカ娘「ちょっと待つでゲソ」

ケイ 「ホワット?」

イカ娘「歩きながら案内すればきっとわかるでゲソ。私が案内するから、ついてきてくれなイカ?」

ケイ 「オー、それは助かるわ!それなら一緒にに乗ったらどう?そのほうがスムーズでしょ?」

イカ娘「おお、いいのでゲソ!?」

ケイ 「オフコース!」

イカ娘「じゃあ、お言葉に甘えるでゲソ!」

 

イカ娘はケイのM4シャーマンによじ登り、砲塔の上に立つ。

 

イカ娘「いざ、全速前進でゲソ!」

ケイ 「オッケー!ゴーアヘーッ!」

 

ケイの合図を受け、シャーマンの隊列が前進し始める。

 

イカ娘「おおーっ、なかなか壮観ではなイカ!」

ケイ 「でしょー?これだけ沢山の戦車を一気に道路を走らせるなんて、そうはないんだから」

イカ娘「そこを右でゲソ」

ケイ 「オッケー!」

 

次々と後続の戦車もスムーズに交差点を曲がる。

 

イカ娘「おお、お主たち、操縦もかなり上手でゲソね」

ケイ 「そうでしょー。ウチの戦車道チームはしっかり鍛えてあるからね!そういえばまだ名乗ってなかったわね。ワタシはケイ、よろしくね」

イカ娘「私はイカ娘でゲソ。よろしくでゲソ」

ケイ 「イカ娘(スクイッドガール)?なかなかエキセントリックでチャーミーな名前ね」

イカ娘「うむ!お主はなかなか見どころがあるでゲソ!」

ケイ 「アハハ!ありがとうねー」

アリサ「ねえ、先頭車の上で隊長と和気あいあいとしてるあの子、誰?」

ナオミ「さあ。さっき隊長が声をかけてたのは見てたけど」

アリサ「ほんと人見知りしないんだから、うちの隊長」

 

イカ娘とケイが和気あいあいと話しているうちに、シャーマン小隊は江の島へ渡る道路へと辿り着いた。

 

イカ娘「ここまでくればもうわかるでゲソね」

ケイ 「サンキューベリマッチ!おかげで助かっちゃったわ!」

イカ娘「お安い御用でゲソ」

ケイ 「ねえ、スクイーディ。あなたこの後ヒマかしら?」

イカ娘「む?まあ、することと言えば散歩くらいだから、ヒマといえばヒマかもしれないでゲソ」

ケイ 「私たちこれから江の島でお昼しようかと思ってるんだけど、良かったら一緒に来ない?」

イカ娘「いいのでゲソ!?」

ケイ 「オフコース!人数が多ければ、それだけ楽しいからね!」

イカ娘「もちろん行くでゲソ!」

 

そしてケイたちは江の島へ渡り、駐車場に戦車を停める。

 

ケイ 「さて!江の島へ着いたワケだけど~・・・・?」

 

ケイはイカ娘に視線を流す。

 

イカ娘「む?」

ケイ 「ねえスクイーディ。私たち、ここの『生シラス』っていうのを食べたいんだけれど、どこのを食べればいいかしら?あなたのおすすめってある?」

アリサ「地元なんでしょ?だったらおススメの場所くらい、一つや二つあるでしょ」

イカ娘「生シラスでゲソか。それなら・・・」

ケイ 「それなら!?」

イカ娘「海の中が一番でゲソ!」

アリサ「はあ!?」

イカ娘「海の中で泳ぐ、自然そのままのシラス・・・・!それこそが、一番おいしいシラスでゲソ!」

アリサ「あんた何バカなこと言ってんのよ!海の中のシラスなんてどうやって食べろっていうのよ!」

イカ娘「泳いで捕まえればいいじゃなイカ」

アリサ「あんたねぇ・・・・!」

 

アリサがイカ娘に食ってかかるように詰め寄ろうとすると・・・・

 

ケイ 「っ・・・・ぷっ!」

ナオミ「隊長?」

ケイ 「アハハハハハハハハ!」

 

突如、ケイが爆笑し始めた。

 

ケイ 「アハハハ!新鮮・・・・!確かに鮮度100%!間違いないわね!アハハハハハ!」

アリサ「あーあ、また隊長がヘンなツボに入った・・・・」

ナオミ「このツボの入り方だけは私にもまだ理解できないのよね」

イカ娘(どこが面白かったのでゲソ?)

