ガールズ&パンツァー アンツィオ物語   作:木原@ウィング

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お待たせしました。
この後の戦車戦もこの話の予定でしたが最初書いていたら流石に展開を飛ばし過ぎだったので分けていたら遅くなってました。

あと、戦車戦の描写って難しいです(;'∀')
今回は番外編の撮影メンバーや各校のオリキャラ達の招集回です。

何かメッセージでも感想でも不快とかってコメントが大量に来たのでこのシリーズはこれを書いたら暫くは休載にする事にしました

楽しみにしてくださった方、またこれを読んで不快に思われた方、大変申し訳ございませんでした



集合です!!

「戦車を題材にしたテレビドラマ、ですか?」

 

「うん、そうなんだよね。こちらの方からそういう話が来たの」

 

みほのアンツィオ高校戦車道への歓迎会を行った一か月後、アンチョビは学園の生徒会室に呼び出されていた。

そこにいるのはアンツィオ高校生徒会とスーツを着た七三分けの眼鏡をかけた男性だった。

 

「それで、なぜ我が校なのでしょうか?」

 

「私達、戦車道連盟としてはカッコイイ戦車が良いんですが一番最初は小さくて子供たちにも親しみが持てそうなCV33を主役にしたいと思いまして……」

 

「そ、そうですか? CV33がそんな風に思われているなんて嬉しいですね」(これって暗にアンツィオ高校には強い戦車は無いって言いたいのかな?)

 

「そこでこれがその契約書類ですが……」

 

男性はそう言って鞄からファイルを取り出してアンチョビに渡す。

ファイルから書類を取り出して目を通すとその内容に驚くアンチョビ。

 

「あの……この契約金は何の間違いでしょうか?」

 

「あぁ、それは上手くいった場合の金額であまり上手くいかなかったらその1/3になります」

 

「いや、それでもこの金額は……」

 

「最近はテレビ番組と連動した玩具はとても高く売れるんですよ」

 

「玩具? あれ? テレビドラマって言っていませんでしたっけ?」

 

「えぇ、言いましたよ?」

 

「なぜ玩具?」

 

「ですから、やる時間帯が……日曜の朝8時ですから」

 

「…………え?」

 

 

 

 

「え? えぇ~!! わ、私が日曜朝の特撮の主演ですかぁ!?」

 

放課後、ペパロニのお店の手伝いをしようとしていたみほはアンチョビに呼ばれて作戦室(戦車道部屋)に呼ばれていた。

 

「やっぱり、出来ないか?」

 

「あ、いや……突然言われたので!! わ、私なんかが……」

 

「私もみほには厳しいですって言ったんだ。でも、あっち側が『主演は是非に西住みほさんにお願いします!!』って言って聞かなくてなぁ」

 

「何で私なんだろう?」

 

「……とてつもなく言いにくいんだが、この計画を立てたのが西住流らしい」

 

「え!? お母さんが!?」

 

思いもしなかった所が計画を立てていた事を知り、驚愕するみほ。

アンチョビも頷いて話を続ける。

 

「あぁ、私も初めて聞いた時は思いっきり叫んでしまった。お陰で生徒会には大爆笑されてしまったよ」

 

その場面を思い出したのか少し顔を赤くするアンチョビ。

みほもそんな場面を想像したのか少し苦笑いする。

 

「それで、一体お母さんは何を考えているんだろ?」

 

「表向きは戦車道をもっと世間に知ってもらいたいみたいだが……本当はみほに会いたいんじゃないか?」

 

「そんな好きな子が構ってくれないから拗ねちゃう子供みたいな理由な訳が……」

 

(……まぁ、まほからの連絡通りだと本当にみほに会いたいが為らしいがな)

 

「えっと……それで何時から撮影が始まるんですか?」

 

「え? みほ、やるの?」

 

「……私だって無理だと思います。でも、お母さんが私を指名したのは何か理由が有るかもしれない」

 

「それに……こういうのはノリと勢い、ですよね?」

 

「みほ……お前も結構アンツィオに染まってきたな」

 

みほのその発言に思わず笑顔がこぼれるアンチョビ。

そんな時、作戦室の扉が思いっきり開かれる。

 

「アンチョビ姐さん! みほを勝手に連れて行かないでくださいよ!! 私達だってみほの事を待っていたんですから!!」

 

「あ、あぁ。すまん、シーコ」

 

「あ、ごめんなさい。シーコさん、今すぐ行きますから」

 

「みほも早くね? ペパロニが鉄板ナポリタン作りながら首を長くしているから」

 

「うん、分かったよシーコさん! それじゃあ、アンチョビさん。また後で」

 

「あぁ、この話はまた後でだ」

 

そう言ってみほはアンチョビに挨拶をしてペパロニの屋台に走って行った。

 

「……本当にアンツィオ高校に染まってきたな。みほは」

 

 

 

「で? みほ、今日は何で遅れたんだ?」

 

「えっと、実はね……」

 

屋台の手伝いが終わって夕方、作戦室に戻るシーコとペパロニとみほ。

戻る途中で屋台の手伝いに遅れた理由を尋ねるペパロニ。

 

「今度から日曜朝の8時から放送する特撮番組に私が主演で出ないかって言われたの……」

 

「主演って……凄いじゃねぇかよみほ!!」

 

「う、うん……」

 

まるで自分の事の様に喜ぶペパロニを見て嬉しくなるみほ。

 

