ガールズ&パンツァー アンツィオ物語   作:木原@ウィング

4 / 9
ガルパンは良いぞ!
って事で久しぶりにガルパンシリーズのDVDを見たらアンツィオ高校の素晴らしさを改めて確認したので書きました。
アンツィオ高校のようにノリと勢いで書いたのでおかしな所が沢山有るかもしれませんがよろしくお願いします。


本編
初めての友人です!!


これは、もしも西住みほが大洗女子学園に転校しなかったらという物語である。

 

 

「……今日も、声をかけられなかった」

 

意気消沈した様に溜息を吐くこの少女は西住みほ

由緒正しき『戦車道』において有名で強力な流派の1つの日本で最古、そして最大の流派の家系である西住流の次女である。

 

彼女は昨年の第62回戦車道全国高校生大会で起こった事故を機に黒森峰女学院から別の転校先の学校を探してこのアンツィオ高校にやって来ていた。

 

思い出すのはこのアンツィオ高校に転校して来る前の黒森峰での出来事…………

みほの取った勇気ある行動は同じ学校の戦車道チームからは賞賛を受けた。

あの試合で勝てば前人未到の全国大会10連覇だったが、そんな事と自分達の大切な仲間の命だったら彼女達は迷わず仲間を取った。

 

しかし、それはあくまで【彼女の乗っていた戦車の、戦車道チームに限った】話だった。

みほの事を疎ましく思っていた他の戦車道チームや戦車道をやったことも大して知りもしない学校の他の生徒達はこぞって戦犯となったみほを責め立てた。

 

「あの子のせいなんでしょ? 今年優勝出来なかったの」

 

「らしいよ? なんか相手のフラッグ車を前にして怖くなって逃げ出したんだって」

 

「うっわぁ、そんなので今まで良く副隊長なんて務まっていたね」

 

廊下を歩けばそんな陰口を言われ 下駄箱に向かえば靴を隠されていたり、酷い時には靴を滅茶苦茶に切り裂かれているなんて事もあった。

 

そして、彼女に対する非難はOG会からも寄せられた。

 

「自分達が積み上げてきた物を台無しにした」

 

「この責任はどうやって取るのだ」

 

そのような事が延々と続き、みほは学校への登校を止めた。

同室だった逸見エリカは普段だったら嫌みを言う所をみほの心境を察してか普段とは違い少しだけ優しかった。

 

「……暫くは、休んでいなさい」

 

彼女の好意に甘える事にしたみほは頷いてベットの上でうずくまっていた。

寮の自室に布団に包まりながらただ自分が行ったあの行動が間違っていたのか自問自答を繰り返した。

 

みほは考えて考えて考え続けて、分からなくなった。

あの時、自分は無我夢中に流されようとしていた仲間を助けることだけを考えていた。

 

川に流された戦車の搭乗者は全員、大した怪我も無く検査入院だけで済んだ。

それを知った時はほっとしたし安心した。

他の戦車のみんなも良かったと言っていた。

 

…………でも、それが本当に良かったのか?

みほは自分の現状を思い、そう考えてしまった。

そしてそんな考えを思いついてしまった自分に物凄い嫌悪感を覚えていた。

 

寮に引きこもってから、度々だが戦車道受講者の友人達が訪ねてきた。

みんな口々にこう言う

 

「他の奴らの言うことなど気にするな」

 

「私達は全力を出して戦った結果だ」

 

「私はみほさんと一緒に戦えて誇りに思っている」

 

そんな励ましの言葉を貰い、みほは泣いていた。

何よりも一番嬉しかったのはエリカにも慰めて貰ったことだ。

 

「私は……貴女の同室のエリカとしても戦車道のエリカとしてもあの時の行動は素直に凄いと思ったし誇りに思った。貴女の……と、友達としても、ね」

 

もはやそれだけで十分だった。

やっぱり自分のあの行動は正しかったのだ。何を恥じることが有るのか!!

