割と分かりにくいです
型月の基本を知ってれば読む必要は特に無いです
分かんない、という場合は感想で報告してください随時加筆修正します
『そういやマスター』
聖杯戦争の参加を決め、部屋へと戻った直後。ふと、アーチャーがそう声をかけてくる
『マスターは魔術師として基本的な事、どれくらい分かってんのかなー、って、忠実なオレとしては気になる訳よ』
おちゃらけた感じで、赤髪の長身が呟く。私が当然ながら一人で来る気だったからホテルの部屋に一つしかないベッドに座っているからか、少し足が窮屈そうに椅子に座って
「知らない訳じゃ、ないけど」
『じゃあ、根源とは?魔術回路とは?』
「根源?魔術回路?」
聞き覚えの無い言葉に、思わず聞き返す
はぁー、とアーチャーは溜め息を付いた
『良く分かったマスター。オレが馬鹿だった
今からちょっくら語るわ』
ふいに、アーチャーは何処からか四角い何かを取り出す
良く見ると、スケッチブックだ
アーチャーが一枚目、真っ白い紙を引きちぎると、それは当たり前のように、一本の毛になって消えた
「……何したの?アーチャー」
『ん?普通に紙あった方が分かるかね、とオレの毛を変化させてスケッチブックを』
「……いや、もう何も言わない」
つくづく、サーヴァントっていうのは規格外だと思い知る。私には、到底出来ない
『まあまず、根源って何?って話だな』
アーチャーの手にしたスケッチブックには、良く分からない黒いものが書かれている
『根源、或いは根源の渦。まあ、とりあえず良く分かんねぇもんなんで、オレは多数の色を混ぜて表現してみた訳だが……』
トントンと、アーチャーが渦巻きらしいその黒を叩いて見せる
『世界のあらゆる事象の出発点となったモノ。ゼロ、始まりの大元、全ての原因。ちょっくら語弊がある言い方をすれば、究極の知識』
アーチャーが二枚目の絵を表に出す。そこには、根源の渦を示すらしい黒い渦と、黒い渦から無数に分裂した、黒に含まれる色の線。線全体を括って、世界と書かれている
『そりゃ、全ての始まりなんだから、全部を内包してる。未来すらも。何で何でも知ってる……まっ、アカシックレコードみたいなもんだ
そういや、アカシックレコードってマスター知ってるか?』
「知ってるよ。宇宙が出来てからの全ての情報が蓄えられているもの、だよね?」
大切な幼馴染が、そんなこと言ってた気がするというものを、そのままアーチャーに伝える
『それで良いぜ、マスター
んで、此処からは魔術師のお話だ』
アーチャーの持つスケッチブックが、三枚目に移行する。黒い渦が無くなった
『世界ってのはこういうもん。世界は根源から産まれてても、根源の渦には普通は触れられない訳よ』
いや、良く見ると、世界として括られた地点の外に黒渦が書かれていた
『けど、その根源、触れたいって強く思う奴等は当然ながら居るわけよ。それが一般的な魔術師。マスターの知り合いは、まあ……当の昔にそれ自体は諦めて、細々と何か魔術だけが残ってた家なんだろうな』
魔術師って屑多いし、とアーチャーは苦笑する
『じゃあ、根源に触れるにはどうすれば良いか。実は最初から根源に触れたことがある、産まれながらに魔術師達が求めて止まない根源の一部を持った人間、根源接続者なんてのも居るが、それは例外として』
アーチャーのスケッチブックが、四ページ目に入る
黒い根源の渦から、やっぱり無数の色線が出ている
けれども、今回は……
「太い線と細い線?」
『そうそう、良く気が付いたなマスター』
うんうん、と満足げにアーチャーが頷いた
『基本的に根源から全ては流れ出している。ならば、その流れを逆に辿れば良いんじゃないか?そう思う訳よ、魔術師達は
んで、魔術師達は「神秘」ってものを見つけ出した』
「神秘……」
『多くの人が知ってるものって、それだけ広いものなのかなーって思うだろ?
けれども、実は違う。一般常識、多くの人の認識に近ければ近いほど、見てる人も多くて細かくなっちまうんだわ』
アーチャーが、トントンと細かい赤線の束を叩く。細分化されたその部分は、中央にある渦からはちょっと遠い
『多くの人が知ってちゃ、根源からは遠い
逆に、誰も知らない太い部分、つまり知られていないが故の神秘的なものは、流れが別れる前、かなり根源に近い。だから、彼等魔術師ってのは「神秘」を求める訳だ』
「じゃあ、魔術って?」
『魔術?「神秘」の結果だよ。魔術が起こす奇跡こそが、他の者が知らない神秘になる訳さ
だから魔術師ってのは全体的に閉塞的になる訳よ、陰気臭くていけねぇ』
あーやだやだ、とアーチャーはぼやく
『んで、色んな色がある訳だが……』
アーチャーの指が、赤、青、黄色、紫、と色々な色線の太い部分を叩いていく
『これは、魔術の系統。例えば陰陽道だとか、錬金術だとか。形は世界にどういう形で発見されたか、つまりは解釈の違いによって差はあれ、基本的には周囲の魔力か自分の中の魔力を何かに変えるって根底は変わらない』
『で、魔術師だ
魔術師ってのは、そりゃもう神秘について良く知ってる。その原理もな
ホント、魔術ってのは面倒なモンだ。詳しく知ってなきゃ上手くいかないってのに、多くの人に知られると意味がない。まっ、マジックにも似てるな、種を知らなきゃ出来ないけど、種を皆知ってたらやる価値がない』
アーチャーのスケッチブックが、突然変わる。人間らしきものが描かれたものに
『で、魔術師がどうやって魔術を使うかというとだな、魔術回路ってのを使う訳だ』
人間型に、幾らか青い線が書かれている
『まあ、魔力を電気、魔術を電球とするならば、電気を通すケーブルがなければ始まらない。ケーブルが多けりゃそれだけ多くの電気が送れて電球は明るくなる、分かりやすいな
基本的に、魔術回路が何本かってのは先天的なもの。まあ、魔術回路って要は神経みたいなもん、人によっては無いけれども内蔵の一部だしよ』
「私は?」
思わず、私はそう聞いていた
『マスターの魔術回路は……6本。まあ、基本的に諦めろってレベルで少ない』
「そうなんだ……」
『まっ、心配すんな、マスター』
一瞬の後にはアーチャーが目の前に居て
ぽんぽん、と頭を撫でられた。少しくすぐったい
『オレ、これでも凄いサーヴァントよ?護ってみせるさ』
そう、アーチャーは笑って見せた
『んで、魔術師が聖杯戦争をやる理屈はそれはもう簡単だ。魔術師ってのは根源に触れるために魔術なんてモンにまで手を出す。それこそ根源に辿り着けるなら何でもやる人でなしの集団だ
その魔術師達が、根源にまで一気に辿り着けるかもしれない、英霊なんてモノすら呼び出す聖杯なんてアホみたいな規模の奇跡を見逃すと思うか?だから魔術師共は命が危なかろうが争うのさ。呼び出された英霊のエネルギーと、それにより願望機として起動する聖杯そのものの「神秘」をもって、
『んじゃ、今回はここまで。細かい魔術の話とか、つまんないだろ?』