「良いな~何かそれ面白そうじゃんか」

 

「面白いかどうかはまだ分からないけど」

 

「絶対に面白いですって!」

 

「いいな~私もそういうド派手な事やってみたいな~」

 

シーコもペパロニと同じなのかうんうんと同意するように首を縦に振る。

それを見て少し考えて口を開くみほ。

 

「ねぇ……二人とも」

 

「ん? なんだ」

 

「何ですか?」

 

「もし、もしもだよ? ペパロニさんとシーコさんも出れたら出たい?」

 

「「え?」」

 

「私だけじゃ心細いって言うのも有るんだけどね? ……二人と出れたらもっと楽しくなると思うの」

 

少し恥ずかしそうに言うみほ。

それを見て嬉しそうに笑うペパロニとシーコ

 

「嬉しい事を言ってくれるな!」

 

「そう言われちゃ出たくなりますよね」

 

「それじゃあ!!」

 

「って言ってもどうする?」

 

「……取りあえず、アンチョビさんに会いに行きましょう」

 

「何でアンチョビ姐さんに?」

 

「アンチョビさんに今回の話を聞いたからもしかしたら……」

 

「そうか! それだったら何とかは急げって奴だ!!」

 

「ペパロニ、それを言うなら悪は急げだよ」

 

「善は急げだよ。ペパロニさん、シーコさん」

 

 

 

「なるほど、シーコとペパロニもみほと一緒にあれに出たいと?」

 

「はい!!」

 

「みほだけじゃ心配だし」

 

「あ、ははは」

 

アンチョビのいる作戦室に到着して自分達もみほと一緒に出たいと直談判をし終えたペパロニとシーコは自信満々に答える。

ペパロニの言い分に思わず苦笑いしてしまうみほ。

 

「う~ん、私としては出しても良いと思うんだが……二人の役に合う奴は有ったかな?」

 

「やっぱり駄目ですかね?」

 

「この台本に合いそうな役が有ればあっち側に出演交渉が出来るんだけど……」

 

そう言って渡されていた台本を取り出して三人に渡す。

ペラペラとめくっていくとペパロニ。

しばらく捲っていくと一つのページで止まる。

 

「……姐さん。これって私にどうですかね!?」

 

「どれどれ? ……ほほぉ」

 

アンチョビがペパロニが言った役を読んでみるとその役は確かにペパロニにぴったりの役だった。

 

「うん。良いんじゃないか? 取りあえずは聞いてみる」

 

「お願いするっす!!」

 

「シーコはどうする?」

 

「う~ん、この中には私に合いそうな役がないですね」

 

「そうか……」

 

「今回は残念ですけど……」

 

「まぁ、また機会があるだろう! その時までに演技の練習でもしておけ!!」

 

「はい総帥!!」

 

「取りあえず、今日はもう帰れ。明日だって有るんだからな」

 

「「「はい!」」」

 

アンチョビの指示に大きな声で返事をした三人はそのまま寮への帰路へと付いた。

 

「さて……」

 

みほ達が寮に帰るための家路についてる頃、アンチョビは電話を掛けていた。

しばらく呼び出し音が続き、ようやく相手側に繫がる

 

『はい、西住です』

 

「ご無沙汰しております。安斎です」

 

『電話をしてきたという事はみほは?』

 

「えぇ、出演するそうです」

 

『いよっしゃあ!!』

 

「……」(うわぁ……凄いハイテンション)

 

電話越しから物凄く嬉しそうな叫び声が聞こえ、思わず電話から耳を離すアンチョビ。

しほが落ち着くのを待ってから再び話し出す

 

「それで他にも報告することが」

 

『何かしら?』

 

「私の後輩の一人が作品に出たいそうで、ピッタリの役を見つけたのでその報告を」

 

『そうですか。で、その役は?』

 

「はい、あの一番最初に味方になる怪人役です」

 

『あぁ、あの役ですか。確か……短気で好戦的、単純だが、根は優しく、涙もろい皆の兄貴分でしたね』

 

「涙脆いって所は違うかもしれませんが残りは殆どキッチリと一致します」

 

『ふむ……』

 

しほは電話越しで暫く考え込む。

その沈黙の長さから少し焦るアンチョビ

 

(これで駄目だったらペパロニに申し訳がたたん。それにみほにまで期待を持たせているのにそれを裏切ることに……)

 

『……分かりました』

 

「え?」

 

『その子に伝えておいて下さい。貴方の出演を心から歓迎すると』

 

「あっ……あ、ありがとうございます!!」

 

電話越しに頭を下げて感謝するアンチョビ。

そんなアンチョビに対して話を続けるしほ。

 

『それともう一つ』

 

「はい、何でしょう?」

 

『実は一か月後に撮影に参加する学校の戦車道チームを集めて合宿を行います』

 

「え? 合宿……ですか?」

 

『えぇ、旅館はこちらで手配するので来てくれますか?』

 

「この時期にですか?」

 

『何か問題でも?』

 

「いや……そろそろ戦車道全国大会が近いですが?」

 

『だからこそやるのですよ』

 

「だからこそ?」

 

『えぇ』

 

しほの発言に疑問を持ったアンチョビが聞くとしほは自分の考えを口にする。

 

