完全ネタバレ三馬鹿雑談です。既に実質言っているようなものだし隠す意味も無いなという事で今のタイミングですが、話は特に進まないので無視しても構いません。今話を読んでなくてもこの先支障は生じません
『……それで、言い訳を聞きましょうか』
生意気な狐を逆さに吊るし、ワタシはそう言葉を続けた
その手には、ぱっと見襤褸と見分けがつかないような、黒こげの手を持って
あの狐さえ余計なことをしなければ、こんな形で手にすることなんて無かったでしょうに。その点は、やはりあれは駄狐だと確信させる
『ああ、ホント。にまついて、気持ち悪いですねぇ、
関わった人を不幸にせずにはいられないなんてサガを抱えながら、幸福に生きてみたりでもするんです?』
『しませんよそんな殺人鬼みたいな主張』
『えぇ~、ホントですぅ?』
『嘘なんて吐いて何になるんです?』
『何かになるんじゃないです?まあ、
割と余裕な狐の下に、ちょっと水の貯めてある大鍋を用意する
『すとーっぷ!ストップぷりーず!』
『フリーズ?凍らせて欲しいんですか?冷凍狐肉の調理は少し……』
『そんなこと言ってねーですぅっ!』
じたばたと暴れる桃色の駄狐を尻目に、銀の狐はくつくつと笑っていた
『……それでは、言い訳を聞きましょう、
『おや、ワタシがやらなければならない言い訳など、ありましたか?』
『ええ、在りますとも。何故、バーサーカーをあのタイミングで呼び戻したのやら
見逃す腹積もりであった、とでも言う気ですか?』
『逃がす気満々だったのはそちらでしょうに』
静かに穏やかに睨み付ける銀狐に、意に返さずといった態度を見せるように、ワタシは返す
『
ああしてワタシの意図を、善意かつまるで正しい事であるかのように、計画に一件支障はない形で邪魔をしてしまえば良い。後は勝手にあの姿を嫌ったワタシの方があの
『さあ、どうやら。それはそもそも、彼を逃がす事に、
折角戻ってきたのです。そこの駄狐のあたふたする姿を見るにも、
独断専行、駄狐を締め上げて理由でも聞けば良いかと』
『というか母上、バーサーカーを帰らせた理由は答えてないのでは?』
拠点としている平安の都(旧セイバー本体の心象の都)は構造上横に広く、吹き抜けている。その為内裏に入れば居場所に当たりをつけて駆け抜けるのは割と容易い
ライダーがその高低差のあまり無い屋根け抜け、狐鍋祭の会場に現れていた
『バーサーカーの回収と再配置は終わりましたか、ユーウェイン』
『二度目はやりたくない話ながら
……バーサーカーよりも、横の怨念の塊のような神殿が、どうにも苦手で。勇気ある獅子すらも身震いさせる怨霊、一人バーサーカーを城に戻すために向かわせるなど、非道い話とは』
『アナタなら出来るでしょう?だからやってもらう訳です』
『……はあ』
溜め息を吐く
『バーサーカーを帰らせた理由ですか?
そんなもの、アナタ方だってわかっている事でしょう?』
『母上、買い被りすぎだ』
『分かりたくねーです』
『理解を拒否したい』
ライダーは分からなくても仕方がないので気にせず、残りの分かってるだろうに惚ける二匹には呆れながら
『ワタシの仮面を完成させておいて、分からないなんて言わせませんよ
戦いを続ければ、いずれバーサーカーは最低最悪の形で敗北する。だからまだ優勢を取れてなくもない段階で切り上げさせたのです』
『いやいや
吊るした縄をライダーに切って貰いながら、桃色狐が首を傾げた
まあ、良いです。憂さ晴らしですし、とそれは咎めず、言葉を続ける
『ユーウェイン以外、彼の力の根底、分からないとは言わせませんよ。それさえ分かれば、何も疑問なんて沸かないはずです』
『タマモ尻尾ぶるっちゃいますぅっ!なものな気はするんですけどねぇ
……あれ、完全に滅びた筈で御座いましょう?生きてる、筈が、ねぇっ!座にも記録なんてされる訳もねー訳ですし、あまりにも有り得ねー』
『その矛盾が解決出来ないのだから、貴女の言葉は通らないという話です、
仮説としてあり得るとすれば未来干渉ですが、それならばそもそも、あの時に勝てたという前提が間違っている事に』
『……付いていけない訳だが』
『ああ、解説するので待っていて下さい。纏めてからやります
……それで、その正体は?今の考えで構いませんよ』
『『星の外からやって来た、星を滅ぼした化け物』』
『……ええ、正解です
彼に力を貸しているのは、ジークフリート等ではなく彼……いや、彼女というべきですかね』
静かに、ワタシは頷く
『それは仮面を付けさせた瞬間に分かった訳ですけど、有り得ねーにも程があるです』
『……そもそも、ワタシ達は何の目的で、聖杯戦争に召喚されたのでしたか?』
『
『違います。そもそもワタシが始めた訳ではありません。ヴァルトシュタインが偶然ワタシを呼び、そうして成り立つ筈の無い机上の空論を奇跡の力で実現しようとした、それがこの聖杯戦争です。ワタシはプランを形にするアドバイザーに過ぎません。では、この聖杯戦争の本当の目的は』
