Fake/startears fate   作:雨在新人

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十一日目日常 自分の事は自分が一番知っているなんて、大嘘の証明

地下へと、降りる

 その道は木製の板が敷かれた階段になっている……って準備良いなフォックス。小気味良い木を叩く足音が二つ、狭い空間に響き渡った

 

 そうして、辿り着く。ジェットコースターの乗り場は、何というか、地下鉄であった。地下鉄の駅が、こんな感じだったなとなる

 レールはない、更に一段掘り下げられたコースターの通路。そして乗り降りするためだろう一段高いホーム。松明でもって明かりは確保され、乗り場駅という木製看板が壁に打ち付けられている。コースター通路幅は2m無いだろう。いや当たり前か。動力源が見当たらないのが、ちよっと気になった。ジェットコースターのレールは単純にルートを示している訳ではない。その他には動力源も兼ねている。それがないということは……また式神式か?

 

 とりあえず、待つ。立っているのはアサシンと二人のみ。他に人は見当たらない。人でないものは見当たるのだが、アレは放置で良いだろう。残留思念みたいなもの、つまりは幽霊だ。半分壁に埋まっている。放っておいても消えるし襲ってくることも無いだろう。多分殺されて埋められて証拠隠滅された誰かだろう、無視。成仏したいならミラにでも頼んでくれ。俺なら、天国でも地獄でも無い場所(遊星の記録)に送るか無に還すかしか無い。命は壊さない、その文明を破壊するとか格好つけたくはなるが、そもそも文明の根底にあるのは命だ、それを破壊しなくて何になるというのだろう、うん

 

 まあ、良いか

 「……楽しいか、ニア?」

 とりあえず、横で静かに待つ少女に語りかける

 『すごく。ぐれーと』

 「そう、か」

 『「我」の希望は、楽しく、ない?』

 上目つかいに見上げられ、逆に問われる

 ……何というか、この姿だと効くな、かなり

 「割と、楽しいかな」

 寧ろ楽しむことが駄目だと分かってはいるのだが。それでもまあ、と流される。いざとなれば、きっと目的のために全てを捨てられる己が何とかしてくれるさ、と半分自暴自棄に呟いて

 生きたいなんて思う必要はない。寧ろ邪魔だ。彼に全てを還さなければ、それだけで、何度だって立ち上がれる、そうでなければならない、はずなのに

 

 『……たいせつな、人?』

 ふと、やっぱり上目づかいで瞳を覗いてくるアサシンの姿に気が付く

 ……表情でも読んだのか。読んだんだろう、アサシンなら多分分かるのだろう。伊達に本来の世界線での俺のサーヴァントなんてやってなかったという話か。いや、本来の世界線の俺と今の俺なんて同じ神巫雄輝から作られた別人じゃないのか?とは思うのだが、何でか良く分かられる

 「さあ、な」

 ふと考えてみると、彼は、神巫雄輝は俺にとって何なのか。それは、言葉にしにくい。何ていったら良いのだろう

 救うべき相手?全てを還さなければならない相手?……本当に、それは大切な者だと言い切れるだろうか。いや、言い切らなければならない。当たり前ではないか

 

 だから、さあなという答えは、絶対に出してはいけない、おかしな答え

 「いや、大切な人だよ。そうに決まってる」

 『……そう』

 「ニアには居るのかよ」

 『同じような人は、居ない』

 「居ないのか。俺は違うのか?」

 軽く、そう尋ね

 『違う』

 そうして

 『……もっと、大切』

 思いきり地雷を踏み抜く

 落ち着け俺、思いきり夢の中でマーリンのフリして自分をごり押してきたフェイの策略にかかってるぞ。聞き流せ

 

 「……そう、か

 ならば、俺のために死んでくれるよな?」

 『大丈夫。「ボク」が、死なせない』

 「いや、死なないのか……

 いや、自分が守るって事か?」

 『今度こそ』

 「前は無理だったのかよ」

 無理だったのだ。アサシンと……ニアと契約したその時に見たビジョン、あれは本来の世界線の俺の死だろう。アサシンは当時すでにバーサーカーと相討ちして消えており、成す術無く旧ランサーに殺された本来の運命の

 だから、今の世界では俺を守ると。守ると言うならば、自力で守れるように尖兵の力の半分返せと言いたくはなるが。まあ良いか、預けておこう。必要になれば返してくれるだろう

 

 「……で、そうしてるつもりなのか?」

 アサシンに、袖を握られている。いや、別に良いのだ

 そこはかと無く恋人気取りっぽい事をされても、まあアサシンだしと流せる。流せないと不味い。いやだって正体アレだぞ。だから気兼ね無くとも言えるのかもしれないが

 それが、楽しくないと言えば嘘になる。だからこそ、毅然としろという話なのだが

 「楽しいか?」

 『凄く、暖かい』

 ジェットコースターが着く3分くらいの間、ずっとアサシンにそうされていた


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