『大会の近いこの時期にやる理由は……ライバル達と寝食を共にし、ライバル達の現在のレベルを実際に見てどうやってそれを攻略していくか。それを考えさせ、よりレベルの高い攻防を繰り広げる試合が見たいのです』

 

「な、なるほど……」

 

しほの理由を聞いたアンチョビは納得して自分の答えを口にする。

 

「まぁ、みんなのいい経験になると思うので……良いですよ」

 

『ありがとうございます。日程ですが……』

 

しほから日程を教えてもらったアンチョビは自分の手帳に書き込んでその日は帰路に付いた。

 

 

 

アンチョビがしほに連絡を取った翌日、アンツィオ高校の戦車道チームは呼び出されていた。

 

「アンチョビ姐さん。みんなを呼び出してたけどどうしたんだろうな?」

 

「さぁ? 戦車道で何か有ったのかも」

 

何時も戦車道で集まる階段にやってくると既にアンチョビを除いた全員が揃っていた。

 

「全員揃ったか?」

 

「はい、総帥」

 

「よし……良く聞けお前達!!」

 

「実は一か月後に全国の戦車道チームとの合同合宿が開催されることになった!!」

 

「……え?」

 

「それマジっすか!?」

 

「凄いっすね!!」

 

「でも姐さん、何でこの時期に?」

 

「そうっすよ、もうすぐで戦車道の全国大会じゃないっすか」

 

「つまりこういう事だろう。『ライバル達と寝食を共にし、よりレベルの高い攻防を繰り広げる試合が見たい!』と」

 

「なるほど!!」

 

「そういう事っすか!!」

 

「そうなのかな?」

 

アンチョビの考えを聞いて納得するアンツィオ高校の面々と未だに疑問が残るみほ。

 

「まぁ、取りあえず全員この日から一週間は行けるように調整してくれ」

 

「あの、総帥? 合宿中の単位はどうなるんですか?」

 

「それについては心配するな。学校側からはその分の単位は貰えるようにはなっている」

 

「流石は総帥! 根回しが早いっすね!!」

 

「話は終わりだ! さぁ、練習を始めるぞ~!」

 

「「「「「「「「「お~!!」」」」」」」」」

 

アンチョビの号令と共にその場の全員が戦車に乗り込みに走って行った。

 

(合宿かぁ……何か大事な事を忘れている気がする)

 

走りながらみほは頭の中によぎった疑問に首をかしげていた。

 

 

「……お母様には困ったものだ」

 

「お~い、まほ。聞いたか?」

 

「あぁ、ヴィゼか。聞いたって?」

 

「とぼけちまって、あれだよ。合宿とあの面白そうな番組の企画書の話」

 

「あぁ、あれか」

 

ヴィゼに言われてまほは溜息を付く

幼馴染みのヴィゼでもまほが溜息を付く姿を見ることは余り無いので少し意外そうな表情をする

 

「珍しいな。まほが溜息を付くなんて」

 

「私だって人間だ。溜息の一つや二つは付くさ」

 

「そんなに大変か?」

 

「私としては大変と言うよりは不安の方が多くて気苦労が絶えないだけかな?」

 

「あんまり深く考えないでいた方がまほの為になると思うけどな」

 

「そういう物かな?」

 

「そう言う物だよ」

 

疲れた表情をしたまほにそうアドバイスをするヴィゼ

アドバイスを受けたまほは不思議そうに首をかしげる

 

「西住隊長~!! ヴィゼ副隊長~!!」

 

「ん?」

 

「おっ! お転婆娘のご登場だ」

 

遠くから走りながら二人の名を呼ぶ少女を確認したヴィゼは楽しそうな表情をする

まほも聞こえて来た声の人物に心当たりが行ったのか少し顔の表情を緩ませる

 

「みほ副隊長の妹分! 神崎 未来!! ただいま見参です!!」

 

「よ~未来! 相変わらず元気そうで何よりだ」

 

「はい! 私は何時でも元気です!!」

 

「未来、どうしたんだ? まだ練習の時間では無いが……」

 

「はい! 何時ものパンターのチェックです!」

 

「パンターのチェック?」

 

「はい! 何時も乗る前に今日の調子とかを確認しているんです!!」

 

「そう言うのは整備班の人がちゃんとしてくれていると思うのだが……」

 

未来の言い分に少し首をかしげるまほ

そんなまほに未来は笑顔で答える

 

「確かに整備班の人がちゃんとやってくれているのは分かっているんです」

 

「ならばどうしてだ?」

 

「自分で確かめるのが癖になっちゃっているんです」

 

「癖になっている?」

 

「はい!」

 

「あははは! 癖になっているか! そうかそうか!!」

 

「わわ! ヴィゼ副隊長! 頭をワシャワシャしないで下さい! 髪が! 髪型が崩れますぅ!!」

 

未来とみほの会話を聞いていたヴィゼは可笑しそうに未来の髪をワシャワシャと撫でる

その乱暴な撫で方でセットされていた未来の髪型は無残にも崩れた

 

「う~酷いです。折角、今日の髪型はバッチリ決まっていたのに」

 

「いや~悪い悪い。未来が余りにも可愛かったからな、ついついやり過ぎちまった」

 

「もう! ヴィゼ副隊長はいつもそうなんですから!!」

 

頬を膨らませてそっぽを向いて怒る未来

未来のその態度に少し困った様に笑うヴィゼはとっておきの秘策を切り出す

 

