ガールズ&パンツァー アンツィオ物語   作:木原@ウィング

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番外編! 第一弾!!
……なんですが! 一話なんだから本編の一話を書こうと思ったんですけど、俺のお気に入りの話を先に書くことにしました。
最終回付近なので物凄いネタバレをいっぱい含みます。
それが嫌な方は他の番外編が貯まってからの鑑賞をお願いします。

あ、あと活動報告にアンケートを置いておきました!!
興味がある方は是非、アンケートにご協力下さい!!


仮面パンツァータンケッテ!! 決意のフォースアクション

仮面パンツァータンケッテ!!  決意のフォースアクション

 

「おらぁ! どうしたどうした!?」

 

「おいみほ! しっかりしろ!! このままじゃ負けちまうぞ!!」

 

「はぁ……はぁ」

 

「お前、弱すぎなんだよ!!」

 

「く、きゃぁぁぁ!!」

 

「みほぉ!!」

 

イマジンの攻撃を受けて仮面パンツァータンケッテの変身が解除されてしまう。

それを見たイマジンはみほにとどめを刺そうと自身の武器を振り回しながらゆっくりと近づいて来る。

 

(こんな処で……負けるわけには!)

 

何とか力を振り絞って立ち上がるみほ。

その時! 一陣の風と共に空からタンケッテが飛んできた

 

「なに!?」

 

イマジンは突っ込んできたタンケッテを避けて再びみほへ狙いを定めようとしたがそこには既にみほの影も形も無かった。

 

 

「アンタ何をやっているの!?」

 

タンケッテの中に何とか戻ったみほをエリカが責める。

その顔には心配からかうっすらと一つの雫が流れていた。

 

「エリカ……少し落ち着かないと」

 

「今回ばかりはアンタは黙っていなさい!!」

 

一通りみほを責め立てると落ち着いたのかエリカは椅子に座って頭を抱える。

優花里もエリカの横に立ってエリカの頭を撫でるがすぐに手を弾かれてしまいしょんぼりする。

 

「危なかったな、みほ」

 

「全く、冷や冷やしたぞ。みほさん」

 

「ちょっとミホーシャ! 何やってるのよ!!」

 

「みんな……」

 

タンケッテの中でナオミ、麻子、カチューシャに介護されるみほ。

その体は普段以上にボロボロだった。

サオリもハナもそしてティーガーからやってきたエリカと優花里もみほを心配していた。

 

「……おい、みほ」

 

「……ペパロニさん」

 

そんなみほに苛立ちを隠そうともしないでドンドンと近ずくペパロニ

 

「何で私達の力を使わないで一人で戦った?」

 

「…………」

 

「お前、あと少しで死ぬところだったぞ?」

 

「…………」

 

「何とか言えよ!!」

 

「先輩! 落ち着きなって!」

 

「少し頭を冷やせ。ペパロニ」

 

みほに摑みかかりそうになるペパロニを止めるナオミと麻子。

止められながらも凄まじい形相でみほを睨むペパロニ。

そんなペパロニの顔を見て、みほは何かを決心した様に頷いてペパロニに近づく。

 

「ペパロニさん……」

 

「みほ!!」

 

「……私は、もうペパロニさん達とは一緒に戦うわけにはいかないって思った」

 

一言、そのたった一言がタンケッテ内の空気を凍り付かせた。

 

「み、みほ?」

 

「ミホーシャ?」

 

「みほさん?」

 

「みぽりん!?」

 

「……」

 

「に、西住殿!?」

 

「みほ!?」

 

「……今、何て言った?」

 

「もうペパロニさん達とは戦わないって言ったの」

 

「……願いを言えば、ペパロニさん達は私から出て行けるよね?」

 

みほの発言に驚くタンケッテ内の一同、

そんな中でただ一人、先程よりも激昂するペパロニ。

 

「巫山戯んな! 何が願いだ! そんな願いなんて絶対聞かねえからな!」

 

「第一、私達追い出して、お前一人で戦えると思ってんのか!?」

 

「戦うよ! 戦ってみせるよ!! ……でも戦う事はペパロニさん達を消す事になる。自分で自分を消す戦い……そんな事をしていいはず無いよ!」

 

自分の心に芽生え、先程のイマジンとの戦闘で完全に固まった自分のこの想いを真っ直ぐにペパロニ達を見つめてにぶつけるみほ。

そのみほの眼差しを受けて、一瞬だけ怯むペパロニだったがすぐに体勢を立て直してみほに向き直る

 

