ガールズ&パンツァー アンツィオ物語   作:木原@ウィング

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お待たせしました!
今回は1万ピッタシになっていて自分もとてもびっくりしえます(´∀`;)
遂に本編が書き終わったので投稿です!!
そしてラストには衝撃の結末が!!


宴会です!

みほとペパロニを乗せてアンチョビ達のいるコロッセオに向かうCV33

その上に座りながら話をするペパロニとみほ。

コロッセオに着くまで時間があるからか、ペパロニは今回の「みほの迷子事件」について話していた。

 

「にしても……本当にみほは心配を掛けさせるよな?」

 

「あぅぅ、ごめんなさい……」

 

「今度からは気をつけてくれよ?」

 

「はぃ……」

 

ペパロニの口調が少しだけ強くなる。 みほはそんなペパロニ相手に怒らせてしまったと肩を落としてしょんぼりとしてしまう。

 

それを見て少しだけ言い過ぎたかと思ったペパロニだったが少しだけ考えて頭を横に振る

 

(ここでみほにしっかりと注意しないと……今度はもっと大変なことになるかもしれない)

 

それはかつて自分が犯した過ちをみほにもして欲しくは無いというペパロニの思いも有った。

しかし、友達の落ち込んだ顔を見たいという訳でも無いのでペパロニは再び考える。

 

考えて考えて、思いついた。

それを思いついた時のペパロニの顔は大変悪そうな顔をしていた。

 

「…………まぁ、これで今度の戦車道での練習試合相手に話す面白い話題は手に入ったな!」

 

「はぃ……ん?」

 

「いや~これ他の学校の奴らが聴いたら笑うんじゃねぇかな?」

 

「わ、わー!! や、止めてください止めてください!! そんなの話されたら私、恥ずかしくて!!」

 

「良いじゃねぇか! そこから他校にもダチが出来るかもしれねぇだろ?」

 

「そ、それは……い、いいや! やっぱりそんな話題で友達出来るのはあんまり嬉しくないですぅ!!」

 

ニヤニヤと意地悪そうに笑うペパロニとそのペパロニの口を慌てて押さえようとするみほ。

その動きをCV33の上でやる物だからCV33がドッタンバッタンと揺れる。

 

「ちょ! 二人とも!! CV33が凄く揺れて危ないから! 落ち着いてぇ!!」

 

「おっと、悪いなシーコ」

 

「あ、ごめんなさい……」

 

「そこまで怒っているわけじゃないから落ち込まないでよ西住さん」

 

「でも危ないからあんまり暴れないでね?」

 

「はぃ……」

 

「悪ぃなシーコ」

 

「ペパロニ姐さんはもう少し反省してください!!」

 

ペパロニのあまり反省していない様子にシーコは少しこめかみに青筋を立ててピクピクしていた。

その二人の様子を見ておろおろとしているみほ。

カオスである。混沌である。

 

「あ、あにょ!!」

 

「「あにょ?」」

 

「す、すいません。噛みましたぁ……」

 

この場の空気を換えようとして二人に話かけようとしたみほだったが、思いっきり舌を噛んで可笑しな言葉を放ってしまった。

そこをペパロニとシーコに突っ込まれるとみほは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「な、にゃんでもないですぅ……」

 

((何この子、メッチャ可愛い))

 

ペパロニとシーコの心が完全に一致した瞬間だった。

二人に慈愛の眼差しで見られたみほは顔を更に赤くしながら指を指す

 

「あ、あそこが目的地ですか?」

 

みほが指を指して言った場所を見るペパロニ

そこはいつも戦車道で使っているコロッセオだった。

 

「おぉ、もうすぐで着きそうだな」

 

「普段よりは少しだけ遅かったですね」

 

「まぁ、三人も乗っているんだ。少しは遅くもなるだろう……」

 

「大きいですねぇ……ここ、普段は何に使っているんですか?」

 

ドンドンと近づいてくるコロッセオの大きさに息を呑むみほ。

こんな大きい所を何に使っているのか気になって聴いた質問だった。

 

「ここですか? ここは普段は私達、アンツィオ高校戦車道の練習で使ってます!」

 

「戦車道……」

 

