侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。


カエサル→カエ

ナカジマ→ナカ

ダージリン→ダー
オレンジペコ→ペコ
アッサム→アッサ
ローズヒップ→ローズ

アンチョビ→チョビ
カルパッチョ→カル
ペパロニ→ペパ

カチューシャ→カチュ

シンデョー→シン

能面ライダーボコもん→BKM

幼いころのまほ→幼まほ


エピローグです!

ピーッ

 

機械音『登録されていません』

 

みほ 「うーん・・・・」

 

黒森峰女学園学園艦入口。

そこでは、みほが顔認証システムに向かってにらめっこをしている。

 

ピーッ

 

機械音『登録されていません』

 

みほ 「うーん・・・・」

 

何度やってもみほの顔は認識されず、エラーばかりで扉は開かない。

 

沙織 「みぽりん、ちょっと変わって」

みほ 「あ、うん」

 

位置を変え沙織がチャレンジする。

 

ピーッ

 

機械音『登録されていません』

 

だがやはりエラーだった。

 

沙織 「やっぱダメか〜」

麻子 「流石に対処早いな」

優花里「こういうのは厳正でなければいけませんからね。誰でも気軽に入れてはいけないわけですし」

沙織 「それ、ゆかりんが言う?」

華  「・・・・」

みほ 「もう一度・・・・」

 

諦めずにみほが顔認証システムの前に立とうとすると・・・・

 

プシュー

 

扉が開いた。

 

エリカ「さっきから何やってんのアンタ」

 

開いた扉の先には、まほと呆れ顔のエリカが立っていた。

 

みほ 「あ、エリカさん、お姉ちゃん」

エリカ「さっきから入艦システムに何度も引っ掛かってる奴がいるって保安部から連絡が来てるんだけど」

みほ 「あ・・・・ごめんなさい。もしかしたら、まだ顔認証が通るんじゃないかなって思って・・・・」

エリカ「通るわけないでしょ。アンタたちはもう部外者(・・・)なんだから」

みほ 「・・・・うん、そうだね」

 

寂しそうな顔をするみほに、少し気まずそうな顔をするエリカ。

 

エリカ「・・・・まあ、何とか認証を通り抜けようと変顔してるアンタは面白かったから、許してあげる」

みほ 「ふぇっ!?」

 

どんな顔をしてしまっていたのかと赤面するみほ。

 

まほ 「ところで、みんながここに来た、と言うことはつまり」

優花里「はい!準備(・・)が出来ましたので、お呼びに参りました!」

まほ 「そうか。では、行くとしよう」

 

ギャラギャラギャラ・・・・

 

海岸沿いの道を進むⅣ号・ティーガーⅠ・ティーガーⅡ。

通りすがりに先の試合で破壊された建築物が目に入るが、そのほとんどが再建

が始まっており、既に外観が出来上がっているものまである。

 

沙織 「いや〜早いね〜。ついこの間試合したばっかりだったのに」

華  「それだけあの試合がここの方たちに楽しまれたということですね」

優花里「PVの雛型を拝見しましたが、感動しました!まさかあれほどまでに魅力を押し出せるなんて!」

麻子 「あんなメチャクチャな試合でよくまとめられたものだな」

まほ 「それだけ凄い監督だったということだ」

みほ 「・・・・」

 

みほは複雑な表情で周囲を見渡している。

 

まほ 「みほ、これまでや試合の時の記憶はあるのか?」

みほ 「うーん・・・・全然ない、っていう訳じゃないけど、断片的にしか覚えてない感じ、かな。朝目が覚めたてさっきまで見ていた夢を思い出そうとしてる時、みたいな感じ」

エリカ「その『夢』に振り回されたワケよ、私たちは」

みほ 「あう、ごめんなさい・・・・」

エリカ「だからいちいち謝らなくていいってば、あいつらにも言われたでしょ?」

みほ 「・・・・うん」

 

 

〜〜回想・試合終了直後〜〜

 

 

みほ 『大変、ご迷惑おかけしました!!』

あん 『おかけしました!』

 

試合終了後、メンバーがみほの元へ駆けつけた際、みほたちは彼女らに向けて深々と頭を下げた。

 