ケイ 「泳いで・・・・!新鮮生シラス・・・・!絶対生じゃないの!アハハハハ!」

 

涙目になるほど爆笑したケイが落ち着き始める。

 

ケイ 「はーっ、はーっ!いいセンスしてるわ、スクイーディ!久々のクリティカルヒットよ!」

イカ娘「?よくわからないけど、喜んだのならそれでいいでゲソ」

ケイ 「ふう。じゃあ、海でとれた、生シラスを食べさせてくれるお店は知ってるかしら?」

イカ娘「ふむ、それならいくつか知っているでゲソ!私に続くといいじゃなイカ!」

ケイ 「オーケー!みんな、続くわよー!」

 

イカ娘の案内を受け、生シラス丼の店を目指すサンダースの面々。

やがて、ケイがぴたりと足を止めた。

 

イカ娘「む?どうしたでゲソ?」

ケイ 「あの後姿は・・・・」

 

誰かを見つけたのか、ケイがとある店先のほうへ歩み寄る。

 

ケイ 「ヘーイ!オッドボール!」

優花里「わああっ!?な、何ごとでありますか!?」

 

ケイは後ろから優花里を頭ごと抱き寄せた。

 

イカ娘「あれ、秋山さんじゃなイカ」

優花里「へっ?あっ、イカ娘殿!それにケイ殿!どうしてここに!?」

ケイ 「あら?二人は知り合いだったのかしら」

優花里「はい!イカ娘殿とは、戦車で繋がる重い縁があるのです!」

ケイ 「へえ!スクイーディも戦車道やってるの?」

イカ娘「うむ!秋山さんたちとは戦車を通じて語り合った仲でゲソ!」

ケイ 「ワーオ!それは興味深いわね!是非話を聞かせてもらうわよ!」

 

さらにテンションの上がったケイは、イカ娘と優花里の腕をとって列に戻り始めた。

 

優花里「あれっ!?あの、私、西住殿とお土産を買いに来てましてですね!?」

みほ 「あれ!?ケイさんとイカ娘ちゃん!?」

 

店の奥から江の島限定ボコのぬいぐるみを抱いたみほが出てくる。

 

ケイ 「ヘイ、ミホ!ちょーっとオッドボールを借りてくよー♪」

みほ 「ふえっ!?あ、はい、・・・・ええっ!?」

ケイ 「ゴーゴー!レッツシラス丼ー♪」

優花里「に、西住殿ォーっ!」

みほ 「優花里さーーーん!」

 

強引に連れ去られ、テンションの低い優花里。

 

優花里「うう・・・・。久々に西住殿と二人きりの時間が過ごせると思っていたのにぃ・・・・」

ケイ 「まあまあ!お昼はおごるから、ね?」

優花里「それは、有難い申し出なのですが・・・・」

ケイ 「ミホたちとはいつも一緒でしょ?たまにはワタシたちにも付き合ってよ」

イカ娘「二人も知り合いだったのでゲソ?」

ケイ 「イエス!戦車道大会の時に、ちょっとねー」

優花里「あの時は、ご迷惑おかけしました」

ケイ 「ノープロブレム!今思い返しても、作戦会議にまで潜り込んできたあの潜入スキル、並のものじゃなかったわよ」

優花里「あはは・・・・。あの頃は、私も無我夢中だったので・・・・」

イカ娘「ふむ、どうやらかなり込み入った仲のようじゃなイカ。詳しく教えてもらえなイカ?」

ケイ 「いいわよー!お昼を食べながら、目いっぱいトークしようじゃないの!」

アリサ「いつの間にか大洗の子が一緒にいるし・・・・」

ナオミ「さっき隊長がお土産屋の前から連れ去ってたぞ。店の中には大洗の隊長もいたしな」

アリサ「マジで!?顔合わせないでよかったー・・・・」

ナオミ「お前まだ西住さんに苦手意識持ってるのか?あの時も別に文句言われたりはしなかっただろう」

アリサ「隊長と西住さんが並んで立ってると、呼吸が苦しくなるのよ。いつ隊長が『反省会』って言いだすか気が気じゃなくって・・・・」

ナオミ(トラウマになってるな)

 

かくして一行は江の島の生シラス丼を提供する店に辿りついた。

店の中に入り、何とか全員分の席を確保する。

ケイ、ナオミ、アリサ、優花里、イカ娘は同じテーブルを囲んでいる。

 