「今までだって散々戦ってきたんだ!」

 

「でも消えるなんて言ってくれなかったでしょ!? ……私だって、いつかは、別れなきゃいけないのは分かってたけど。それでも!!」

 

「別れるのも消えるのも一緒だろ」

 

「全然違うよ!」

 

ペパロニの一言に今度はみほが激昂する。

 

「違わねえ! いいか、私はな、カッコよく戦えればそれでいいんだよ! 私達の時間がどうとか消えるとか、そんなものに一切興味は無い!」

 

「……だったら、余計一緒には戦えないよ」

 

このまま戦えば消える、と言う事は割り切っているとペパロニが言うのだったらみほとしても、納得は出来なくとも理解はしたかもしれない。

理解はしても実行に移しはしなかっただろうが……

 

「みほ……」

 

心配するハナ。

その緊迫した空気に耐えられなかったのか、カチューシャが椅子から飛び上がってみほに駆け寄る

 

「……ねぇねぇ、私は良いわよね? ミホーシャと一緒に戦うのは好きだし! 消えるのだって、別に怖くな「カチューシャさん!」

 

カチューシャのその先の発言はみほの怒声に掻き消された

 

「……そんなこと、簡単に言わないで下さいよ。……あなたとも一緒に戦うつもりは有りません」

 

「み、ミホーシャ?」

 

みほに拒絶された事がショックだったのかカチューシャは顔を下げて再び椅子に座ってしまう。

それを見て机を思い切り叩き立ち上がるペパロニ

 

「勝手に決めてんじゃ無えぞ。ええ!?」

 

「先輩! 落ち着いて!」

 

「待て、ペパロニ! みほさんは怪我しているんだぞ!?」

 

「そんな奴が私達抜きで戦えるのかよ! ええ!? 勘違いしてんじゃねぞ! みほ!!」

 

「さっきから頭に血が上りすぎだって!」

 

「やめろと言っているのに!」

 

その様子をずっと見ていた優花里もペパロニを止めに入ろうとするが、それをあえて制止し、静観するエリカ。

 

 

タンケッテはそのままターミナルへ入っていく。

怒っているペパロニを連れて行くナオミと麻子。

 

「ちょっと見物でもしてクールダウンした方がいい。ここの待合室が面白いらしいぞ?」

 

「離せよ! そんな気分じゃねしそんな暇ねぇだろ!? イマジンだって過去に置いてきちまってるしよ!」

 

「良いから! どうせ出発するまでは身動き取れないんだ」

 

「クソッ……」

 

ペパロニを引っ張ってそのまま待合室へと向かう麻子。

そんなペパロニ達の後ろを先ほどのみほの発言を受けてから落ち込んでいるカチューシャの方へナオミが引き返して声をかける。

 

「カチューシャ。カチューシャはどこ見たい?」

 

「……いい、私は一人で遊んでくるから」

 

ナオミにそれだけ言うとその場を走り去るカチューシャ。

カチューシャの事を少し残念そうに見つめるナオミ。

 

「ほら、ここは面白そうだぞ? ほら、ここが待合室だ! ……って、何もないな。」

 

「あぁ、確かに?」

 

入ってみた待合室は、予想に反して殺風景な物だった。

パンフレットに書いてあった様な光景が無くてがっかりするナオミと麻子。

すると、汽笛とともに周囲がどこか外の世界の風景に様変わりした。

 

「へえ~なるほどね。時間の中ばっかりじゃ気が滅入っちゃうもんな。こうやって風景を変えるのか」

 

「おもろい仕掛けだなぁ……」

 

「……どこがだ、全然面白くねえよ!」

 

一人その光景を見ても怒ってその場を去ってしまうペパロニ。

 

「あ、先輩!」

 

「駄目だったなぁ……」

 

待合室を足早に後にしたペパロニは、独り非常階段のようなところに座り込む。

そのまま顔を沈めて頭を掻き毟りながら悪態を付いて落ち着かない様子だった

 

「ええい、クソッ・・・。」

 

 

 

「みほさん、これから本当に一人で戦うつもりなんですかね……」

 

「これはみほたちの問題よ。戦いの途中でゴチャゴチャ迷わなければ、あの子達がどう決めたっていい。……帰るわよ、優花里」

 