カチュ『ほんとよ!どれだけカチューシャの手を煩わせたか、深く反省することね!』

ノンナ『カチューシャ、ここで笑って許せるのが大人の女というものですよ』

カチュ『えっ!?・・・・ゆ、許すわ!そう!カチューシャは最初から怒ってなんてなかったんだから!』

 

くすっと笑みをこぼすダージリン。

 

ペコ 『これで、何もかも元通りですね』

アッサ『いいえ、元通りではないわ』

ペコ 『えっ!?』

ダー 『今回を経て、皆さんの結びつきは前以上に強くなったわ。それは私たちも同じ。試合前と同じことなんてない、皆試合を経験するたび変わっていくのよ』

ローズ『そうですわね!今回も私は物凄い成長した気分ですわ!』

ルク 『お前は成長する前に己を見直せ!』

ニル 『まあまあ・・・・』

 

ケイ 『ナオミ、ナイスガッツだったわ』

アリサ『あそこまで食らいつくなんて予想以上だったわね』

ナオミ『何だろうな、心のままに動いていた気がする』

車長 『いつになく楽しそうでしたよ、ナオミさん』

ナオミ『えっ・・・・そんな顔してたか』

装填手『あ、顔に手当ててる』

砲手 『何だろう、すごくカワイイ』

 

メグミ『隊長、お疲れ様でした!』

BKM『私は隊長じゃない、能面ライダー・・・・』

ルミ 『はいはい、もう脱いじゃいましょうよそれ』

BKM『や、やめ、取らないで!』

アズミ『あら、珍しいリアクション』

メグミ『どうしよう、意地でも取りたくなってきた』

 

エリカ『・・・・』

小梅 『エリカさん、お疲れ様でした』

 

一人離れたところで海を眺めていたエリカに小梅が声をかける。

 

エリカ『・・・・責めないの?』

小梅 『え?何をですか?』

エリカ『だから・・・・その、最後に、勝ちに行った、ことよ。皆の、黒森峰の意向に逆らって戦ったこと』

小梅 『え?それのどこが責められることなんですか?』

エリカ『だから!』

まほ 『全くだ、何を責める理由がある』

エリカ『隊長・・・・』

まほ 『エリカは最後まで「みほの味方をしてくれた」。みんながみほを大洗に帰そうと躍起になっている中、エリカだけが「黒森峰のみほ」の味方をしてくれた。だからみほは最後まで戦い抜き、この結果にたどり着けたんだ。何を責めることがある』

エリカ『隊長・・・・』

まほ 『ありがとう。みほの傍にいてくれるのが、エリカで良かった』

エリカ『・・・・っ、はいっ・・・・!』

 

西  『皆様方、お疲れ様でありました!』

イカ娘『うむ、西たちも最後までありがとうでゲソ』

シン 『ほんと、一時はどうなるかと思ったわ』

渚  『まさか、最後の増援が「あの子」とは思いませんでした」

 

一同が江の島を見る。

 

栄子 『考えたら、弾入れっぱなしだったもんな』

鮎美 『結局、暴発・・・・だったんでしょうか』

栄子 『あのタイミングでか?』

 

再度、江の島を見つめる。

 

細見 『一週間前に水没し』

玉田 『これまでうんともすんとも言わず』

寺本 『最後の最後、いざと言う時に』

鮎美 『たまたま暴発した弾が、Ⅳ号に当たる?』

福田 『そのようなこと、あり得るのでしょうか?』

栄子 『無いだろうなぁ』

シン 『可能性を考えれば、誰かが乗り込んで撃った、ということになるけど・・・・』

渚  『水没してましたからね・・・・。あの状態のチャーチルに乗り込んで一撃で命中させるって、誰にもできないと思いますが』

栄子 『じゃあ、やっぱり暴発か・・・・?』

 

うーん、と栄子たちが頭を捻っていると____

 

イカ娘『チャーチルが撃ったに決まってるじゃなイカ』

 

イカ娘がさも当然のように言う。

 

イカ娘『チャーチルは私たちの味方でゲソ。だからピンチの時に助けてくれたのでゲソ。それだけでゲソよ』

鮎美 『戦車が、自分の意思で・・・・』

栄子 『無い無い。・・・・て言いたいんだけどなぁ。オカルトじみた話なのに、何だか信じたい気持ちになるよ』

 