 

そう思えるようになった。

……ようやくみほが立ち直りかけて、大会以来に実家に呼び出しを受けるまでは。

 

「貴方も、西住流を継ぐ者なのよ? 西住流は例え何が有っても前に進む流派です」

 

「……お、お母さん」

 

久し振りに戻った実家で待っていたのは母であり西住流師範の西住しほからの説教だった。

厳格な母の事だからこうなるのでは無いかとみほは薄々感ずいていた。

それでも改めてそう言われると、みほの心は陰っていく。

 

「でも、お母さん。私はあの時の判断は……」

 

「犠牲無くして、大きな勝利を得る事はできないのです」

 

自分の気持ちを正直に話そうとしたみほだったがしほは否定するように声を上げる。

そこでみほは改めてしほの目を見た。

しほの目は怒りに満ちていた。

 

「あっ……」

 

「…………」

 

そのまましほは立ち上がり部屋を出て行ってしまう。

みほはいまだに先程のしほの目が忘れられず、ただ茫然と座っていることしか出来なかった。

 

「……みほ」

 

そんなみほを酷く辛そうに見るまほだったが何といって声をかけるべきか迷い結局は何も言えなかった。

 

みほが実家に呼ばれてから、みほの心には以前よりも深くどす黒い暗闇が包んでいた。

せっかく自信をつけられたあの答えすら、再び見えなくなっていた。

この暗闇からは最早抜け出せないとすら思えてきてしまった。

 

そこでみほは一つの答えに辿り着いた……

 

「……転校しよう」

 

それからの事は良く覚えていない。

ただ転校するまでの期間、みほは自室に籠り戦車道の授業にも出ず、生徒 に一個ずつ 渡されていたノートパソコンを使って転校先の学校を探していた。

 

何処か、戦車道が盛んでは無くて楽しそうな……『友達』と普通の学校生活を送れる学校が無いのか探し続けた。

探し始めた当初はどこの学校もキラキラと輝いて見えて羨ましく思えた。

 

別に黒森峰もそうじゃないとは言わないが「隣の家の芝は青い」と言うやつだ。

調べていた時はそこそこ仲の良かった友達が部屋に訪ねてくる事も有ったがみほはなんとか笑えていたと思っていた。

部屋を去って行く友人の悲痛そうな顔には気がつかないまま……

 

学校探しを始めてから久しぶりに登校した時は、クラスメイト達に驚かれていた。

その時は久しぶりに登校したからだろうとみほは思っていた。

 

その日はいつも通りに授業を受けて少し足を向けるのが嫌だったが『戦車道』の授業にも出向いた。

みほが来た事にその場の全員は最初は誰だが分からなかった。

 

しかし、すぐに気がついたのか一人の少女が近づく。

 

「アンタ……大丈夫なの?」

 

「……エリカさん」

 

みほは最初、エリカが大丈夫と聞いてきた理由が良く分からなかった。

そこでみほは少し考えて口を開く

 

「うん……もう区切りを付けたつもり」

 

「区切りって……何の話?」

 

「えっと……この間の事、かな?」

 

そう口にしたみほの顔を見た戦車道受講者はその顔をこれから先、生涯忘れられなかった。

 

「あ、あの事は……もう、良いじゃない」

 

「そういう訳には行かないよ……」

 

「私達は、貴女のあの時の行動は間違っていなかったと思っているから……」

 

「だからッ!!」

 

「もう……そんな辛そうな顔しないで」

 

「……え?」

 

みほはエリカの言った言葉の意味が理解できなかった。

 

辛そうな顔をしないで? 私はいつも通りの顔のはずだ。そんなに深刻な顔はしていないのに……

 

「貴女……最後に鏡を見たのはいつ?」

 

「鏡? えっと……」

 

そこでみほは思い出す。

自分が最後に鏡を見たのはいつだったっけ?

 

(私……どんな顔してたんだっけ? 今、どんな顔をしているの?)

