シンディー→シン
ダージリン→ダー
戦車道、はじめなイカ?
夏真っ盛り、とある日の海の家れもんにて
千鶴 「3番テーブルエビピラフ上がったわよー。焼きそばとラーメンは5番ね?」
イカ娘「わかったでゲソ!・・・・(モグ)おまちほうはまでゲソー」
栄子 「ゴルァ!イカ娘!」
栄子の容赦ないゲンコツがイカ娘の頭にめり込む。
イカ娘「うぇっ!?痛いじゃなイカ!何するのでゲソ!」
栄子 「何するじゃねえ!お前またお客さんのエビピラフ勝手に食っただろ!」
イカ娘「ピラフなんて食べてないでゲソ!私が食べたのはエビだけでゲソ!」
栄子 「同じことだろうが!お客さんの料理に手ぇ出すなって何べん言やわかるんだお前は!」
イカ娘「エビが目の前にあるのに食べないのはエビに失礼でゲソ」
栄子 「お客さんへの失礼を先に考えろよ!」
司会 『こんにちわ、お昼のニュースです』
海の家に取り付けてあるテレビがニュースを流し始める。
司会 『ではまず、先日行われた大洗女子高校対大学選抜の戦車道エキシビションマッチの話題からお伝えします。先日北海道にて行われたプロリーグ誘致のための一環として開催されたエキシビションマッチは、大洗女子の奇跡とも言える大勝利を__』
イカ娘「せんしゃ、どう??」
栄子 「何だイカ娘、お前戦車道も知らないのか?」
イカ娘「むっ!」
栄子 「地上侵略侵略って言っておいて、ホンッとお前地上のこと何にも知らないのな」
イカ娘「も、もちろん知っているでゲソ!常識じゃなイカ!」
栄子 「ほー?じゃあ戦車道の基本でいいから知っていること言ってみな?」
イカ娘「えーと、えーっと・・・・」
栄子 「・・・・」
イカ娘「!・・・・せ、戦車の・・・・」
栄子 「戦車の?」
イカ娘「いい所とか、強い所を評価することでゲソ!」
栄子 「は?」
イカ娘「・・・・」
栄子 「・・・・」
イカ娘「(この)戦車、どう?」
栄子が冷え切った冷たい目でイカ娘を見つめる。
栄子「知らないなら知らないって正直に言えよ。そうやって知ったかぶりして恥かくのはお前だぞ?」
イカ娘「ぐぬぬ・・・・」
千鶴 「戦車道というのはね、女の子が戦車を使ってする競技のことよ」
イカ娘「戦車を使う?」
栄子 「複数の戦車でチームを組んでな。先に相手を全部倒したり、特定の車両を倒したほうの勝ちっていう競技だ」
イカ娘「・・・・」
イカ娘『くらうでゲソーっ!』
栄子 『うわーっやられたーっ』
イカ娘の頭の中で、戦車に乗ったイカ娘が栄子を撃破する映像が流れる。
イカ娘の目が輝き始める。
イカ娘「私も戦車道、始めるでゲソ!」
栄子 「気軽に言うなよ。まず始めるにしてもウチには戦車は一台もないんだぞ?」
イカ娘「無いなら買えばいいじゃなイカ」
栄子 「さらっと言うんじゃねえよ。いくらすると思ってるんだ?」
イカ娘「いくらでゲソ?」
栄子がイカ娘に耳打ちする。
イカ娘が死んだ目になる。
栄子 「戦車道ができるのは裕福な家か、一定以上の規模の学校とかでないとできないんだよ。それに戦車を買うだけじゃダメだ。メンテナンスに燃料、弾薬の補給なんかにも金がかかる。思い付きでできるもんじゃないんだよ」
イカ娘「ゲソ~・・・・」
がっかりするイカ娘と、やれやれといった感じの栄子。
そして__そんな様子を陰から見つめる怪しい影があった。
そして三日後、海の家れもん前にて。
早苗 「イカちゃんが戦車道やりたがってるって聞いて~♪」
目を輝かせているイカ娘と、絶句している栄子。
そこには、満面の笑みで戦車に乗った早苗がいた。
千鶴 「あら、チャーチルね」
栄子 (そこまでやるか!?そこまでやっちまったのか早苗!?)
