まあ、フェイにとってのブリテンとか、色々本家を見ての軌道修正点等をフェイが語る感じの話です
『……ザイフリート』
ワタシのブリテンの成れの果てから、ワタシは空を見上げる
『何の用ですか、裁定者』
そして、ワタシはいつの間にかこの世界に戻ってきていた少女に語りかけた
『一つ、疑問があったんだよね
それを、解消しに来たんだ』
と、黄金と赤の裁定者は、ワタシを見据えて告げる
『ええ、既にもう止められない。話くらい幾らでもしてあげましょう
それで、何を聞きたいんですか?』
くすりと笑って、ワタシは問い掛ける
『ブリテン
君はモルガン。ブリテンの王。なのに、案外ブリテンに対して執着がない。わたしの知ってる……ううん、ルーラー特権で見させてもらった座に刻まれているモルガンって、もっとブリテンに固執するものだからね。そこが分からないんだよね
君の目的も、彼への執着も、ブリテンには関係ないのに』
『……そうですね。汎人類史のモルガンであれば、そうでしょう
ワタシだってブリテンは護りたかったですよ。でも、遅かった。それだけの話です
過去にでも戻れれば……いえ、戻れますが……。言い直しましょう
星に行動を変えさせる術があれば話は違いました。けれど、ワタシはブリテンの魔女。ブリテンの全てを見通すグランドキャスター
だからこそ、生まれた瞬間に知ってしまったんですよ。愛すべきブリテンは、ワタシのブリテンは、とっくの昔に……1万2000年は前に、既に世界もろとも滅んでいる、と』
『……今のフリット君が、招来している星によって』
『いえ、違います。あれは、異なる世界から呼び出したもの
……そう、かの遊星が、異なる可能性から召喚される事こそが、この世界の剪定。何よりの間違い』
ワタシは、遠くで今も戦う銀の星を……彼の成れの果てを見つめて、呟いた
何時しか現れた3つめの機械神……都市ひとつに影を落とす巨神ポセイドン、街ごと押し潰さんと襲いかかるそれを押し返そうとする銀の龍人機に、機神アレスの紅の剣が突き立つ
『星が己と引き換えに、かの収穫星を、捕食遊星ヴェルバー02そのものを撃滅した剪定事象。それがこの世界です
ワタシは、愛すべきブリテンの過去を見て、それを知った
座のサーヴァントならば、その誤差に気が付くでしょう?この世界にアルビオンは居ない。星の内海への道は無い
……いえ、星の内海自体が、既に無い』
もう、ブリテンは救えなかった。終わるしかなかった
何をやっても、1万5000年かけて死んでいく、いえ、もう死んでいて機能が終わっていく地球の中の何かなんて、拾い上げられる筈もなかった
死後に産まれたアヴァロン・ル・フェ。死したブリテンに降り立ったモーガン・ル・フェイ
『だからですよ、ミラのニコラウス
ワタシの、モルガンの護りたいブリテンは、ワタシが産まれた時には既に死んでいたんです
死に行くブリテンならば護りましょう。死にたいと言っても許しません。けれど、けれども
もう死んだブリテンは、破壊の
『だから、アルトリア?』
『ええ。ワタシの光は、もう終わったブリテンのために、誰かのために、光り輝こうとしたあの子
自分を捨ててでも、終わることが分かっていても。ワタシの代わりに、ブリテンの終わりを看取った、そうあって欲しくはなかった理想の王。それが、
『……だから、今回の聖杯戦争を起こしたんだ』
『ええ。そうです
ヴァルトシュタインに語った、タイプアースの降臨なんて嘘っぱち。死んだ星に、最強種なんて産まれようがありませんし』
全く、酷い嘘つきですねとワタシは笑う
『うん、そうだね
それでも、人は光を目指すんだよ』
『ワタシはワタシで、光を目指したんですよ、裁定者』
『ところでさ、フェイちゃん』
『アナタに言われると不快です』
金の裁定者は、遠い空を見上げる