「悪かった。練習が終わったら未来の好きなアイスを買うからさ」

 

「それじゃあ仕方がないですね!! 許しますよ!!」

 

((チョロい……))

 

まほとヴィゼの心が見事に一致した瞬間だった

 

「隊長、ヴィゼ先輩」

 

ほっこりしていた二人の背後から声がかけられる

振り返ってみるとそこには銀髪の少女が立って居た

 

「あぁ、エリカか。どうかしたか?」

 

「エリカじゃん、どした?」

 

「どうしたじゃないです。師範からこのようなお手紙が届きました」

 

そう言ってエリカは大量の手紙を取り出した

表には『西住流合宿 開催のお知らせ』と書かれていた

 

「……これって、まさか」

 

「全国の戦車道チーム宛ての手紙だそうです」

 

「うっわぁ……師範、仕事早すぎじゃない?」

 

手紙の量を見て流石のヴィゼも絶句する

この話を聞いたのは昨日だったのにもうすでにこの量の準備が完了していた事に驚きを隠せないでいた

 

「この時期にやるなんて、師範は何をお考えになっているんでしょうね?」

 

「さ、さぁ?」

 

「で、その手紙。どうする?」

 

「どうするって……ここに有る以上は送らなければならないだろう」

 

「だよな~」

 

「「はぁ……」」

 

「ヴィゼ副隊長に西住隊長、何かとても疲れています?」

 

二人の様子に気が付いたのか未来が近づいて顔をのぞかせる

その様子は忠犬が飼い主を心配している様な感じだった

 

「あ~うん。面白く思っていたけど実際に見てみると結構大変そうだな~って思っただけだ」

 

「……取りあえず、一番遠い場所から送るとしよう」

 

「プラウダ高校ですか? アイツ等、参加しますかね?」

 

「プラウダの新しい隊長のカチューシャはこう言うの最初に送らないと来なさそうだしな」

 

「分かりました」

 

エリカはそれ言ってプラウダ宛ての手紙を取り出す

 

「次はどこかな?」

 

「知波単学園かな? その次はアンツィオ高校か」

 

「アンツィオ高校かぁ……みほは元気かな?」

 

「安斎からは元気に戦車道をしているって言っていたよ?」

 

「そうか……良かった」

 

「みほが戦車道を?」

 

「「あっ」」

 

ヴィゼとまほの口から聞きなれた声が聞こえて動きが止まったエリカ

それを見て失言した事に気が付いたヴィゼだったが時すでに遅し

エリカはゆっくりと首をヴィゼに向けて見つめる

 

「どうしてヴィゼ先輩はみほの転校した高校と戦車道を続けている事を知っているんですか?」

 

「あ、いや~それは……」

 

「私……あの子には何も知らされていないんですけど?」

 

「な、何でかな?」

 

「…………………」

 

「あ、あはははは………」

 

「……………………………」

 

「……ごめんなさい」

 

「いや、謝ってほしいわけじゃないんです。ただ何で私は知らないのにヴィゼ先輩が知っているのか知りたいんです」

 

「あ、あの~それは、ですね」

 

「はい」

 

「わ、私が……そこを薦めました」

 

「…………そうですか」

 

「え、エリカ? お、怒っている?」

 

「怒っている? 誰にですか?」

 

「だ、誰って……」

 

「別に怒っていませんよ。えぇ、私には相談もしないで出て行ったのに他の学校で戦車道を続けているみほや知らない間に転校する学校の相談を受けていたヴィゼ先輩に対してなんて怒る訳無いじゃないですか」

 

「そ、そうだよね~」

 

「ただヴィゼ先輩?」

 

「はい」

 

「今日の練習は本気で来てください」

 

「え?」

 

「私も全力でやりますので……」

 

「い、良いけど……」

 

「みほと次に会った時に完膚なきまでに叩きのめせる程の力を手に入れる必要が有るので……」

 

「あっはい」

 

「では、手紙を出してきますね」

 

それだけ言ってエリカはさっさとその場を離れた

まほとヴィゼはその背中から溢れんばかりの怒気がオーラの様に立ち上っているのが見えていた

 

「……しくじったぁ。口を滑らせたなぁ」

 

「あそこまで怒っているエリカを見たのはこの間、エリカのハンバーグカレーを間違って食べてしまった時以来だな」

 

「何しているんですか、西住隊長」

 

まほのエリカを怒らせた時の行動を聞いて思わずそう呟いた未来。

二人はそこで未来の存在を思い出した

 

「み、未来。お前は怒っていないのか?」

 

「怒るって……何でですか?」

 

「いや、だってみほは……」

 

「みほさんが?」

 

「他の学校で戦車道を続けているんだぞ?」

 

「あぁ! それですか」

 

「それに対して何も思わないのか?」

 

まほの質問を受けて首をかしげる未来

その顔には何でそんな事を聞くのか分からないといった表情が有った

 

「? 別に、ただ続けてくれていて良かったなって思うだけですよ?」

 

「それだけ?」

 

「むしろ心配していた位です。転校した先の学校で元気にやっているのかな~って」

 

「あ、あぁ。古い友人からは友人に恵まれて元気にやっているそうだ」

 

「そうですか! 良かったぁ」

 

未来は安堵した様に息を吐いて笑顔になる

その笑顔は優しさで一杯だった

 

「もう、エリカさんも素直じゃないんですから」

 