再び、未だチャーチルが沈んでいる江の島の方を見る。

 

渚  『なんとかして、連れ戻してあげたいですね』

シン 『そうね。あいつらに任せようかしら』

栄子 『いやいやいや、木っ端微塵になるオチしか見えんぞ』

西  『ですが、船で回収するのも容易くはないと聞きましたが・・・・』

???『その役割、私たちにお任せいただけるかしら』

イカ娘『へっ?』

 

突如背後から上がった声に、一同は振り返るのだった。

 

 

〜〜回想終了〜〜

 

 

みほ 「すいません、お待たせしました」

田辺 「いいえ。皆さんちょうどお集まりになった所ですわ」

 

みほたちがやってきたのは、江の島大橋のすぐ近く、腰越海岸。

そこには先の試合に参加したメンバーと戦車がスタンバイしていた。

全ての戦車は海____江の島の方を向いている。

 

ダー 「手筈は整っていますわ。みほさんたちはこちらへ」

みほ 「はい!」

 

ダージリンに促され、位置につくⅣ号。

その目の前には海から伸びるケーブルが佇んでいる。

 

カチャン

 

沙織 「これでよしっ、と」

優花里「準備完了であります!」

 

ケーブルをⅣ号前部にあるウインチにセットすると、優花里たちが戻ってくる。

 

まほ 「こちらも完了した。いつでも始められる」

 

同じタイミングで位置についたまほたちも同様にセッティングを完了させた。

 

西  「では藤原殿、お願いします!」

 

西の声に合わせ、海岸線に藤原コズヱが現れた。

きっちりと着付けをこなしつつ、頭には捻り鉢巻き、袖は大きく捲り襷で結び止めている。

そしておもむろに両手に扇子を持つと____

 

藤原 「では皆様、心を一つに。・・・・よいしょーーっ!」

一同 「よいしょーーっ!」

 

藤原婦人の掛け声を合図に、全員が一斉にウインチを引き始める。

ウインチが巻き取られ、海からワイヤーが引っ張り出されている。

 

藤原 「右翼、もっと回転数を上げて!左翼、もう少し抑えめに!」

 

高齢に見合わず張る声を上げ、扇子を振りながら全員に引き加減の指示を飛ばす藤原婦人。

 

藤原 「その調子!そのままを維持!そーりゃっ!」

沙織 「すっご、元気なおばあちゃんだね」

麻子 「これが本場の地引き網か。迫力が違うな」

優花里「むむむ、負けていられません!そーーりゃーーっ!」

華  「優花里さん、回転数を上げすぎですよ」

みほ 「あはは・・・・」

 

着々と巻かれていく海中ワイヤー。

その延びている先には____

 

ズズ・・・・ズズ・・・・

 

海底に沈んでいるチャーチルがゆっくりと、だが確実に進んでいる。

海底を擦るように、砂を巻き上げながら動いていく。

____もちろん、自走しているわけではない。

チャーチルの前面にはワイヤーフックがかけられており、それがチャーチルを引っ張っている。

そしてそのワイヤーは途中で枝分かれをし、海岸沿いに集結した各車両が引っ張り続けると言う形になっている。

もちろん、ただ引っ張るだけでは半壊しているチャーチルは負荷に耐えきれずバラバラになってしまう。

なので___

 

ナカ 「こちらサルベージ船ライガー号。イカちゃん、具合はどう?」

 

江の島沿いに浮かぶ船の上からナカジマが無線で問いかける。

 

イカ娘『問題ないでゲソ。このまま行くでゲソ!」

ナカ 「それは何よりだね。向こうもいい調子で引けてるみたいだから、頑張ってねー」

イカ娘『うむ!』

 

ナカジマらの乗る船のほぼ真下。

引っ張られているチャーチルの上には、イカ娘が張り付いていた。

正確には、チャーチルを触手でがんじがらめにした(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)イカ娘が張り付いていた。

 

渚  「まさか、地引網とは・・・・」

栄子 「ああ、すごい作戦思いつくもんだわ」

 

海岸沿いで参加している栄子が五式の中から呟く。

 