「うん……はい、ハナ殿」

 

ペパロニ達が出て行ったタンケッテ内でそう話し合いを終えたエリカと優花里はそのままペパロニ達の後を追うようにターミナルへと出て行く。

タンケッテから出る去り際にしっかりとハナに優花里キャンディを置いていく優花里。

 

「またお待ちしてまーす。」

 

「ねえ、サオリさんはペパロニさん達が……」

 

「なに?」

 

「……いいえ、何でも無いです」

 

それだけ言うとハナもタンケッテを降りてエリカ達とは違い、別の場所に向かった。

 

 

 

「大丈夫ですかね? 西住殿達……」

 

「それは私達が口を挟むことじゃないわ」

 

「うん……あ! それじゃあ、見物でもして時間を潰しましょうか! これこれ・・・」

 

沈んだ気持ちを立て直すように明るくなって懐から案内パンフのようなものを取り出す優花里。

それを見て呆れたように叱り付けるエリカ

 

「アンタ!! ここは遊園地じゃないのよ! 1人で行きなさい!!」

 

「あ! ショッピングモールが有りますよ! エリカ! ほら、あっちあっち!」

 

エリカと優花里のそのコントの様な掛け合いを柱の陰から認める影があった。

その影は過去においてきた筈のアルマジ イマジンだった! 誰にもバレないようにターミナルに下りていたイマジン。

 

「過去で暴れるより、こっちのほうが絶対面白い!」

 

そう呟いてそのまま人が多そうな場所を目指して進軍し始めたアルマジロイマジン

その顔はとても凶悪そうな物だった。

 

 

 

 

「それよりアレ、何でだと思います?」

 

「何が?」

 

エリカの過去での不可解な行動に関する疑問を未だ引きずっているノンナ。

 

「桜井エリカが消えたら、この時間が私達の存在する時間に繋がるって……アイツら知っていますよね?」

 

「お前がそうバラしたからな」

 

「そうでしたっけ? ……やっぱり妙ですね」

 

腰掛けていた石の彫刻から立ち上がり悠然と歩き出すノンナ。

 

「最初に桜井エリカを狙ったのはいつでした?」

 

「この時間に来てすぐの筈だが?」

 

「……けど思い出さなきゃいけませんね。何かとても大ッ事なものが抜け落ちてるって気がします」

 

そう言ってノンナは自分の手に持っている手帳をなぞりながら遠くを見つめていた……

 

 

『ミルクディッパー』

夜遅くでも未だに電気の付いている店内にはエリカ専用の苦くないコーヒーの開発に真剣に打ち込むまほが居た。

すると、玄関の扉が開き、誰かが入ってきた。

 

「ん?」

 

まほが顔を上げるとそこにはハナが立っていた。

 

「こんばんは……。」

 

「あぁハナちゃんか。いらっしゃい」

 

それなりに遅い時間のため、まほも少し驚いたようですぐにハナに近づく。

 

「どうしたんだ? 誰かとケンカでもしたのか?」

 

「え? ……いえ、ケンカではないんですけど」

 

 

 

「はい、チーズ! どうぞ!!」

 

「どうもありがとうございます! エリカ!! 記念にこれ……」

 

ターミナルのショッピングモールの一角で大はしゃぎする優花里とそれに付き添っているエリカ。

優花里のはしゃぎ様に少し恥ずかしそうなエリカはあまり優花里を見ようとはしない。

 

「駅長グッズはいかがですか~?」

 

「おぉ! 駅長グッズも有ります!!」

 

「バーカ」

 

流石にそこまでは付き合ってられない、と踵を巡らせ歩き出すと、視線の先にカチューシャが一人で椅子に座っていた。

 

まだみほと完全には打ち解けていなかった時に描いたまほの絵を見つめながら感傷に浸っている。

しかし、そこでエリカが見ているのに気付くと、絵を隠してそっぽを向いて座り直す。

 

それを見たエリカは少しため息を付いてカチューシャとは反対側のベンチに座り、背中越しに声を掛ける

 

「みほのこと……怒っているの?」

 

「……別に? 何でミホーシャがあんな事言うのか分からないし!! ……ミホーシャは、カチューシャのこと、要らなくなったのかも………」

 

カチューシャはそう言うと悲しそうに顔を腕で隠して蹲る。

そんなカチューシャに肩をすくめてエリカは言う。

 