 

「みほ……」

 

エリカのその呼びかけにはっとするみほ。

他の戦車道受講者もみほを心配するように見ている。

 

「あっ……わ、私」

 

「何事だ?」

 

突然、その場に凜とした声が響いた。

全員が声の聞こえた方を振り向くとそこにはみほの姉、西住まほが立っていた。

まほはみほが居ることを目視で確認するとすぐに近づく。

 

「あっ…お、お姉ちゃん」

 

「みほ……もう出てきて大丈夫なのか?」

 

「う、うん……もう、大丈夫だよ」

 

そう言ってみほは出来る限りの笑顔を浮かべた。

それを見たまほは少し悲しそうな顔をするがすぐに普段通りに戻る。

 

「そうか……では、久しぶりに戦車に乗るか?」

 

「うん……そうする」

 

みほのその発言にその場にいた戦車道受講者は全員が安心したように息を吐いた。

久しぶりに乗る戦車の感覚にみほは安心の他に何か分からないが何かを感じていた。

 

車長として仲間に指示を出す、みんながその指示に答えるように動く。

暫く忘れていたこの感覚……だが、何故だろう?

 

この感覚を忘れてしまいたいと思ってしまう自分がいるのは……

 

 

その日の戦車道が終わった時、みほは隊長であるまほの元を訪れていた。

訪れた理由は…………転校する旨を伝えるためだ。

 

自分の姉であり、誇り高い黒森峰の隊長であるまほ。

彼女の元でもっと戦いたかった。

 

だが、今のみほではきっと、いや絶対に役に立てはしない。

そう伝えるために今日、訪ねたのだ。

 

「……お姉ちゃん、いる?」

 

「みほか? 少し待ってくれ」

 

そう言うと扉が開かれる。

突然のみほの訪問に内心ではとても驚いているまほだったがそれを表面上には出さずにみほを部屋の中に招き入れる。

 

「一体どうしたんだ? 練習の後に私の部屋に来るなんて久しぶりじゃないか?」

 

「……うん。あのね……お姉ちゃん」

 

「何だ?」

 

みほの様子から重要な案件なのだとすぐさま察知して真剣に聞こうとするまほ

それを見てみほは嬉しく思うと同時にこれから言う内容を伝えるのが申し訳なく思えてくる。

自分の為にこの優しい姉を悲しませるかもしれないのだから……

 

「わ、私……黒森峰から、転校しようと思うの」

 

「ッ!!」

 

みほのその発言に目を見開いて驚くまほ。

何かを言おうとして口を開いたり閉じたりしている。

 

「な、何故だ? みほ、何で転校しようなんて……」

 

「私…もうここでの生活に耐えられそうにないから」

 

「何を耐えるんだ? みほ、お前に何があったの?」

 

「……」

 

みほは自分が受けていたことを全て話した。

それを聞いたまほは悔しそうに顔を下に向けて唇を噛んでいた。

 

私は、自分の愛する可愛い妹がそんな大変な目に有っていた事に気がつけなかった。

そんなに辛い目に有っていたのに何も出来ない自分の無力さが悔しかった。

 

「……もう、そう決めたんだな?」

 

「うん」

 

「……寂しくなるな」

 

「……ごめんなさい」

 

「いや、みほが謝る事じゃない。むしろ謝らなければならないのは私の方だ」

 

まほはそう言ってみほに向かって深々と頭を下げた。

 

「本当に済まなかった」

 

「お姉ちゃんが謝る事なんて無いよ。お姉ちゃんは悪くないから……」

 

「いいや、私はみほの為に何も出来なかったのだから……」

 

「お母様にあの時の事を叱られていた時も、OG会の先輩達に批判されている時も……私はみほの為に何も出来なかったんだ」

 

「……お姉ちゃん」

 

「こんな情けない姉を許してくれ……」

 

まほはそのままの姿勢で動かず、肩を振るわせて静かに泣いていた。

自分の泣き顔を妹には見せないようにと必死で……

 

 