ケイ 「それじゃあみんな生シラス丼でいいわねー!?」

サン生「イェーッ!」

イカ娘「イエー!」

ケイ 「すいませーん、オーダーお願いしまーす!」

 

注文を済ませ、シラス丼を待つ間、店内はサンダース生のテンション高いガールズトークに包まれる。

 

優花里「それにしても驚きました。まさかサンダースの皆さんも江の島にいらしてたとは」

ケイ 「明日の練習試合に備えてね。試合が始まっちゃうと撤収とかでゆっくり観光できないから、今日のうちにみんなで江の島へ行こうって話になったのよ」

アリサ「私は練習に費やしましょうって言ったんだけれどね。大洗の子たちとやりあうのだから、万全に万全を重ねるべきなのに」

ケイ 「まあまあ。油断してるわけじゃないけれど、大洗の子たちだってこうして江の島観光してるわけでしょ?それなのに私たちだけが一日中練習してたら、フェアとは言えないんじゃない?」

イカ娘「正々堂々という訳でゲソね?」

ナオミ「それがフェアプレイの精神かどうか、ちょっと疑問に思えますけどね」

ケイ 「アハハハ!細かいことは気にしない!それに、ほら」

 

店内を見渡すと、他のサンダース生たちも和気あいあいと楽しそうに話をしたり、江の島の観光マップを広げて次はどこに行こうかなどと相談をしている。

 

ケイ 「みんな年頃の女の子なんだから。戦車だけに縛られず、遊びにも行きたくなる時はあるとは思わない?」

ナオミ「それは、否定はしませんが」

ケイ 「まあ、最後に調整するために、帰ったらちょっとした模擬戦くらいはするから。それでいいでしょ?」

ナオミ「はあ」

ケイ 「それで?スクイーディとオッドボールはどういう過程で知り合ったの?」

優花里「それはですね。私たちがこちらへ着いた初日、入った海の家で__」

 

かくかくしかじか。

 

ナオミ「戦車道始めて数日であんこうチームに勝負を申し込むとか、なかなか命知らずね」

イカ娘「完膚なきまでにやられたでゲソ」

アリサ「そりゃそうでしょ、あのチームを超えることは、全国の戦車道チームの目標でもあるのよ?ビギナーにそうそう抜け駆けされてたまるもんですか」

イカ娘「でも私たちもかなり慣れてきたでゲソ。次はきっと勝てるでゲソ!」

優花里「おお、すごい自信ですね!受けて立ちますよ!」

イカ娘「うむ!」

ナオミ(根拠はどこに?)

イカ娘「ケイたちのチームもかなり強そうでゲソ。あれだけうまく戦車を動かせるなら、西住さんたちにも勝てるんじゃなイカ?」

ケイ 「ウーン、それはどうかしら?私たちにとっても大洗はいつか超えるべき大きな壁でもあるんだから」

ナオミ「実際、私たちは大洗に一回戦で当たって、負けているからね」

ケイ 「あの時のミホたち、ホントすごかったわね」

イカ娘「西住さんたちが日本で一番強くなった大会でゲソ?」

ケイ 「そう!私たちの無線傍受を逆手に取った陽動と、隠れてたフラッグ車をあぶり出し釣り出したあの戦術!いま思い出してもまだエキサイトしちゃうわ!」

 

無線傍受の話題になって、アリサがビクンと身を縮める。

 

イカ娘「?」

優花里「だけどあれは、ケイ殿のフェアプレイの精神に助けられた勝利でした。全くの手加減なしでは、どうなっていたことか」

ケイ 「でも、あれでよかったと今でも思ってる。その後も戦い続けるあなたたちの姿を見て、チームのみんなも新しい目標と向上心を持つようになった。これは、今後の私たちにも大きい意味を持つと思うわ」

アリサ「だからこそ、明日の練習試合では全力で行かせてもらうわよ。もちろん正々堂々と、正面から勝って見せるんだから!西住隊長にもしっかり伝えておきなさいよ!」

優花里「はい!了解しました!」

 

その後シラス丼が出来上がり、全員に配られる。

そして全員が食べ終わり、店を出た。

 

ケイ 「あー、おいしかった!スクイーディのおすすめなだけはあるわね!」

イカ娘「うむ、なによりでゲソ!」

優花里「ケイ殿、ご馳走様でした!!」

ケイ 「うん、色々話せて楽しかったわ!明日の練習試合、よろしくってミホに伝えてくれる?」

優花里「了解であります!」

 