「あぁ、だがそれがエリカの持ち味でもある」

 

「そうなんですけどねぇ」

 

「エリカさんも心配していたんでしょうね。でも、みほさんを傷つけるようでしたら私はエリカさんを止めますよ」

 

「だって、エリカさんはみほさんの友達ですもん!!」

 

「未来、お前って奴は本当に良い奴だな?」

 

「あぁ、私もそう思うよ」

 

「? 二人ともどうしたんですか?」

 

「「いいや、何でもないさ」」

 

黒森峰の隊長と副隊長はそう言ってこの小さな天使の頭を撫でた

全ては一か月後、同じものを目指し、一度は違った少女たちの道はそこで再び交わることになる

 

 

 

西住流からの合同合宿開催の連絡は各学校にすぐに伝達された

 

「カチューシャ、西住流から合同合宿を開催するという連絡が来ました」

 

「ふ~ん? この偉大なカチューシャ様に参加してほしいって来たのかしら?」

 

「はい、そのようです」

 

「ふふん! 良いじゃない。私達も参加するわよ!!」

 

「分かりました、それでは西住流にそう返答します」

 

「えぇ……所で、ガルボーイとベイリーは?」

 

「ベイリーは今は畑にいるそうです。ガルボーイは知りません」

 

「知らないの? 幼馴染みなのに?」

 

「カチューシャ、あれは幼馴染みではありません。ただの腐れ縁です」

 

「……素直じゃないんだから」

 

「何か言いましたか? カチューシャ」

 

「な、ななな何でも無いわよ!!」

 

「そうですか、それでは私は連絡してきます」

 

そう言ってノンナは教室を出て行った。

 

「……怖かったぁ、ノンナったらあんな風に頑固になるとは思わなかったわ」

 

ノンナが居なくなってからようやく息を吐けたのか力なく呟くカチューシャ。

一方の部屋を出たノンナの顔は付き合い慣れた人から見れば少しだけ嬉しそうに見えた。

 

(カチューシャの慌てた表情……グッと来ましたね)

 

心の中でガッツポーズを決めていたノンナはそこで遠くから聞き慣れた音を耳にする。

その音を聞いて溜息を付くとノンナは音の聞こえた方へ歩き出す。

 

しばらく歩くと空き教室の前に辿り着いた。

中からは未だに聞き慣れた弦楽器の音がしている。

ノンナはノックもせずに扉を思いっきり開く。

 

バァン!と物凄い音がして中にいた人物は肩を震わせて動きを止めていた

その顔はポカンと口を少し開けて呆然としている

 

「こんな所で何をしているのですか? ……ガルボーイ」

 

「……もうちょっと静かに扉開けてくれね? ノンちゃん」

 

ようやく起動したその人物は苦笑いでノンナをそう呼んだ。

その直後にカチャッっと音がしてノンナの手には何時の間にかマカロフが握られていた

 

「その名前で呼ぶなって言いませんでしたっけ? 貴方の頭は飾りなんですか? ガルボーイ」

 

「分かった。今のは俺が悪かった! だからそんな物騒な物を仕舞って下さいお願いします!!」

 

ガルボーイの必死の土下座で何とかマカロフを仕舞うノンナ

マカロフがちゃんと仕舞われたのを確認して安心の溜息を付くガルボーイ

 

「それで? 何でここに来たんだ?」

 

「貴方に頼みごとが有って探していたら、何時もの様に貴方の演奏が聞こえて来たので聞きに来ただけですよ」

 

「え? そんなに俺の演奏が聞きたかった?」

 

「えぇ」

 

ノンナのその言葉を受けてとても嬉しそうに笑うガルボーイ。

その顔はまさしく少年のような無邪気な顔だった。

 

「嬉しいな~お前にそう言ってもらえるのは」

 

「……そうでしょうか?」

 

「そうだよ」

 

「……ゴホン」

 

ガルボーイの笑顔を見て少し頬を赤らめたノンナは仕切りなおすように話し始める。

 

「ガルボーイ、貴方の整備士としての腕を見込んで頼みます」

 

「……何で?」

 

「一か月後、西住流が全国の学校を集めて合同合宿を行うそうです」

 

「へ~流石は日本最大の戦車道流派だな」

 

「そこで我が校きっての整備士の貴方に付いてきてほしいのです」

 

「え~」

 

ノンナの願いを聞いて物凄く嫌そうな顔をするガルボーイ

しかし、そんなガルボーイをスッと睨むノンナ

 

「今年も我が校が優勝する為には貴方の整備士の力が必要なんです。他の学校の整備士と交流して今以上の力を付けて欲しいのです」

 

「面倒臭いな~それって俺の自由時間ある?」

 

「あなたの事ですから勝手に作るんでしょう?」

 

「あ、バレた?」

 

「何年貴方と一緒に居ると思っているんですか?」

 

ガルボーイの行動を予想してノンナがそう口にするとガルボーイも苦笑いしながら頭を掻く。

 

「まぁ、良いか。偶にはノンナの顔を立てるとするよ」

 

「そうですか……ありがとうございます」

 

「ノンナからお礼を言われるなんて明日は槍でも降るのかな?」

 

「…………」

 

「待って! ごめん!! 今のは言いすぎました!! だからそれをしまっ「死になさい!!」ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

感謝の言葉を受けて照れ隠しで言った一言で処刑されたガルボーイの悲痛な叫びはプラウダ高校全体に響いたという……

 