シーコのその言葉を聞いて顔に少しだけ影を落とすみほ。

そんなみほの様子から何かを感じ取ったのかペパロニはすぐに大きな声でみほに話しかける

 

「で、みほよ~! これからは覚悟しておいた方が良いぜ~!!」

 

「え!? ……な、何で?」

 

「何でって……みほが見つかって目出たいんだからな……」

 

「あぁ~確かに。私ら全員、あれが好きですからね」

 

「あ、あれ? あれって何?」

 

「馬鹿野郎、みほ!! 私達アンツィオ高校であれって言ったらあれしかねぇだろ!」

 

「えぇ~そんなの分からないよ!」

 

「へっへ!! 待ってろよ~? アンチョビ姐さんのとっておきが有るぜきっと!!」

 

「何か怖いな……」

 

「怖い物じゃないですよ、西住さん」

 

シーコの笑顔とその言葉、そして自分の友達であるペパロニを信じてみほは少し緊張した様子でコロッセオに入っていった

 

 

 

 

「ようこそ! 我らがアンツィオ高校戦車道へ!!」

 

コロッセオに入ったと同時にそんな声と大歓声がみほを待っていた。

未だに良く理解できていない様子でみほは周りを見渡す。

そこには『お帰り西住みほ!! ようこそアンツィオ高校戦車道へ!!』と書かれた垂れ幕と大量の机が並べられていた。

 

「これは……一体?」

 

「何って宴会だろ?」

 

「宴会!?」

 

みほの疑問にペパロニはあっけらかんと答える。

だがみほはその答えを聞いて驚愕する。

 

「何か……私の名前が書かれている気がするんですけど?」

 

「まぁ、みほへの歓迎とかを兼ねているんだろう?」

 

「歓迎って……」

 

「まぁ、細かいことは気にするな! とりあえずは宴会を楽しもうぜ!!」

 

ペパロニはそう言ってみほの手をつかんでそのまま待っていたアンツィオ高校戦車道受講者の皆の元へ歩き出す。

その力強い引っ張りに困惑しながらもついて行ってしまうみほだった

 

 

 

「さぁ、お前達! 腹一杯食べて騒げ~!!」

 

「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」

 

みほが到着して全員の目の前に来た時、アンチョビのその号令と共にその場の全員がアンチョビに答えるように大声を上げて食事を開始する。

 

その場の全員が重い思いの食事を手に取り食べ始めていく。

ある者はピザを、またある者はラザニアを、はたまたパスタを。

彼女たちは自分達で作った料理を片手に談笑を始める。

 

「…………」

 

「お~い、大丈夫か?」

 

未だに理解が追いつかずにただ茫然と立って居るだけだったみほに声をかける人物が。

声の人物を探して声の聞こえたほうを見るとそこに立って居たのは先程、彼女たちに号令を出していたアンチョビだった。

 

「あ、はい。大丈夫です……」

 

「そうか! 初めに遭難したって聞いた時は本当に驚いたぞ」

 

「わざわざありがとうございました。私も、学園艦で遭難するなんて思いもしませんでした」

 

「うん、まほに聞いた通りの子だったな」

 

「はい……ん?」

 

「ん? どうかしたか?」

 

「えっと……お姉ちゃんのお知り合いですか?」

 

アンチョビのまほを知っているかのような口ぶりを聞いて疑問に思ったみほ。

みほは姉からこのような友人がいると言う事は聞いたことが無かったのだ。

 

「なんだ、まほの奴は私の事を話していなかったのか?」

 

「えっと……はい」

 

「まったく、アイツもしょうがない奴だな」

 

そう言うとアンチョビは頭を掻きながらみほに自己紹介する。

 

「すまないな、てっきり知っている物だと思っていたから……私はこのアンツィオ高校の戦車道の隊長をやっている総帥アンチョビだ」

 

「総帥アンチョビ……あっ」

 

「ん? どうかしたか?」

 

「黒森峰に居たときにある人から聞いていたんです。衰退していたアンツィオの戦車道を再建するために愛知県の学校からスカウトされた秀才、その人の名前が総帥アンチョビ!!」

 

「えぇ!? まぁ、そうだけど……それって誰が言ってたの?」

 