優花里はビシっと敬礼をしたのち、坂を駆け下りていった。

そして優花里が去った後、サンダース生たちは各々江の島を見て回るため散らばっていった。

 

ケイ 「ねえスクイーディ。また聞いちゃうけど、この後時間あるかしら?」

イカ娘「む?」

 

サンダースの面々が江の島観光を終わらせ、夕方も近くなった頃。

イカ娘とケイたちは、由比ガ浜の戦車道用フィールド、砂浜エリアにいた。

砂浜には二十両あまりのM4シャーマンが並べられている。

 

イカ娘「おお、すごい数の戦車でゲソ!これから何をするのでゲソ?」

ケイ 「これから二つのチームに分かれて軽く演習をするんだけど。スクイーディ、私たちと一緒にやってみない?」

アリサ「隊長!?」

イカ娘「いいのでゲソ!?」

ケイ 「今日スクイーディと一緒にいて、もっと貴女のことが知りたくなっちゃったのよ。お互いの事を知るには戦車道が一番!もちろんそちらがよければ、だけどね?」

アリサ「何を言ってるんですか隊長!こいつは部外者で、ムガムグ!」

 

口を挟もうとしたアリサを、ナオミが後ろから口を塞ぐ。

 

ナオミ「まあ、今日は隊長のワガママを許してやろうじゃないか。な?」

アリサ「むー・・・・」

ケイ 「それで、どう?受けてもらえるかしら?」

イカ娘「もちろん受けるでゲソ!」

 

かくしてチーム分けがされ、イカ娘はケイとチームを組み、アリサ・ナオミが率いるチームと10vs10のフラッグ戦演習を行うことになった。

 

ケイ 「じゃあ、スクイーディはあのシャーマンに乗って。車長をやってもらえるかしら?」

イカ娘「わかったでゲソ!」

アリサ「突然現れたと思ったら演習にも紛れ込んで、車長までやろうだなんて、まるであの娘と同じだわ!タカシはアタシのものだったのに、突然横から現れて横取りしてー・・・・!」

ナオミ「落ち着けアリサ、主旨がズレてる」

 

お互いに距離をとり、開始の合図を待つ。

 

操縦主「今日はお願いね、スクイーディ!」

装填手「隊長にいいところと見せようね~!」

砲手 「エンリョなく指示をちょうだいね!」

通信手「今日はアナタが車長なんだから!」

イカ娘「うむ!よろしくでゲソ!」

審判役「用意!__開始!」

ケイ 「ゴーアヘーッ!」

アリサ「行くわよ!ディパーチャー!」

 

合図とともにケイが号令を飛ばし、戦車が一斉に前進する。

イカ娘側のフラッグ車はケイ車、相手側のフラッグ車はアリサ車である。

 

イカ娘「おおおー!壮大じゃなイカ!」

 

初めての団体戦を目の当たりにし、興奮するイカ娘。

 

イカ娘「私たちも続くでゲソ!前進ーでゲソ!」

 

すこし遅れてイカ娘のシャーマンも後を追いかける。

 

ドオン!

 

先に進んだチームは、早くも砲撃を始めている。

 

ケイ 「ムダ弾は極力避けて!今回のルールはフラッグ戦よ!フラッグ車の位置特定に努めて!それに向こうにはナオミのファイアフライがいるわ!射線に立たないように心がけて!」

 

無線から、昼とは雰囲気の違う凛とした雰囲気のケイの指示が飛ぶ。

が、次の瞬間

 

ドオン!

シュポッ

 

ケイのそばを走るシャーマンの一台が砲撃を受け、一撃で白旗を上げる。

 

サンA「オーノー!」

ケイ 「シット!流石ナオミだわ!速攻で頭数を減らすつもりね!」

 

遠めに見る限り、アリサ側のチームは一丸になって前進してきている。

密集した陣形のため、ファイアフライの位置がケイからはわからない。

 

ケイ (ファイアフライの位置が掴めない。このままだとアリサ隊と交戦に入る前に何両もやられちゃうわ)

 

ドオン!

