Fake/startears fate   作:雨在新人

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三日目断章 正義の挑戦(失敗編)

『……どうしてだったんでしょうか』

 曇った空を見上げ、そう呟く

 思い出すのは、どうしようもなく曇っていたあの空を、「綺麗だ、見れて良かった」と口にした、一人の馬鹿。既にこの地を立った、ヴァルトシュタインへの反逆者の事

 気にしていない……つもりだった

 けれども、それならばどうして、ワタシは……

 

 あの時、こっそり使えそうなホムンクルスを使い、薬を届けたのだろうか

 

 アーサー王、アルトリア・ペンドラゴン。或いは……円卓の騎士であり魔術師マーリン。それ以外に心を震わせられるなんて、思っていなかった

 そのはず……なのに、何故思い出すのだろうか

 

 答えは出ない

 

 「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」

 ふと耳を澄ませると声が聞こえる。シュタール・ヴァルトシュタインの声だ

 

 恐らく、再びあの事を……無駄な事を試しているのだろう

 人工サーヴァント、Ru001……。ルーラー、裁定者の英霊を呼び込もうという、不可能であろう試み

 「祖には我が正義ヴァルトシュタイン

 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 唯一の成功例であるザイフリートのように、誰だっただろうか……そう、カイト、神巫戒人という人間を礎にした計画。セイバーを呼べたのだから、もしもルーラーが呼べれば……という浅はかな、けれども成功すれば圧倒的なアドバンテージを得られる、新年から続けられてきた計画

 

 「閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

  繰り返すつどに五度

  ただ、満たされる刻を破却する」

 

 「――――――告げる(セット)

 どこまでも、儀式は続いてゆく

 

 「――――告げる

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 流れてくる魔力が増大する

 

 「誓いを此処に

  我は常世総ての善と成る者、

  我は常世総ての悪を消す者」

 混じるのはアレンジ。ヴァルトシュタインの存在を信じる彼故の言葉

 「そして汝はその眼を正義に輝かせ侍るべし。汝、戦争の(くびき)を越えるもの。我はその正義を手繰る者ーー」

 

  「汝三大の言霊を纏う七天、

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 シュタイン・ヴァルトシュタインの言葉が途切れる

 

 どこか不思議な感覚。あの日も、そうだった気がする

 だけれども、ルーラーは呼べるはずが無い

 聖杯戦争においてルーラー……裁定者とは特別な存在だ。聖杯戦争を管理する、聖杯によってマスターを持たず呼ばれる、参加者ではない八騎目のサーヴァント。聖杯戦争という枠組みが崩れないように、聖杯戦争が本来の形を逸脱しかけた際に現れる使者。そもそも、本来は人間との契約は有り得ない

 

 不思議な感覚が霧散する。あの日……ザイフリートと名乗るあの少年が創られた日は、この熱は消えることがなかった

 やはり、失敗。人間を……彼と同じ神巫の血を使ってまでも、彼に等しい人工サーヴァントは創れない

 降霊魔術の血を使っても、そうそうサーヴァントになれはしない

 

 なれるとすれば、彼のような……

 

 その思いを振り払う

 何故だろうか。それを考えてはいけない気がした

 

 「S045!」

 主人……ということになっている少年の声がする

 『……はい』

 ワタシは、地下へ向けて歩きだした


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