降り注いだイチジクのような巨体……機神デメテルの一撃と機神ポセイドンの突撃に挟まれ、銀の龍星の翼が砕け散った
『あれさ、神秘の秘匿とか、やる気あるのかな?』
『あるわけないと見て分かりますが?』
ワタシは通した電波を通して、スマホの画面を開く
そこには、突如空に現れた巨大な機械神についての様々な憶測が写真と共に踊り狂う狂騒を呈していた
『全く、ちょっとは自重が欲しいなぁ……』
『彼等からすれば、アレは……地球が、自分達を受け入れた星が、命と引き換えに滅ぼした筈の1万4000年前の亡霊
あの時に無くなった筈の真体機神の姿で、人理の範囲を離れ見守る事すら忘れて現れるくらいの仇敵』
だから、今回の聖杯戦争は困りものです、とワタシは呆れたように呟く
『まさか、本気でオリュンポス12神が真体で降り立つとは思ってませんでしたが、ヴェルバーに対抗すべく、馬鹿げたサーヴァントが複数呼ばれるとは、真面目にやる気あったんですかね』
『主催からして、そんな気無かったよね?』
『ま、そうですけど……』
空を横切る、巨大な翼のような機械神
機神アフロディーテ
『アフロディーテが来た辺り、洗脳で事態を収めるんでしょうね
誰も、疑問に思わなくして』
『ホント、横暴だね』
少しだけイライラしたように、ルーラーの少女は石を蹴り飛ばした
『流石に、そんなに要るのかな』
『要りますよ。あの日、彼等オリュンポスの神々は大半の真体機神を喪った。今の彼はあの段階にまで辿り着いてはいないでしょうが……』
千里眼で見た過去のブリテンを、境界の竜をものともせず撃ち落としながら大地を焼き払う白い巨人の姿を思い浮かべながら、ワタシ言った
『その性質は間違いなくあの日と同じ捕食遊星。今度こそ勝とうと言うならば……全員で来るでしょうね』
『もう神代じゃないんだけどなぁ……』
『何を言ってるんですか、神の時代ですよ、今は
だから、ワタシは彼を求めた。最初は虚数の海に眠るティアマト神にやって貰う気でしたが、それはサブプランに変えて、大目標にするのは止めました
あの子に未来を、そしてワタシにブリテンを。星に……あの日死んだ地球に命を
それを果たすなら、やはり……遊星の事は遊星に。意図せず産まれた制御できる
雷轟と共に、巨大な顔が森であった場所の空に姿を現す
『来ましたか、ゼウス
早いですね、まだ8機ですが……』
『良いの、フェイちゃん?』
不意に、裁定者がそんな事を尋ね、ワタシは首を捻った
『どうしました?』
『あの星、あのまま負けるんじゃない?
良いのかな、助けなくて』
させないとばかりに拳を握って、サンタ少女はワタシを静かに睨み付ける
『助ける必要もないでしょう。アレは彼、ザイフリートです
ええ、ええ。本当に機神が揃ったとして……セファールであれば敗れるでしょう
ですが、あれはセファールではない。彼という存在の差が、勝敗を必ず覆します。助ける意味なんてありませんよ
勝ちますから』
『信じてるんだ』
『当然でしょう。彼はワタシのものですから
ですが……』
一つくらい手を打ちましょうか、とワタシは今にも飛び立たんとする力に声をかける
『これはワタシでないワタシの縁
けれど、翼はアナタの願いのままに
構いません。元々、アナタを撃滅し、その文明を模している彼への恨みがあるのでしょう?ワタシに義理立てなど必要ありませんよ
どう動いても、アナタの存在が……あの紅の銀星に、ちっぽけで取るに足りない筈の、ザイフリート・ヴァルトシュタインという思考のノイズを維持させる。最終的にはワタシの為です
飛びなさい、
『っ!やっぱり!』
摂理の雷が轟く
けれど、そんなもの……最速の機体には届かない
白き境界の竜アルビオン。ワタシではない別の世界のモルガンの縁により顕現した竜の残骸は、その機体を軋ませながら雷を振り切る速度で天を駆け、銀龍と機神が睨み合う地へと飛翔した