「えっと……私の先輩のヴィゼさんです」

 

「ヴィゼの奴……」

 

「ヴィゼさんも知っているんですか?」

 

まほだけでは無く、ヴィゼの名前までもがアンチョビの口から出てきた。

自分の姉と二人目の姉のような存在の事を知っていそうなアンチョビに真相を聞き出そうとみほはドンドンと近づく。

 

「お、おお落ち着け? そんな怖い顔しなくても教えるから!」

 

「あっ……すいません」

 

いつの間にかアンチョビのすぐ近くまで詰め寄っていたみほ。

アンチョビに言われて慌てて距離を開けて再びアンチョビに尋ねる。

 

「あ、あの……それでお姉ちゃんとヴィゼさんの事は」

 

「うん。彼女達と私は…………古い友人だ」

 

「古い……友人?」

 

「そうそう、友人」

 

アンチョビはそこでニカッっと笑うと語り出す。

 

「話をしよう。あれは私がまだ小学生だった頃……」

 

「あ、アンチョビ姐さ~ん!!」

 

語りだそうとした瞬間に遠くの方からみほたちの元へ走ってくる人影が有った。

みほとアンチョビはその姿は遠くて良く見えなかったが声ですぐに誰かを判別した。

 

「ペパロニ……」

 

「ペパロニさん」

 

こちらに全力疾走してきたペパロニの手にはピザとパスタが乗った皿が有った。

ペパロニはピザをアンチョビに、パスタをみほに手渡す。

 

「二人とも、せっかくの宴会なんですからもっと食べて騒がないと損っすよ!」

 

「あぁ、分かったから……今はみほと話しているんだ」

 

「みほと? 一体何の話っすか?」

 

「私の古い友人がみほの姉と姉貴分だったって話だ」

 

「へ~そんな偶然も有るもんなんっすね~」

 

「そうだな。凄い偶然だな」

 

「あ、あはは……」

 

ペパロニとアンチョビのやりとりを見て少し苦笑いするみほ。

そしてペパロニが持ってきてくれたパスタを口にする。

 

「! これ、美味しい~!!」

 

「おぉ!! みほ、美味しいか!?」

 

「うん! とっても美味しいよ!!」

 

「ふっふ~ん! そのパスタは私の特製パスタだからな~」

 

「ペパロニさんの? ……そう言えば、お昼のあの鉄板ナポリタンもペパロニさんが作っていたもんね」

 

「おうよ! パスタは私の一番の得意料理だからな!!」

 

みほの感心したような言葉を受けて頭を掻きながら照れるペパロニ。

その様子を見て満足げに頷くアンチョビ。

 

(まほ、ヴィゼ……お前達の心配は無用そうだぞ?)

 

「あっ、そうだ。忘れていたぜ」

 

「どうしたんだ? ペパロニ」

 

「姐さん、みほを連れて行っても良いですかね?」

 

「何処にだ?」

 

「みんながみほと話したいって聞かなくて……」

 

「なるほどな。よぉ~し!! 行って良いぞ!!」

 

「え? あの、みんなって?」

 

「良いから、来ればわかるってみほ!」

 

そう言ってペパロニはまたみほの手を掴んでズンズンと進んでいく。

その力強い手に引っ張られてみほはまたこけそうになりながらもついて行く。

 

「……まほ、ヴィゼ。お前達の妹は、私の頼りになる可愛い後輩がどうにかしてくれそうだぞ?」

 

アンチョビはペパロニに引っ張られていくみほを見て誰にも聞かれないような小声でそう呟いた。

呟いた時のアンチョビの顔はとても穏やかな優しい顔をしていた。

 

 

 

「お~い! 連れて来たぞ~!!」

 

「「「「「おぉぉぉぉぉ!?」」」」」

 

みほの手を握っていたペパロニはコロッセオの中央まで行くと片手をあげてその場の全員に聞こえる様に声を上げた。

すると、それを待ち望んでいたかのようにペパロニとみほの周りを沢山のアンツィオ生が取り囲む。

 

「えっと……」

 

「この子がペパロニ姐さんの新しいダチっすか?」

 