「逆でしょ?」

 

「え?」

 

「逆だから、あの子もどうして良いか、分からないんじゃない?」

 

その時、みほは一人でターミナル近傍の踏み切りの前に立ち尽くしていた。

目の前の開かずの踏み切りが自分の中の色々な何かを象徴しているように思えて来るみほ。

その顔には、タンケッテ内では見せなかった困惑の顔色が有った。

 

 

 

「自分でも分からなくなりまして……大嫌いですし、居なくなってしまうのはちょっと……って思っているのですけど」

 

「……その方がいいはずなのに、今のまま変わって欲しくないって思っているんです。……変ですよね? 本当に、大嫌いな筈なのに」

 

「ふむ……それはきっと、ハナちゃんはもうその人達が大好きなんだと思うな」

 

「そんな事! 全然……」

 

「本当にそうか? ……変わって欲しくないって思うぐらい、その人たちとの『今』が大切になっているのだろう。だから……辛いんだろう」

 

 

ハナが自分の中の想いをまほにぶつけているのと同時刻、ターミナル公園では。

 

「ナオミ……気がついているか?」

 

「あぁ……居るな。どうやってここに潜り込んだんだか……」

 

過去に置いてきたはずのイマジンの侵入に気付いたナオミと麻子。

イマジンを睨みつけながら麻子は口を開く。

 

「ナオミ、私はみほさんがどう言おうと何と言おうとも、戦いをやめる気はない。私の命はとっくの昔にみほさんに預けているんだ」

 

「……泣けるね。」

 

「ハッ、何がだ? お前だってやめる気はないんだろう?」

 

「さあね、私は麻子みたいな浪花節は似合わないから」

 

「じゃあ……」

 

「あぁ、行きますか!!」

 

そう言葉を交わして、滑り台を滑り降りる2人

 

「さあて、最初に痛くなるのは誰かな!?」

 

アルマジロイマジンが子供たちに向けてハンマーを投げつけようとした所、それを防ぐナオミの槍。

 

「おいおい、こんな所で投げ釣りか?」

 

「子供を狙うとは、許さない!」

 

「邪魔するんじゃねぇよ!!」

 

アルマジロイマジンの言葉と共に走り出す両者。

三人の激突と同時に、ターミナル内には警報が鳴り響く。

 

『イマジンが暴れております! 至急、落ち着いて避難して下さい! 繰り返します!!』

 

警報を聞き、慌てて避難する人々。

それを聞いたエリカは優花里と合流するために走り出す。

 

カチューシャも一瞬だけ動きを止めたがそのままナオミ達と合流しようと急ぐ。

避難する為か、開かずの踏切が上がり異常事態を察したみほも、踏み切りを駆け抜け、現場に向かおうと走り出す。

 

しばらく走った所でみほの前に立ちはだかったのは……ペパロニだった。

ペパロニは肩に剣を担いでみほを睨みつける

 

「ペパロニさん・・・」

 

 

「はぁ!」

 

麻子の張り手とナオミのキックがアルマジロイマジンに直撃するがアルマジロイマジンは何ともないように歩みを続ける。

そのままアルマジロイマジンが力を込めるとその体がアルマジロの様に丸まって回転し始める。

 

「アルマジロアタック!!」

 

「任せろ!」

 

高速回転しながら突進してくるアルマジロイマジンに麻子はナオミの前に飛び出して、その高速回転する体を全力で押し止めようとする。

 

しかし、徐々に押され遂にはそのまま壁に激突してしまう。

 

「その程度か!? 弱すぎるぞ!!」

 

「麻子!?」

 

「これは………思ったよりも厄介そうだ」

 

 

みほの前に立ちはだかったペパロニは、担いでいた剣を下ろしてみほに向ける。

 

「みほ、ちょっとばかり強くなったからって調子に乗ってんじゃねえぞ? お前1人じゃあイマジン一匹倒せやしねぇんだよ」

 

「やってみなきゃ分からないよ。……変身」

 

ベルトを出して、一瞬だけ躊躇したように動きを止めたみほ。

しかし迷いを振り切ったように装着してパスをかざしてプラットフォームへと変身するみほ。

 

そのままペパロニの横を通り過ぎようとしたところで、みほの肩を掴んで押し返すペパロニ。

その勢いに押されて転倒するみほ。そんなみほにペパロニはさらに剣を投げて寄越す

 