まほに転校する事を伝えた次の日から、みほは再び学校探しを再開した。

だが、探せば探すほど、迷う。

 

そして、どこを探してもどの学校も『戦車道』が有りみほは絶望していた。

 

「……やっぱり何処も戦車道が有るんだ」

 

コンコンッ

 

そんな時、みほの自室の扉がノックされた。

みほはすぐに部屋の扉を開ける

そこには黒に赤みがかった色の髪をした少女が立っていた。

 

「よ~みほ。元気にしているか?」

 

「あっ、ヴィゼ先輩……」

 

ヴィゼと呼ばれたこの少女はまほの友人でまほの戦車の砲手であるヴィゼ・ベアボルフ。

日本人とドイツ人のハーフだ。

彼女と西住姉妹は小さい頃からの付き合いの有る幼馴染みだ。

 

「まほから聞いたよ。みほ、転校しようとしているんだって?」

 

「……はい」

 

「そっか……寂しくなるね」

 

「で、その顔を見る限りだと、どの学校にしようか迷っている感じね?」

 

「相変わらず凄いなぁ……ヴィゼ先輩」

 

「伊達に貴女と長い間居ないからね」

 

自分の事を見事に言い当てたヴィゼに感心するとヴィゼはカラカラと笑う。

彼女はいつもこうやって笑ってみほやまほを引っ張ていた。

この少女のやさしさに何度、助けられた事か……

 

「私が居なくなっても……誰も悲しみませんから」

 

「みほ、それだけは違うって否定させて貰うわ」

 

みほの一言にヴィゼの目が鋭くなる。

ヴィゼの目が鋭くなるのは真剣に怒っている時の行動だ。

 

「いい?みほ、少なくとも私とまほは貴女が転校してこの黒森峰から居なくなることは悲しいわ」

 

「だから、誰も悲しまないなんて思わないで」

 

「……すいません」

 

「分かればよろしい……」

 

ヴィゼの言葉にみほが素直に謝罪すると頭をポンポンと撫でて許す。

この切り替えの早さもヴィゼの特徴だ。

 

「それで学校選びを迷っているんだよな?」

 

「はい……でも、何処の学校も戦車道をやっていて……」

 

「じゃあさ、アンツィオ高校はどうだ?」

 

「アンツィオ高校?」

 

「うん。私の友人がアンツィオ高校に通っているんだけど、アンツィオ高校はそこまで戦車道に力を入れていない。それにご飯も美味しいし生徒達も仲が良いらしい」

 

「そうだったんですか……」

 

みほはヴィゼの薦めてくれたアンツィオ高校の話をとても真剣に聞き入っていた。

ヴィゼもそんなみほの為に自分が知っている事をすべて教えた。

 

「えっと、黒森峰だとドイツ語の授業とか有るじゃない? アンツィオ高校はイタリア風の学校でイタリア語の勉強が有るんだ」

 

「私、イタリア語は少ししか知らないです……」

 

「それはアンツィオ高校に行ってから頑張って~。あ、後アンツィオ高校の料理は全国で一番おいしい」

 

「あ、それ聞いたこと有ります! 何でも食に関する意識の高さはもはや本場イタリアを超えるとか」

 

「私も食べた事が有るけど本当に美味しいんだよねぇ」

アンツィオ高校の陽気な校風を教えるヴィゼに顔をほころばせるみほ。

 

「そしえ最後に……これはみほも頭に入れておけ。何でも、衰退していたアンツィオの戦車道を再建するために愛知県の学校からスカウトされた秀才が居るらしい」

 

「戦車道の秀才?」

 

「そうだ、履修者数が僅か数名しか残っていなかった状態から現在のチームを作り上げ同期達からは天才と言われる総帥という隊長がいる」

 

「総帥?」

 

「名前は総帥アンチョビ。あのアンツィオ高校 のノリと勢いがある戦車道は黒森峰でも苦戦するだろうな……」

 