「ぽわわんとしてて可愛いですね!」

 

「何処から来たんですか?」

 

「好きな食べ物は何っすか!? 私はピッツァっす!!」

 

「趣味とか有る?」

 

「お嬢さん……今夜、私とディナーに行きませんか?」

 

「あっ! おい! 抜け駆けはズルいぞ!!」

 

一斉に質問を始めるアンツィオ生達。

その勢いに押されてどう答えれば良いのか分からないみほだったが少しして答えだす。

 

「えっと……初めまして?」

 

「「「「「初めまして!!」」」」」

 

「わ、私は西住みほです。……ペパロニさんのと、友達です!」

 

「熊本から来ました……」

 

「熊本って?」

 

「九州です」

 

「あぁ~あのくまモンとかって言うゆるキャラがいるところでしょ!」

 

「あっ……はい」

 

「他には熊本城とか……」

 

まずは出身地への質問を答えるみほ。

地元で有った苦い思い出を思い出したのか少しだけ影を落としたがすぐに元に戻り質問への返答を再開する。

 

「好きな食べ物はマカロンです」

 

「マカロン? マカロニの親戚ですか?」

 

「ふふっ、名前は似ているけど全然違うよ?」

 

「お前、そんなのも知らねぇのか? マカロンってアレだろ? あの…………そんな事よりおうどん食べたい」

 

「おいぃぃ! 説明を途中で諦めんなよ!」

 

「絶対にアイツも分かってねぇぞ!!」

 

見栄を張って説明しようとした2年生が突然のおうどん食べたい宣言でその場に更なるカオスが広がった。

その光景は黒森峰女学園では余り見たことがない物だった。

 

「あ、ははは」

 

流石のみほでもこの光景には苦笑いをしてしまう。

 

「ほ、ほら! 早く次の質問に行こうぜ!!」

 

「逃げた」

 

「逃げたな」

 

「逃げましたね」

 

「ちくわ大明神」

 

「逃げちまったな」

 

「う、五月蝿い!」

 

「おい、今の誰だ?」

 

質問に答えられなかった少女は少し頬を赤くしてそっぽを向いてしまった。

そんあ仕草を見てみほは微笑ましく思っていた。

 

「えっと……趣味は人形集めとコンビニ巡りです」

 

「人形って何の人形?」

 

「えぇっと……ボコられグマのボコっていう人形なんだけど」

 

「ボコ? ……それってこれ?」

 

みほの手前に居た少女はポケットをガサゴソと探りそこから一つのキーホルダーを取り出す

そのキーホルダーを見た瞬間、みほの目はキランと光り輝いた。

 

「わぁ~!! これって確か期間限定の地方限定のボコだぁ~!!」

 

「あ、分かる? お兄ちゃんがこれを売っている所に旅行に行ったときに買ってきてくれたんだ~」

 

「うわぁ~羨ましい!!」

 

「お、おいおい! 私達を放って話を進めるなよ!!」

 

「それってどんな感じの人形なんだ? みほ」

 

「えっとね、このボコって言うのはね……」

 

どんな物か気になったのかペパロニはみほに聞いてみた。

そこから始まるみほによるボコの説明会。

みほの真剣な感じを肌で感じたのかペパロニは笑顔を浮かべながらも真剣に話を聞き言っていた。

 

「へ~つまりコイツはどんなにボコボコにやられても何度も敵に向かって行くのか~」

 

「そうなの!! 私、そんなボコが大好きなんだ~」

 

「ふふっ、ボコって何だか私達イタリア軍みたいですね」

 

ペパロニとみほの会話に横から笑いながら入って来たのはシーコと茶髪のロングヘア―の少女、そして短髪頭の少女だった。

 

「んだよ、シーコ」

 

「ズルいっすよペパロニ姐さん! 目を離した隙にまぁたみほさんの独り占めするなんて!!」

 

「そうっすよ! せっかくのみほさんの歓迎会なのに!!」

 

「あ~悪かった悪かった! だからそう責めるなって!!」

 

シーコと短髪の少女にそう責められて流石のペパロニもたじたじになり、謝罪する。

みほはそんな三人を見てオロオロする。

そんなみほの肩がポンポンと叩かれた。叩かれた方を振り向いてみるとそこには赤いバラを手に持った茶髪の少女が立って居た。

 