「本当にお前一人でやれるって言うなら、そいつで私に一撃でも入れてみろ。それぐらい出来なけりゃ、行っても意味無え」

 

「ペパロニさん……そこをどいてよ」

 

「だから、どかしてみろってんだよ! ……そしたら私も、もう何も言わねえ。」

 

「ペパロニさん……」

 

「早くしろ!」

 

床に落ちた剣を手に、とてもお粗末な構えを取ってペパロニに立ち向かうみほ。

 

 

 

「がぁ!!」

 

「ナオミ!!」

 

「ヘッ!! お前達の攻撃、全然痛くも痒くも無いな?」

 

「ッつつ、全く言ってくれるね……」

 

何ともないように軽口を叩くナオミの足は言動とは違い、もう既にフラフラの状態だった。

そんなナオミに追撃しようとアルマジロイマジンが歩みを進めた瞬間!!

 

ドンドンドンドン!! と連続で銃弾がアルマジロイマジンに直撃する。

 

「ぐふぅ!?」

 

「今の銃撃……まさか」

 

「バーカ! ナオミ! 麻子! 待たせたわね!」

 

銃撃の有った方向へ振り向くとそこにはカチューシャがカチューガンを構えていた。

援軍の登場に安堵の溜息を付くナオミと麻子。

 

「遅いぞ、カチューシャ」

 

「仕方がないでしょう!? ここって迷路みたいで迷うのよ!!」

 

麻子と軽口を叩き合うとカチューシャはそのままアルマジロイマジンに追撃する。

しかし、今度はアルマジロイマジンを怯ませることすら出来なくなってしまった。

 

「そんな! 何で……」

 

「そんなチンケな攻撃じゃあ無駄なんだよ! 形勢逆転狙うなら、あと10人ぐらい呼ばないとな!」

 

アルマジロイマジンのハンマーで攻撃を弾かれ、カチューガンも弾き飛ばされてしまう。

 

 

 

「やぁ~!!」

 

「っとぉ!!」

 

「そこぉ!!」

 

「甘めぇんだよ!!」

 

ペパロニに立ち向かうみほは、立ち向かうたびにいなされ、投げ飛ばされ・・・ただの一撃も入れられないまま、ボロボロになっていた。

 

「弱ぇ、弱すぎるぜみほ」

 

そうペパロニに挑発され、再び立ち上がって向かって行くもの、再び投げ飛ばされてしまう。

そんな攻防がずっと続いていたが、とうとうペパロニに剣を取り上げられ、地面に押されそのまま天井を見上げる姿勢のまま動かなくなってしまうみほ。

それを立ち上がって上から見下ろすペパロニ。

 

「ハァ、ハァ……クソッ、粘りやがって。二度と1人で戦うなんて言うな。いいな!」

 

「……嫌だ」

 

「嫌だ……」

 

「何!?」

 

力なく変身を解除したみほの顔には涙が流れていた。

 

「出来るわけないよ。ペパロニさん達が消えるかもしれないのに、戦わせるなんて出来ない!」

 

「みほぉ!! お前、まだ分からねえのかよ!」

 

「だって、ペパロニさんもナオミさんも! 麻子さんもカチューシャさんも!! 消えるかもしれないんだよ!?」

 

ベルトを握って目から大粒の涙を零しながらみほが叫ぶ。

それを見て押し黙るペパロニ

 

「私だって……本当は戦いをやめて……でも、私は迷えない。迷いなんか無い! ペパロニさん達が消えるかもしれないのに、私はこの時間を守ろうって思っている!!」

 

「今でも……何でだろう? ペパロニさん達が消えるのはこんなに嫌なのに、何で……。」

 

そこまで言って遂に堪えきれなくなったのかうつむいて静かに声を出して泣き始めるみほ。

 

「みほ……」

 

泣くほど自分達の事で悩んでいたみほを見て何かを決意するペパロニ

 

「上等じゃねえか! 迷う必要なんかねえよ」

 

真剣な顔で、しかしそこに優しさが含まれた表情でみほに歩み寄る。

ペパロニの発言を受けて少し顔を上げるみほ

 

「消えるとか消えないとか、そんな事は後の話だ。実際、私が暴れたいってのも本当だしな」

 

そう言うとペパロニは苦笑いしながらも頬をポリポリとかきながらみほの隣に座り込む。

まるで照れているかのように

 