シン 「そのまま引っ張ったらチャーチルはバラバラになっちゃう。だけど上から吊り上げることもできない。イカ星人の触手をもってしても、あれを海岸沿いまで持っていくには難がある」

渚  「ならば、イカの人にチャーチルがバラけないように巻き付いてもらい、それをみんなで海岸から引っ張る・・・・。田辺さんたちの作戦通りですね」

鮎美 「まさに人並外れた発想ですよね!」

栄子 (すっごいキラキラしてる)

栄子 「それにしても田辺さんたち、イカ娘の触手についてよく知ってたな。普通だったらちょっと伸びるとかウネウネしてるとかそんな程度の認識だと思うけど」

ペパ 「知り合いにいたんじゃないっすか?イカっ子みたいのが」

チョビ「そんなわけないだろう。あの人たちにそういう交友関係があったらとっくに知られてるはずだ」

 

隣に位置したサハリアノから会話するアンチョビたち。

 

カル 「あの、ドゥーチェ」

チョビ「どうした?」

カル 「いつまでそれを被ってるんですか?」

 

ニセイカッ

 

アンチョビは試合が終わってからもニセイカ娘の頭を取ろうとせず、今も被りっぱなしになっている。

 

ペパ 「もうカメラも回ってませんし、バレる心配もないっすよ?」

チョビ「うむ、何だか外すと落ち着かなくてな。もうしばらくつけておく」

カル (馴染んでる・・・・)

 

車長 「オーエス!オーエス!」

砲手 「あ、オーエスって英語じゃないらしいよ」

通信手「え、ホント!?」

操縦手「フランス語らしいね」

装填手「じゃあ言い直さないと~。・・・・何て言えばいいんだろ」

アリサ「好きに呼べばいいでしょ」

ケイ 「じゃあ、オーイエス!オーイエス!」

ナオミ「隊長、それ和訳では『そうだそうだ』ですよ」

 

西  「知波単一同、今こそ気概を見せるとき!」

細見 「他に負けるな!我らだけで引き上げる勢いで引くのだ!」

玉田 「牽引!猛進!吶喊!」

 

勢いにかまけ知波単勢がウインチを巻くスピードを早める。

 

ギチンッ

 

イカ娘「うわっ」

 

一部のワイヤーがつっぱる状態になり、チャーチルを引っ張る速度が著しく遅くなってしまう。

 

藤原 「みなさん。一部が焦って良い成果は現れません。良き結果を望むのであれば、個を捨て皆と心を一つにすることが肝要ですよ」

福田 「も、申し訳ありません!」

 

大先輩である藤原婦人の指摘により縮こまる知波単勢。

省みた西らは周囲に合わせながら巻き取りスピードを抑えるようになった。

 

一同 「よーいしょ!わーっせ!」

 

一定のスピードで確実に巻き取られていくワイヤー。

その安定したペースと藤原婦人の音頭や指揮により、皆が成功を確信している。

 

しほ 「流石は戦車道生き字引と称される御両人、発想もさることながら統率も一流ですね」

千代 「ええ。あの方々を目の当たりにすると、私たちなどまだ若輩ですわね」

しほ 「・・・・それにしても疑問に思うのですが」

千代 「何でしょうか?」

しほ 「田辺女史と藤原女史、接点などこれまであったのかしら・・・・」

 

ふと疑問が湧き上がり考え込むしほ。

 

千代 「確かに。拝見した限り、昨日今日の付き合いの仲ではありませんね。少なくとも前からの交流はあったはずですが」

しほ 「あの二人が同じ場に居合わせれば戦車道界隈が騒ぎ立つはずなのに、これまでそう言ったことは一度も無かった」

千代 「とすれば、お二人の面識はもっと前、お名前が知れ渡るよりも前の頃のお話なのでしょうか」

しほ 「過去・・・・交流・・・・学生時代・・・・。そういえばかつて、ここいらで消息を絶っていた戦車が発見されたということかあったそうね。確か、その戦車の名は・・・・」

 

しかし、

 

吾郎母「細かいことは気にしない!そんな難しい顔して、顔にシワがよってるわよしーちゃん!」

しほ 「しーちゃん・・・・」

 