「お嬢さん。私と一緒にディナーはどうかな?」

 

「え? 私と、ですか?」

 

「えぇ、貴方としか行きたくないんです」

 

「あ、あぅ…… う、嬉しいお誘いですけど……」

 

「「「って、こらぁ!!」」」

 

「あ、バレた」

 

「おうおうおう! 抜け駆けは禁止って言ってるだろ? カンターレ!!」

 

「カンターレ?」

 

「あぁ、そいつは歌を歌うような気軽さで女の子を口説いて行くんだ。それで付いた名前がカンターレって言うんだ」

 

カンターレという名前の由来をみほに説明してくれる短髪の少女。

そんな短髪の少女の説明に不満気に腕を組んで抗議するカンターレ

 

「おいおい、心外だなぁ。私は口説いているんじゃない、美しい天使と一緒に最高の時間が過ごしたいだけさ。レアーレ」

 

「レアーレ?」

 

「こいつはアンツィオ高校の中でも自分の気持ちに正直だからレアーレ」

 

「へ~そうなんですね」

 

「何よ、私が食い意地張っているとでも言いたいの!?」

 

「一言も言ってねぇよ」

 

レアーレとカンターレはそのまま互いのほっぺを引っ張り合い始めた。

そんな二人を呆れたように見るペパロニとシーコ

 

「こいつら……みほの前で何を始めているんだか」

 

「これも最早、いつもの事ですね」

 

「と、止めなくて良いんですか!?」

 

こんな喧嘩をあんまり見た事が無いみほはわたわたとしている。

そんなみほを落ち着かせようとシーコが近づいて話かける

 

「みほさん、別に止めなくて良いですよ」

 

「で、でも喧嘩は駄目だよ……」

 

「あれは喧嘩にも入りませんよ。私達が喧嘩するんだったら本当の殴り合いの喧嘩になりますよ」

 

「な、殴り合いの喧嘩!?」

 

「うん、だからあれはただじゃれ合っているだけなんだ」

 

「おいおい、あんまりみほをビビらせるなよ?」

 

アンツィオ高校の喧嘩事情の話を聞いて怖がるみほを庇うようにシーコを戒めるペパロニ。

みほの少し怯えた様子を見てしまったという顔をしていた慌てて弁明をする。

 

「い、いや! ま、まぁ喧嘩って言っても本当に滅多に起きないから安心して?」

 

「う、うん……」

 

「まぁ、私達は喧嘩早いからな~みほも染まったらそうなるんじゃねぇかな?」

 

「そ、染まらないよぉ!」

 

「ははは!! みほが怒った!」

 

「もう! ペパロニさん!!」

 

「ちょ! 止めろ! みほ、ポカポカ叩かないでくれよ!?」

 

 

 

「…………あっちは随分と賑やかだな」

 

「そうですね総帥」

 

遠くからみほ達の様子を見ながら自分の焼いたピッツァを頬張るアンチョビ。

そんなアンチョビと一緒にみほを見つめるカルパッチョ

 

「お前は行かなくて良いのか? カルパッチョ」

 

「私は後で行きます。それより気になる事が有るので」

 

「ほぉ? なんだそれは」

 

「総帥、今回の宴会の目的って何なんですか?」

 

「目的って……そんなのみほが見つかった記念だろ?」

 

「本当にそうなんですか?」

 

カルパッチョは真剣な表情でアンチョビに訪ねる。

そこでようやく観念したのかアンチョビが口を開く。

 

「……みほに知って欲しかったんだ」

 

「何を?」

 

「『戦車道は辛い事だけじゃない。こうして仲間達と笑い合ったりふざけ合ったり出来る楽しくて素晴らしい物なんだ』って」

 

「…………」

 

「私は……黒森峰で本当は何があったかまほとヴィゼから聞いている。みほが学校の奴らに虐めを受けていたことも」

 

「虐めを!?」

 

「まぁ、率先して虐めをしていたのは戦車道受講者ではなく戦車道と一切関係の無い生徒達だったらしいがな」

 

「酷すぎる……」

 