シュポッ

 

サンB「ガッデム!」

 

考えているうちに二両目がやられ、ケイは判断を下す。

 

ケイ 「左右散会!アリサの隊を両側から挟み込む!三両は私と一緒に左、あとは右へ回り込んで!」

 

正面からぶつかるのを回避するため、隊を二つに分けアリサ隊を挟み込むように両側へ回り込みはじめる。

やがて双方の射程範囲に入り、砲撃戦が始まった。

 

イカ娘「おおー、すごい迫力でゲソ」

装填手「のんきなこと言ってる場合じゃないよスクイーディ。私たちも何かしないと~」

操縦主「でも完全に乗り遅れちゃったね。私たち孤立しちゃってるよ」

砲手 「でもここからじゃ砲撃届かないよ?幸い、アリサさんたちは隊長のほうに注意が向いてるけど」

通信手「近づいてみる?・・・・でも、ナオミさんの砲撃が怖いしなあ」

操縦主「私の腕じゃどこにいるかわからないナオミさんの砲撃は避けれないよ」

砲手 「せめてどこから狙っているのかさえわかればなあ」

通信手「ここの砂浜、砂丘もなくて平坦だから、奥のほうが見渡せないんだよねー」

砲手 「どこか高台か見下ろせる場所があれば、隊長にナオミさんの場所を教えられるんだけど・・・・」

装填手「そんな高い場所、この辺りにはないよね~」

イカ娘「高いところから見ればいいのでゲソ?」

装填手「え?」

 

アリサ(いける!狙い通り、最初の二両を潰して頭数に差をつけたら、隊長は二分させたわ!全員で護衛の少ない隊長のフラッグ車を追いかければ、私たちでも隊長を倒せる!)

アリサ「全車右旋回!隊長のフラッグ車のみを狙いなさい!私が反則スレスレの手しか出来ない女じゃないってこと、ここで証明して見せるんだから!」

ナオミ「別に誰もそんなこと言ってないんだけどな。・・・・ん?何だあれは?」

 

ふと、照準器を除いたナオミが遠目に何かを見つける。

 

アリサ「どうしたのナオミ!?」

ナオミ「いや、隊長たちよりずっと奥に、何かが浮いてるのが見える」

アリサ「え?」

 

言われてアリサは双眼鏡を取り出し、言われた方向を見る。

すると、確かに何かが空中に浮かんでいるように見えた。

 

アリサ「何アレ?」

ナオミ「探査用の気球か?」

アリサ「まさか!あのフェアプレイが口癖の隊長が、演習で自分だけ道具使うなんて考えられないわ!」

ナオミ「じゃあ、アレは何なんだ?」

アリサ「んー・・・・?」

 

謎の物体が気になりすぎたアリサは、双眼鏡の倍率を上げてその物体を確かめようとする。

 

アリサ「っ!?」

ナオミ「どうした、アリサ」

アリサ「なによアレ!」

ナオミ「何を見たんだ?ちゃんと報告してくれ」

アリサ「ス、スクイーディ・・・・」

ナオミ「え?」

アリサ「スクイーディが宙を浮いてるー!?」

ナオミ「何っ!?」

 

イカ娘は、シャーマンに巻き付けた触手を伸ばし、はるか上空へ体を持ち上げていた。

さらに双眼鏡と咽喉マイクを装備している。

 

アリサ「何よあの子、あれで何を・・・・はっ、まずい!ナオミ!周囲を警戒して!」

ナオミ「っ!」

 

アリサが気が付いた時には時すでに遅く、右手側に大きく回り込んでいた生き残りの二両のシャーマンがナオミのファイアフライへ吶喊してきていた。

 

ナオミ「・・・・やられたな」

 

砲撃をしやすくするために停止状態にしていたファイアフライは、逃げることも出来ずあえなく撃破された。

 

アリサ「ナオミ!」

イカ娘「ケイ、あやつらがナオミを倒したでゲソ!」

ケイ 「オーケー、やってくれたわねあの子たち!」

イカ娘「むっ!」

ケイ 「どうしたの?」

イカ娘「アリサたちが全員、そちらに向かってるでゲソ!」

 

その時、アリサ車の車内では。

 

アリサ「・・・・くっ、あんなの反則じゃない!」

 

苛立ちを抑えながらアリサは周囲を見渡す。

 

アリサ(分散した一方はナオミの近く、隊長車を追ってる私たちとは離れてる!私たちの残りは九両、あちらは四両!行ける!)