 

 

 

「ダージリン様、西住流からこのような連絡が」

 

「あら? オレンジペコ、何かしら?」

 

聖グロリアーナ女学院の紅茶の園で優雅に午後のティータイムをしていたダージリンの元に手紙を持ったオレンジペコがやって来た。

 

「全国の戦車道チームを集めて合同合宿を開催するとの事です」

 

「へぇ、随分と面白そうな催し物ですわね」

 

「いかがいたしましょうか?」

 

「受けた誘いは断りませんわ。私達も参加しましょうか」

 

「分かりました」

 

話を聞いて即決断するダージリン。

この思い切りの良さが彼女の利点でも有るのだろう。

 

「……所で、アッサムとルクリリはどこかしら?」

 

「えぇと……あの二人でしたら」

 

「どうかしたの?」

 

言いにくそうに言葉を詰まらせるオレンジペコ。

それを疑問に思ったのか追及するダージリン

 

「あの……アッサム様は廊下を走っていたローズヒップさんのお説教中でルクリリ様は……」

 

「コォォォォナァァァァァァァァ!!!!」

 

オレンジペコの言葉を遮るように学園艦中に響き渡るような怒声が飛んだ。

その声の後に物凄い音を立てて走る二人の少女

 

「ルクリリ様! 優雅は何処に置いてきたんですか!?」

 

「んな物は今は知るかぁ!! お前だろ!! 私の読んでいた本に虫の玩具を入れて置いたのは!!」

 

「それだけでそんな怒らないで下さいよ! ちょっとした茶目っ気じゃないですか!!」

 

「あとお前、私の紅茶に何を入れやがった!?」

 

「あれ紅茶じゃないです~あれは絵の具を溶かしたただのお湯です~」

 

「よし! 今日こそはお前のその巫山戯た頭に私を本気で怒らせたらどうなるか叩き込んでやる!!」

 

「絶対に嫌で~す!!」

 

「逃がすかぁ!!」

 

「…………と、あのような感じです」

 

「そう」

 

聞こえてきた声がルクリリの現状を証明してくれた事に苦笑いするオレンジペコ

優雅に紅茶を飲もうとするダージリンだったが頬がプルプルと震えていた

 

「あの、ダージリン様」

 

「何かしら?」

 

「怒っているのですか?」

 

「いえ、そうじゃなくて……可笑しくてね」

 

「はいぃ?」

 

「彼女達は本当に退屈させませんわね」

 

「同い年の私としてはもう少しだけ落ち着きを持って貰いたいですが……」

 

「こんな 格言を知っている?」

 

溜息を付くオレンジペコにキリッとした表情になったダージリンが問う

 

「他人に変わって欲しければ、自ら率先して変化の原動力となるべきだ」

 

「ガンジーですね」

 

「彼女達に落ち着きを持って貰うにはペコが自分から行かなければ変わらないのではないかしら?」

 

「そうでしょうか?」

 

「折角の同い年で同じ紅茶の名前を持つ者なんですから、頑張りなさいな」

 

「はい」

 

ダージリンからの激励の言葉を受けて、オレンジペコは歩き出す。

同じ紅茶の名前を持つ者の所へ

 

 

 

「おい、こんな所にいたのか三人とも」

 

継続高校での昼休み、森の中を歩き開けた場所に到着した一人の男性。

彼の前にはBT-34が止まっており、そこに腰を掛ける三人の少女がいた

その内の草を咥えた少女が男性に気が付いて手を挙げる

 

「ん~? おぉ~デヴィンじゃん。どうしたの?」

 

「どうしたのじゃない……西住流から俺達に手紙だ」

 

「え!?」

 

「……私ら何かしたっけ?」

 

「~♪ ~♪」

 

「おいミカ、人が話をするんだから一回カンテレを弾くのを止めてこっちの話を聞け」

 

「それは人生にとって大切な物かな?」

 

「限りなく大切だと思うぞ」

 

ミカの捻くれた言い方をバッサリと切り捨てるデヴィン

その切り方を感心するように見るアキ

 

「そんな風にミカをバッサリと斬れるのってデヴィンだけだよね~」

 

「コイツの扱いはそれこそガキの頃からしているからな」

 

「で? そろそろ話を戻そうよ」

 

ミッコからの提案を受けて手紙の内容を話し始めるデヴィン

 

「あぁ、手紙の内容は一ヶ月後に全国の戦車道チームを集めて合宿をするって内容だ」

 

「合宿かぁ……」

 

「費用は西住流から出るみたいだ。後、行けば良いことが有るかもしれないと……」

 

「良いことって?」

 

「上手い物が食えるとかじゃないか?」

 

「「行こう!!」」

 

「お、おぉ……」

 

アキとミッコの力強い宣言を受けて少しだけ引くデヴィン

そんな中で一人だけ返事をしないミカ

 

「で? 我らが隊長はどうするんだ?」

 

「刹那主義には賛同できないね」

 

「え~じゃあミカは行かないの?」

 

「良い機会じゃん! 行こうよ~」

 

ミカの発言を受けて抗議を始めるアキとミッコ

しかし、そんな中で一人だけ冷静だったのはデヴィンだった

 

「まぁ、良いんじゃねぇの? 行きたくないって言っている奴を無理矢理連れて行かなくてもさ」

 

「デヴィン!?」

 

「無理に連れて行けばミカも不快に思うだろう?」

 

「それは……そうかもだけど」

 

「じゃあどうするの?」

 

「俺達だけで行けば良いんじゃねぇの?」

 

「!?」

 

「ミカを置いて!?」

 

「それは仕方が無い」

 

「う~」

 

デヴィンの言い分に悩むアキを尻目にミッコはデヴィンに近づいて他の二人に聞こえないように小声で聞く

 

(どういうつもり?)