「……黒森峰での辛い経験をしたみほが戦車道その物を嫌いにならないで欲しかったから今回の宴会を企画したんだ」

 

「そうだったんですね……」

 

「私の作戦は……成功したかな?」

 

アンチョビは少し不安そうにカルパッチョに訪ねる。

その顔は小さな子供が迷子になってしまったかのような物だった。

 

「それはまだ分かりません……でも」

 

そこまで言ってカルパッチョは再び見つめる。

みほの隣にいる心強い副隊長を

 

「ペパロニが何とかしてくれるはずです」

 

「だって彼女は……お馬鹿さんですから」

 

「ふっ、カルパッチョも結構酷いよな」

 

「そうですか? 私は親愛を込めてそう思っているだけですよ~」

 

 

 

「でさぁ、そしたらペパロニ姐さんがマカロニ作戦の枚数を間違えちゃってさ~」

 

「それを言ったらお前だって枚数を間違えた上に幾つか自分で立てた奴を倒しちまっただろ!」

 

「あ! それは言わない約束です!!」

 

「先にバラしたのはお前だろう!!」

 

「はいはい、もうシーコさんもペパロニさんも喧嘩しない」

 

「凄いなぁ、みほさん。もう馴染んじゃったよ」

 

「適応能力高いね~」

 

いつの間にか会話の内容が日常的な物から戦車道の物になっていた。

黒森峰から転校してから触れたくなかった戦車道の話をみほは何の抵抗もなく話せていた。

 

(不思議だなぁ……あんなに嫌だったのにみんなと話す戦車道の話は嫌いじゃない)

 

「ねぇ、みほは戦車道やらないの?」

 

「え!?」

 

シーコからの突然の申し出に思わず固まるみほ

 

「おぉ! そうだよ、みほ!! みほも一緒に戦車道やろう!!」

 

「良いね!」

 

カンターレとレアーレもそれに続くようにみほを戦車道を一緒にやらないかと誘いを掛ける。

そんな三人の想いは嬉しいが、黒森峰でのあんな経験から戦車道に苦手意識を持ち始めていたみほは返事が出来なかった。

 

「……なぁ、みほ」

 

そんなみほの様子に気がついたのかペパロニがみほの肩に手を置いて聞く

 

「前の学校で何があった?」

 

「ッ!?」

 

「……言いたくないような事が有ったんだって言うのは薄々だけ 分かってはいたんだ。でも、みほには嫌な想いして欲しく無くて聞かなかった」

 

「ペパロニさん……」

 

「でも! ……みほ、今のお前は迷っているんじゃないか?」

 

「迷っている?」

 

「自分が本当にやりたいことが分からなくて迷っているんじゃないのか?」

 

「それは…………」

 

「みほ……辛いかもしれないが話してくれないか? 前に何があったのか」

 

「そうっすよ! みほさん!!」

 

「悩みが有るんだったら相談に乗るぜ!!」

 

「アタシら、もう友達なんだから!!」

 

「シーコさん、カンターレさん、レアーレさん……」

 

「みほ……安心しろ。みほの過去に何があろうが私達は気にしない。だから話してくれ」

 

「…………私のいた前の学校の黒森峰女学園は戦車道で全国9連覇していたんだ」

 

「「「「9連覇!?」」」」

 

「凄いじゃねぇか!」

 

「アタシらじゃ一回戦突破が精一杯だぜ!?」

 

「みほさんの居た所ってヤバくない?」

 

「勝てる気しないっす」

 

「あはは……でも、この間の大会では優勝出来なかったんだ」

 

「……私のせいで」

 

「「「「…………」」」」

 

みほの顔に影が刺す

ペパロニはその顔を見たことがある。初めてみほを見たときと全く同じ物だった。

 

「私の前を走っていた戦車が濁流する川に落ちちゃって、私は無我夢中で走って助けに行ったんだ」

 

「でも……私の戦車はフラッグ車だったからその隙に撃たれて負けちゃったんだ」

 

「…………酷いよね。今まで先輩やみんなが積み上げた物を私が壊しちゃったんだ」

 

「それから私は……学校でも色々と有って。こんな私が…………みんなと戦車道なんて」

 

