あの後、意識をとられた陽は沖田さんのひざで目を覚ました。というか、夢の中なのに意識が飛ぶとはこれいかに。
「あ、起きました?」
なんかいい臭いがする。女の子の香り、なのかな
「あ、はいおはようございます。」
陽は下から沖田の顔を見る、対して沖田は上から陽の顔を見る。陽はありもしない経験があるので平気だが沖田は少し顔が赤い。
「起きていいですか?」
「うぇっ!?あ、はいどうぞ」
「お主らよ、イチャイチャするのは構わんが生憎今夜はもう終いじゃ。陽は連続で再びお目覚めじゃのう。奇怪なことうよ」
「べっ、別にイチャイチャなんて、」
小次郎が言う通りそろそろ時間だ、陽が冥界にいる時間と現実の時間は同じ、それは陽も知っている。沖田の弁解は割愛する。
僕、もう少し寝ててくれないかな?冗談だけど
「じゃあ、また」
「はい、また」
「次は儂じゃからのう、覚悟するようにな」
「っはい、お願いします」
今回の沖田との手合わせは向こうが陽の、西行寺の剣術を知らないからうまく回せただけだ。だが、次は小次郎。あの顔を見るに恐らく西行寺の剣術の本質を掴んでいる。
次はもっと気を張らなくちゃ
家
起きる
「よいしょっと。たしか今日は土曜日だから学校無いよね。」
陽が両親と住んでいるのは西行寺家の別荘。偶々、観布子にこの家があったのでちょうどいいと桜々子がくれたものだ。
陽の両親は珍しいことに両方働いていない、投資はしているが。でも、投資と言っても桜々子が指示した会社に投資して、需要と供給の差で稼いでいる。株と言うやつだ。だが、何故か上手くいく。それはひとえに桜々子の能力、予知眼があるかららしい。この仕事は母である輝月(きづき)の仕事
一方、父の要の仕事はと言うと
輝月と陽に愛を注ぐ
以上!
「母さん、今日のご飯は?」
「厚揚げを炊いたのとごはんとお味噌汁よ」
朝ご飯、至って普通の朝ごはん。だが、そう思えるのは要だけだ。
なにせ、西行寺家のご飯は量がバカみたいに多いのだから。
「「「いただきます。」」」
それ故に輝月と陽には大きめの取り皿とお茶碗が用意されている。陽もよく食べるがそれよりも輝月のほうがよく食べる。
「んー厚揚げは最高ね♪」
パクパク
「ん、美味しいよ」
パクパク
「相変わらずよく食べるね」
(これでこのスタイルなんだからおかしい。まあそれも含めて好きなんだが)
要は要でこの状況を気に入ってたりする。
お昼
西行寺家に訪ねるものが一人いた。
「すみません。両儀 幹也ともうしますが、西行寺 陽君のお宅はこちらでしょうか」
「はーい、今出ます。」
ガチャ
幹也が訪ね、返事をして扉から出てきたのは輝月だ。これをみて幹也は
(に、似てるなあ)
と思った。
「陽のお友だちですか?」
「まあ、はいそんなところです。あ、それよりも今日は桜々子さんから陽君に届けものがあってそれを....」
みきやは桜々子から受け取った箱を輝月に見せる。
「あら、懐かしの箱じゃない。小さい頃躍起になって開けようとしたわ。結局ダメだったけど」
「そうですか、今日はこれを陽君に開けてもらえと桜々子さんに頼まれて来ました。」
ここで少し空気が変わる。
「でも、その箱があるということは、あなた本家までいったのねぇ。両儀家は要を離したのに今度は陽の力が目当てなのかしら?」
「いえ、そんなことはないです、絶対に」
また戻る
「そう、ならよかったわ。ごめんね怖がらせて。中へどうぞ」
「あ、はいお邪魔します」
お家
中は広く、全体には畳が敷いており、襖には桜の絵が描いてある。全体的に落ち着いたごく一般的な和式の家だがどこか、安心感を感じる。先程まで、食事をしていたのか少し、醤油や出汁の香りがほのかに残っている。ありもしないが、来るものはきっと故郷に帰った様な、そんな安心感。
幹也が家に入り、少し落ち着いたところで陽が客間に座る
「何か、ようじですか幹也さん。というか、何で僕の家しってるんですか・・いよいよホントに不審者ですか。」
幹也は両手を前に出して左右に振り否定の姿勢をとる
「いや、僕はけっして怪しい人じゃないよ!」
じーーーーーーー
「あ、あははは・・・。」
陽の視線に笑うことしかできない幹也。当たり前だ、幹也がもし、陽と同じ立場ならとても警戒する。