真剣な顔でそう言うヴィゼを見て、みほは自分が戦車道を辞めようとしているのに色々と考えてしまった。

しかも、それを疑問に思わずにいるのはやはりみほが生粋の戦車乗りだからか……

 

 

それから一週間後にみほはアンツィオ高校に転校した。

黒森峰を離れる時に、別れを告げたのが姉とヴィゼだけだったのが後日、とてつもなく大きいツケとなって廻ってくるのをその時のみほは知るよしも無かった。

 

しかし、現在のみほはまた違った問題に直面していた。

みほの転校は、2年生になってからの転校のせいで人見知りのみほは陽気な雰囲気のアンツィオ高校で友達が作れずにいた。

 

「……はぁ」

 

心機一転で知らない人とも会話をしようと試みていたみほだがやはりそう簡単にはいかなかった。

すっかり意気消沈したみほはそのまま今日のお昼を買いに行くために支度を始める。

そんなみほを見ている少女に気がつかないで…………

 

 

 

「う~ん、どうしたものかなぁ」

 

「 失礼します、総師」

 

みほが寮への帰り道を歩いているのと同時刻、アンツィオ高校に有るコロッセオの一角、作戦室と書かれた教室の中で頭を抱える緑色の髪をしたツインテールの少女と金色のブロンドの肩まで届く髪の少女がいた。

 

「いや……古い友人二人にちょっと頼まれ事をされてな? どうしたものかと……」

 

「頼まれ事? 一体何を頼まれたんですか?」

 

「彼女達の妹 の面倒をな……」

 

「総師の家で預かるんですか?」

 

「いや違うから! 転校してくるからその子の学校生活の面倒を見てくれって頼まれたんだ」

 

「そうだったんですか……それでその子は何年生なんですか?」

 

「あぁ、その子はカルパッチョ。お前と同学年の2年生だ」

 

「あら。てっきり後輩かと思っていました。その子の名前は何て言うんですか?」

 

「西住みほだ」

 

「西住みほ…………あ」

 

「どうした、カルパッチョ」

 

「総師、西住みほさんって私と同じクラスです。さっき見ました」

 

「 何!? 本当か!?」

 

「結構あわあわしてて可愛かったです」

 

「……話に聞いていた通りだな」

 

「……所で総師、やっぱり西住さんは」

 

「あぁ、あの西住まほの妹だ」

 

「やっぱり……それじゃあ転校して来た理由は……」

 

「恐らくは……去年の戦車道全国大会決勝でのあの行動が原因だろう」

 

「それじゃあ、西住さんは戦車道は…………」

 

「それが嫌になってこの学校に来たんだろうな」

 

「それじゃあ私達の戦車道への勧誘は……」

 

「止めておけ……彼女も戦車に乗りたくなったら来るだろう」

 

「分かりました……」

 

「だが、カルパッチョと同じクラスなのは良かった。カルパッチョ、お前が良ければだが……」

 

「えぇ、分かっています総師。彼女の事をですよね」

 

「苦労をかける」

 

「いいえ、元々私もみほさんとは仲良くなりたかったですし」

 

「そっか」

 

「それでは総師、今日の戦車道についてですが……」

 

みほに関しての話を纏めた二人は今日の戦車道についての話し合いをお昼休みが終わるまで続けていた……

 

 

 

「今日は何を食べようかな?」

 

みほは校舎を出て露店の列ぶ屋台街を歩いていた。

アンツィオ高校は学校そのものが財政難でこのように生徒が出店を出しても良いことになっている。

 

初めてアンツィオ高校に来た日はそれについてとても驚いたのも今では良い思い出だ。

 

(って言いたいけど……一週間も経ったのに未だに馴染めてないのはやっぱり私が原因だよね)

 

自分の現状を思い出して思わず暗い顔をしてしまう。

 

「そこの辛気臭せぇ顔した可愛い子!!」

 

「ふぇ!?」

 

突然そんな風に声をかけられて変な声を上げてしまうみほ。

声が聞こえた方へ振り向くとそこにはコックが被る白く長い帽子を被った少女がみほに手を振っていた。

 