「ふざけんな!!」

 

そこで突然ペパロニは会場中に聞こえるほどの怒声を上げた。

その怒声を聞いて騒がしかった宴会場は一瞬の内に静まり返った。

ペパロニの顔には憤怒の表情が浮かんでいた。

長い間、一緒にいるアンツィオ高校戦車道受講者達ですらそんなペパロニの表情は見たことが無い物だった。

 

「ぺ、ペパロニさん?」

 

「みほ……それ以上は自分を責めるな」

 

「でも、私は……」

 

「みほの何処が酷いってんだよ!!」

 

ダンッと思いっきり地面を踏むペパロニ。その音にビクリと肩を震わせるみほ

 

「みほは凄いことをしたんだ! 仲間の命を助けるっていうとても凄いことを!! なのに何だよそれは!!」

 

見てみるとシーコもカンターレもレアーレも怒りに握り拳を作っていた。

それ程、この少女達はみほの為に怒っているのだ。

 

「……ペパロニ、一回落ち着け」

 

「アンチョビ姐さん……」

 

肩を震わせて怒るペパロニを戒める様にその場にアンチョビが現れる。

話の内容を詳しくは聞いていなかったが大体のことをペパロニの叫んだ内容で理解したアンチョビ。

 

「 みほ……お前が前の学校で何をされたのかはまほ達から聞いている」

 

「お姉ちゃん達から?」

 

「あぁ……辛かったよな。でも、もう安心しろ」

 

「もう二度とみほにあんな思いはさせない。私達がさせない」

 

アンチョビの発言を受けてその場の全員がアンチョビの後ろに並び始める

 

「諸君! 私達の戦車道は何だ!!」

 

「「「「「「「「「仲間と一緒に楽しく安全に怪我のない戦車道!!」」」」」」」」」

 

「そうだ! 戦車道は勝つだけじゃない! 仲間と一緒に楽しくやる物だ!」

 

「黒森峰の戦車道がどんな物だったかは知らないが私達には私達の戦車道が有る!!」

 

「ならば私達は私達の道をノリと勢いで全力で疾走するんだ!」

 

「私達の道をノリと勢いで全力で疾走……」

 

アンチョビの演説を聞いて顔を上げるみほ。

その視線の先にはペパロニがカルパッチョがシーコがカンターレがレアーレが笑顔でいる

 

「さぁ、みほ!!」

 

ペパロニがそう言ってみほに近づいて手を差しのばす。

初めて会った時のように太陽のような笑顔を見せながら

 

「一緒に一っ走り付き合ってくれよ! 絶対に後悔はさせないぜ!!」

 

「…………うん!!」

 

ペパロニの差し出した手を思いっきり掴むみほ。

その顔にはアンツィオ高校に着てからの一番輝いた笑顔が有った。

 

「うん!! さぁ、お前ら! 新しい仲間の歓迎を祝して宴会の続きだぁ~!!」

 

「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」」」」」

 

(お姉ちゃん! ヴィゼさん!! 私、自分の戦車道を見つけられそうだよ! アンツィオ高校の皆と一緒に!!)

 

「……まほ、ヴィゼ。任せておけ、私達がしっかりとみほと一緒に歩んでいくよ」

 

アンチョビのその呟きが空に溶けていった……

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー     ーーーーーーーーー

 

「お母様……これは?」

 

「見ての通り企画書よ」

 

「いえ、それは分かるのですが……」

 

「そっちのは貴方用の台本だから」

 

「いえですから……」

 

「さぁ、これから忙しくなりますよ! まずは脚本家へ挨拶に行かなくては。その後に全国の戦車道チームからこの役に適した人物を探さなければ……これがみほとまほの女優デビューと戦車道の更なる発展の始まりです!!」

 

「……アンチョビ、ヴィゼ、エリカ、みほ。お母様が壊れてしまったよ」

 

そう力なく呟くまほの手には『仮面パンツァータンケッテ!!』と書かれた企画書が有った




如何だったでしょうか?
次回から番外編でもお伝えした仮面パンツァータンケッテ!!の撮影が始まります。
さてさて、どんな撮影風景になるのでしょうか、お楽しみに!!

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