イカ娘「すごいでゲソ!これは早苗の戦車なのでゲソ!?」
早苗 「うん!イカちゃん、戦車乗ってみたかったんでしょ?丁度うちにあったし、どうかな~って♪」
栄子 「いや待て!何度も早苗んち遊びに行ったけど、戦車なんてどこにも置いてなかっただろ!」
イカ娘「早苗早苗!乗ってみてもいイカ!?」
早苗 「もちろん!そのために持ってきたんだもの~♪」
栄子 「スルーすんなよ!?」
いそいそとチャーチルに乗り込み、操縦席に座るイカ娘。
イカ娘「おおー、何だか強くなった気がするでゲソ!これなら千鶴にも勝てるんじゃなイカ!?」
早苗 「イカちゃん、その操縦桿と、ペダルで動かすのよ」
イカ娘「こうでゲソ?」
ギギギ・・・・キュラキュラキュラ・・・・
イカ娘「おおーっ、動いたでゲソ!すごいでゲソーッ!」
早苗 (夢中になって戦車を動かすイカちゃん、すごくカワイイ♪それに戦車内は狭いから、イカちゃんがこんなに近くに~!ああ~~っ、思い切って手に入れてよかった~~♪)
イカ娘「ふっふっふ、ついに千鶴の魔の手から逃れる日が来たのでゲソ!これを地上侵略計画再始動ののろしとするでゲソ!発射ーーーっ!」
シーン・・・・
イカ娘「・・・・あれ?発射ーっ!発射ー!撃てでゲソー!」
もちろん砲撃など起こるはずもない。
イカ娘「どうしてでゲソ!何も発射されないじゃなイカ!早苗、こやつ壊れてるでゲソ!」
早苗 「ああ、違うのイカちゃん。砲撃するには、砲手がいないと」
イカ娘「ほうしゅ?」
早苗 「戦車は一人ではすべてを同時には動かせないの。今イカちゃんが座っている操縦席で戦車を動かす操縦主、狙いをつけて砲弾を発射する砲撃主、そのための砲弾を装填する装填手。そして砲塔から顔を出して戦況を見極め、乗組員に指示を出す車長。これらの人材が揃って初めて戦車は戦えるのよ?」
イカ娘「むむむ、思ったよりめんどくさい乗り物でゲソね・・・・。えっと、合計で四人必要ということだから・・・・?」
しばらく後、海の家れもん前にて。
イカ娘「というわけで、協力を要請するのでゲソ!」
渚 「な、なんで私なんですか!?」
シン 「イカ星人が戦車に・・・・。どのような戦術スキルが垣間見られるのか、興味深いわ!」
栄子 「私もかよ・・・・。って、あれ?早苗がいないぞ?」
イカ娘「早苗は操縦中にひっついてきて邪魔だから、搭乗禁止でゲソ」
見ると、遠くで早苗がしょぼくれた様子で体育座りしている。
栄子 (哀れな・・・・)
イカ娘「というわけで、それぞれの担当を発表するでゲソ!装填手は、渚でゲソ!」
渚 「えっ、私ですか!?」
イカ娘「うむ!渚はいつもビールケースを持ち上げているから、きっと腕力があるでゲソ!」
渚 「そんな理由で・・・・」
渚 (でも、イカの人を戦車に乗せるなんて、それこそ人類の脅威になるんじゃ・・・・。そうだ、私が見張ってないと!)
渚 「わかりました、私、やります!」
イカ娘「おおっ、すごいやる気じゃなイカ!任せるでゲソ!」
栄子 (造反者を抱え込んでないか?)
イカ娘「次、砲撃手でゲソ!シンディ、お主を任命するでゲソ!」
シン 「Oh、わたし?」
イカ娘「シンディは射撃が得意でゲソ?よくそういうのを持ってるのを見るでゲソ」
シン (得意というか、貴女を捕獲するための道具なのだけど・・・・ここは黙ってたほうがいいかしら)
イカ娘「だからきっと砲撃も得意でゲソ。任せるでゲソ」
シン 「オーケー、任されたわ」
栄子 「て、ことは・・・・」
イカ娘「栄子は操縦主でゲソ」
栄子 「だろうと思ったよ」
イカ娘「栄子の操縦テクニックはピカ一でゲソ!絶対余裕でゲソ!」
栄子 「あれはゲームの中の話だろ・・・・。まあいいや、やるだけやるけど文句言うなよ?」
イカ娘「そしてもちろん、車長は私!この私の指揮で、目にもの見せてやるでゲソ!」
四人が戦車に乗り込み、イカ娘のテンションは最高潮に達する。
イカ娘「いざ、全速前進~っ!」
イカ娘の号令に合わせ、チャーチルがゆっくりと前進する。
イカ娘「おお~っ、これはいいでゲソ!私はもはや最強でゲソ!」
シン 「久しぶりに乗ったけど、やっぱり戦車っていいものね」
栄子 「あれ、シンディって戦車道やってたのか?」
シン 「母国にいた頃にね。私のいた大学は戦車道が強くて結構有名だったのよ?たしか日本にも同系の高校があったはずだけど」
栄子 「へー」
イカ娘「栄子!少し右に旋回するでゲソ!」
栄子 「どれくらいだよ!ニュアンスで指示を出すな!」
イカ娘「もうちょっと、もうちょっと・・・・ここでストップでゲソ!」
栄子 「ここで、・・・・って、お前」
イカ娘の指示で止まった場所は、海の家れもんを真正面に捉えた位置だった。
千鶴 「あら?」
チャーチルがこちらを向いていることに気が付く千鶴。