アリサ「速度を落とさないで!頭数で飲み込むわよ!」

 

アリサは勢いを落とさず、九両でケイを追いかけ続ける指示を出してた。

 

ケイ 「さすがアリサね。いい判断だわ!」

イカ娘「私はどうすればいいでゲソ?まだ偵察を続けたほうがいいでゲソ?」

ケイ 「ううん、もう十分よ。あなたたちにはもっと大事な役目を任せたいの。やってくれるかしら?」

イカ娘「うむ!私たちに任せるでゲソ!」

ケイ 「グッド!いい返事だわ!まず__」

 

アリサチームは速度を変えず、ケイたちを追い続けていく。

追いかけながら砲撃を続け、何発かはケイ車両ギリギリの所へ着弾する。

 

アリサ「もうちょっとよ、もうちょっと!もう少しで__えっ!?」

 

アリサは目の前で起きたことに目を疑った。

ケイたちのシャーマン四両が、全速力を保ったまま百八十度の高速Uターンを披露したのだ。

 

アリサ「噓でしょ・・・・!?隊長が、ナポリターン!?」

ケイ 「ファイヤー!」

 

そのまま向けた砲口をアリサ車に向けて砲撃した。

 

アリサ「うわああっ!?」

 

アリサたちは砲撃に慌て、速度を下げてしまう。

だが砲撃はどの車両にも当たらず、無傷のままだった。

 

ケイ 「あちゃー、やっぱり覚えたての技じゃ精度に欠くわね」

 

不慣れなナポリターンのせいでケイたちのシャーマンはアリサたちのほうを向いたまま停止してしまっている。

 

アリサ「びっくりした・・・・!でも、この距離なら!」

 

アリサのシャーマンがケイ車に狙いを定める。

 

アリサ「隊長、いただきますよ!・・・・はっ!」

 

瞬間、アリサは悪寒に襲われた。

 

アリサ「アクセル全開!急速旋回!」

サンC「えっ!?」

 

ドオン!

 

アリサ車が急旋回をかけた直後、元いた場所に着弾があった。

 

砲手 「避けられた!」

操縦主「あーん、当たったと思ったのにー!」

 

後ろから近付いていたイカ娘たちの車両が、射程ギリギリからアリサ車を狙っていた。

 

イカ娘「なんで避けれるのでゲソー!」

ケイ 「アリサ・・・・。グッジョブ!」

 

パアン!

シュポッ

 

次の瞬間、ケイのフラッグ車は被弾し、白旗が上がった。

その後、ケイたちは戦車を降りてお互いを讃えあっていた。

 

イカ娘「惜しかったでゲソー」

ケイ 「グッドゲーム!今日は最高の演習だったわ!」

 

ケイは満面の笑顔でアリサを抱きしめる。

 

アリサ「た、隊長・・・・」

ケイ 「よくここまで成長してくれたわ!やっぱりあなたは私が見込んだ通りの子だった!」

アリサ「隊長・・・・!」

 

アリサは涙ぐみながらケイに抱きしめられている。

 

ナオミ「まさかあんな偵察があるとはな」

操縦主「私たちも驚きですよ」

砲手 「まさに人間離れしてましたね」

イカ娘「私はイカでゲソ!」

通信手「イカだからか~」

装填手「イカってこういうのだっけ?」

 

その後、全ての戦車の回収が終わり、アリサたちも回収車へ乗り込んだ。

 

ケイ 「ありがとう、スクイーディ。おかげで最高の思い出ができたわ」

イカ娘「どういたしましてでゲソ。明日の試合、頑張るでゲソよ?」

ケイ 「オフコース!任せておいて!」

 

ケイは笑顔で、サムズアップで答えた。

帰り道、回収車の上で。

 

ナオミ「隊長、今日の演習、わざとアリサに判断を迫るシチュエーションを用意しましたね?」

ケイ 「あら、わかっちゃった?さすがナオミ」

ナオミ「私が待ち構えているのを分かって被弾しながら正面に突撃なんて考えられないし、隊を二分させるのもどちらを追わせるか瞬時の判断を問うため。最後のナポリターンだって、その気になれば当てられましたよね?」

ケイ 「まあ、そこは本当に練習中だったんだけれど。アリサが最後の最後、油断なく状況を把握してフィニッシュを決められるか、それが見たかったの」

ナオミ「あの急旋回、あの時の大洗を思い出しましたよ」

ケイ 「ナオミ、アリサをお願いね。絶対、あの子はこれからのサンダースを引っ張ってくれるわ」

ナオミ「イエス、マム」

 