吾郎の母ちゃんの爛漫さに呆気に取られるしほと、苦笑を手で隠しきれていない千代。

 

吾郎母「いつからの友達なんて関係ないことさね。現についこないだ会ったはずのしーちゃんとアタシはもうこんなに仲良しじゃない!」

 

はっはっはと豪快に笑い飛ばす吾郎の母ちゃん。

 

しほ 「・・・・そうね。貴女を見ていると、細かいことを考え続けてるのが馬鹿らしくなるわね」

吾郎母「そうそう!世の中ドーンと構えてりゃいいのよ!」

千代 「ふふ、あーちゃんのそのポジティブさには何度も助けられたわね」

しほ 「貴女がこの方と仲がいい理由が分かった気がするわ」

 

どんどん引き上げられていくワイヤー。

 

みほ 「みんな、ごめんなさい。・・・・ありがとう。」

沙織 「へっ?」

 

突然のみほの謝罪と感謝に沙織が目を丸くする。

 

みほ 「私が『ああなってた』間に、みんな私の為にいっぱい動いてくれた。でも、私、まだお礼を言えてなかった」

華  「みほさん・・・・」

麻子 「そんな言葉いらないって言ってただろう。会長もそうだし、私たちもそうだ」

優花里「そうです!西住殿が大変ならどうにかしようとするのは当然のことです!」

みほ 「うん、ありがとう」

麻子 「あ、また言った」

みほ 「ふえっ、ご、ごめんなさい」

沙織 「お礼言ったり謝ったり忙しいねえ」

みほ 「あうっ」

華  「ふふ、でもお友達というのはそういうものではないでしょうか」

みほ 「・・・・うん」

 

すっきりした顔をするみほだった。

 

カエ 「来た、見えた、上がった!」

 

カエサルの声にはっとして海を見る。

皆で引いていた幾本ものワイヤーが、纏まった一つとして海岸線に姿を現し始めた。

 

杏  「よーし、ウィンチ停止!」

柚子 「はい!」

桃  「はいっ!あ、あれ!?どのレバーだっけ!?」

 

ガチッ

 

杏の合図にウィンチの巻取りが止まり、ワイヤーが止まる。

海から伸びているワイヤーはひとまとまりになって波打ち際まで見えてきているが、まだチャーチルは浅瀬に取り残されている。

各戦車隊は車体に取り付けられたウィンチを取り外し、列の中心に抱えてきた。

 

そど子「さあ、仕上げは任せるわ!」

パゾ美「ファイトー」

ゴモヨ「風紀委員はクールに去ります」

そど子「帰らないわよ!?」

 

そして集めた各ウィンチを、二両の重戦車・・・・マウスとオイの改造した前部にまとめて取り付けた。

 

清美 「では巻き取ります、よろしくお願いします!」

藤原 「ええ。・・・・そーれっ!」

綾乃 「よいしょーっ!」

由香 「こらしょーっ!」

朋美 「どっこいしょーっ!」

 

再び藤原婦人の音頭に合わせ、今度はマウスとオイがワイヤーをまとめて引き始める。

それにより、水面が近くなり水圧の変わったチャーチルの車体をゆっくりと、まっすぐ引き出せるように変わる。

そして・・・・

 

カチュ「あっ!見えてきたわ!」

 

一番早く声を上げたのはカチューシャだった。

波打ち際に、見覚えのある白い帽子が浮かんでくる。

そして続いて見えてきたのはイカ娘のドヤ顔。

 

ザバァッ

 

間髪おかず、海面から触手でぐるぐる巻きにされたチャーチルが姿を現した。

直後、全員が歓声を上げる。

 

しゅるっ

 

触手を解いたイカ娘がチャーチルの上に立ち、満面の笑みで親指を立てる。

 

梓  「やった、成功!」

あや 「劇的瞬間!(カメラパシャッ)」

あゆみ「やばい、涙出てきた・・・・」

紗希 「・・・・(スッ)」

桂利奈「紗希ちゃんティッシュ準備してた!」

優季 「用意周到~♪」

清美 「イカちゃん!」

カチュ「イカチューシャ!」

 