陽は話が進まないと思ったのか幹也に問いかける。
「で、今日はホントに何しに来たんですか」
幹也は一つ箱を取り出した。それをみて陽は幹也のことを怪しい人だと再認識する。
「これを、君のおばあちゃんからあずかっていてね。今日、陽くんに渡しに来たんだ。」
「はぁ、なんでこれ持ってるんですか?まあ聞いてもまたさっきの繰り返しなので聞きませんが」
まいったなあと幹也は言ったあと陽に箱を持たせた
すると、
中から風が吹き出す。箱の隙間から漏れているようだ。その風は箱をやぶらんとし勢いを増す。
「まってて、いま開けるよ」
箱をあける。
中には・・・・
「何も無い?」
幹也が驚き言葉も出ない様子
(そんな、そんなはずはない、さっき僕が持っているときだって確かに重みはあった。時折、中の物が箱の壁に当たって音が立ったときもあったのに)
「・・・・母さん、見てるよね、中身は視える?」
輝月は顎に手を当て答える
「そうね、そこに何かあるのはわかるけどその程度よ。それが何なのかまではさっぱり・・」
「そう、ありがと。僕にはこれが視えるし何に使うのかもわかる。」
二人は驚いた。幹也が中身の内容について聞く
「中身は、一体何なんだい」
「これは、やってくれたな。こんなもの僕に渡して何になれっていうんだよ。」
陽
二人にはこれが視えていない。これのしょうたいは、短刀。鞘は白をベースに途中で桃色のグラデーションがかかっている。刀身は固く冷たく鋭く柔らかくそして、美しい。
陽が持っている様子や視線の動きを読み取って輝月は陽が何をもっているのかわかった
「それはもしかして、短刀かしら」
「うん、正解。でも、ただの短刀じゃない」
これは恐らく、能力制御のための短刀。鞘から抜いたときに死の力が刀身に吸い込まれるような感覚だった。これじゃあ今まで僕が一生懸命能力を抑えてた意味がないじゃないか
今まで陽は能力が漏れ出すため自制心と理性で抑えてきた。制御が聞かない分、標的への命中も悪く殺させることができなかった。まあ、標的は今までいなかったのだが。けれどもそれは、裏を返せば制御が効く今は確実に標的に命中するということだ。
「こいつは、僕の能力を完全に僕と一体化させて制御するためのものだ」
「そんな、でもそれじゃあ君は・・」
「そうですね、これをもってても良いことは少ないです。でも、もう一体化しちゃったんで、今なら自分の本能とか目的とかわかる気がします」
幹也は悟った。この場面、空気、経験したことがある。
相手の様子が新鮮な表情で興奮しておりそれでいて冷静。幹也の勘が正しければこれは起源覚醒の状態にあるといえる。
「陽!その刀を今すぐ再封印するように母さんから私が言って」
「それは、無理だよ。一番やっちゃいけない。この短刀は僕の魂と直結した、たった今ね。」
「そ、そんな」
幹也が橙子から言われていたもう手遅れに近い状態がおそらく今、この瞬間から始まっている。
誰かが陽を止めることなんてできるのか、そんな考えはもうとっくに遥か彼方へと置き去りになった。
だから。
「わかったよ、陽君。僕はもうこれ以上君を否定しない」
受け入れる。受け入れてから考える。相手の立場を理解しようとする。少しでも
「うん、よろしく。ですね」
幹也の考えに何かを見た陽は受け入れられることを許可した。
「じゃあ僕は一旦、戻ります」
幹也はこれ以上の会話は必要が無いと感じたのか陽達に一旦の別れを告げる。そして
「え?俺空気?」
これまで一度も相手にされなかった要は不憫な父親だった
こうして、日が過ぎて7月24日
両義家
家から車で約20分竹やぶに一本の道、その奥に両義家の人と幹也さんがいっていた僕を調べてくれるという人がいる。正直言って不安もあるけど何より高いのは高揚感。理由づけもできないような感情だけど何かわいてくる。
そうこうしているうちに陽は両義家の門の前までついた。きょういるのは要と陽だけだ。輝月は行きたくないといってやめた。
自然と手に力が入る緊張か恐怖か本人も知らない。門をくぐる、するとそこに幹也がいた
「やあ、よく来てくれたねさあ中にどうぞ」
家の中に入る
「ただいま、ほら陽も挨拶だ」
玄関で要が挨拶すると陽は要に挨拶を急かされる
ふう、と一置きおいて挨拶する。気だるげだ