夕陽に照らされながら、ナオミは笑顔で返した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その後、海の家れもんにて。

 

優花里「あの練習試合の時のサンダースの皆さん、まるで別人でしたよ」

沙織 「そうそう!特にアリサさんなんて、次から次へと色んな手を打ってきて!」

麻子 「まるでミニ西住さんだったな」

みほ 「あんな所にナオミさんを配置するなんて、本当に紙一重だったよね」

イカ娘「それにしても、西住さん相手に引き分けに持ち込むなんて、すごいじゃなイカ」

優花里「全くです!あの試合はどちらが勝ってもおかしくない、素晴らしい試合でしたよ」

華  「ケイさんも、凄く嬉しそうにしていましたものね」

みほ 「あっ、そうだ。ケイさんと言えば、イカ娘ちゃんのことも誉めていたよ?」

イカ娘「おお!なんて言っていたでゲソ?」

みほ 「えっと、『スクイーディは凄い子よ!あの子のあの技は、戦車道の未来を塗り替えかねないんだから!』って言っていたかな?」

イカ娘「さすがケイでゲソ。よく分かっているじゃなイカ!」

沙織 「なになに、『あの技』って?」

イカ娘「ふっふっふ、見たいなら特別に見せてやっても良いのでゲソよ?」

優花里「おお!是非お願いしたいです!」

みほ 「じゃあ、今度私たちが演習するときに、見せてもらっていい?」

イカ娘「お安い御用でゲソ!」

 

そしてその後、大洗女子の演習の日。

サンダースの時と同じ、由比ガ浜の砂浜エリアで練習となった。

 

みほ 「今日は、前にお話ししたイカ娘ちゃんも特別に練習に参加します」

イカ娘「イカ娘でゲソ!」

みほ 「今回の練習は四両ずつ、くまさん小隊とときつねさん小隊に分かれてフラッグ戦を行います。イカ娘ちゃんはくまさん小隊のフラッグ車、三突に同乗してください」

イカ娘「わかったでゲソ!」

栄子 「あんまり迷惑かけるんじゃないぞー?」

 

同行していた栄子が注意を飛ばす。

 

イカ娘「ふっふっふ、栄子はそこで私の活躍を見ていればいいじゃなイカ!」

 

そして各自配置につき、試合が開始される。

 

おりょ「うーん、高低差がないせいで奥が見えにくいぜよ」

エル 「三突は特に車高が低いから、上に立っても全く見渡せん」

イカ娘「はっはっは、早速私の出番でゲソ!」

カエ 「おっ?」

 

イカ娘はいそいそと三突の上に立ち、サンダースの時と同じように触手を伸ばして上へ登り始める。

 

エル 「ちょっ!?」

左衛門「おい、イカ娘!何してる!?」

イカ娘「何って、よく見えないからこうやって高いところから見渡してるのでゲソ」

カエ 「そうじゃなくて、早く降りろって!」

イカ娘「心配ないでゲソ。落ちたりなんてマヌケなことはしないでゲソ!」

エル 「違う違う違う!私たちはフラッグ車なんだぞ!」

イカ娘「?どういう事でゲソ?」

エル 「お前がみんなを見渡せるという事は、みんなお前が見えてるんだよ!」

イカ娘「あ・・・・」

 

イカ娘は今になって気が付いた。

フラッグ車に乗っているイカ娘が触手を伸ばして真上に上がるということは、その真下にフラッグ車がいる、ということになるのを。

現にイカ娘の視線の先、Ⅳ号をはじめ他の戦車たちがイカ娘を目印にどんどん集結し始めている。

イカ娘が慌てて車内に戻るも、三突は完全にみほたちに包囲されていた。

 

みほ 「・・・・」

イカ娘「あー・・・・」

みほ 「撃て!」

イカ娘「ギャーーーーッ!!」

カバ 「ギャーーーーッ!!」

 

ドオン!

ズドオン!

バアン!

 

みほたちの集中砲火を受ける三突。

そんな三突を、栄子は呆れ顔で見ていた。

 

栄子 「タコ殴りにあっとるな・・・・。イカなのに」




実際、アリサは経験と知識がたまればいい選手になれると思います。
あとタカシの件も吹っ切れれば。(無理か)

今回は完成させてから、イカ娘成分が薄かったかな?と若干反省もありました。

次回はイカ娘成分も濃いめの展開を心がけていきますので、よろしくお願いします。

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