直後、メンバーらが歓喜してチャーチルとイカ娘に駆け寄る。

イカ娘の頭をわしわししたり、チャーチルの具合を調べたりしている。

各々がチャーチルのサルベージ成功に沸いている中、それを遠巻きに高台から見ている人影があった。

 

ギャラギャラギャラ・・・・

 

その人物に、一両の戦車が近づく。

 

ガコン

 

ミカ 「やあ」

 

その戦車のキューポラからミカが顔を出す。

 

梢  「おつかれさま。気づかれなかった?」

ミカ 「こういうことは慣れっこでね。問題なしさ」

 

そこには梢がたたずんでいた。

ひらりと戦車から____五式(・・)から降りる。

続いてアキとミッコも五式から降りてくる。

ふと振り返ると、離れたところでは未だみんなが喜びを分かち合っている。

 

アキ 「五式が盗まれたって知ったら、大騒ぎになっちゃうだろうね」

ミッコ「せっかく発見できたと思ったらコレだもんな」

ミカ 「そんなことはないさ。『持ち主に返す』だけだからね」

 

ミカの言葉ににっこりと笑みを浮かべる梢。

慣れた動作でひらりと五式に乗り込んだ。

 

梢  「貴女との縁、今回ほど感謝することはないわ」

ミカ 「そうだね」

 

ドルルルル・・・・

 

五式が小刻みに振動し、ゆっくりと動き出す。

ふと、後ろを振り返ると視線の先にはイカ娘たちがいる海岸が見えた。

ほとんどは梢や五式に気付いてはいない。

だが、その中で二人だけ・・・・田辺婦人と藤原婦人だけはこちらを向いていた。

目が合い、微笑みを交わしたのち・・・・梢と五式はゆっくりと姿を消していった。

 

アキ 「ねえミカ、あの子って結局何者なの?」

ミッコ「五式の所持者って、もしかしてあの子か?どういう関係なのさ」

ミカ 「ん-・・・・『気の合う友人』って所さ」

アキ 「なにそれ」

ミッコ「もしかして私たちを由比ガ浜に呼んだのってあの子か?」

アキ 「そうなの?でもどうして?まさかこの騒ぎを知ってたってわけじゃないだろうし」

ミカ 「知ってるかい?タコって予知能力があるらしいよ」

ミッコ「どしたの急に」

ミカ 「別に、何でもないさ」

 

ミカはそれ以上は何も言わず、静かに笑みを浮かべながら海を眺めるのだった。

 

華  「あの・・・・」

 

華がおすおずとまほに語りかける。

ちらりとチャーチルの方を見ると、みほはそちらの方で面々と喜び合っている。

 

まほ 「うん?どうしたのだろうか」

華  「実は・・・・黒森峰さんの顔認証システムについての質問なのですが・・・・」

沙織 「華?」

華  「あの日、みほさんが催眠にかかったあの日、みほさんは黒森峰の寮で発見されました」

まほ 「ああ」

華  「黒森峰女学園さんの入艦システムは顔認証。登録された顔でなければ入艦は不可能です。先ほども、みほさんはシステムを通れませんでした」

まほ 「そうだな」

華  「では、何故みほさんはあの日、『どうして黒森峰女学園に入艦出来たのでしょうか』」

優花里「あっ!」

 

華の質問に優花里たちがはっとする。

 

まほ 「流石だな五十鈴さん。ひょっとしたら最後までうやむやに出来るかと思っていたが」

沙織 「ど、どういうこと???」

麻子 「つまり、あの時の黒森峰は、西住さんなら顔認証を通れる状態にあったのか」

まほ 「ご明察だ」

優花里「そういうことだったんですね・・・・」

沙織 「ど、どういうこと???」

 

全く理解できない沙織に、まほは少しバツが悪そうに頰をかく。

 

まほ 「それを説明するには、私とお母様の甘さを語らなければならないな」

華  「・・・・いつでもみほさんが帰って来られるように、ですね」

まほ 「ああ」

 

まほはちらっと目線を送り、みほがまだ談笑しているのを確認する。

 