「ただ、まぁ……ちょっとでも守りたいとしたら、それは……『今』ってやつだ」

 

「え?」

 

「……って言うかみほ! お前、運悪いからな。私達が消えるって前に、腐ったカレーとかナポリタンでも食ってさ、ポックリ死んじまうかもしれないだろ?」

 

「……そしたら、私達も道連れだ。多分、ナオミ達もそう思ってるぜ」

 

「だからさ……戦わせろよ、みほ」

 

「ペパロニさん……」

 

「な? ほら立てよ、ナオミ達が負けちまうぞ?」

 

それだけ言うと立ち上がってみほに手を差し出すペパロニ。

みほはその差し出された手をガッチリと力強く掴んで立ち上がりペパロニと頷きあって走り出す。

 

 

 

「どう?」

 

「まだまだ行ける! ぐぅ……」

 

「じゃあもう一発いこうかな?」

 

地に倒れ伏せるナオミ、麻子、カチューシャに止めを差そうとアルマジロイマジンがゆっくりと近づく。

 

「「ハァ!!」」

 

「ぬぅおぅわぁ!?」

 

そんなアルマジロイマジンの背後から強烈な跳び蹴りが炸裂し、衝撃でそのまま倒れ込むアルマジロイマジン

 

「そこまでだぜ、ザリガニ野郎!」

 

「みんな!? 大丈夫!?」

 

「ミホーシャ!」

 

「遅くなって悪いな!大丈夫か?」

 

「本当だよ、先輩」

 

「だが、持ち堪えたかいがありそうだ」

 

「みんな、ごめんなさい!」

 

タンケッテ内での事を頭を下げて謝罪するみほ。再び顔を上げるとその目には力強い光が宿っていた。

 

「……これからも私と一緒に戦ってくれる?」

 

「ッミホーシャ!!」

 

みほからの願いを受けて歓喜するカチューシャ

 

「当たり前だ!」

 

普段とは違い嬉しそうに快諾する麻子。

 

「じゃあ、やりますか!」

 

ナオミも心なしか嬉しそうに頷く。

 

「はいはい、いくら来ても無駄無駄・・・。それから俺はザリガニじゃなくて、アルマジロだ!」

 

「知るか!」

 

蹴飛ばされた苛つきからか、ペパロニに呼ばれた間違いを訂正しながらアルマジロイマジンも再び武器を構える。

 

「ペパロニさん、行くよ!」

 

「おう!」

 

「「変身!!」」

 

『ソードフォーム』

 

赤いオーラを纏い参上する仮面パンツァータンケッテ ソードフォーム。

 

「私、参上! ……いいかナントカ野郎。今日の私は始まる前からクライマックスだぜ!」

 

「意味分んねえな!どっちにしろ、俺の強さには敵わないけどね!」

 

「どうかな!?」

 

アルマジロイマジンの先制攻撃のハンマーを切り払い、突撃する仮面パンツァータンケッテ。

一気に間合いを詰め、ペパソードで切り伏せる。

しかし、アルマジロイマジンの装甲の前にあまりダメージを与えられない。

 

「ヘッ!! 俺に接近戦は、効かないんだよ!」

 

「だったら! 耐えて見せろよ!?」

 

そんな宣言を受けてソードフォームはそのまま連続でアルマジロイマジンを切り裂く。

 

「ごッ!? 馬鹿な!?」

 

自分にそこそこ良いダメージが入ったことに驚愕するアルマジロイマジン

 

「で? 何が効かないって?」

 

余裕そうにアルマジロイマジンを挑発するペパロニ。

その背後からナオミが手を上げながら近づいてくる。

 

「先輩! 私にもやらせてよ」

 

「ったく、しょうがねえな・・・。」

 

そう言うとペパロニはベルトの青いボタンを押してパスをかざす

すると今度は青いオーラがタンケッテを包み込む

 

『ロッドフォーム』

 

仮面パンツァータンケッテ ロッドフォームへ変身を完了させる。

 

「しっかりやれよ!」

 

「お前、私に釣られてみる?」

 

ペパソードをナオロッドに変更しそのまま撓る竿で中距離からの連撃を打ち込んでいく。

 

「さっきの、お返しだ!」

 

ナオミはそう言ってナオロッドを大きく振り回す。

それをギリギリに避けるペパロニ、麻子、カチューシャ。

 