 

(捻くれたお姫様を引っ張っていくための前準備)

 

(……あ~なるほどね)

 

答えが分かったのかミッコは笑いながら頷いてその言葉を口にする

 

「仕方が無いよ、アキ。ここは断腸の思いでミカを置いて私達だけで行こう」

 

「!?」

 

「ミッコまで!?」

 

「私達で行って他の学校の弱点とか見つければ次の大会は優勝できるかもよ?」

 

「それは……」

 

「……」

 

「うん、それじゃあ私達だけで行「そんな事に意味があるとは思えない」」

 

アキの発言を掻き消す様にミカが発言する

その顔には少しだけ寂しそうな表情が有った

 

「あれ? どうしたんだミカ、急に話に入ってきて」

 

「そういう重要な事は隊長で有る私がいた方が捗るんじゃないかな?」

 

「そうか?」

 

「そうだよ」

 

「それじゃあミカも行こう!!」

 

「よ~し、それじゃあ参加って返答しておくぞ」

 

「デヴィン、よろしくね~」

 

ミカも参加表明をしたのでデヴィンは合宿に参加する旨を伝えに職員室に向かった。

 

 

 

 

「辻隊長!! 西住流からお手紙です!!」

 

「おぉ、ありがとう西! どれどれ?」

 

知波単学園で戦車道チームの練習の休憩時間に副隊長である西 絹代が隊長の辻つつじに手紙を持って走って来る

それを受け取った辻はしばらく読むと真剣な顔で何かを考え込むと顔を上げて口を開く。

 

「ふむ……西、全員に伝令を頼む」

 

「分かりました!! 何とお伝えすれば良いでしょうか?」

 

「一か月後に全国の戦車道チームと結束を深める為の戦を行う、と」

 

「かしこまりでございます!!」

 

辻の指示を受けた西は敬礼をするとそのまま他の戦車道受講者たちに伝達するために走っていく

それを見送った辻は戦車の格納庫に向かった

中では男性の整備士たちが九七式中戦車旧砲搭、九七式中戦車新砲搭、九五式軽戦車の戦車の整備を行っていた

辻は迷わずその中で各員に指示を出している男性に近づく

 

「城戸蓮整備長」

 

「ん? おぉ、辻隊長じゃないか」

 

声をかけられた蓮は笑顔で手を挙げて辻に挨拶をする

連の挨拶を受けて辻も敬礼をして返す

 

「実は、蓮整備長にお願いがあって来ました」

 

「お願い? 一体なんだ?」

 

「実は……一か月後に西住流が合宿を企画するようで貴方達、整備隊にも付いて来て欲しいんです」

 

「俺達も? まぁ戦車を動かすんだし当然か……」

 

「いかがでしょうか?」

 

辻からの提案を受けて返答を考える蓮

少し考えてから自分の考えを口にする

 

「良いぞ。他の連中にも話を通しておくよ」

 

「ありがとうございます! 蓮整備長!!」

 

「良いさ、俺達にとっても良い経験になりそうだ」

 

辻と蓮はそうやりとりをして別れた

別れた後、連によってすぐに他の整備士にも今回の件が話されたという

 

 

 

 

「隊長~? ケイ隊長~!!」

 

「どうしたの? アリサ、随分と慌てているみたいだけど」

 

練習が終わり、ミーティング前の休憩時間に走って来たアリサ

そんなアリサに首をかしげながらも呼びかけに答えるケイ

 

「いや、それが大変なんですよ! あの『あの西住流が全国の戦車道チームを集めて合宿を行うってハナシだろ?』うぉわぁ!?」

 

「あら? グレイブ先生じゃない?」

 

「よう! ケイ隊長、相変わらず綺麗だね~。で、アリサ? 俺の言った内容は合っているよな?」

 

「あ、合っているけど、いつも言っているじゃない! 突然後ろから声をかけるなって!!」

 

「そっちの方が面白いってハナシ」

 

「こっちは全ッ然面白くないわよ!!」

 

ガルルルと犬の様に威嚇するアリサとそれを受けてもニヤニヤと笑って受け流すグレイブ

それを見て二人の間に入るケイ

 

「WAIT!! 二人とも話が進まないから少し落ち着いて」

 

「す、すいません。隊長」

 

「俺は別に落ち着いてるぜ? ケイ隊長」

 

グレイブはそう言って手を挙げてみせる

それを見て少し呆れるケイ

 

「まぁ、良いわ。それで? アリサ、その内容をもうちょっと詳しく教えてくれない?」

 

「YES MA'AM!!」

 

ケイに頼まれたアリサは手紙の内容を話し始める。

その内容にちょくちょく訂正を茶々と一緒に入れるグレイブ

 

「……という内容です」

 

「ふぅ~む、なるほど」

 

「と言うか、何であなたがそんなに知っているんですか? 読んでいませんよね? あの手紙」

 