何となく、本当に何となくみほは自分を指さしてみる。

するとその少女は首を縦にブンブンと振る。

 

「何か悩みが有るんだったらアンツィオ高校名物の鉄板ナポリタンを食って元気だしな!!」

 

「え?あ、あの……」

 

「まずオリーブオイルはケチケチしないでドバッと使って! 具は肉から火を通して炒める!!」

 

その少女はみほに有無を言わせずに鉄板ナポリタンを作り始めた。

その行程はとても早く、そして香ばしく美味しそうな匂いが漂ってくる。

 

「そしてここで今朝取れた卵をトロトロになるくらいにして……これを盛り付ければ完成!!」

 

「わぁ! 美味しそう!!」

 

「はいよ、300万リラ!!」

 

「ふぇ!? そんな大金持ってないです~」

 

「いや、300円だから……」

 

「な、なんだぁ」

 

少女の冗談を真に受けたみほに真実を苦笑いで告げて本当の金額を貰う。

そしてお金を払ったみほはそのまま鉄板ナポリタンを口に運ぶ。

 

口に入れた瞬間にみほに電流が走る。

 

「とっても美味しいです!!」

 

「だろぉ! こんな美味しい物を食べればどんな悩みだって吹っ飛ぶだろ?」

 

「はい!」

 

「ほらほら! まだ有るから食っちまいな!」

 

「はい! いただきます!!」

少女の作った鉄板ナポリタンを瞬く間に完食したみほは少女にお礼を言う。

 

「ご馳走様でした!」

 

「はい、お粗末様でした」

 

空になった食器を片付けてその少女はみほに近づく。

その顔は少し真剣だった。

 

「それで? あんな辛気臭い顔をして歩いていたのはどうしてだい?」

 

「え?」

 

「案外、悩みが有る時は誰かに相談すると簡単にスッキリする事が有るんだぜ?」

 

「それは……」

 

「それにさ」

 

そこで少女はみほの顔を覗き込む。

少女の顔には満面の笑みが有った。

 

「せっっかく出来た友人が悲しそうにしているのは嫌なんだ」

 

「え?」

みほは一瞬、この少女が言ったことが理解できなかった。

この少女は今、何と言ったのだろうか?

 

「と、友達?」

 

「おぉ、友達だ! だって私が作った料理を食べてくれただろう?」

 

「そ、それだけで?」

 

「同じ釜の飯を食えば、もうそいつとは友達だ。違うか?」

 

「あ、いや、違わない……と、思う、けど」

 

「おぉ! やっぱりそう思うよな! え~っと……」

 

「って……友達なのに名前を教えていないってのもおかしな話か」

 

そこで少女は頭を掻きながら笑う。

みほもそんな少女に釣られて笑う。

久しぶりに自然に笑えたと思った。

 

「私の名前はペパロニ! アンタの名前は?」

 

「私は西住みほです」

 

「みほか! 良い名前だな!」

 

ペパロニはそう言ってみほの手を握って笑う。

みほも力強く手を握ってくるペパロニを見てこの一週間で感じていた物を忘れ去った。

 

「それで? 話してくれないか、友達になった私にみほの抱えている悩みをさ?」

 

「大丈夫だよ、ペパロニさん」

 

「いや、あんな顔してたんだから相当深刻な悩みだろ? 教えてくれって」

 

「もう、今さっき解決したから」

 

「え? そうなの?」

 

「うん!」

 

「なぁんだ! それじゃあ良かったよ!」

 

そう言ってみほに笑うペパロニ

これが、後にアンツィオ高校最高のコンビとなるペパロニと西住みほの最初の出会いとなった。




一応、簡単な設置を
・大洗女子学園は廃校の危機は有りませんが20年前に戦車道が廃れ、3年前から復活しています
・アンチョビはまほとは中学時代からの友人です
・ペパロニさん、マジイケメン

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。