「ちょっと! 危ないじゃない!!」

 

「気をつけて欲しい物だ!」

 

「何やってんだ!」

 

「ゴメンゴメン! 危ないよっと!!」

 

そして相手の攻撃をそのままナオロッドで受け止め、それを支点に背後に回って腕を捻り上げる

 

「はい、麻子!」

 

「あぁ! 任せろ!!」

 

麻子がアルマジロイマジンに強烈なタックルをかますと同時にロッドフォームの中に入り込む。

 

「よろしく!」

 

「さあ、行くぞ!」

 

そう言って麻子はベルトにパスをかざす。

 

『アックスフォーム』

 

今度は黄色のオーラがタンケッテを包み込む。

変身を完了させるとナオロッドをマコアックスへと変形させる。

 

「さっきからコロコロと姿を変えやがって!! いくら変わったって俺の強さは変わらねぇんだよ!」

 

タンケッテに対する怒りからそう叫ぶとアルマジロイマジンは武器のハンマーをアックスフォームへと投げつける。

しかし、それを簡単にキャッチしたアックスフォームはハンマーの鉄球の部分を……

 

「私の強さは・・・泣けるぞ!」

 

力一杯に引きちぎってそのままアルマジロイマジンへと投げ返す。

 

「馬鹿な!? ぐぁ!!」

 

思わぬ反撃を受けてそれを再び喰らってしまうアルマジロイマジン。

 

「やーいやーい! 私もやるわ!」

 

アルマジロイマジンがボコボコにされる様を見て嬉しそうに飛び跳ねていたカチューシャがアックスフォームへ飛び込んでいく。

 

「っと! おいカチューシャ!! まだ早いぞ!」

 

そのまま麻子を追い出して再びパスをかざして変身する。

 

『ガンフォーム』

 

紫色のオーラがタンケッテを包み込み仮面パンツァータンケッテ ガンフォームへ変身を完了させる。

 

「ふふん、これ痛いけどいいわよね?」

 

その宣言と共にカチューガンを連射するガンフォーム。

 

「痛い痛い痛い痛い!」

 

「答えは聞いてないわ!」

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」

 

先程よりも威力の上がった銃撃を喰らい吹き飛ばされるアルマジロイマジン。

それを見たみほが叫ぶ。

 

「みんな、一気に行くよ!」

 

「ん? 分かったわ!」

 

「久し振りのアレだな?」

 

「それじゃあ、やっちゃいますか!」

 

「待っていたぞ!!」

 

各員の嬉しそうな応答と共に、カチューシャがケータロスを取り出し、下のボタンを押していく。

 

『ペパ、ナオ、マコ、カチュ!! クライマックスフォーム!!』

 

後ろにいたペパロニ、ナオミ、麻子、そしてガンフォームだったカチューシャの全員がオーラとなってタンケッテ に入る。

 

右肩にナオミのロッドフォームの顔が、左肩に麻子のアックスフォームの顔が、胸にカチューシャのガンフォームの顔が、そして頭部にはペパロニのソードフォームの顔が装着される。

全ての顔が装着されるとペパロニの顔が横にスライドをして完成する。

 

これが全員の絆の力の変身 仮面パンツァータンケッテ クライマックスフォーム!!

 

「バカな、何で急に・・・俺のほうが強いのに!」

 

タンケッテの連続攻撃でボロボロになったアルマジロイマジンは本当に訳が分かっていないように絶叫し クライマックスフォームへと突撃する。

それを銃撃しながら迎え撃つクライマックスフォーム

 

「バーカ、どっちが強いかじゃねえんだ」

 

「戦いってのはな……ノリと勢いが有る方が勝つんだよ!」

 

カチューガンからペパソードに変更して、アルマジロイマジンを更に攻撃する。

 

「そんな……こんな筈じゃ!!」

 

そのままパスをケータロス及びベルトにかざし、チャージ&アップを発動させる。

 

「必殺・・・私達の必殺技!クライマックスバージョン!!」

 

その宣言と共に虹色に輝きだしたペパソードでアルマジロイマジンを一刀両断にする。

 

「がぁ!! こ、こんな所でぇぇ!!」

 

絶望の叫びと共にアルマジロイマジンは爆発した。

 

「ぃぃよっしゃぁぁぁ!!」

 

「イエーイ!」

 

「よし!」

 