「俺の副業は情報屋だぞ? その程度の情報位は持っていなきゃやっていられねぇよ」

 

アリサの疑問に不敵な笑顔で答えるグレイブ

その顔は傍から見たらとてつもない極悪人の顔だった

 

「……また極悪人みたいな顔になってますよ?」

 

「そんなにか?」

 

「顔の傷と相まってとてつもなく怖くなってます」

 

「これはもう治し様がないってハナシ」

 

「よし! 私達も参加するわよ!!」

 

「YES MA'AM!! それじゃあ一軍の子達にも連絡しますね」

 

「アリサ、wait!」

 

「は、はい!?」

 

「一軍だけじゃなくてエイブリー達二軍にも声かけておいて」

 

「に、二軍にもですか?」

 

ケイの発言に面食らってしまうアリサ

グレイブも意外そうな顔をしてしまっている

 

「これまたどうしてだ? 一軍だけならまだしも二軍もだなんて」

 

「そうですよ! 一体何で?」

 

「良い、アリサ? 私は一軍ばかりに経験を積ませるよりかは二軍や三軍の子達にも経験を積んでほしいのよ」

 

「は、はぁ……」

 

「今回のこの合宿って『ライバル達と寝食を共にし、ライバル達の現在のレベルを実際に見てどうやってそれを攻略していくか。それを考えさせ、よりレベルの高い攻防を繰り広げる試合をする為』なんでしょう?」

 

「はい、そうですが……」

 

「だったらあの子達も連れて行った方が良いじゃない?」

 

ケイは大らかに笑顔でそう言うとアリサは溜息を付きながらも少し笑って肯定する

 

「確かにそうかもしれませんね」

 

「でしょう? だから二軍の子達にも伝達しておいてね?」

 

「YES MA'AM!!」

敬礼をしたアリサはケイから離れるとすぐに携帯を取り出して連絡を始める

それを尻目にグレイブはケイに近づいて小声で話しかける

 

「大丈夫なのか? 二軍にはヒステリックお嬢様がいるが」

 

「エイブリーの事?」

 

「そうそう」

 

「大丈夫でしょう。それに彼女のヒステリックが直ってくれれば私達だってもっと強くなれるじゃない?」

 

「ふっ、果たして上手くいくのかね?」

 

「私達が留守の間は学園艦をよろしくね? グレイブ先生」

 

「言われなくてもってハナシだ」

 

 

 

 

「磯辺隊長!」

 

「ん? 河嶋先輩に会長? どうしたんですか?」

 

「いや~実はね、とても面白そうなお誘いが来ちゃってね~」

 

「楽しそうなお誘い?」

 

大洗女子学園で放課後、バレーボールの練習を行っていた戦車道チーム隊長の磯辺典子に同じく戦車道チームの副隊長である河嶋桃と生徒会長の角谷杏が声をかけてきた

その手には一枚の書類が握られていた。

 

「一体どうしたんですか? バレーボールの練習をしてただけですけど……もしかして私、何かやらかしましたか?」

 

「いや、そうではない」

 

「典子ちゃんが何かしたって訳じゃないから安心して良いよ~」

 

そう言って角谷は手に持っていた干し芋をプラプラと振る

何も起こしていないと言われて尚更なぜ二人がここに来たのか分からない典子

 

「それじゃあ何で?」

 

「いや~実はさ、西住流から合宿のお誘いが来たんだよね~」

 

「合宿? それってバレーボールですか!?」

 

「違う違う。戦車道の方ね」

 

「そうですか」

 

バレーボールではないと言われてあからさまに落ち込む典子

気を取り直して話を聞く姿勢になる

 

「で、戦車道の合宿ですか?」

 

「そうそう、凄く大掛かりな合宿らしくてね~私達の実力を測る良い機会じゃない?」

 

「なるほど……他の学校の実力も知りたいですし良いと思いますよ」

 

「じゃあ参加するって事で良いのかな?」

 

「はい!」

 

「ん~了解~」

 

角谷と桃は典子に了承するように干し芋を振ってその場を離れていく

それを見送ると典子は再びバレーボールの練習を再開する

 

「……良かったんですか?」

 

「ん~? 何が?」

 

「一年の阪口桂利奈の件です」

 

桃は手元に有った資料に目を通しながら角谷にそう問う。

角谷も首をかしげてしばらく考えて合点が行ったのか手をポンと打って口にする

 

「あ~あれね」

 

「一応報告しておいたほうが良かったんじゃ?」

 

「大丈夫でしょう。別にやましい事じゃないんだし」

 

「それはそうですけど……」

 

角谷の言い分に苦笑いしながらも肯定する桃

 

「こういうのは当日までのお楽しみにした方が良いと思うんだよね~」

 

「……それにしても、アイツも凄い事をしますね」

 

「うん、桂利奈ちゃんの趣味は知っていたけどあそこまで凄いとは思わなかったね」

 

「あれはプロでも通用するかも知れないですね」

 

「まぁ、全ては神のみぞ知るって奴だね。結果はまだ分からないしね」

 

そう言って桃の持っていた資料の一つを横から取り出して見る

角谷が手に取った資料には『仮面パンツァータンケッテ』と書かれていた




頑張って描いていたのですが最近は自分の作品の設定が不評な様なので少ししたら作品ごと削除するか一部を削除します

今のところは続ける予定では有ります
問題点が有りましたらドシドシ指摘お願いします

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