イカ娘「ふっふっふ・・・・。千鶴よ、お主に束縛される日々はこれで終わりを迎えるのでゲソ。いざ!撃て~っ!」
し~ん
イカ娘が号令を出しても、砲弾は発射されない。
イカ娘「どうしたのでゲソ!さっさと発射しなイカ!シンディ、何してるでゲソ!」
シン 「どうしたも何も、砲弾が装填されてないのだから、撃ちようが無いでしょ?」
イカ娘「どういうことでゲソ!装填手!渚、さっさと装填するでゲソ!」
渚 「何言ってるんですか、砲弾を人に向けて撃ってはいけないんですよ?常識じゃないですか」
イカ娘「千鶴は人間じゃないでゲソ!だからいいのでゲソ!」
栄子 「よくねえよ!店も吹き飛ぶだろうが!」
イカ娘「ええい、私に逆らうとは!よこすでゲソ!」
渚 「あっ!?」
イカ娘が触手を使って渚から砲弾を奪い取り、器用に装填する。
イカ娘「よし、これで・・・・あれ?」
正面を見直すと、千鶴の姿が見えない。
イカ娘「千鶴の奴、どこ行ったでゲソ!・・・・はっ!?」
気が付くと、イカ娘に背後から影がかかっている。
恐る恐る振り返ると・・・・
千鶴 「イカ娘ちゃん?」
イカ娘「ひぃっ!?」
イカ娘の真後ろ、キューポラのフチに千鶴が笑顔で立っていた。
千鶴 「戦車の砲塔は絶対に人に向けちゃダメなのよ?危ないから」
イカ娘「はっ、はひ・・・・」
千鶴 「それと、チームメイトに対してそんな命令口調もいけないわ。一緒の戦車に乗る、大事な仲間なんだから」
千鶴は目を薄く開き、イカ娘に顔を近づけた。
千鶴 「ルールとマナーを守っての戦車道。イカ娘ちゃんはきちんと守れるかしら?」
イカ娘「はい!ちゃんと守るでゲソ~ッ!」
いつも通り千鶴に躾けられたイカ娘を見て、栄子はやれやれとため息をつくのであった。
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場所は変わり、大洗女子学園艦にて。
みほ 「親睦会、ですか」
ダー 『ええ。思い返せば、みほさん方とは戦車道以外でのおつきあいが一切ありませんでしたでしょう?私共といたしましても、みほさんたち大洗の方々とは、何ごとにおいても良き友人として交遊を深めたいと思っておりますので』
みほ 「ダージリンさん・・・・。ありがとうございます」
ダー 『それで、お話の続きなのだけれど。大洗は近日、神奈川へ寄港されると聞き及びましたが』
みほ 「はい、学園長が神奈川の陸の学園のほうへ訪問されるのと、例の隊長面談会にも参加することになりましたので」
ダー 『ではその期間に合わせてこちらも帰港いたしますわ。その折に合流いたしましょう』
みほ 「わかりました。私たちはどこへ向かえばいいでしょう?」
ダー 『そうですわね。待ち合わせ場所は__』
ダージリンから待ち合わせの場所が告げられ、みほはメモをとる。
みほ 「はい、わかりました。そちらへ向かいますね」
ダー 『お会いできる日を楽しみにしていますわ』
みほ 「はい、こちらもです!それじゃあ__」
沙織 「みぽり~ん、ダージリンさん、何だって?」
受話器が置かれると同時に、沙織が声をかけてくる。
そばにはあんこうチームのメンバー全員と、生徒会の三人がいる。
みほ 「うん、今度神奈川に寄港するとき、会いませんか、って」
優花里「それで、お受けしたんですか?」
みほ 「うん。・・・・ダメ、だったかな?」
優花里「そんな訳ありません!私も大賛成です!」
華 「わたくしもいいと思います。聖グロリアーナの方々とも、お華やお茶のお話もできそうですし」
麻子 「華や茶の種類が違うと思うが・・・・。まあ、私も反対する理由はない」
沙織 「みぽりん、ほんとダージリンさんに気に入られてるね~」
みほ 「ふえっ!?そ、そう・・・・なのかな?」
沙織 「絶対そうだよ!この間の大学選抜との試合だって、ダージリンさんが率先してみんなを集めてくれたらしいじゃん?」
優花里「ライバルとして、良き友人として。西住殿はダージリンさんにとって唯一無二の存在というワケですね!」
みほ 「そんな、大げさだよ優花里さん。・・・・でも、そうだね、あの時のお礼もちゃんとまだできてないし、今回会えるのは嬉しいと思う」
華 「それで、待ち合わせは何処で?」
麻子 「こちらからグロリアーナへ出向くのか?」
みほ 「ううん、待ち合わせ場所は陸地だよ。えっと、場所は__」
みほは場所を書いたメモをみんなに見せる。
みんな「由比ガ浜?」
初投稿作品です。
お粗末なところもあり、今後修正していく部分も増えていきますが、よろしくおねがいいたします。
この話をお読み頂いた後、大洗女子学園編第1話を読んでいただければ、それ以降どの高校編を読んでいただいても順番は大丈夫なようになっています。