『近い未来に来る破滅を回避する為、でしょう?』
『ええ。極めて近く、されども限りなく遠い未来に地上に降り立つ
『……では、黙りましょうか』
『……分かりましたか、生徒グレイテスト・オンミョージ』
『先生にしては失格級ですね』
肩を竦める銀狐に、眉をひそめる
『煩いですね。彼はワタシの授業で分かりやすいと言っていましたが』
『……繋がらねーです。アレは滅びているはずですしぃ?そもそも滅びてなければ、世界が自らと引き換えに倒した意味が欠片も、ねぇっ!死にかけたって笑いながら何とかしたあの
『ええ、だから、あそこでアレは滅びましたとも。完全に、ね
……その残骸を戦乙女に組み込んでご満悦していたのがオーディンらしいですが、そんなものは関係ありません。アレが滅びたこともまた』
『滅びたことが関係ねーとはどういう話です?』
『……駄狐、まだ気が付きませんか?』
『分かった風の口を聞くな!です!』
『そもそも、救世主を、タイプ・アースを呼ばねばならない理由は?』
『寿命が尽きた星の延命、新生……
ま、さ、か?』
びくり!と桃色狐の耳が震え、ピンと天を向いて立つ
『ええ、そもそも完全に滅ぼすことには成功したものの世界は満身創痍、星の寿命も1万5000年程度の絞りカスしか残っていない。だからこそ、魔力はどんどんと尽きて行き、このまま行けば後1000年もせず星の寿命すらも尽き、それでも生きようとする生命を滅ぼすために星の最強種が降臨する。こんなワタシ達の世界、何時剪定されても可笑しくありません。少なくとも、編纂事象の本流近くでは有り得ない
ならば』
『……編纂事象近くでは、あの化け物が滅びてない世界も、有り得るんです?』
『ええ。異次元には存在するらしい月の聖杯に機能停止した瞬間のアレを閉じ込める事で精一杯だった次元、あるらしいですね
……つまり、分かりますね?アレの正体は?』
『『捕食、遊星……ヴェルバー!』です!』
『正確には、ヴェルバー02、らしいですよ?少なくとも01と03、あと二星、居るらしいですよ?本人から聞きました、03は苦手だ、と』
『……あと、にたい?』
桃色狐が一瞬固まった
『この世の終わりですぅっ!他に居たとか勝てる訳ねーです勝てる訳がねーですぅっ!』
『……それで、全く付いていけないんだが
あれは……ザイフリート・ヴァルトシュタインとは結局、何なんだ』
『もう少し簡潔に、です!』
数分後、何とかまあ、地球に来るわけでもありませんしという一言で正気を取り戻した桃色狐が、ライダーの問い掛けにビシッと指を立てた
『あれは誰だ』
『誰か』
『誰です?』
笑いで誤魔化してしまおうと言うノリに、ワタシも苦笑しながら乗る
『あれは、ハーヴェスター
ヴェルバーマン』
『ヴェルバーマン!?』
『星の仇敵の名を受けて、すべてを捨てて闘う阿呆です』
『ヴェルバーアローは?』
『壊光線です』
『ヴェルバーイヤーは?』
『ありません』
『ヴェルバーウィングは』
『空を割ります』
『ヴェルバービームは?』
『星を灼きます
遊星の力、身に受けた、災厄のラスボス……ってもう良いでしょう
サーヴァント、アンチセル(ヴェルバー02)。滅びきっておらず、代わりに星の寿命も尽きていない編纂事象の本流において、月に封印されていた本体と、何でか交信に成功してしまい、この世界での
バーサーカーが勝てないのも当たり前ですね。ザイフリートという肉体と、ブリュンヒルトという人間。どちらも間接的に遊星の力を振るっている以上、本体の尖兵に残骸からの再現が勝てる道理なんて欠片もありません。最後には吸収されて完全な遊星の復活に近づきます。そもそも、蒼炎の翼という、彼の認識した力の発現方法に則って力を振るっている以上、バーサーカーが発現方法を決めている上位権限持ちに勝てる訳もないのは、本体だ何だを無視しても当然の帰結ですが。最悪、己に返せ、その力の一言で終わりますよ。彼本人が自分が遊星の尖兵だと気が付いていないからやりませんが』
『気が付いてないのかよ』
『完全復活されるとワタシも困ります。というか、世界は確実に滅びます。星が幾億もの寿命を擲って破壊した禍星を、今の世界が倒せる訳がありません。だからこそ、ワタシは「アナタは
不完全状態、制御出来る星の危機、そうあって欲しい。その為には、バーサーカーを倒して吸収されると困るのですよ』
その言葉に首を傾げ、ライダーは一言だけ告げた
『そもそもだ、母上。
その言葉に、桃色狐がずっこける音だけが、部屋に響き渡った
真名解放
アンチセル
クラス:アンチセル(ヴェルバー02)/ビーストⅡ-if 真名:ザイフリート・ヴァルトシュタイン/巨神アルテラ