「どうも」
そこへ着物を着た女性が歩いてくる。
「ああ、どうも。早速だが話は聞いてるか?」
式が陽に今回の訪問の重要なイベントである、決闘を通して力を見るという内容を聞いているかとたずねるだが
「もちろんだよおばさん。僕があんたをぼこぼこにするっていう話、でしょ?」
煽るそして煽る
「お、おb。お前んとこの息子は随分と自信があるようだな」
要は壁のほうを向いて式からめをそらす
「俺に聞くな」
式は今の状況、そしてこれからを楽しみにしていた。これだけ自分に啖呵を切ったのだ、こんな子供が。はして自分がこの年のときにここまでいえただろうか、ここまでできただろうか、幼い頃の自分と重ねる
「いくぞ、楽しみだ」
式は素直に感情を伝える
「式、くれぐれもけがさせないでよ」
幹也は式が楽しそうにしているのを察して微力な効き目だが注意をする
「ああ、わかってる」
わかってません
両義家剣道場
そこはある一部以外はすべて一般的なよく見る剣道場だった。まだ午前中なのか竹の柵から太陽の光が漏れ剣道場を優しく照らし、温めている。だが、そこには気があった。長い間、堆積し圧縮された気は戦いを鍛錬をより高揚させるような気がする。もしかしたらば陽の先ほどの高揚感はここから流れたものなのかもしれない。
陽があたりを見渡すと一人の女性がまたいた
「こんにちわ陽君今日はよろしくね」
眼鏡の女性それでかみの赤い。この人が僕のことをみてくれるのかな。でも本当はどっち、なのかな?
瞬間、陽の瞳が緑色になる
「よろしくお願いします。あなたみたいに使い分けるのが上手な人初めて見ました。どっちがあなたなんですか?」
「ッ!?」
とっさのことに橙子は驚く
死の力だけでなく看破の瞳まであるなんてうかつだったか
看破の瞳
それは、対象を現実視点と霊的視点の両方で観察することによって対象の本質、さらにデータがあれば過去を予測することができる。だがあくまでも予測なので外れることはあるが的中率は高いといわれる
「へえ、面白いじゃないか」
初見で橙子の本質に近いものを見破った。まさに天才というものだな、あれは
「さっさと始めません?」
陽の声に式は答える。陽はすでに準備万端だ
「ああ、そうしよう。ケガしても文句言うなよ?」
動く、まずは一回、高い金属同士のぶつかる音。式は刀を陽は持参した刀を使っている
式の動きは早く鋭く正しく頑丈対して陽の動きはのらりくらりとまるで幽霊が舞うように桜花が落ちるように左右に動き翻弄する。
だが、その遅さが陽の弱点だった。いくら躱すといってもすべて回避しているわけではなく、防御する際に力で押し負けている伏がある。
「ック、流石に早い」
このままではじり貧であることを察した陽は次の手段に出る
一度後退し、前に一歩、続いて瞬時に相手の無意識に刷り込む、二歩め無意識に刷り込んでいる間に加速
シュンッ
間合いを詰めて再び相手の視線に
「消え、、、て!?」
式が驚く、そんな暇は無く陽の斬撃が打たれる。
「ッチ」
だが式は斬撃を遅れて回避。ギリギリだ直感が働いた。慌てて後退
今の光景は周りの見ていた人たちには分からなかった。周りから見れば陽は消えてなどいない、だが式は消えたと言った。それはなぜか
「縮地の真似事までできるとはおどろきだな」
その答えは 眼鏡をはずした 橙子が教えてくれた
「縮地、ですか?」
「ああ、仙術の類だ。もとは長距離を移動するものだが、今のは単に式の認識外で詰め寄った。といったところだろう。式の認識外には行けても私たちの認識までは外せないみたいだがな」
幹也は納得した態度を見せる
「ああ、だから真似事なんですね」
それを聞いていた陽は
「僕はあなたを見くびっていたようだ、一瞬で見抜くなんて。」
「その言葉そっくりそのまま返すよ」
そこに式が割って入る
「戦ってる最中におしゃべりとはずいぶん余裕じゃないか」
キンッ
押し負け、陽が突き飛ばされるがすぐに立ちなおす
戦況はいまだ両者ゆずらないが二人とも厳しそうだ
「あの、また俺空気?」
その通りです。ドンマイ!
そういう声が聞こえた気がする
いかがだったでしょうか?新しくスキルっぽいものつけてみたんですけど。また、感想あったらよろしくお願いします。