「うん!」

 

強敵だったアルマジロイマジンを打ち破りタンケッテは勝利の雄叫びを上げた。

 

 

 

夕日の中、ターミナルを出発していくタンケッテをターミナルから満足げに見送るエリカ。

 

「……答えは出たみたいね」

 

「良かった、良かったです・・・。」

 

「えぇ……って! 優花里! これ恥ずかしいからやめなさい!」

 

感動に浸っていたら駅長グッズまみれになっていた優花里を見て激昂するエリカ。

怒っている理由が分からないのか首をかしげてエリカにTシャツを渡す優花里。

Tシャツにはデカデカと駅長の顔がプリントされていた。

 

「ほら、心配せずともエリカの分も有りますよ~! よく似合うと思うけどなぁ。」

 

「やめろ~!」

 

 

 

「だから、あそこはやっぱりさぁ!」

 

「いやいや、私の」

 

「何言っているのよ! 私の奴が」

 

「寝言は寝てから言う物だぞお前ら」

 

何時もの喧騒が戻ったタンケッテ内でそれを嬉しそうに眺めるみほ。

 

「は~い、できました!」

 

と、そこに豪勢な料理を運んでくるサオリとハナ。

 

「おぉ~!うまそうだぞ!」

 

「パーティーみたいで良いね!」

 

「ケーキは有るか!?」

 

「ピロシキが有る~!!」

 

「ハナさんががんばって作ってくれたご馳走で~す!」

 

サオリのその宣言に先程の喧騒が一瞬で静まり返る車内。

 

「おいおい、またハナの手作りかよ・・・。」

 

「魚でも降ってくるんじゃないの?」

 

「大丈夫なのか……」

 

「……」

 

「何でもいいでしょ! 別に貴方達の為じゃ有りませんから……」

 

「ムカつく~! おい、どう思う? どう思う? どう? ねえ、どうよ?」

 

「まあ、しいて言うならオーナーの残念会かな?」

 

そう言って後ろを苦笑いしながら振り向くサオリ。

それに続いて苦笑いながら察したみほ。

 

「もしかして負けたんですか? オーナー、駅長さんとの炒飯対決」

 

「とんでもない、イマジン騒ぎで延期になっただけです。」

 

と言いつつも、誰がどう見ても明らかに不機嫌なオーナー。

 

「これからですよみほさん、本当の戦いは・・・これからです・・・。」

 

そう意味深な言葉を残し、食堂車を後にするオーナー。

 

「……とりあえず、私達だけで乾杯しますか!」

 

「うんうん!」

 

「せ~の」

 

 

「「「「「「「・・・カンパーイ!」」」」」」」

 

「ははは、おいし~!」

 

「うおお! うまい! うまいぞこれ! 本当にハナが作ったのか!?」

 

「うまい! これ本当にうまい!!」

 

「どれどれ・・・おいしいぞ、これ!」

 

「ホントだ~!」

 

大喜びのペパロニ、ナオミ、麻子、カチューシャと、それを見て嬉しそうなサオリとハナ。

 

しかしそんな中でみほは、ふと先程のオーナーの言動が気にかかる様で窓の外を眺めている……

 

 

 

 

みほ達が宴会もどきをしている同時刻、ノンナは遂に結論に行き着いたらしく笑い出す。

 

「ふ、ははは・・・ああ、そうか・・・そうだったんですか」

 

「どうかしたのか?」

 

「やられましたよ。アレに………桜井エリカに。やっぱり足りないんですよ。ハハハ・・・」

 

今まで感じていた違和感の正体に行き当たり、可笑しいのかずっと笑い続けるノンナ。

顔を上げるとそこには狂気が宿っていた

 

「私達が最初にこの時間に来たときからずっと、一つだけ抜け落ちてるものが有りました。ハハハ……」

 

「……ニシズミミホ!! お前の記憶だ! ハハハ・・・。」




次回、仮面パンツァータンケッテ!!

「私の中から抜けた記憶に、この謎はきっと関係があると思う。私が、何を忘れているか…」

「逃げてください、早く!!」

「見つけましたよ? この時間の分岐点」

「みほさん! 貴方は先に戻れ!」

「私は貴方に、命だけじゃなくて時間まで持たせて貰えたんだ!!」

「麻子さん! 駄目ぇ!!」

「……ありがとう」

「日曜日 あさ8時!!」

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