まほ 「私も、お母様も、みほがすぐ大洗から黒森峰(こちら)に帰ってくる可能性を示唆していたんだ。だからみほの顔認証は解除せず、そのまま通れるようにしてあった」

沙織 「そうだったんだ、だからみぽりんはあの日黒森峰に・・・・」

優花里「身内とはいえ、艦の部外者をいつでもアクセス可能にするというのは・・・・よっぽどでなければ通りませんね」

まほ 「だが、その準備があの事態を招いた。もしあの時点でみほが入艦出来ず保安部に見つかっていれば、事態はもっと速やかに治まったのかもしれないな」

華  「でも、それは悪いことでは決してありません」

 

華の言葉にまほは、

 

まほ 「ありがとう」

 

と笑顔を返す。

 

まほ 「そして知っている通り、みほの顔認証は解除された。もう、戻ってくることもないだろう」

 

そう言ったまほの顔は、少し寂しそうではあったがすっきりしたように見えた。

 

みほ 「お姉ちゃん!」

 

まほたちが離れたところで話しているのに気付いたみほが駆け寄る。

 

みほ 「お姉ちゃん、みんなと何を話してたの?」

まほ 「・・・・いや、他愛のない話さ」

華  「はい、そうですね」

みほ 「ふーん・・・・?」

 

少し釈然としないみほ。

 

沙織 「あー-っ!」

麻子 「うおっ!?いきなり声を上げるな沙織」

 

突如声を上げる沙織に飛び上がる麻子。

 

優花里「どうしたのですか武部殿?」

沙織 「そういえば一つ、みぽりんに聞きたいことがあったんだった!」

みほ 「え?」

沙織 「お姉さんの『夢』!」

 

さっとまほを見る。

 

まほ 「え」

沙織 「みぽりんが催眠にかかっちゃった一番の理由は、『まほさんに戦車道以外の道を歩んでほしい』だったんでしょ?」

みほ 「うん、そうだったね」

沙織 「それって、どんな道だったのかな、って」

まほ 「えっ」

 

その言葉にまほがギクリとする。

 

麻子 「確かに。お姉さんがどんな将来を夢見ていたか、私も興味がある」

優花里「西住流家元の座を捨ててでも進みたい道、私も知りたいであります!」

華  「ぜひ、お教えいただけますでしょうか」

まほ 「ま、ま、待て。将来の夢といっても、子供の頃の話だ。今はそんなこと考えてことも____」

沙織 「みぽりん、知ってる?」

 

振り向いた沙織に、みほはにっこりと笑みを浮かべる。

 

麻子 「その顔は、知ってる顔だな」

みほ 「うん、それはね・・・・」

まほ 「ま、待てみほ!それは秘密だと言っただろう!?」

みほ 「えっ、それはお母さんにだけ、でしょ?他に人に言っちゃダメって言われてないよね?」

まほ 「ほ、他の人にもダメだ!ナイショにしてくれ!」

沙織 「ねえねえ、何なの?こっそり教えて」

みほ 「それはね・・・・」

 

さささとその場から離れながら話そうと早足になるみほとあんこうチームたち。

 

まほ 「みほーっ!お願いだから言わないでくれー!」

 

それを顔を真っ赤にして追いかけるまほ。

そんなまほから、みほたちは笑顔で逃げ回るのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

場所は変わり、熊本県・西住本家。

その一室、まほの部屋。

その机の一番下の引き出しの奥の奥、そこにまほの小学校時代の作文が隠されていた。

 

題名は、『しょうらいの夢』。

その作文は、こんな文から始まっていた。

 

 

 

幼まほ『わたしのしょうらいの夢は、「かわいいおよめさん」になることです』




まずここに至るまでにあたり、お付き合いいただいた方々へ深く感謝いたします。
初めて投稿した時も、その次も、読んでくれる方がいるという事をはげみに書き続けることができました。

そして同時に、最後までそのペースを保てなかった不甲斐なさを深くお詫びします。
ですが、やはり読んでくれる方がいることで書き切ることができたことにも大変感謝いたします。

これでこの物語は一旦の終演を迎えます。
もしかしたらこの先、また書ける機会があればまた新しいエピソード、もしくは新作を書くことができるかもしれません。

その時はまた心新たに作品をお届けできれば、と思っています。

なのでこの場ではこの言葉で締めくくらせていただければと存じます。


これまでお付き合いいただきありがとうございました!
またどこかでお会いしましょう!

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